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つつがなく、 楽しく、 ずっとキミとの生活が続けば良い。
最近は古めの小説ばかり読んでいて、萌えがかなりレトロな回線に繋がっていましたが、久しぶりに新しい風を感じて、モードがリセットされた気分。良い買い物したーって感じです。
アンソロに収録した作品をまとめた作家さま初コミックス。BABYコミックスは装丁が洒落ていて、アンソロからお気に入りの作家さんを発掘させてくれる楽しみがあるんですよね。
表題作他、二編収録です。
「よりよりそいあい」
表題作は同棲している社会人カップル、郁と日里の日常を描いたお話。在宅業の郁とオフィスワークの日里。家の中で時間のすれ違いがあっても、お互いを思いやって食事を作り置いてあげたり、休みを都合して二人で温泉旅行を計画したり。
二人が暮らしているのは、日里の実家の一軒家。彼の両親は既に他界していて、月命日は必ず姉と祖父母のところに訪れる。郁のことは祖父母も姉も承知していて、いつでも郁も連れておいでと招待してくれているが…
日里の家の柱に家族で背比べをした印が付いていて、「おとうさん」と書かれた印と同じ高さのところを日里が通り過ぎるシーンがあって、さりげない演出だけれどグッと来ちゃいました。彼らがどのように出会い、セクシュアリティーについてどう思っているのかは描かれていません。だけど、どんなことがあっても二人はこれからもずっと一緒にいるだろうというのだけはわかって、希望を感じさせてくれる素敵なお話で、とっても新鮮でした。
「くつのね」
まさかのアンドロイドもの。あー、どうしてこう、アンドロイドものに弱いんだろ。
ケイが療養中の祖父の自宅を見舞うと、二葉というお手伝いさんアンドロイドがいた。彼は祖父のリクエストでなぜかハイヒールを履いていて、息抜きすることなく毎日家のことばかり。そんな二葉を外に連れ出してやるケイでしたが…。祖父とまるで一心同体の二葉の関係は、悲しくも妬けるものでした。
「一等星になれなかったひと」
写真部の羽山と野球部の三田。三田が部活のトレーニングでバテてたところを写真に撮りたいと声をかけてきた羽山。以来、なんとなく仲良くしている二人。カンペキ羽山が三田を狙ってるっしょ!…って読めるのが楽しい。
超短編だけれどとても好きなお話です。セックスまみれ?の高校生を描いたものよりも、こういう、友達の存在が自身を振り返らせてくれるキッカケをくれたり、あるいは挫折を励ましてくれるような関係性に掴まれます。
あとがきによると、このお話を描いていた時が一番、作家さまがBLについて考えていた時だったそう。個人的にはむっちゃBLだったし、萌えたけどな…。
ほんわかしたお話がお好きな方なら楽しめるんじゃないかと思います。どのお話も気持ちの良い読後感でしたよ。
表題作のみに関する感想です。
昭和レトロっぽい一軒家で暮らしている日里と郁の日常を描いた短編連作。
二人の暮らしは、日里の家族や職場、ご近所さんにも当たり前の様に受け入れられている模様。そういう日常の中での気持ちのふれあいや、ちょっとしたすれちがいと和解を繰り返しながらパートナーとしてより深まっていく関係が、さらりと表現されています。
連作を重ねていくうちに、日里の両親が他界していることや、二人が暮らしている家は日里が子どもの頃から住んでいた家であることが分るのですが、このことを郁がどう思っているか(これは『郁が日里をどう思っているか』と同じ意味になっているのですが)について描かれた部分はかなりほろりと来ます。静かな描写が続いた結果なので、かなり揺さぶられました。
男性同士の恋愛を描いたマンガや小説を読み始めた頃には、類い希なる美少年の悲恋の果てに死んでしまう(いわゆる耽美もの)というお話が圧倒的に多かったことを考えると、このようなお話を描く作者が現れて読者を獲得していることに「この点では、いい時代になったなぁ~」と感慨を深くしてしまったのでした。
表題作とその連作+短編数本からなる1冊。
帯の「なんでもないようでいて 一瞬、一瞬が大切な時間。2人の暮らしを覗いてみませんか?」の言葉がぴったりの、ゆったりとした時間が流れる心地の良い作品でした。
こちらが作者さまのデビューコミックスとのことで、本当に驚くばかりです。
以下、表題作の感想となります。
日里(ひさと)と郁(ふみ)の2人暮らしの様子とても自然でリアル。
背景や小物まで、日常でよく見る風景が細やかに描かれています。
カメラワークのセンスも抜群です。
この時点でもうグッと心惹かれてしまうんですよね。
本当に2人の暮らしをそのまま覗かせてもらっているかのよう。
その他の細かい事情については明言されていないので、読者は2人の日常風景から推測する形になります。
どうやら日里は会社員で、郁は在宅ワーカーの様子。
日里の勤務先の女性社員が、日里のお昼ご飯がお弁当ではないのを見て「(郁は)締め切り前ですか?」と尋ねる辺りに、同居人と暮らしている事になっているのかな?と想像してみたり。
いつ出会って、いつ付き合って何年になるのかも書かれてはいませんが、2人の間に流れる空気感が終始緩やかなので、きっと長い付き合いなのだろうなと。
良い意味で空気のような2人です。
付き合いというよりも、パートナーという表現が1番近いかもしれません。
どちらが攻めでどちらが受けなのかも書かれていません。
ベッドシーンもありません。
しかし今作はそれが良いのです。
食事をして、布団を敷いて眠り、たまに予定を合わせて温泉に行ったりと、普段通りのなんでもない日常が幸せなのですよね。
そんな日常を重ねる中、亡くなった両親の月命日の集まりに行こうとする日里に何か言いた気な郁。
この辺りからの心理描写が丁寧で、長く付き合っているパートナー同士の静かな心の葛藤や悩みが見られます。
序盤の穏やかさとの対比が本当にお見事です。
これからもこの家で2人でのんびりと暮らしながら、やがて家族になっていくのだろうな、という未来が見える素敵なお話でした。
日里の東北なまりの祖父母が「出来立てのおはぎを食べて欲しいわ」「次はふたりで来なさい」と言うシーンが暖かくて好きです。
どの作品も心地良い読後感でした。
日常系の穏やかなお話が読みたい方、ほっと一息つきたい方におすすめの作品です。
表題作+2作の短編集でした。
絵柄は線が細めの可愛らしい感じです。
表題作が一番日常によりそったお話で、一軒家で暮らす2人が相手のことを思いやりながら丁寧に暮らしている様子が描かれています。ところどころで日里の過去や家族に触れる描写が出てきますが、それにも喜んで自分の事のように向き合う郁がとてもよかったです。この日常がずっと続けばいいなと願います。
個人的に一番印象深かったのは2作目です。これは何エンドといったらいいんだろう…別に近未来とかそういうわけではなく、本当に今現在のリアルな日常に当たり前のようにアンドロイドが存在する、その設定がそもそも読んでいてアッと印象に残りました。そしてアンドロイドものでは愛した人は死んでしまっても自分(アンドロイド)は生き残ってしまうという設定が多いかと思っていたのですが、このお話では一緒に葬られることを選ぶんだな、と。なのでおじいさんとアンドロイドにとってはハッピーエンドだと思いますが、なんとなくアンドロイドに心を寄せてしまった孫にとっては絶対に自分は入り込むことができない2人を最期までそっと見守るというちょっと切ないラストだと感じました。
3作目はBL未満友達以上のそんな青春のお話でした。
怪我でもなく純粋に実力が足りずに裏方を勧められた三田くんが、最終的に野球なんだかんだ続けたでもなく野球をやめてしまったでもなく裏方に回ることを選んだ結末が個人的に好きだったのと、それをずっとそばで写真を介しながら見つめ続ける羽山くんに愛を感じました。いいときだけでなく本当にいつでも見守ってくれる存在というのは時に鬱陶しく、でも知らずに支えになっていたのではないかと思うと、未来にどんな関係性になるのか気になるそんな作品でした。
表題作の同棲カプのお話が4話分プラス、描き下ろしが6つ。そして同時収録作としてこの他に短編が2つ入ってます。
同棲カプのお話は、表紙のイメージ通りと思って間違いないです。
穏やかな二人が一つ屋根の下で暮らす様子が描かれていて、なんともゆるやかな時間が流れています。
もうお付き合いも長いんだろうなぁ…
だからこそ、今更手を繋ぐのにこそばゆい、恥ずかしいって気持ち、わかるー!と思ってしまった。
たまの旅行で車に乗ってお出かけするときに、運転席に座る彼にちょんちょんと手繋ぎ催促してみたり…とか、いい雰囲気になってる最中に仕事の電話でお預けくらってしまった時の気分とか、細やかな感情を手で表現してるところが好きです。
もうガツガツはしておらずキスどまりなので、恋人同士のセックスを期待して手に取った場合に物足りなさを感じるかもしれませんが、たまにはこういう日常系のエロなしBLもいいなぁと思います。
濃いのを読んで疲れてしまったときに、たまに読み返すとホッとします。
【くつのね】「ハイヒール特集」に掲載した作品ということで、ハイヒールを履くアンドロイドが登場するファンタジー。
身の回りのお世話をしてくれるアンドロイドにハイヒールを履いてもらい、亡き妻のかつてのコツコツ音を偲んでいる老人とアンドロイドのやり取りを、孫視点から描いた作品です。
BLかと言われると解らないけど、確かにそこに愛はあったと思います。
【一等星になれなかったひと】
選手ではなく裏方に回ることを勧められた野球部の三田と写真部の羽山とのお話。
三田は全くBがLしていませんが、シャッターチャンスを逃したくないと三田の姿を追い続ける羽山にはBLの香りがします。