特典SS付き
大好き同士のピュアで甘い恋♥
電子書籍で読了。挿絵あり。
高校時代に親友だった二人。でも、ゲイばれすることで友人関係が壊れることを恐れた飯塚くんが、過剰反応して言ってしまったヘイト発言によってケンカ別れしてしまう。6年後、仕事の関係で偶然再会した矢口くんは、何もなかったかのように頻繁に遊びに誘ってきて……という展開で始まったものですから「はいはい、あのパターンね。次、こうなって、ああなって、最終的にはくっつくんでしょ?つまらなくはないけれど、めっちゃ面白いという風にはならないかなぁ」と思いつつ読んでいたら、思った通りくっつきました。
ちょっと待て!
まだお話の半分も行っていない間にくっついたぞ。「この後、どう展開するんだ?当て馬とのモダモダか?失礼ながら、それ、面白いか?」
お話は私の凡庸な予測を超えて『愛する人を大切にするというのはどういうことか』という内容に踏み込んでいきます。今まで割とたくさんのBL本を読んで来ましたが「思いやりという名の押しつけは止めて、ちゃんと話し合おうよ」という部分だけではなく「愛を名目にした押しつけのセックスってダメでしょう」とここまで主張する攻め受けのお話を、私は初めて読んだような気がします。
『好きだから無理矢理』がまかり通る(?)このジャンルにおいて、これはスゴイことなんではないだろうか?(そういうお話がダメと言っているわけではないです。そういうのでも好きなお話があるんで)だって、このことって、恋愛にとってとっても大切なことですよね?
ただ単に甘いだけじゃなく、恋人とずっと一緒にいるために必要なことを教えてくれるお話だと思います。「文科省が推薦すべき」とも思ったんですけれど、『文科省推薦』って付いたとたんに「面白くなさそう」って思ったりもするからなぁ。
いやもう、タイトルからして甘いでしょー!て感じですが☆
等身大の二人の、等身大の恋愛ですね。意地を張っちゃったり、自分の自尊心を守るために相手を傷付けちゃったり、嫉妬で冷静に行動出来なくなったり。そんなみっともない姿がありのまま書かれている作品です。包容力攻め×健気受けなんかを普段は嬉々として読んでいますが、こんな人間くさい二人もいいよねと、楽しく読めました。
内容は、高校時代、若さ故にすれ違ってしまった二人の再会ものです。大人になり、再会した二人。二度と離れたくないから友人として付き合って行きたい受けですが、何故かグイグイ距離を縮めて来る上に、自分を独占したいような言動をする攻めに困惑してというものです。
先程も書いたとおり、この二人が本当に等身大です。基本明るく男前ではありますが、ワガママな所があったり、カッとなって意固地な態度を取ってしまう未熟な部分があったりする攻め・矢口に、臆病で意地っぱり、傷付きたくないばかりに自分の気持ちばかり優先してしまう受け・飯塚。この二人なので「もう、何やってんだー!!」と非常にジレジレさせられます。
ズルイ部分だったり、汚い部分だったりも書かれているので、イライラされる方もおられると思います。
ただほんと、二人とも未熟なだけだと思うのですよね。未熟な二人が、ジタバタとやってるのが愛おしく感じるのです(*´ー`*)
そして最大の萌え所が、タイトル通り「大好き同士」な所。
もう、くっついたあとの二人が甘~い!特に二人の初エッチが可愛すぎて、すっごく萌えました。飯塚が、矢口と繋がる事が出来て心から喜んでいるのがジーンと来るというか。最初から気持ち良くなっちゃわないトコが、嘘くさくなくていいよねと言った感じで。この時の二人が、ほんとどんだけ互いが大好きなんだよ!!といった所です。
本編が受け視点になりますが、攻め視点の短編もあります。こちらも激甘。お風呂エッチが読めます。
ちょっとエッチにも慣れてきた二人という事で、エロが濃厚。飯塚の天然な言動で、矢口が煽られまくってるのに萌えました。矢口がアホみたいに「かわいい」を繰り返しております!
作者さんは「けっこう甘いのが出来上がりました」と書かれてますが、「いや先生、苦味もけっこうありますよ!」と申し上げたいです。
でも、苦味のあとの甘味はより甘く感じるのです!
好き嫌いが分かれるかもしれませんが、私はとても好みの作品でした。
友人に恋してしまった、知られたら嫌われる、だから逃げる、でも本当は相手も好きだったんだよという話は結構好きでそういったあらすじだと高確率で買ってしまいます。
諍いがあったり誤解があったりで別れて数年後に再会、離れようとする一方と昨日の続きのように接してくる一方がいろいろあって最後はまとまってハピエン、という流れが王道。なので思った以上に早々にくっついてしまったのにはびっくり。
しかしここからなんです。
この作品の真骨頂は…というのは大げさかもしれませんがこれまでにないリアルなくっついてその後の物語がとてもいいと思いました。
同性同士の恋愛に関わらず愛する二人の物語としてともに育んでいくという部分に共感しました。
ふんわりとした甘いお話も、スパダリもファンタジーも大好きですが、時にはこんな地に足をつけた現実的なお話もいいと思います。
攻のグイグイくる、ちょっと自分勝手っぽい性格が苦手で、くっつくまでの部分はあまり好みではなかったんですが、エロ部分のじっくりと受を開発してゆく様が萌えました。そこも、リアルなのはちょっと……という人には、好みが分かれるかもしれませんが。私はBLのお約束なエロに飽きてきてたので、楽しく読みました。
おまけは攻目線でしたので、攻の気持ちよさというのも伝わってきて、エロかったです。
文章も読みやすく、最近知った作家さんですが、それぞれの作品に幅もあって(切なくて泣けるのもよい)、買い続ける作家リストに入りました。
印象的だったのは、ふたりが言い合いをするシーンです。
愛し合っていれば目を見て心が通じ合うとか、キスをして肌を合わせればわかり合える、そういうファンタジーな展開にはなりません。
お互いに「どうして信じてくれないんだ」という思いをぶつけ合います。
受けでゲイの飯塚からすれば、ノンケの彼と分かり合えないと無意識に壁を作ってしまうのもわかるし、
攻めの矢口からすれば、ふたりでどうすればいいか考えて乗り越えていきたいと思っている、
片方ずつの立場から考えれば、確かに相手のその言葉は腹立たしいよな、とそれぞれの言葉にリアルな心情を感じました。
その後の仲直りのシーンはまるでドラマのワンシーンのようでとても素敵です!
当て馬ポジションの水沢は、二人の仲を引き裂くような間男ではなく、完全に相談役かつスマートな大人だったので、安心して読めました!