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同性愛を描いているからといってBLではないのは自明のこと。
まして本作の主人公、J.S.カレンズバーグ(通称:J)は、マリリン・モンローになりたかった少年、すなわちトランスジェンダーである。
女装をし、女の言葉を喋り、女として男に愛されたい人物が主人公の物語をBLの文脈で評価するのは難しい。
1巻のあらすじは以下の通りである。
舞台は1950年代のアメリカ。
自身がトランスジェンダーであるために両親を失ったと感じていたJは、寄宿舎学校の理事長の養子となることで孤児院を出る。
澄ました様子で女のように振る舞い、酒場に出入りするなど素行に目の余るJの監視役になった優等生の上級生・ポールと次第に惹かれあうようになるが、ポールが伯母である理事長からJの過去を聞かされ、「弟のように愛しなさい」との言葉に従おうとしたことがきっかけで、Jは学校をやめニューヨークに行くことを決意する。
真面目で堅物の上級生・ポールが幼さを残しつつも妖艶なJに身も心も絡めとられていく様子も描かれはするが、物語の本筋はあくまでも「Jの半生記」なのである。
中村明日美子の2回目の連載作で、連載開始が2003年ということもあり、特に1巻の絵柄は現在のものと比較しくせが強く読みにくいかもしれない。
BL的な『萌』を求めることはおそらくできないが(特に2巻では、BL的な要素はほとんどなく、性愛描写を含めて女性との関わりがメインである)、1950~60年代の空気感とJの波乱に満ちた半生に浸ることができれば、きわめて満足度は高いと思われる。
ちなみに2007年出版の『ばら色の頬のころ』は本作の前日譚というか、ポールとその友人モーガン(本作にも登場)の中学時代の物語であるが、かなりBL風味漂う作品である。
再読につきレビュー。
皆さんおっしゃっていますが、
BLにカテゴライズされるかと問われたら確かに難しい。
男×男の恋愛・性愛は描かれるけれど、
一人の人間の半生記というのが一番適っているのだろう。
そして、ゲイと言うよりも、
Jはトランスジェンダー、性同一性障害か。
しっかりとその「女である」ことの自覚はあり、
それを誇りにし武器にもするけれど、
生きづらいことに変わりはない。
だから、物語はとても重たくて、痛い。
救われたかったのに見放されたという気持ちを何度も抱くJ。
Jへの気持ちと良識の間で自分をうまく扱いきれないポール。
ここから物語がどうなっていくのか予測のつかない
次巻へ続くラストページ。
そしてじわじわと感じるモーガンの優しさが
せつなさも持ってくるのだ。
最初の方でワルぶってるんだけど、
しっかりとJとは友情をはぐくんでいる。
ポールへの屈折した感情表現も、
ずっと読んでいけば余計に読み返すときに苦しい。
万人にはおススメしません。
特に犯罪の香りのする性的描写に
嫌悪感を抱く方は読まない方がいい。
最初のほうのページのJの子ども時代の
トラウマ的出来ごとできっと躓いてしまうと思う。
そして太った男、体毛、性器の描写も
全く目をそらさずに描かれているので、
よりグロさを感じてしまうかもしれない。
刊行が2004年なのだが、
この頃の明日美子さんの絵は、
今よりももっとアングラな感じで、
米倉斉加年さんや金子國義さん、宇野亜喜良さんを
彷彿とさせるというか。
白黒のマンガの世界が時にビアズリーっぽくもあり。
アートのようで毒と美すれすれの魅力があるんだけど、
マンガとして読むには受け付けない人もいるだろうな。
明日美子さんのダークサイドが好きな方、
単館系映画が好きな方、
アートのようなマンガを好む方にはおススメします。
むしろBL読みじゃない人の方がハマるのかもしれない。
とにかく、萌えとかではないです。
一つの作品として魅力があると思います。
「同級生」にハマり、中村明日美子の他の作品も読んでみたいなと思って買ったのがこの作品です。
絵が好きじゃないし、同級生とは色合いの大分違う作品だと聞いてたから、迷いつつも買いました。
買って良かった!
確かに色合いは大分違います。
「同級生」が爽やかなレモンのサイダーなら、こっちは血でできたドロドロのワインって感じ。
でも確かに同じ作者によるものだと思った。
作品の行間に流れる、痛いような切ないような空気感はまったく同じだったので。
この一巻目は、高校時代のJ。小悪魔です、色っぽいです。
中村明日美子さんの名を知らしめた最初の作品でしょうか?
腐再突入する以前にすでに手にしていたのは、おもわず「ギムナジウム」「リボンタイ」に釣られてしまったのもあったかもしれません。
『同級生』を求める方にはちょっと重い内容だと思います。
内容的にはヘビーで、Jというマリリン・モンローになりたかった少年。
今で言う”性同一障害”に近いトランスジェンターのお話です。
プロローグは必ず回想から始まるという、緻密に計算された構成が目を引きます。
実はこのしょっぱなの1ページ目が3巻のラストに繋がると言うのがワクワク感を演出します。
この巻はJの生い立ちからギムナジウムへの編入、そしてニューヨークへの出奔までのお話です。
気がついたら男の人が好きで、男性に愛される銀幕スターのマリリン・モンローのマネをし、モンローになりたかったJは、自分を愛してくれる父親を慰めるのに、父親と寝たという事実。
逆上した母親が父を殺し、精神を病んだことがトラウマになり、全ての罪は自分にあるのだと、その感覚が後年ずっとJにつきまとうことになるのですね。
養子先で入った全寮制の学校でのポールとの出会い。
お堅いカタブツのポールと素行はよろしくないJ。
Jは愛情の表現の仕方が、過去養ってきた”女”としての方法しかしらないからポールを惑わせてしまうんです。
夜になると学校を抜け出し、ショーの舞台で唄うJ。
そこで後に一緒にNYに行くことになるアーサーとの出会いがあるのですが。
余談ですが、このアーサーが「同級生」のハラセンのイメージモデルだそうです(?)
言われてみると・・・
この巻では、ポールに絡むモーガンが登場しますが、後々重要な役割が。
ここではポールも重要な主要人物ですが、あくまでもJの物語のまだ一部。
”オカマ”←自分で自分を卑下した呼び方 の半生物語。
3年に渡る連載なので、絵が変化していく様も見ものです。
BLではないけれど、舞台がギムナジウムだけに、その要素も匂わせながら、でも彼等の生きざまが分かれてまた合流していくのか、エンタメ性は高く、本当に69年代の映画を見ている気分に誘われます。
総ての始まりは10歳のころ、マリリン・モンローを見てからだった
中村明日美子さんの代表作ともいえるこの作品はずっと気になっていたのですが連載2回目ということですこし躊躇がありました
ですが、すべてを読み終わり、Jの総てを知ったとき、これはお勧めしたいと思いました。
私はどちらかというと中村明日美子さんの絵がスキなので絵関してはなんの抵抗もなかったし、時代背景が今ではないので逆に明日美子さんの絵があっている感じがしました。
時は1950年代。10歳のとき初めてマリリン・モンローをみてJは彼女のようになりたかった。
このとき、時代的に性同一性障害なんて言葉はなじみがなかったのだろう
だからこそ、孤児院でホモと呼ばれるJが、アーサーにマリリンじゃない、トニーとジャックのほうだといわれたJが辛かった。
そしてポールとの恋いも若さゆえと、Jの人生、世間そのすべてが背景に浮かんできてとても切なかった。
たしかに、非BLであり、痛いシーンがあるし(2巻で)世間のJの扱いがひどく、萌はもとめられない。
だけど、たくさんの人にJの総てを知って欲しい。
3巻のあとがきで明日美子さんが語っているように愛し愛され、傷つけ傷つき、大切なものが分かってようやっと人は強くなる
人の強さを今現代で感じて欲しいのでお勧めさせていただきます。