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表題作Jの総て 2

クラブのオーナー・アーサー
クラブの女装歌手・J

その他の収録作品

  • リボンタイ

あらすじ

ギムナジウムを飛び出し、ニューヨークへ来たJは、女装の歌手として夜の街に身を投じる。詩人を目指すリタとの出会い、クラブのオーナー・アーサーとの関係…、Jにまつわる総てがいま語られ始める―

作品情報

作品名
Jの総て 2
著者
中村明日美子 
媒体
漫画(コミック)
出版社
太田出版
レーベル
F×COMICS【非BL】
シリーズ
Jの総て
発売日
ISBN
9784872339505
4.6

(31)

(25)

萌々

(2)

(3)

中立

(0)

趣味じゃない

(1)

レビュー数
7
得点
142
評価数
31
平均
4.6 / 5
神率
80.6%

レビュー投稿数7

物語中、もっともBLでない部分

2巻はニューヨークに出たJがクラブの女装歌手として働いている間のストーリーである。主人公はあくまでもJであるが、物語の視点はJから後述するリタに移行し、リタの現在から過去を振り返り、最後に現在に戻る形で構成されている。

ギムナジウム時代Jと互いに想いあっていたポールは2巻では『思い出』としてしか登場しない。クラブのオーナーであるアーサーとの関係も恋人というにはどこかビジネスライクであり、仕方のない事情があるとしても『商品として』危険な仕事もさせられる。Jが大物政治家に買われる場面は非常に恐ろしく痛々しい。

ニューヨーク時代のJと最も交流があるのは、道端に倒れているところをJに拾われた詩人のリタ。少年のような風貌の年上の女性リタは、女装をし女性らしい色気を漂わせる少年Jという、自分とは何もかも正反対である存在の理解に苦しむが、やがてJに惹かれるようになる。

一度の過ちがあったあとJはリタとアーサーの元を離れ、行方が知れない(本編最終ページにヒントはあるが)。Jと別れたあとのリタに何があったかも2巻では語られない。全3巻の中央に位置する巻として非常に優れた構成である。

巻末のオマケ『リボンタイ』は、ギムナジウム時代のJとポールを台詞なしで見せるが、4ページの小編ながら本編のヘビーさが中和されるような幸せな作品である。

2

リタが良い

二巻目はリアっていう女性を中心に語られる話です。
色々ボーイズラブを読むようになってから感じるようになったのが、「女性を重要人物として登場させると、つまんなくなる。要らないよもう」って気持ちと「でも登場させないと不自然、不自然もヤダ」という気持ち。
ジレンマ。
でもこの漫画ではまったくそれを感じなかった。これはなにげにスゴイことだと思う。

1

所詮、女性にはなれないJ

NYに出てきて、そこそこのクラブ歌手としての成功をしているJ。
この巻は、”女性” というものを一番全面出しのテーマにしてきていると思います。
そして、その所詮女ではないという真実を自覚しているつもりでも突きつけられ、そして打ちのめされる巻なのでもあります。

今回は重要な登場人物としてJが拾ったリタという女性が登場します。
Jの後々にも影響してくる人物です。
リタはJを好きになるのですが、自分的にリタは百合傾向のある女性なのか?と最初勘違いしました。
でもJは男が好きだから、自分は絶対に振り向いてもらえない、だからJと寝ているアーサーを通してJを知ろうと、アーサーと寝る。
それがJを打ちのめすのです。
どんなにあがいても、Jは女性になれない。
アーサーの為に身体を売ってまで仕事をしているのに、それが報われなかった時のショック。
あくまでも女性になりたいJの気持ちがヒシヒシとつたわってくるのです。

女性器の表現や、悲惨な強姦場面なども挿入されていますので、苦手な方は要注意です。
まだこの時代、ゲイという言葉も一般的でなく、蔑まれていた時代というのもJの試練の時代ですね。どこまでも切ない、、

「紳士は金髪がお好き」のJはとても魅力的だった。
エミリオプッチ風のワンピースなど、Jのコスチュームに目が惹かれる。

1

絡み合うのに、結ばれない。

男と男と女。
Jとアーサーとリタ。
回数や理由はどうあれ、それぞれが体の関係を結ぶ。
だけどそのどれも結ばれることはなく。
体を重ねることが色々な苦しさを増長させていくみたいだ。

アーサー×J、アーサー×リタ、J×リタ。
うまくやっていたはずなのに。
ドロドロに入り乱れてしまった中、
ポールとの思い出は甘く懐かしくて、
それがまた現実の苦しさを大きく見せてくるみたいだ。
制服を見て思い出す初恋。
ポールの言葉に傷付いて、学校を・寮を飛び出したけれど、
父親との事件を越えた後、初めて自ら好きだと思って
キスをして体を重ねた相手。
傷ついた、傷ついたけれど忘れられないし
忘れたくないんだろうと思った。
だって、捨ててもよかったはずの制服を、
Jは捨て切れていないし、捨てる気もなかったんだろう。
ガズマンの酷い仕打ちで朦朧とする意識の中、
無意識にポールの名前を呼ぶJが痛々しい。

巻末の『リボンタイ』は、
Jの心の中にあるキラキラした思い出なんだろうな。
ふざけ合ってキスをして怒られて。
じゃれあうような二人の姿は本編で
クローズアップされていはいない日常の風景。
そういうのをJは憧れの幸せと思っているんだと思う。
そしてこの幸せだった日常の風景が、
他でもないこの巻におさめられていることに
私はとても意味を感じてしまうし、
余計に切なくなる。
セリフなど何もないのに、胸が苦しくなる。


全3巻の中で一番ヘビーな印象がある巻です。
近親相姦のフラッシュバックや、
性同一性障害への差別虐待、強姦の描写を含むので、
簡単に人に勧めきれない。
性犯罪や差別的表現が苦手な方は特に
嫌悪感でいっぱいになってしまうかもしれない。
女性とのセックスも生々しく描かれるので、
BLのイメージは薄く、暗く、ドロドロしている。
でも、それでも目をそらしてはいけないような気になる。
苦しみながらも生き続ける一人の人間の半生を
見届けたいと思う。

モンローがひとつのキーになり、
時に回想し、時間のバックやジャンプを繰り返しながら進む物語は、
本当に映画を見ているような気分にさせてくれる。


19歳。
たった19年の人生の中、
すでにたくさんの諦めと覚悟と思い出とを背負って生きてる。
Jに、幸せになってほしいと切に願ってしまう。

1

女よりも女らしく、男ではないJ

あたしは男じゃないもん


アーサーに連れてこられNYでクラブ歌手を始めたJのお話。
歳を重ねるに連れ、Jはますます女性らしく美しくなっていっていると思う。
それは、2巻で登場するJと正反対の女性、リタよりも。

制服を見つけて思い出すポールとのことは今のJの生活とはほど遠くてたった1ページの思い出はそれだけで辛かった。

そして、ガズマンのJに対する扱いは1巻での世間というものよりも一層ひどく、性同一性というものを強く否定するもので、性的な行為で示すJの立場は人間の否定にも感じるほど凄まじかった。
らりった後でポールの名を呼ぶJの姿に私は涙腺崩壊!

また、リタがJを好きになればなるほどJは自分が男であることを否定して、でも女でもなくて、自分自身をオカマとさげすむ姿はその時の一番のJの強がりだったのだと思った。

リタと関係も、オカマと自らいうJの強がりに思えた。
そして、Jが大人になることでもちろん時代も動くわけで、Jにとっての強さの元が消えてしまったとこで3巻につづく・・・

涙なくして読めない1冊でした。
そして3巻がとても気になるラスト。。。
これは痛いの覚悟だけれども、やっぱり読んで欲しい!

0

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