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表題作運命ではありません

門脇楡,29歳,澄と同社のAI開発責任者
御影澄,23歳,マッチングアプリ運営会社広報

その他の収録作品

  • それでも、運命ではありません
  • おりこうではありません(あとがきに代えて)

あらすじ

恋愛経験ゼロの澄がマッチングアプリに“運命の人と”診断されたのは、
先輩社員の楡(男)だった。
半信半疑で、ゆるいおつきあいをするうち…?

作品情報

作品名
運命ではありません
著者
一穂ミチ 
イラスト
梨とりこ 
媒体
小説
出版社
新書館
レーベル
ディアプラス文庫
発売日
ISBN
9784403524509
3.7

(120)

(28)

萌々

(53)

(23)

中立

(8)

趣味じゃない

(8)

レビュー数
17
得点
429
評価数
120
平均
3.7 / 5
神率
23.3%

レビュー投稿数17

マッチングアプリ開発担当者×マッチングアプリの広報

IAの判断は間違ってないけれど、そうじゃない時もある。一長一短だと分かりつつある今の世界にマッチしているテーマでまず惹き付けられます。
マッチングサービスだけでなく、VRでイベントに参加という話題もありメタバースを感じさせて2018年発売の本作ですが、2023年の今読んでも違和感がありません。
主人公たちの会社が多様性を重んじる近年の感覚にフィットしたサービス仕様になっていて好感です。

初めに受けが攻めに上手く断わる言葉が出ない流れも、事前に恋愛経験がないと言っていること、攻め以外の受けと近しい人物との絡みからある程度の性格がわかります。かつ受けの好きな恋愛漫画を絡めて描写されていて受けの嗜好と思考がダイレクトに分かって感情移入していきました。
受けと妹と幼馴染みを三者三様の表現で人となりと3人の関係性がなんとなくわかる描写もサラッと読み飛ばしてしまえるのにスパイスのように後からソコが効いてくる構成も本当に好きです。
受けが自分の好きな恋愛漫画の妄想入れてくる思考も読んでいて楽しくて口角が上がっちゃいます!

作者様の一つ一つの文章、例え、表現の仕方が、グッと胸に来て自分の好みだと痛感しながら読み進めました。ピックアップしたい文や台詞が沢山あります。
その1つが、幼馴染みしか言えない「愛ならいいけど、同情すんな。愛より情の方がたち悪い時があるんだから」という台詞は真理だな、と思います。最近同情でとんでもない事になったエッセイを何作か読んでいたのでそれを思い出して身につまされるような気持ちでした。
『自分が“見せている”以上のものが探られてしまっているシステムが不気味』
「ゲイとヘテロの間はグラデーション」
「自分たちだって好きな女と結婚したはずなのに、年月が経ったらそれを平気で否定するやつは最低だと思う。だけど空気を読んでネタでも嫁の愚痴とか言わなきゃならなくて、俺もいつか人前で悪く言うようになるのかって思ったら、怖くなった」
「運命なんて〜傷つけていいほど大層なもんじゃない」など自分にビビッとくるフレーズが沢山あって考えさせられました。
丁寧で、例えなどが的確で読み手に取りこぼしなく伝えたいことが伝わってきて完璧な追体験が出来る気がします。
読みながら、あ!ここ好きなポイントだ!という所があって、攻めはマッチングIA開発に携わっているのでマッチング情報を見て受けにアプローチするけど、受けはIAが相性が本当に運命レベルって算出しているならそもそもIAに頼る必要がないから情報見ないという2人の対比に掴まれました。

社長とのご飯で、受けが恋愛漫画好きで恋愛経験無い故にどう『懐疑的』なのかを鋭く切り込まれる流れがスムーズで圧巻でした。腑に落ちました。この、なぜ懐疑的かのカードが切られるタイミングが完璧でした。確かに、初対面の人に運命の相手だから信じろ!と言われて信じきれないというごく普通の思考より一段深く掘り下げる鮮やかさ…凄いです。
社長のマッチングサービスに対する理念が良いです。でも宣伝として使えないというのが本当に現実でもそうなのかもと、ありそうに感じて色々考えが巡りました。もっと時代が追いつけば『結婚』に重きを置かない国になるのかなって。『自分以外の誰かと生きていく道が結婚以外にある』社会をこの先見てみたいです。それを1つ提示してくれるBLジャンルと、本作、だから好きです。

『雨は降らず、だから消えもしない』の一文で今まで攻めを雲男と表現していたことになぞらえて未練や複雑な気持ちを表現するのにピッタリで痺れました。

妹と幼馴染、本当に全ての登場人物に意味があって無駄がありません。受けに関わる人物なので当然受けの関係性と対比できる2人なのですが、家族共々こういう風に関係性を物語に絡ませてくるのかと唸りました。
さらに、意外な関係性も判明して、ある場所で家族集合で話がまとまって…これぞ『話がまとまる』だなと感じてその纏まりの良さ、手腕に脱帽します。
感想・レビューを読むのが好きで基本ネタバレは気にならない私は、知った情報を自分の目で確かめようという気持ちで作品に向き合うのですが。
こうして点と点が繋がるワクワク感を得ると、先を知らずに読む良さを再度教えてもらったような気がします。
だんだんとタイトルを回収していくのもすごく面白かったです。
運命マッチングに懐疑的な受けと、そのマッチングIAに自信のある開発担当の攻め、というだけじゃない一捻りされた中でタイトル通りの展開を繰り広げて、その捻りの余波を物語に浸透させる『運命から遠ざかる』流れが、後半加速度的に面白くて夢中で駆け抜けました。

運命ではないタイトル通りの本編と、運命だった?縁が繋がっていた続編。こういう伏線回収好きです。
本編後は温度の低そうな攻め視点でのお話が読みたいと思っていたのですが、受け視点で見るからこその見え方があり、そのフィルターで見る攻めの変化を楽しむのも乙でした。

マッチングやAIが絡むのでその是非を問う流れがあるのかな?と予想したのですが違いました。それはそれとして、2人はどうするのかというお話で、でもそれでこそタイトル通りの作品で楽しく読めました。

0

運命なのか否か

明け透けな感想を述べてしまうと、かっこよくて優秀なんだけど人の心の機微がわからない天才肌の男が出てくるお話、けっこう好きだ。実生活では全く関わり合いになりたくないタイプだから、物語の中でこっそりそのかっこよさと変わり者っぷりを楽しみたいのかも。そして、大体において全く悪びらないそんな男が人との出会いによってちょっと痛い目にあったり、少し改心したりする様を見ると心が晴れる。主人公が少女漫画が好きで少女漫画のセリフやシチュエーションが本編の進行に取り入れられているのが楽しかった。

0

ノンケが落ちる恋

あらすじは、上記を読んでください。

ノンケの受がひょんな事から攻との出会い、一緒に居なければならない状態になる。
そんな話の展開が好きで、その受がまんざらでもなく惹かれていくのを見るのも大好きな私からしたら、神評価作品です。
昼は一緒に手作りお弁当を食べ、休みの日にデート。なんて事ないのに、警戒していたはずの澄の心が期待に変わっていく流れが良いです!そして、意外に早かったキス。
ここから、澄の恋心が加速。
でも、楡のお母さんの話はちょっと意外でした。この展開で少し気持ちが冷めてしまいましたが、後半楡が普通の人間らしくなってからの澄とのHは、中々濃ゆくて良かったです。
マッチングが楡の裏工作なのは、何だか可愛く感じました。

2

ドラマチックでもないけれど

このページで、登場人物の年齢を改めて見て「え、こんなに年齢差あったっけ?!」って驚いちゃいました。もし、本文読んでる間に再確認したら、現実にはあり得てほしくない楡の年齢に不相応な振る舞いと澄の許容量の広さに疲れて最後まで読めなかったかもしれない(笑)
それほど仕事没頭型ダメ男・楡とロマンチスト流され系広告マン・澄のお話です!


作者買いで買ったわけではないので、いくつか読んだ印象ですが、一穂先生はストーリーというか、キャラクターの背景をしっかり描かれるので、一つ一つの発言や行動に説得力や納得度が高いな、とこの作品で改めて感じました。
そこに今回、楡という実態の掴めないキャラクターが出てきたので、ハラハラ感とか含めて澄の気持ちも追って共感しやすかったです。


そんなリアリティもあってか、この2人の恋愛ってドラマチックではなくて、一気に読んで恋模様を追う!って言うより、休み休み、今どんなんかな、って伺いながら読み進める感じでした。だから読後の達成感とかはあまりないです。逆に、通勤中とか、ひょっとしたらそこに澄がいそうな、そんな日常に溶け込む形で残りました。

評価について、感覚的に言うと、神や萌萌の作品って、観光地を訪れて「うわもうめっちゃよかったまたここ絶対来よう!」って絶大的なインパクトに対する高めなテンションなんですけど、この作品の場合、近所の「あそこいいよね、月二回は行っちゃう」っていう安心感や包容力に近いです。
なので、萌評価にしました。


そういえば、個人的には「梨とりこ先生が挿絵の一穂先生の作品」というのが購入理由だったのですが、作風に繊細なイラストがとても合っていて、特に独特の浮遊感を纏ったような楡を見て、一冊の作品として買って間違いなかった、と思いました。とはいえ、挿絵はかなり少なめです。そういう意味では残念だったなあ。


今日もきっと楡に振り回されながら幸せな澄がいることを願います。日常の目の端で存在しそうな2人を応援する人が増えますように。

1

運命という名の

AIが選ぶマッチングサービス。
まさに運命レベルの結果あらわれたのは男!?
いや、無理ですから!!!
ちょっとずつ絆されていつの間にか。

結果、意図的に生み出された運命だったとしても、
ある意味結果ちゃんと成立したのであればそれは運命と呼んでもいいのではないかとおもうのよね。
そもそも女の子とすら・・というのは置いといても
ノンケで男となんてカケラも想定していなかったのにもかかわらず
出会って好きになるって割と運命的なところだとおもう。

せっかっくだからっておつきあい(仮)はじめちゃう受も対外だけどなw

二人の掛け合い含め楽しいお話でした。
もう少し先の二人も見てみたい。

1

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