SS付き電子限定版
魑魅魍魎が跋扈する昭和初期の平安京で、美貌の陰陽師が、ヒトとオニの愛欲の呪術に囚われる――!?
沙野風結子先生,初読みです。
社長とか王族とか上流階級系好きなので,純和風上流階級ということで読んでみました。化け物・陰陽術アリというファンタジー要素がちょっと不安でしたが、ぜーんぜん大丈夫でしたね、むしろめちゃくちゃよかった!!!!
物の怪が蔓延る平安時代の都で,陰陽師として働く受け様・桔晶とその部下(幼馴染で同い年)の攻め様・征景のお話です。
物の怪がただの化け物ならまだやりやすいでしょうが、ヒトクイオニという人間が変化してできてしまう化け物がいるのが厄介ですね。まあこの物語には必須の設定ですけども!!!
征景と桔晶が”護って”いる主上(おそらく天皇)に,化け物としても思い人としても求められまくっちゃうっていうところがですね、私の敬遠ジャンル「三角関係」になってくると思うのですが、なんかそんなところは気にならず読み入ってしまいましたね。征景と主上に面識がほぼないからかな……
ヒトクイオニが暴れる事件に振り回されながら物語が進むわけなんですが、桔晶がいろいろすごすぎて(そして不憫で)とてもとてもよかったです(おい)
桔晶自身としては、主上に抱かれている部分がだいぶ精神にキていたようですが、いやいや自分の分身が食い割かれて絶命も結構なもんだよ……13年も……
で!その桔晶が”護って”いた主上は、意思の部分では桔晶にすがって愛して求めてやまない感じになってんのがね、いいんですよ(いい しか感想ないんか)
これでクズだったらまだ敵視できるのにさ~~~~~めちゃめちゃ素晴らしい精神の為政者だからね……だれか、だれか主上のこと救ってよ……。こ当て馬とかライバルどころか純粋な”不憫”だよ泣
あとエッもよかった!!袂がはだけて,裾を割って……洋服のエッ描写とは違って、ベルトとチャック外さんくても裾をガッってしたら”ある”もんね、”それら”が。和服エッもエッなのですが、髪!!髪が隠さなければならないエッなもの風に描かれていたのもよかった!!そうだよね、長髪が垂れてるのエッだよね(実際挿絵スゲかったしな……)
いや~、生死が絡んでる恋愛描写は重くて楽しいですね……
舞台が平安時代ですので、現代モノばっか読んでる私にはハードル高いかなと思ったのですが描写がすごく読みやすくて、一気に読んでしまいました!!
シリアス妖艶な雰囲気、よかったです泣
平安京の都に朝廷と陰陽寮があった時代が背景。
陰陽師の家に生まれた美貌の桔晶が、鬼化した想い人を救おうと頑張る物語。
陰陽寮に務める、美貌の陰陽頭・桔晶の一族が、九匹の鬼の霊を帝に入れて、帝は統治する力を得ていた。
幼馴染みの陰陽師・征景は、桔晶と志が異なり、桔晶と疎遠になっていく。
征景は陰陽の学問で得た知識を貧しい人に使いたい。
帝に桔晶が式神を贄に具している最中を征景に知られてしまう。
征景は生まれた郷、南総に鬼退治に戻る。
都には、本体を残して帝の対応を行い、
征景を探しに南総に分魂をして向うことにした桔晶。
でも征景を見つけた時、征景は征景ではなくなっていた。
桔晶は、征景を征景のまま助けようとする
もし討つ必要があるならば、自分の手で討とうと決心する。
この物語の後半の、
「人喰い鬼も家族を食い、人だった時の記憶を失っていた。」と、いう展開。
・・・人を喰う鬼の悲しい話で連想したのは、鬼滅の刃に登場する人喰い鬼。
鬼になって、我を失って鬼として覚醒した時、一番最初に食うのは家族。
鬼化したら、救うには抹消してやるしかない。
・・発売日 2018/06/27 なら、鬼滅の原案は、この物語だったのか・・??
などなど、妄想しながら楽しく読みました。
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南総の鬼: 南総里見八犬伝
【 毒婦「船虫」と「鬼来迎」】など、どうして南総に妖怪伝が多いのか?
・・・平安時代まで、伊豆大島や安房(千葉)地域は流刑地だったことや、
謀反の嫌疑をかけられた里見家興亡の歴史等があって、
為政者が「触れてほしくないものがいっぱいある南総を遠ざける為に(鬼が居る)」としたみたいです。
平安の御世に跋扈する妖を退治する陰陽師 対 人を喰う鬼
父の跡を継ぎ陰陽頭として帝と都を守る組織の長官職を勤める桔晶と
能力の高さを買われて陰陽寮の一員となった征景が主役の物語です。
桔晶は帝の身に巣食う人外の妖力を抑えるために、自分とそっくりのヒトガタを帝に捧げ凌辱され喰われる感覚に苦しみ、征景はヒトガタとは知らず夜な夜な帝と睦み合う桔晶を想い身を焦がすというすれ違いがじれったく悶えました。
陰陽寮のメンバーが魅力的です。
中でも陽気で可愛いツインズ 日南&月代が愛らしく癒されます。
葛西リカコさんのイラストが雅です。
束帯と烏帽子の凛とした立ち姿の美しいこと。
世界観がしっかりと練られていてテンポも良いのでサクサクと読むことが出来ました。作者の言葉選びにも魅力を感じます。
攻め様受け様共に陰陽師を生業にしておりますが生まれは大きく異なります。片や都より離れた地で親を亡くし都にやってきた攻めの征景。片や陰陽師の大家の産まれにして帝の寵愛を受ける受けの桔晶。対極の位置で始まるも互いを認め合い何時しか相手を想うようになります。しかし互いに抱えているものがある分、その想いに蓋をしてしまい事あるごとにその想いはすれ違う。ああ滾る。読んでいて切なくなりました。
ただ欲をいうと終盤が駆け足で過ぎたように感じてしまったので帝とのやりとりをもう少し描いて欲しかったです。
しかし桔晶が自らの札で創ったヒトガタとはいえ子どもの頃よりその身を帝に捧げ続けるシチュエーションには大変に萌えました。
平安時代の陰陽師ものですが、非常に文章が美しく、物語も練りこまれ、驚きもある珠玉の作品でした。人外(鬼)の話も艶要素(BL)もお話の中に流れるように組みこまれて、一片の綻びもなく美しくまとまっています。
ヒトガタ(人形)を活かしたストーリー構成も絶妙で、新鮮に感じました。幼馴染同志の15年越しで到達した遅い春にもジーンときました。長年お互い秘密を抱えていて、素直になれなかった二人の心中が切なかったです。全編に渡って様々な登場人物から、愛するがゆえの物哀しさが漂っていました。
葛西先生のイラストも登場人物や世界観を盛り上げてくれる素敵なイラストでした。それにしてもベテランの作家さんは、どんなジャンルもお手の物なのには、ただただ感心します。平安時代ものは好きなジャンルだっただけに、完成度の高いBL小説を読めて感激もひとしおでした。歴史ものBLがもっと増えてくれると嬉しいな。