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表題作王の初恋と運命の黒翼

天青,27歳,雲英の渡りの群れを指揮する隊長
雲英,16歳,アネハヅル種の「氷晶国」の若き王

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

アネハヅルの国の一つ〈氷晶国〉の若き王・雲英は、ある目的のため身分を隠し、ヒマラヤを越える“渡り”に生まれて初めて参加した。群れを指揮する編隊長は、アネハヅルには珍しい漆黒の髪と翼を持つ天青。自分は優秀だと信じていた雲英に対し、天青は「チビ」「飛ぶのが下手」と容赦がない。つい反発してしまう雲英だったが、野営や集団生活に慣れない自分をいつも当然のように助けてくれるのは天青で――。

作品情報

作品名
王の初恋と運命の黒翼
著者
紀里雨すず 
イラスト
絵歩 
媒体
小説
出版社
心交社
レーベル
ショコラ文庫
発売日
ISBN
9784778126001
4.2

(30)

(15)

萌々

(8)

(6)

中立

(1)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
6
得点
126
評価数
30
平均
4.2 / 5
神率
50%

レビュー投稿数6

ロマンとキュンと

いやあ、久しぶりに読後じんわりきてます。
凄く良かった…!
今月の新刊が待機してるのに、すぐに手を出せるかな。

間違いなく神です。
なんですが、一点だけ。
あまりのブツ切りendで驚愕してしまった!
えっ、ええーー!と何度もページめくって確認しちゃいましたよ。

悲しい…せめてあと数ページ…いや1ページでもいいから読ませてくれよと泣きそうになりました。
でも、間違いなく神なんです!

例にもれず他の姐さん方と一緒で、アネハヅルを調べまして、動画も見て、ロマンを感じ、鳥に敬意を表したくなったのは初めてです。
凄いなあ。人間の私よりよほど凄いなあ。
もう生き様がカッコ良すぎて。

空を飛べるから生まれ変わったら鳥になりたい、なんて思ったことはありますが、ヒマラヤを越える一員になって空を飛んでみたいなぁと今は思います。

そして天青と雲英の恋模様がこれまたとても良かったです。
雲英がゆっくり恋を自覚して、その想いがゆっくり育って、だけど自身の立場と目的故に伝えられない。
だけどあと少しだけそばにいたい。
雲英の健気さ、頑張ってしまう姿にキュンキュンきました。
また、問題解決後にすぐにくっつかないとこもいい!
ラストまで切なくキュンキュンさせてもらえて、あ〜〜やっぱり後日談欲しいよ先生ー!!

6

ピュアな恋心にクゥ~ッとなりました

めっちゃくちゃ面白かった!
このお話を読んだ方の幾人かは『アネハヅル』の画像検索をしたと思うのですが、私もやりました(笑)。
綺麗な鶴ですねぇ……これが群を成してヒマラヤを飛ぶのかぁ。
その姿を想像して読み終わった後も随分楽しみました。

鳥人世界BLです。
ヒマラヤを挟んで北と南にアネハヅルの国があります。北の国に住んでいる人達は蓄えがある裕福な家族を除いて、冬が訪れる前に南の国に飛来します。そんな北の小国で、7歳の時に父母を流行病で亡くしたため王になった雲英が主人公。

雲英は王様ではあるのですが、国を乗っ取り悪政を行なっている執政の右大臣に軟禁されて育ちました。そして成人を目の前にして、南の軍事大国である頑火国から「直接挨拶に来なければ右大臣からの行政権の委譲を許可しない」と言われ、諸事情で各国の渡りの隊列に入れない為に作られた『ヒマラヤ越え』のグループに身分を隠したまま入って南の国を目指します。

雲英の描写がとっても上手いのです。
帝王学に始まって各種の学問を身につけてはいるけれど人と接してこなかった雲英はとんでもない箱入りの世間知らずなのですが、自国の民を思う気持ちは人一倍強く持っています。
それと同時に16歳の子どもでもあるんです。
外の世界を知らない雲英が初めて自分の力で行なう『大冒険』に心を躍らせる様は読んでいて微笑ましいんですよね。いつの間にか彼を応援しちゃう。

そんな雲英を「チビ」呼ばわりするのが渡り守の隊長である天青。
最初はその無礼さに反発する雲英ですが、飛び方を知らないため彼に特訓を受け、また、危ない所を何度か助けられているうちに、天青が実は隊を守るために力をつくしていることに気づきます。

このね、雲英の中に徐々に育っていく恋心がとっても良いんですよ!
雲英の父母は渡りの最中に出会い恋に落ちています。
雲英は『恋』というものを、出会った瞬間に落ちてしまうものだと考えていたようですが、この初恋は『それとは気付かないうちに心の中で芽生えて、いつのまにか小さな花を咲かせて』いる様な恋なんです。
うううっ、いい!この感じ!

しかし、雲英の人生は自国の民を救うためにあります。
雲英自身もそう決めている。
だから彼は自分の中に芽生えたその小さな花を諦めようとします。

また、天青も謎が多い。
雲英を憎からず思っているのは言動から明らかですが、隠している事がある。
また、雲英に無理難題を突きつけて自国まで呼び出す頑火国の思惑は?
それらの謎が絡み合うのと同時に、雲英がどれだけの決意を持ってこの度に挑んだのかも徐々に明らかとなり、波瀾万丈の後半はとってもスリリング。

私、以前から参考にしているブログを読んでこの本を知りました。
「いやー、お薦めに従って読んで良かった」と思うものですから、ここでの評価が思ったより低いのがちょっと残念なんですね。
雲英の幼くピュアな恋の行く末はここでは伏せておきますので、ロマンティック好きの姐さま方にぜひご一読いただき、この純愛に「クゥ~ッ」となって頂きたいと思うのであります。

5

壮大な渡り鳥のヒマラヤ越え


鳥人が世界の頂点にいるファンタジーです。

<あらすじ>
暑さの苦手なアネハヅルは、ヒマラヤを挟んで5つの国で構成される冬の国と一つに統一された夏の国の間を季節ごとにヒマラヤを越え「渡り」をしながら北と南を行き来しています。
冬の国の一つ氷晶国の若き王・雲英(受け)は幼くして両親を亡くし国王になった後、右大臣の策略により幽閉生活を余儀なくされていました。
17歳の成人を前に右大臣から政権を奪還すべく、大国である夏の国の王に謁見するため初めてのヒマラヤ越えをすることになります。
初めての群れでの生活に慣れない雲英は飛ぶことも下手でしたが、隊長の天青(攻め)によって訓練を受け、反発しながらもなんとか群れについて旅を続けます。


ヒマラヤ越えをする情景が目に浮かぶスケールの大きいお話でした。
自分も雲英と一緒にヒマラヤ越えしている気分になります。

初め、雲英は働いている人をみてるだけで自分も何かしようと微塵も思わないところは、幽閉されてきたとはいえずっと傅かれる生活をしていた箱入りで甘ちゃんでしたが、天青に指摘された後は自分が気が付かなかったことを恥ずかしく思い自戒できたところは好感が持てます。
長い幽閉生活のなかでも民を想う心を失うことなく、国王としての責務を果たそうとする強さも持っていました。
それでも、天青にいろいろできないことを指摘されると、大切にされすぎて皆を心配させないようにしてきたせいで強がる癖がついてしまった雲英は素直になれません。
ついついかわいくないことをいってしまう雲英ですが、天青はなんだかんだといいながらも飛ぶ練習に付き合ってくれ、雲英はだんだん天青に惹かれていくのです。
どんなに惹かれても自分には国王としての使命があり、天青に伝えることはできません。せめて天青が幸せになりますようにと祈る雲英が健気で切ないです。


後半は怒涛のように話が展開します。
南の国に着いてからは次々の判明する事実に、何度もひっくり返る状況の変化にびっくりしすぎて置いていかれそうになりながら一生懸命ついていく感じで読み進めました。
どんな状況でも動じることのなく受け入れ、本質を見ることことがてきる雲英は王たる器の持ち主だったと思いました。


ただ、二人の恋という部分には切ない部分が多く、甘さはほとんどないです。
甘いお話が好きな私にはちょっと物足りない。
天青に関しては、雲英視点だけだったのもありますが、何を考えているかよくわからない人物でした。
群れの隊長として誰よりも仕事をこなし、休むことなく群れに気を配り、隊の皆から慕われている隊長ですが、何故か最初から雲英に対しては態度が悪いのです。
初めての声掛けでは「チビ」と呼んでいたし、雲英が反感を持つのも仕方ないと思いました。
雲英のことをよく観察していて危ないところを助けてくれたりしていたので、気があるからだと思っていましたが、いろいろ判明してからは実際のところどうだったのかよくわかりません。
結局、雲英は好きだけど雲英の立場上諦めないといけないと初めからわかっていて、奪いにいくのではなく最後までそれを貫き通すのは凄いことだと思うのですが、なんか寂しい。雲英ばかりが好きな感じがしてちょっと残念。
せめて、天青の気持ちをもう少し詳らかにしてほしかった。

話自体はとてもよくできていて、最後までいろんな意味でどうなるのかわからず
ハラハラドキドキしながら読みました。
ただ恋愛としての萌えはあまり感じなかったので「萌」で。

4

秘めた決意で挑むヒマヤラ越え

今回は国に属さない渡り隊の隊長と
北の小国・氷晶国の若き王のお話です。

ある目的で初めて渡りをする受様が
旅の中で成長し、恋を掴み取るまで

「渡り」をする習性を持ち
ヒマラヤ山脈を越える渡りをする
アネハヅル種はシベリアから
アフリカ北東部までの中央アジア一帯を
生息地としています。

ヒマラヤ山脈を境とする
5つの「冬の国」と5つの「夏の国」は
長年、互いの国民の行き来を協力し合い
平和を保ってきましたが

15年前に「夏の国」の1つ頑火国を
武力で制した蛇紋王が王位に就くと
次々と他の4国を攻め滅ぼして
南国全体を武力で支配しています。

受様は冬の国の1つ「氷晶国」の
第一王子として生まれますが
7才の時に国王夫妻が流行病で亡くなり
新王として即位することになります。

しかし、野心家の大叔父右大臣が
摂政に就いた左大臣を失脚させて
受様を軟禁、国政を我が物と化します。

それによって豊かだった国は
貧窮し民の暮らしも貧窮していきますが
受様が17才で成人し行政権を取り戻す日を
国民皆が希望としていていたのです。

ところが様が成人を半年後に控えたある日、
「冬の国」をも属国扱する蛇紋王は
受様が直接挨拶に出向しなければ
右大臣からの行政権の委譲を許さないとの
命令書を受様の元に送りつけ

受様は子供の頃から仕えるじいを共に
ヒマラヤ山脈を越えて頑火国へと
初めての「渡り」をする決意をします。

王としての身分を隠しての旅のため
受様とじいはフリーの渡り隊に加わります。

その渡り隊の隊長こそが今回の攻様です♪

攻様は南の国の出身ですが
戦災孤児でありながらも
渡り守の養成学校を首席で卒業、
その後はフリーで渡り隊を組織している
孤高のエリートでした。

受様は攻様に
渡りの飛行術を知らず体力もなくて
本当に渡りができるのか
と訝しまれてしまいます。

確かに軟禁された生活とは言え
侍従たちに大切に育てられた受様には
実際の自分の技術と山脈超えの困難が
見えていませんでしたが

受様は自分を待つ国民のためにも
ヒマラヤ越えを諦めるつもりはありません。

受様の旅は一歩目から前途多難、
果たして受様は無事に渡りができるのか!?

雑誌社投稿にて「期待賞」受賞し
WEB掲載されたお話を加筆修正した本作は
ヒマラヤ山脈超えという壮大な旅が
メイン舞台のファンタジーです。

前作も思いましたが
とても独特な世界観をもった作家さんですね。

「鶴」の擬人化って初めてお目にかかり
私的にはチャレンジャーな気分で
手にした1冊でした。

受様は監禁された生活の中でも
民を守る王族としての使命を忘れず
夏の国を平定している蛇紋王の思惑も
判っていながら頑火国を目指します。

対する攻様は
家族を殺されて孤独の中で成長し
まわりとなれ合わなう事を良しとせず
しいての孤独を貫いています。

当初は反発し合う2人ですが
隊長として高い実力を示す攻様の姿と
自らの進むべき道に妥協しない受様姿に
お互いの蟠りは消えていき

受様は攻様へと急速に惹かれていくのですが
渡りの先で受様を待ち構える未来には
攻様と共にいる選択肢はありません。

攻様といられる時間を思い出に
渡りを終えようとしていた受様ですが

ヒマラヤ越えの最中のアクシデントによって
重傷を負ったじいの代役として
攻様に伴われて向かった頑火国で
蛇紋王の策略が詳らかになり…

まさか!? Σ( ̄。 ̄ノ)ノ
な攻様の秘密(身分というか正体というか)に
ガツンと衝撃を受け…

更に暗躍する人々が現れて…

受様が右大臣から実権を取り戻し
平和な国の礎を築いた後に
攻様の腕に抱かれる日まで

ワクワク&ドキドキ&ハラハラ、
たいへん楽しく読めました♪

頑火国での攻様の行動の
最終的な結果は想定内でしたが

蛇紋王と攻様の関係や
攻様と友人の渡り隊の隊長の密約とか
受様が真に秘めていた決意とかは
かなり予想外でした。

当初の受様は
やるべき事をなす気持ちが先に経ち
少し空回りしていましたが

反発しながらも攻様の教えを受け
現在の自分をありのままに受け入れる
素直さがあったからこそ
渡りの旅で人として大きく成長でき

そんな受様だからこそ
攻様のいきかたまでも変えて
最後のハッピーエンドを迎えられたのかな
と思いました。

雄大なヒマラヤの
自然の驚異とそれ故の美しさ優しさ、
受様の切ない恋心がとても胸を打つ
素敵なお話でした。

今回は本作同様旅モノで
櫛野ゆいさん『サーベルタイガーの獣愛』
などはどうでしょうか。
本作と違ってHはがっつりです(笑)

5

ヒマラヤ超え!

先生の商業2作目。1作目より前に投稿、webに参考掲載された作品を大幅改稿したようです。V字飛行をしている鳥の群れを見て思いついたお話とのこと。「ダー〇ィンがきた」を見ているような感動があったのですが、攻め受けにあんまり入れ込まなかったので萌2より萌にしました。本編260Pほど+あとがき。

舞台は中央アジア東部の平原。アネハヅルの鳥人である雲英(きら)がじいと二人で群れに合流するシーンから始まります。雲英はこの群れと共にヒマラヤを超え、南の国の蛇紋王に会いに行かなければならないのですが、群れの渡り守からはろくな飛び方もできないのに連れていける訳はないとけちょんけちょんに言われ・・・と続きます。

攻め受け以外の登場人物は
じい(受けの幼い頃からの側仕え)、灰簾(攻めさんの学校時代のルームメイト)、蛇紋王(名前でもろ分かり、悪党)といったところ。蛇紋王のビジュアルが無くて助かった・・

**以下は内容に触れる感想

ヒマラヤを超えるための飛行訓練や、翼、飛び方の記載、ヒマラヤ超えの記載などは、ワクワクブルブルする心地で素敵でした。ただ、上から目線的な物言いをする&実力ある攻めさんや、民のためにと行動をする素晴らしい王様である受けさんに、今一つ刺さるものが無かったんです。いい人達なんだけどな・・・
終わり方もなかなか良かったんですけど、王道だったからか、恋心方面できゅーんとシンクロするのが少なかったです。うーん。めちゃ残念。

3

この作品が収納されている本棚

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