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表題作鬼の戀隠し

神藤颯天、「鬼伝説」が残る土地の管理人
茅野静夏、民俗学を専攻する大学生20

その他の収録作品

  • 秘する戀
  • あとがき

あらすじ

大学で民俗学を専攻する静夏は、3年前の夏に自身が「神隠し」にあった「鬼伝説」が残る山間の集落をフィールドワークで訪れる。気乗りしないまま史跡の洞窟を調査しようとした時、管理人を名乗る神藤に立入禁止だと止められる。非友好的な彼になぜか懐かしさと親しみを覚えた静夏は、神藤の影に角があるのを見て思い出す。あの夏、洞窟から鬼の集落に迷い込み、鬼である神藤に恋したことを…。

作品情報

作品名
鬼の戀隠し
著者
真崎ひかる 
イラスト
陵クミコ 
媒体
小説
出版社
心交社
レーベル
ショコラ文庫
発売日
ISBN
9784778126360
3

(9)

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萌々

(1)

(7)

中立

(1)

趣味じゃない

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レビュー数
4
得点
26
評価数
9
平均
3 / 5
神率
0%

レビュー投稿数4

結界に阻まれた恋

父の故郷で神隠しにあい、その間の記憶を失った受けが再び戻ってきて、記憶を取り戻し攻めと再会し、再び恋仲になる話。

主人公がローテンションな人物であることもあるけど、比較的淡々と話が進んでいくので、後半少しハラハラする展開になるものの、あまり抑揚のない話だと思います。攻めが完全に諦観した状態なので受けの一生懸命さが際立ちました。


<あらすじ>
17歳の夏、父の田舎へ来ていた静夏(受け)はひと月ほどの記憶がありません。
その間行方不明になっており、帰ってきたときにはその時の記憶を失っていたのでした。
それ以来、不眠に悩まされ忘れている何かを思い出そうとして思い出せないもどかしい毎日が続くのです。
そして3年がたち、民俗学を専攻している静夏はゼミのフィールドワークで静夏の田舎へ行くことになります。
静夏の田舎には鬼の伝承があり、それをゼミ仲間4人で調査することになったのです。
足が遠のいていた田舎で又従兄弟と再会し、居心地の悪い思いをしていた静夏でしたが、調査中不思議な雰囲気を持つ男・颯天(攻め)に出会います。
何故か彼が気になって仕方がなく皆が寝静まった夜中ふらふらと颯天と会った場所に出かけていくのですが・・・


静夏が神隠しにあったのは祖父の葬儀の時。退屈しのぎに山の中で見つけた洞窟に探検にでかけ行方不明になるのです。
実は、洞窟には結界が張ってあり、洞窟の先には鬼の郷があったのです。
洞窟の中を転がり落ち怪我をしてしまった静夏は動けくなってしまっていました。
伝承で聞いたことがありましたが、本当に鬼がいると思わなかった静夏は焦ります。が、その鬼・颯天(攻め)は静夏の怪我の手当をしてくれるのです。
怪我が治るころには二人は恋仲になったのですが、人間である静夏がいることが他の鬼にばれてしまうのです。
結局、颯天によってこの時の記憶は封印れ、人の世界へと逃がされます。

颯天は鬼と人間のハーフです。そのため、郷から離れたところでひっそりと暮らしていましたが、静夏を庇ったことで罰を受け、郷から追放され結界の境目での監視役をしています。
一人命尽きるまで静夏との思い出に浸りながら生きていく決意をしています。
静夏が全てを思い出した今、共に生きたいと言われても答える気はありません。


やっとすべてを思い出して喜んでいる静夏を前にしても、颯天はすっかり諦めてしまっていて全然一緒にいる方法を考えてくれないんですよね。
颯天が結界から出られないなら大学卒業したらこちらに移住してくるといってもダメ、静夏には自分のことは忘れて生きてほしいというばかり。
颯天には彼なりの理屈があるとは思いますがこのヘタレめ!といいたくなりました。

友人・宮原の暴走と又従兄弟の協力により明るい未来を見ることができるようになりますが、過去回想に時間をついやしていることもあり、実際の解決はあっさりしているように感じました。

また、ゼミ仲間の宮原の静夏への態度は一貫して普通の友人というには距離が近く、話の流れからいくと静夏に気があるようにしか見えなかったのですが、結局友人として静夏が心配だっただけのようで拍子抜けでした。

全体的にさらっとしていて拍子抜けの感じがしましたが、記憶をなくしても颯天を追いかけていた静夏の深い愛と一生一人で静夏を想って罰を受ける颯天の愛が報われたことは良かったと思いました。



1

消された記憶に潜む切ない恋

今回は鬼伝説が残る土地に隠れ住む鬼と
民俗学を専攻する大学生のお話です。

受様が失われた記憶を取り戻し
攻様と恋を実らせるまでと
その後の2人の小話を収録。

受様の父方の実家は「鬼伝説」という
伝承が残る山間の集落です。

受様は17才の時に
祖父の葬儀のために訪れたその地で
行方不明となります。

遭難の確証もなく滑落跡もない状況と
受様が健康な高校生だったことから
自分の意志で出て行ったのではないかと
大規模な捜索隊が組まれる事もなく

1月後に記憶を失くした受様が
山へと続く小道から現れて保護されると
祖母を始め集落の年寄り達は
「神隠し」だと結論付けます。

受様の母親は時代錯誤も甚だしいと
以降父方の親戚達を厭う様になり
受様も親戚との付合いは希薄になります。

それから3年、
受様は民俗学を専攻する大学生になり
日本各地に存在する言い伝えを
検証するゼミに所属していました。

夏休みを利用したフィールドワークの
行き先をゼミ仲間と話し合う中で
受様の田舎が候補地となります。

特段馴染もない土地だからと
曖昧にごまかした結果
小民家で泊まれて宿泊費用も易い
受様の田舎が目的地に決まり
受様はゼミ仲間3人とともに
3年ぶりにその地を訪れます。

役場から受様達の案内役として
やって来てくれたのは
受様の又従兄弟にあたる
本家の長男でした。

3年前も面倒見の良かった彼は
今も変わらぬ気遣いを見せますが
受様は直接かかわる気もなく

翌朝から始まった資料集めでも
役場訪問よりも史跡や石碑を
デジカメで記録する係となります。

しかし山へと続く道を入って
石碑のある広場に出た瞬間
奇妙な耳鳴りに襲われ
悪寒と眩暈に襲われてしまいます。

その石碑はこのあたり一帯に残る
「鬼伝説」の掘られた碑でした。

翌日には4人で石碑の近くに
あるという洞窟を目指しますが
そこには入り口部分を横断するように
大きなしめ縄が張られていました。

全員が奇妙な空気を感じていると
洞窟から長身の男性が姿を現します。

この男性こそ今回の攻様になります♪

攻様は洞窟の管理人だと言い、
近辺を見回っていたと言います。

攻様は土地の者は近づく事の無い
この場所にいた受様達を
威嚇するように長い腕を組んでいて

とても友好的には見えませんが
受様は何故か彼から目を離せません。

しかしその夜、
受様は夢に出てきた男性に向かって
攻様の名前を呼び掛けたのです。

勢いよく目覚めてしまった受様は
誰かに呼ばれるような感覚に背を押され
昼間に訪れた洞窟に向かいます。

そこには作務衣姿の攻様がいて
彼が携えたランプでできた影に
突き出た2本の角の影が!!

攻様はいったい何者なのか!?
そして受様との関りとは!?

「鬼伝説」伝説を軸にした
鬼と人との恋物語になります。

「鬼伝説」伝説とは

山に住んで人に悪さをする鬼に
年に1度若い女を差し出していた村に
旅の途中で立ち寄った1人の若者が
魔を滅するという妖刀で鬼を退治し
村一番の器量の嫁として留まり

現在もその若者の血を引く
一族は集落のまとめ役を担い
妖刀を守り続けている

というものです。

攻様は鬼族の父と
贄となった娘の間に生まれた子供で
両親亡き後は異端者として
人が鬼の地に入り込まない様に
鬼族の長の張った結界の
見張る役目を担っていました。

受様は3年前の夏、
偶然洞窟に迷い込んだのですが
妖刀で鬼を退治した男の血筋故に
鬼の結界を超えてしまい
攻様に助けられていたのです。

鬼族の中でも異端として
1人で暮らしながらも優しく誠実な攻様に
受様は徐々に惹かれていきます。

攻様も素直に慕ってくれる受様を
憎からず思うのですが
鬼の中でも異端な自分と
受様がともにいられるはずしないと
受様の記憶を消して
人間達の集落へと返したのでした。

攻様との再会で失った
記憶を取り戻した受様は
攻様への恋心をも取り戻します。

3年前と変わらず
受様とともにいることは出来ない
という攻様の考えは変わらない上に

受様を心配したゼミ仲間は
受様の又従兄弟に頼んで
妖刀で攻様を退治しようとし

受様と攻様、鬼族、ゼミ仲間、又従兄弟、
それぞれの思惑が関りあって進み

攻様が無事に受様の恋人となるまで
終着点がなかなかわからず
最後までドキドキでした♪

鬼(正確にはハーフ)と人という恋ですが
攻様は鬼族からはじかれた存在で
生い立ちも暮しぶりも不憫で質素です。

対する受様は鬼の里に迷い込み
記憶喪失にはなりますが
その後も両親との確執もなく
普通に一般的な家庭で育ちます。

人外×人というと人外側が人を気に入って
強引に拉致ってからのいろいろという
強者×弱者な設定がベタですけど
体力的にはともかく性格的には
本作の2人はほぼ逆設定です (^_-)

また攻様が鬼族の外れ者なので
人外種族と人側一族の確執等が絡む
大立ち回り的なシーンはありません。

異種族が結ばれるまでの
波乱万丈なドキドキシーンをご希望だと
ちょっと物足りないかもですが

受様が記憶と恋を取り戻す過程を
安心してワクワク&ドキドキを
楽しめるお話だと思います。

今回は鬼と人との恋物語から
夏乃穂足さん『鬼の涙が花だとしたら』を
ご紹介作とします。
再会モノなのも共通点ですね♪

1

鬼の秘する想い

陵先生の挿絵狙いで購入。鬼と人間のハーフさんが人間に恋するひそやかな雰囲気のお話、本編230Pほど+後日談10P+あとがき。和風ファンタジー、せつない王道お話が好きな方には良いのではと思います。攻めさんが受けさんを大事そうに抱える様子が好きだったので萌にしました。

大学で民俗学を専攻している静夏(しずか)。夏休みのフィールドワークの行く先が、偶然父方の出身地になったのですが、そこは17歳の夏休みの時に1か月ほど神隠しにあったところ。気乗りしないまま出かけて行ったら本家の又従兄弟がサポーター役として迎えてくれて・・と続きます。

攻め受け以外の登場人物は
大学のゼミ仲間(男1、女2)、本家の又従兄弟(25,イケメン男子)、椛(女性の鬼)ぐらい。

**以下、攻めさんの好きだったところ

人とのハーフということで、攻めさん自身が鬼の社会から、やや異端者扱い。昔鬼を討伐した人間の末裔ということで結界を通り抜け、攻めさんがいる鬼の社会に行ってしまった受けさんだけど、鬼は人間が入り込んでくることを嫌っているので、攻めさんは一生懸命受けさんを匿います。そこが健気で受けに対する愛おしさがあふれていて、良かったです。
特に一番好きだったのが、温泉に二人して入るところ。やらしー感じではなく、後ろから抱え込まれているようにしてゆったり入っている様子が穏やかに幸せ(でもちょっとセツナイ)そうで良かったです。

穏やかで寂し気な攻めさんがお好きな方は、この攻めもお好きなのでは・・と思った1冊でした。

2

ひっそりとした者同志が巡り逢っての恋路

あらすじと鬼×人って組み合わせに惹かれて購入。
作中の鬼伝説や静夏が17歳の頃に遭遇した神隠しの真相はいかに…

大学民俗学を専攻している静夏は、夏休みにフィールドワークで3年前の記憶を無くしたきっかけとなった、親戚一族が住む集落へ訪れる事となった。
洞窟で出逢った神藤(颯天)と名乗る男が気になって夜中へ一人でそこに戻ってみると、夜な夜な夢に見る誰かとの別離の瞬間と結びついたのだった。

記憶の空白期間内の静夏は、元の性格の引っ込み思案が嘘のように颯天に打ち解けている。
相思相愛だと察しはつくのだが、颯天のほうはほとんど感情を表に出さず、いざ危険が迫ると記憶を消してまで静夏を逃がしたりして、一貫して彼への恋情を抑えている節がある。
颯天がそうなってしまったのは、鬼の父と人間の母の間に生まれた為、異形の子扱いとして鬼の一族から距離を置かれている境遇からなのだろうと、切なさを感じる。

どんな話かをまとめるならば、”ひっそりとした者同志が巡り逢っての恋路”といったところだろうか。

かろうじて終盤にて鬼の一族と茅野の一族との間での過去の因縁は判明した訳だが、鬼×人の恋ながらも話の展開の波に激しい部分はなく、始終穏やかな雰囲気だったせいか、もの足りなさが残るものとなった。
それにしても友人・宮原はてっきり静夏に気があるものだと思っていたのにな…
彼が絡んでの三角関係ってのを見たかったな。

2

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