かわいがって、ください

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表題作お側にいます いつまでも

折坂威史,大実業家,折坂家の長男
三輪志信,17歳,折坂家に奉公に来た青年

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

大実業家の長男・威史のもとへ奉公に出された志信。しかしその仕事はまるで愛妾のようで…!?

大実業家、折坂家の長男・威史のもとへ奉公に出されることになった志信。幼い頃一度だけ会った優しい若さま。己の不遇に腐らず、精一杯お仕えしようと決意した志信の前に現れたのは、思い出を覆すほど奇妙に明るい……しかし間違いなく本人。女の子の服を着せられ、膝に抱かれ、愛妾のように扱われながらも、志信は次第に威史の真意を察するように……。和と洋が溶け合う大正期の資産家の屋敷を舞台に繰り広げられる、甘やかな主従ロマンス。

作品情報

作品名
お側にいます いつまでも
著者
夢乃咲実 
イラスト
篁ふみ 
媒体
小説
出版社
二見書房
レーベル
シャレード文庫
発売日
ISBN
9784576190075
4

(35)

(13)

萌々

(14)

(6)

中立

(1)

趣味じゃない

(1)

レビュー数
7
得点
140
評価数
35
平均
4 / 5
神率
37.1%

レビュー投稿数7

かなり意表を突かれました

こちら、大正浪漫+主従ものです。

放蕩者で無能な若様に、女の子のドレスを着てお人形のように愛玩される小姓の、ひたすら甘い主従ものー。

と、思ってると、なかなか意表を突かれる作品になります。
健気でいじらしい主人公に、もう完全にノックアウトですよ。
また、何故か攻めザマァの心地ですよ。


内容ですが、大実業家、折坂家の若様・威史×奉公に上がった小姓・志信による、時代もので主従ものになります。

両親が亡くなり、保護者である叔父に身代を食い潰された庄屋の息子・志信。
幼い頃に一度会っただけの優しい若様・威史のもとへ、支度金と引き換えに奉公に出る事となります。
下働きとして何でも一生懸命やろうと決意していた志信ですが、何故か豪華な食事を与えられ、高級な服を着せられてひたすら甘やかされるだけ。
はじめは戸惑いますが、次第に自分の「仕事」を理解してきてー・・・と言うものです。

まずこちら、受けである志信ですが、とても聡くて健気、そして芯の強い男の子になります。
着いて早々に、とても甘やかされるんですね。
「よく来てくれたね」と抱き締められ、ニコニコしている若様と一緒に食事をし、何故か彼のベッドで寝るように言われる。
可愛いからと女の子のドレスを着せられ、膝の上に座らせられ、手ずからパンを食べさせられる。
甘いんですよ。
もうベタベタな甘さなんですよ。

が、こちら、「主人である攻めが使用人の受けを溺愛している」と言うだけの単純なお話では無かったりするのです。

威史のささいな表情の変化や、ちょっとした言動の一つから、彼の真意を察する志信ー。
そう、何故か自身を「無能な放蕩者」と思わせたい威史が、その為に自分を利用している事に気付く・・・。

何だろう・・・。
志信はですね、それこそ愛玩物のように甘やかされ、大切に扱われと、一見甘いのです。
が、「男妾」と使用人達から冷たく接せられ、その上威史からさえ、実は好意を持たれていない。
ちょっと利発過ぎる子なんですよ。
二人きりになった時の、威史の何気ない表情なんかから、自分が心を許されていない事に気付いてしまう・・・。
なんか切なくて切なくて仕方ないんですよね。
それでも人前では、「愛され可愛がられる」事が仕事だと、懸命にその役を受け入れてる志信を見てると。

で、上手いのがここから。
共に過ごすうち、田舎育ちで何も知らない子供だと思っていた志信の、聡くて芯の強い本当の姿に気付く威史。
そして、男妾と遠巻きにしていた使用人達ですが、腰が低く真面目な志信の姿に誤解を解き、少しずつ受け入れて行くー。
こう、ちょっとずつ志信が報われて行くのがですね、嬉しくて仕方ないんですよ。
あと、志信の真の姿に気付き驚いてる威史に、何でか「攻めザマァ」気分。

で、ここから甘々展開。
本当の意味で、威史が志信を溺愛しはじめるのです!
志信が客から「男妾」と侮辱されれば本気で怒り、女装させて連れまわすのを止めるー。
そして、一緒だったベッドを別にする!!

終始、志信視点ですが、威史の心情は手にとるように分かるのです。
読者には。
しかし、まだまだウブな志信には伝わっていない。
連れまわされなくなった事や、ベッドを別にされた事で、自分がもう必要無くなったんだと思い悩むんですね。
そして、とある誤解が重なり、自分は威史の前から消えなくてはと、そっと屋敷を去る・・・。

実はこの作品、全体的には切ない寄りだと思うんですよね。
切ない展開→甘々→すぐにまたスレ違いみたいな。
まぁでも、ここまでが切ない分、二人が結ばれるシーンには感無量と言いますか。
その後は甘過ぎて悶絶と言いますか。

とりあえず、攻めがわりとダメな部分があったりするんですけど、受けがそれを受け止めて、癒してあげると言うのにも萌えました。
途中、攻めを死刑にしてやりたくなりましたけどね。

あと、攻めが無能な振りをしていた理由ー。
この辺も、しっかり練られたストーリーで面白かったです。
ついでに、エロが最後に一回だけなんですけど、ベッドの中でまで健気な志信に悶絶しました!

夢乃先生の作品が好きで色々読んでいますが、個人的には今作が一番好きですね。
これまで作者さんとご縁が無かった方も、ぜひ読んでいただきたい!

14

沢山の「愛」が描かれています

初読みの作家さまですが、あらすじと表紙の可愛らしさに惹かれて購入。





時は大正。
もともと庄屋で、人望のある父をもつ志信(5歳)が主人公。

東京の大家の奥様、と言う人が現在志信の家の離れに病気療養の目的で滞在中。優しい奥様のために毎日花を摘みそして届ける志信だけれど、ある日、奥様の息子さんという男性が訪れていた。

優しいその男性と会話を交わしたことをずっと忘れずにいた志信だけれど、17歳になった現在、下男のような生活をしている。人望があり優しかった父が亡くなって以降、家を継いだ叔父によって財産が食いつぶされ、たくさんいた奉公人たちの代わりに下男のような仕事をこなすことになったのだ。

そんなある日、叔父から、かつて出会った奥様の息子さんのもとに奉公に行けと言われることに。優しかったその男性・威史のもとに行くことを楽しみにしていた志信だけれど、久しぶりに会った威史はどこか不自然で―?

というお話。

大企業の社長である父を持ち、実家はたいそうなお金持ち、そんな威史のもとで何をすればいいのか分からず戸惑う志信だけれど、他の奉公人たちの噂話から、自分は威史の「男妾」として呼び出されたことを知る。

志信という男の子がとにかく健気なんです。

もともと良いところのお坊ちゃんだった彼が、下男のような仕事をするようになり。
自分の預かり知らぬところで自分の奉公先が決まり。
そして「男妾」と周囲の奉公人たちから蔑まれる。
そして当の威史は、人前では猫かわいがりするのに二人きりになったとたんそっけない態度をとる。

そんな環境の中にいて、志信は自分を見失うことなく、自身のやるべきことを見つけ、そして行動する。健気なだけではなく、本当の強さと優しさを持った男の子なのです。

そして、そんな志信と触れ合うことで、少しずつ威史も変わっていきます。

威史の行動は謎が多く、序盤は威史がややもすれば外道のような人物として描かれています。なぜ威史がそういった行動をとるのかを追う形でストーリーは展開していきますが、序盤から威史の行動の意図は読者には透けて見えている。ゆえに、シリアスになりすぎずハラハラするような展開にはなりません。

が、スパダリが薄幸受けを愛でる、といった王道パターンのストーリーとは一味違い、非常に面白かった。威史の立ち位置が序盤から後半に向けて変化するために、ストーリーにメリハリがある。

基本的には威史×志信の恋愛感情がどう育っていくか、がベースにはなっていますが、この作品はそれだけに非ず。

家族愛も、きちんと描かれていました。

威史が、ずっと反発してきた彼の父。
お父さんにも、思うところがあった。
志信を介し和解した親子の姿に思わず涙腺が緩みました。

そして、威史と、彼の気の良い友人たちもナイス。
友人たち(の誰か)のスピンオフ、書いてほしいな。

ただ、しいて言うと、志信が威史に恋愛感情を抱いた過程が若干甘かったかな、という気も。子ども時代に一度会っただけの男性をあそこまで愛せるものなのかな、という気はしました。

バックボーンとしてはややシリアス寄りなお話ですが、本当の意味で悪人は出てこないですし、どちらかというと甘くて優しく、そして愛に溢れた作品でした。

そして篁さんの描かれた挿絵が、この作品のイメージにぴったり。
表紙の可愛らしさにジャケ買いしましたが、すんごく素敵な作品に出会えたことに感謝。

恋愛感情。
家族愛。
そして友情。

沢山の愛に満ち溢れた作品で、読後温かな気持ちになりました。

10

受けが聡くて健気で素直でかわいい!

あとがきによると担当さんから「MAX甘々で」と言われて頑張ってみたとのことですが、激甘とまではいかないと思います。
というのも、半分くらいすれ違ってるからかなぁ。

奉公先の主人である威史(攻め)は、周囲に見せつけるかのように志信(受け)を可愛がります。
手ずからご飯を食べさせたり、お膝抱っこしたりと、確かに甘いけどそれは人前限定で、二人きりになると途端にそっけない態度になっちゃうんですよ。

威史の二面性に戸惑ったり、屋敷で働く人達から冷ややかな視線を送られて孤立する姿のほうが印象的なんですね。
志信が素直でいい子なだけに、そんな思いをさせる威史め!!と序盤こそ思うけれど、きっと何か訳があるんだろうとも思える。

そして志信は本当に聡い子なんです!!
やがて威史を見ているうちに、彼があえて人前でうつけものとして振る舞っていることに気づくんですね。
その威史の真意を察して、それに沿おうとする。

この健気な志信がほんとうに好ましいキャラで、読んでて自然と応援したくなってしまう気持ちでいっぱい。
そして、威史もその仮面を脱げば、素晴らしく誠実で優しい好人物であるのがわかるので、あぁ早く想い通じ合わないかなぁと。

想い通じあってからは、そりゃあもうMAX甘々!!でした。

初めて身体を重ねるシーン&事後も、志信がかわいすぎるんですね。
そして、そんな志信を可愛くて可愛くてたまらないと思っている威史も微笑ましいし、その気持ちに120%同意したくなる。

そんな素敵な二人でした。

3

上手にできたのでしょうか

夢乃先生の文章のもつ雰囲気と、大正時代という設定がぴったり合っているように感じられて好きだなと思ったので萌かなと思ってましたが、最後の最後に萌え死にそうになったので萌2にしました。ほんといい子だと思ったお話、本編250P弱+あとがき。

父が亡くなった後、家督を引き継いだ叔父は商才が無かったのか、みるみる財産を食いつぶしてしまい、すっかり傾いてしまった三輪家。ある日、志信はその叔父から「東京の折坂の若さまがお前を東京の屋敷に奉公によこさないかと言っている」と告げられます。十年ほど前に折坂の奥様が療養で来られていた時に一度だけお会いしただけの若さまがなぜ?と思うのですが、既に支度金もいただいているようなので、断る術もなく東京へ向かい・・と続きます。

攻め受け以外の登場人物は
攻めの家の他の奉公人たち、攻めの会社の重役たち、攻めの父親(病気で寝込んでいる、頑固じじい)、攻めの友人ぐらいかな。

**萌え死にそうになったところ

夢乃先生の書かれるいい子、「うー」とまどろっこしく感じる時もあるのですが、今回は時代背景があっているように感じたのと、性格としてひじょーーーーーーーに奥ゆかしいというか控えめだけど、理路整然と考えているというか、いい子だなああああとすんなり読めました。
その子がですね、「若さま」と控えめに呼びかけるので「うあー」と思っていたのですが、最後の最後に事を致した後、「私は上手にできたのでしょうか・・?」などと聞くんです。
ここで轟沈。

攻めさんは愛情表現不器用な方ねーと思うぐらいで、まあ普通だったんですが、受けさんに撃沈された一冊でした。途中女装などもされるのですが、めっちゃ可愛いですよ、篁先生、すごーい!あー可愛かった。

2

聡い受け大好きです

かなり前から電子で購入していたものの、どうしてこの作品を選んだのかは既に記憶の彼方でした。

夢乃咲実先生らしく構成に凝っていましたが、何点か気になってしまったので今回も萌2止まりでした。

個人的には受けの志信のキャラが好きでした。健気なのはもちろんですがとても聡いところに好感を持ったんです。
志信は若さまの言動や表情、屋敷の使用人や若さまの友人方の噂話、果ては折坂家の事業関係者の態度から、若さまの思惑を掴み取り彼の意思に添うように動くんです。賢くて性格も良いので読んでて応援したくなりました。

片や若さまこと威史がそんな志信の聡さに気が付き、自分のそれまで態度を省みて志信に罪悪感を感じてぐるぐるするところが可愛らしいと思ってしまいました。

個人的に気になってしまったのは折坂家の使用人たちの態度の変化です。家令と女中頭しか志信と直接言葉を交わさないので、他の人との交流が少なすぎるのにこうも劇的に変わるかなと思ってしまいました。本編にちゃんと理由はありましたがちょっと弱いと思ってしまったんです。

そして特に気になってしまったのは威史の志信への気持ちでした。志信が威史に惹かれるのは分かるんです。ですが途中で威史が誤解して志信に手を出そうとしてしまった時に余りにも行為が自然過ぎて、彼は元々男色家なのだろうかと思ってしまいました。(記述は一切ありません)

ただ、威史の父親である折坂家の旦那さまと志信の交流は面白くて、ギクシャクしていた親子の仲を取り持つ役目を担う事になったのは好みの展開でした。

このお話の中で志信が凄く辛い目に遭ったりとか、物凄い悪人が登場するとかはなかったです。
なので安心して読めますが、その分すこし物足りなさを感じるのも確かでした。

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