宗吾の父親違いの弟・和久がメインのお話。
晶に自分の子供を産んでほしいなどと言ってアプローチしていた彼ですが、いつも一緒にいるアレックスが番犬ポジションだったので、彼とくっつくんだろうなーという予想は登場した時点でありました。
結果的に特に捻りもなく、宗吾と晶を見て家族を作ることに憧れを抱きはじめた和久が、自分の子供を産んでほしい人がなかなか見つからないというお悩み相談をして、宗吾の姉に「自分が産みたいと思う相手はいなかったの?」と言われたことから、子供の頃からずっと一緒にいたアレックスのことを好きだと自覚した、という感じでした。
最後は和久がアレックスの繁殖相手に取って代わる形(ホテルで待ち合わせしていたのを、相手を追い返した)で待ち伏せし、告白してカップルになったので、もし和久が行動を起こさなかったら、アレックスは繁殖相手とセッしたってことかなとちょっとモヤりました。
前巻で岡君が狂児さんに何やらプレゼントしたいものがあり、そのためにファミレスでバイトを始めて、それを渡したらもう会わないほうがいいかなと思ってると言っておいて帰り際に後ろからハグをしたあとの続き。
自分の行動について知恵袋で聞いたり友達に相談したりして、狂児さんのことが好きだと気づき(恋愛的な好きかは曖昧)、「ずっと一緒にいたい」と本人に伝えます。狂児さんの答えは組長が死ぬまではヤクザはやめられない、でも岡君が自分を必要としなくなるまでは一緒にいる、という受け身なものでした。
年末に大阪に帰省した折に狂児さんに会い、たとえ組長が亡くなっても狂児さんが自分のところに来てくれるかわからない、という理由でバイトしていたお金を渡し、腕に掘った自分の名前を消してほしいと言います。それがある限り自分は狂児さんから離れられない気がする、というのが理由ですが、それが消えて初めて対等にスタートラインに立てるとも言っているので、結局のところ、離れたいのかそうじゃないのかどっちなんだい?とかなりモヤる告白でした。別れ際も、岡君はハグを求めますが狂児さんは背中をバンバンと叩いただけで「ほなまた」と言って別れていて……。でも、岡君が見えなくなるまで振り返っていたから、未練は感じていたのかな。
曖昧な関係のまま話が続くのかもしれないし、曖昧な形で終わらせたかったのかもしれませんが……、BLに限らず恋愛ものはハピエンでもバドエンでも、結論をしっかり見たい人間からすると、不完全燃焼な終わり方でした。
サブストーリーのヤクザや漫画家さんたちのほうは上手く収まっていてよかったです。
大学生になった岡君がファミレスでバイトを始めて、目的は何か狂児さんにプレゼントしたいものがあるらしい、という感じで話が進んでいきます。メッセージアプリでやり取りし、偶然を装ったり約束したりしてたまに会う二人の関係は、個人的には、友達というより、気にかけている親戚の子と言ったほうがしっくりくる。
ファミレスで原稿描いてる漫画家さんが狂児さんの事務所の組長の息子だったり、バイトのの同僚が大学の友人の推しバンドのボーカルだったりなど、登場人物たちが何かしら関わり合っていて、ときにシュールな笑いが挟まれるのは、作者様の作風なのかな。
BLではないと割り切ればエンタメとして楽しめますが、岡君が狂児さんから借りていた高級腕時計を、値段を調べて200万くらいする代物だとわかった時点でインスタントラーメンを作っていたお湯にぶっこんでしまうところだけは行動の理由が謎でした。自分でも働いてお金を稼ぎはじめて、それだけの価値のものを気軽に人に貸せることや裏社会の人がそういうものを身につけていることに腹が立ったのかもしれませんが、お金を稼ぐ難しさがわかったからこそ、自分が何年働いても買えなさそうなものをぞんざいに扱える心理がわかりません。
最後、大阪に帰る狂児さんに岡君が後ろから抱きついたところで終わっていたので、次巻は多少は甘くなるのかな?こちらの作品については、このまま友達未満の関係でもいいかなと思っていますが、少しだけ期待して次に進みます。
事故で重体になっているはずの榎本先輩が急に主人公の颯真の前に生き霊になって現れて(颯真にしか見えない)、事故で助けた幼馴染で親友の春名先輩の魂を手に入れることができたら自分は生きられる、そのために協力しろ、と迫ります。早い段階で実は榎本先輩は颯真のことが好きで死ぬまでの間一緒にいたかっただけだとわかります。特に春名先輩に害を成すわけでもなく、颯真に対してもご飯を作ったりして面倒見がいいので、好きだったと言われて颯真も榎本先輩に絆されます。榎本先輩に死んでほしくないけど、だからといって春名先輩を犠牲にはできない、ということでは春名先輩を犠牲にせずに榎本先輩が助かる道を探すことになり、途中までは結末が気になりながら読み進めました。
途中からいきなり春名先輩のほうが天使だったという話になり、春名先輩も他の人には見えないからと宙に浮いたりするのですが、子供の頃からずっと榎本先輩には見えていたわけで、絡んできた配信者にもちゃんと見えているので、わけがわからなくなって話に集中できなくなりました。春名先輩を助けて死ぬはずだった榎本先輩が生き残るためにそういう設定にしたのでしょうが、生き霊なのに料理しているし、設定が都合よすぎな気がしました。
勇者のα×国王の側妃で子爵家三男のΩ。
受けはΩであることが発覚し国王の側妃にさせられたものの、夜伽を嫌がり国王の股間を蹴ったり逃げ出したりして4年の間貞操を守ってきました。魔王を討伐して凱旋した勇者が褒賞として受けの下賜を望んだため、勇者に下賜されます。
早い段階で、攻めと受けが子供の頃に出会っていて、攻めが誘拐されそうになっていたのを受けが助けていたことが読者にはわかります(受けは気づいていない)。
受けは攻めと一緒に暮らし、剣の稽古をつけてもらったり、ランクの低い冒険をしたりする中で、攻めに惹かれていきます。
受けのことを諦めきれない王と攻めのことを諦めきれない聖女が、二人を力づくで我がものにしようとしますが、眷属たちの活躍で事なきを得て、ついでに王も倒して、攻めが新たな王となりました。
攻めも受けもそれなりに不幸や理不尽を経験していますが、攻めが最強過ぎたり、側妃が王の股間を蹴っても首を跳ねられず、執着しているはずの王もヒートに乗じて無理やり番にしたりしないので、攻めと受けにだけ都合のよい世界な感じはします。序盤で二人が子供の頃に出会っていたこともわかるので、ハラハラドキドキもなく、受けの思い込みにも感情移入できず、個人的にはBLに期待している切なさや萌えはなかったです。
それだけ王から執着されている妃が城から脱走すれば、首を跳ねられる衛兵だっているでしょうし、受けが側妃の務めを拒否している分は、他の側妃が王の相手をしなければならないはずです。そういった点では、受けが四年もの間、王宮で贅沢な暮らしをしながらも、側妃の務めを果たさずただ脱走を繰り返していたことには身勝手さを感じます。
オメガの自分でも民の役に立ちたいという決意をもって王宮に来たのだから、王の寵愛を得て民のために善政を敷いてもらうよう王を導くほうが、よほど勇者に思えます。
勇者に下賜されたあとはすぐに自分から誘っているので、結局のところエロ親父が嫌だったんじゃないかという気がしました。
攻めは苦手に思うところはなかったですが、受けのためだけに生きているような人なので、英雄的なカッコよさは感じられませんでした。竜も魔王もあっけなく眷属になっているので、魔王を倒す大変さも実感が湧きません。
好きになってもらえるまでは性的な接触を我慢した誠実さはよかったです。
世界観に入り込めなかったのは、眷属たちの方言のせいもあると思います。世界観やイラストは西洋風ファンタジーなのに、方言が出てくるたびに日本色が強くなるので、そのつど没入感が削がれました。
ビッチな聖女がいてもいいとは思いますが、特別な癒しの力は特別に清らかな人にだけ宿っている世界のほうが魅力を感じます。
RPGが好きだったらもう少しストーリーも楽しめたのかもしれません。
鹿乃先生の作品の中ではこちらの表紙の二人が一番好きなので、先生の最後の作品の表紙を彼らが飾ってくれたことは本当に嬉しいです。ただ、やっぱり、これを最後に先生の新作を読めなくなるのかと思うと、ストーリーとは関係ないところで何度も涙してしまいました。
内容ももちろん、さすが鹿乃先生と思うようなシリアスとコミカルを絶妙に織り交ぜたストーリーに色気のある美麗なイラストで、番外編とは思えない読み応えでした。特に表題作の「オトコギ」は、気になっていた中野さんと有坂君、それに有坂君と同じことをしていた目白さんの決着が描かれていて、それぞれが罪悪感と向き合い、自分なりのけじめをつける姿に涙しました。普段は狂犬キャラなのに、有坂さんを許し、目白さんの自己嫌悪を見透かして救いの一言を言える中野さんには、「オトコギ~~~!!!」と心の中でスタンディングオベーションの気分でした。
今回出てこなかった他のカプたちも含めて、その後も彼らが最愛のパートナーと幸せに過ごしていることを信じて、これからも何度も作品を読み返したいと思います。
鹿乃先生、これまでたくさんの萌えと癒しと感動を、本当にありがとうございました!!
同作家様の『嫌よ嫌よも好きのうち?』がすごく好きで、元いじめっ子の幼馴染との再会ものいうことで、そちらを思い出しながら読み進めました。編み物の知識や季節の描写をさりげなく織り交ぜた読みやすい文章で、攻めが受けに好意を寄せていることも序盤で想像がつくので、途中まではストレスなくすごく楽しく読ませていただきました。
攻めにも受けにも専門学校時代の友人がいて、近所に住んでいる攻めの女性の友人が攻めの自宅にもよく顔を出しているので、受けは二人が恋人同士だと誤解します。一方で、攻めも、元々、中学生の頃に受けが攻めの兄に手編みのセーターをプレゼントしようとしたところを邪魔をした経緯があり、受けが同性愛者だと思っていたことから、受けの友達(男性)が受けの自宅で上半身裸で受けの布団で一緒に寝ているところを目撃し、体の関係を疑います。
その日、攻めが再び受けの家を訪ねてきて、強引にキスをし、「誰でもいいなら、別に俺だっていいだろう?」と言うのですが、ちょっとそれはさすがにないだろうと思って、一気に盛り下がりました。
再会してからそこまで一年以上経っていて、中学生の頃、兄へのプレゼントを阻止した際に「大嫌い」と言われたことで臆病になっていたとはいえ、そのときのことを謝罪して気持ちを伝える時間は十分にあったんですよね。しかも、受けは「誰でもいい」なんて一言も言っておらず、「俺が誰を泊めて何をしようと、航輝に関係なくない?」と言っただけなので、泊まりに来ていた相手が受けの恋人だと認識するのが普通だと思います。
恋人がいる相手に無理やりキスをして「誰でもいいなら、別に俺だっていいだろう?」と言うのは、兄へのプレゼントを阻止した中学生の頃以上に幼稚な言動に思えました。
その後、受けが、攻めが度がすぎたホモフォビアで、受けへの嫌がらせだけでキスをしたと思い込むのも、「いやいや、普通はそうはならんでしょ」と思って感情移入できませんでした。
最後はキスの件を攻めが謝りにきて、謝罪した上で告白し、中学生の頃からお互いに両思いだったことが判明しますが、再会してから一年もあったんだから、同居を誘うより先に告白してほしかったです。
あと、エチの挿入のシーンで、「ゴルフボール用のホールにボウリングの球を押し込まれるくらいの圧迫感」という比喩が出てきますが、それまでゴルフをする描写はなく、キャラ的にもゴルフをしそうには見えないので、なぜゴルフボール用のホールの大きさを知っているんだろうと疑問に思ったのと、ホールの大きさを知らない私は単純にゴルフボールとボウリングの球を比較するしかなく、「いや、それ絶対に物理的に無理でしょ」と興醒めしました。もう少し雰囲気にあった例えのほうがいいなと思います。
途中まではすごくよかったので、二人とも、疎遠になっていた時間の分だけ成長が感じられる展開なら、もっと好きになれたかなと思います。
高校の寮で同室になった後輩×先輩のお話。先輩のスイはゲイの出会いサイトを見ているところを友達に見られてゲイバレし、以降はそのことを自虐ネタのようにして周囲から引かれないように過ごしてきました。以前、同室だった先輩は、スイがゲイだと知り、部屋を出ていきましたが、新入生でバスケ部の春虎はスイがゲイだと知っても態度を変えることはなく、逆にスイが居心地よくなるようにと気を使ってくれます。
そんな春虎のことをスイは好きになり、朝練につきあってくれたりレモンの砂糖漬けをくれる優しいスイのことを春虎も好きになって、すんなりとくっついた感じでした。
萌えや切なさに加えて、ぷっと笑える場面もあり、楽しめましたが、同性愛者ではなかったはずの春虎がかなり早い段階でスイに恋愛感情を抱く(一話目でキスされる)のは、ちょっと展開が早すぎるよすぎに思えました。それまで周囲から引かれないようにとずっと気を使ってきたのに、春虎と両思いになってからはいきなり寮でセッするのも、音とか振動で周囲にバレるの怖くないのかなと思って没入感が薄れました。
周りのキャラのスイへの弄りは胸糞悪いものでしたが、攻め受けのキャラはよかったので、続巻も読みたいと思います。
陽キャの先輩がヤサグレ系の孤独な後輩を構って懐かせる感じの話。
先輩の匡士郎はバスケ部の人気者ですが、幼馴染曰く、人に関心をもたないタイプ。女子に告白されてつき合ったことはあるけど、本気で人を好きになったことがない。同じ学校の後輩である颯和が喧嘩したあと公園にいるところを見かけて声をかけ(初対面)、以降、見かけるたびに構うようになります。
颯和 はハーフで目が青く、子供の頃、物珍しく見られていたため、今は前髪で隠しています。子供の頃は泣き虫で引っ込み思案だったのが、初めてできた友達にウザがられたことをきっかけに一人でいるようになり、今は喧嘩を吹っ掛けられたら買うので、傷だらけでクラスメイト達からも距離を置かれています。運動神経がよく喧嘩が強い。困っている人を見かけたら助けてあげるような、根はいい子です。
球技大会の練習の際、 匡士郎 が 颯和 と同じクラスのバスケ部の後輩に「こいつも仲間に入れてあげて」と言ったことで 颯和 はクラスメイトとも仲良くなり、教室にも居場所ができます。
二人で一緒に花火大会に行き、一人でいる理由を話して涙した 颯和 に、 匡士郎 が思わずキスをします。 颯和 は怒って帰りますが、後日、二人で話をして、「わざわざキスまでして俺を遠ざけようとしたんだろ」という 颯和 の発言に 匡士郎 が怒ったため、喧嘩別れになります。
その後、 颯和 が不良に絡まれて喧嘩をし、道端に倒れていたところに 匡士郎 が現れて家に連れて行き、「好きだ」と告白し、 颯和 も本心を打ち明けることができました。
寂しさを抱えて頑張ってきた 颯和 が、面倒見の良い先輩に出会えてよかったと思えるお話でした。二人のキャラもすごくよかったです。ただ、キスされたことに対して、「わざわざキスまでして俺を遠ざけようとしたんだろ」と言ったことについては、全然そんな流れじゃなかったし、恋愛感情のない慰めのためのキスと思い込むのならまだわかるとして、「遠ざけようとした」と思うのは無理があるのではないかと思いました。
貴族の使用人をしていた母親が主のお手付きになり生まれたΩの受けが、母親の死後、父親の屋敷に引き取られ、兄弟や継母、使用人たち全員から虐げられます。そこに突如現れた王弟殿下のαに見染められ(最初は恋愛感情はなく、不憫に思って家から連れ出してあげた感じ)、大公妃となって幸せになる話で、BL版シンデレラといった感じでした。
実家や嫁ぎ先でも攻めと教育係の婦人以外、全員が、受けに悪意を持って接してくるので、すごくわかりやすいですが、生身の人間らしさが感じられず、おとぎ話を読んでいるようでした。脇役も立場によって色んな思いや葛藤があるほうがお好みな方は物足りなさを感じるかも。
それだけ虐げられても受けがあまり悲観的にならず、兄弟を妬んだり自分を憐れんだりせず、受けに性愛を示すαの兄の仕打ちもゆるめ(鞭で打ったり体に触れるだけで無理やり性的なことはしない)なので、シリアスになりすぎないところはよかったです。ただ、鈍感な受けが、当て馬の令嬢(出戻りの攻めの従妹)や弟の気持ちは慮るのに、攻めの気持ちについては、令嬢や弟のことを鼻にもかけていないことや受けを溺愛していることが言動に出ているのに、自分と離婚後は令嬢や弟と再婚するつもりだから、という認識をいつまでも持ち続けるので、鈍感で可愛いと思うよりも、「何でわからないのかな?」と疑問に感じる場面も多かったです。
攻めのほうも、少年期に発情したΩに襲われそうになり、Ωのフェロモンの残り香を嗅いだだけで嘔吐するので、「俺が君を愛することはない」と最初に断言するのも理解はできますが、白い結婚でも伴侶として愛することはできるだろうし、まだよく知りもしない相手にそういうことを言うところには傲慢さを感じました。
なぜか受けのフェロモンにだけは拒否反応がおこらず性的な関係を持つようになり、その後は溺愛モードになりますが、好きと告白することもなく恋愛指南書に頼るばかりなので、ただでさえ「愛することはない」と最初に断言しているのだから、いち早くはっきり気持ちを伝えてほしいと思いました。
当て馬の令嬢を追い出したあと、令嬢の父と受けの兄が結託して隣国から麻薬的な植物を密輸し、その責任を攻めに押し付けようとしますが、それについては、式典に招かれていた隣国の第三王子が「自国の第一王子が貴国の貴族と結託してやったことだ」と白状し、攻めはピンチを逃れます。第一王子と第三王子が不仲だったにしても、それを理由に貿易において不利な条件を飲まされたりなど自国に不利益を持たらす可能性が高いのに、よくあっさり認めたな、とちょっと上手くいきすぎな感じがしました。あと、以前は戦をしていた相手なので、第一王子を失脚させるためだったとしても、第一王子と英雄大公(攻め)が結託していたことにし、この機会に隣国の戦力を少しでも削いでおこうと図るほうが、第三王子の立場としては納得がいきます。
恋愛面においては感情の起伏はゆるめでしたが、悪人たちを断罪する場面で、受けが、市井の人々の暮らしを知り、歴史を学ぶことで、辛い過去も心を乱さずにパズルのピースとしてつまめるようになり、「自分史」を組み立てられるようになった、と自己分析する場面があり、その考え方には深く共感できました。