上巻は私が思っていたよりシリアスさが薄く、欲や情がメインだったので油断しました。
下巻、きました。
上巻ではなかった特攻のシーンや敗戦についてしっかり描かれていた。
死を前に欲動からとは言え一瞬でも情を交わした坂ノ上と伴がよかった。
特攻に向かうあのやりとりも痺れました。
鳴子とソノはあの日々を過ごし、あんな別れ方をしたら一生忘れられないよねと感じさせる場面がすばらしい。
戦争は嫌なものだけど死が目の前にあるからこそ生が輝き、欲や情や業が深まるわけで。
そのコントラスト、闇を前にした光の描き方が鮮やかでした。
「しろくろ」でクレが語っていた葉隠の一節
「何にも勝り一等に美しい無上の恋とは…死ぬまで明かさぬ秘めた恋だ」が
鳴子とソノ、他の人物たちのことを思わせる。クレのことでもあるのかな。
本編で怒ったクレの生と死についてのセリフも刺さりました。
酒井大佐の敗戦への憂いもわかります。
戦争の悲惨さを酒井大佐のような視点で語られるのもとてもいいと思います。
あの時代の閉鎖的な面や、逆に大らかなところ、日常から見える文化的な側面なども随所に見られて世界観が決まっていました。
絵がどんどんよくなっていったし、全体を通して作家さまの愛、情熱、ユーモアを感じられて感動しました。
こういう作品に巡り会えて読書冥利に尽きます。
設定がとても興味深いです。
明星光輝…文字通りキラキラした名前で笑いました。
2人の対照的なキャラ設定もいい。
数々の葬儀を見てきて「生きること」の意味を考えてきた久永。
だからこそより明星の自死を止めようとする気持ちはよくわかる。
明星の自分で死ぬタイミングを選びたい、明るく死にたいとの気持ちもよくわかる。
そんな2人が相手を説得する中で、それぞれの独自の考え、言葉、具体的な何かが出てくるのかと期待したのですが。
だいたい聞いたことある考え方が繰り返し話されている印象で。
久永が葬儀屋として見てきた実例からの死生観とかあればなぁとか。
明星が死に方をまだ決めていないとはいえ、実際にシミュレーションしてみても同じように明るい態度でいられるのかなとか。
リアリティ的にどうなのかと考えてしまいました。
でも読んでいくうちに、楽しいことのために、好きな人と一緒にいるために生きたい…というシンプルな理由で十分だとも感じました。
その過程がもう少し深みや文学性などがあれば個人的には好みでしたが。
明るく楽しい雰囲気ながら刺すところはグサっと刺されたかったと言いますか。本質的なところを見たかった。でも本作はそうではない見せ方をされたいということなんでしょうね。
BL展開になるのは自明でしたし。
リバがよかったです。
どこで本作を知ったのか忘れましたが購入してよかったです。
あとがきで書かれているように時代的なものを感じる面はありますが、そんなことより中身がよかった。
いいお話。感動しました。
生い立ちが結構大変な2人が前向きに明るく生きている。
本当は簡単なことじゃないのにさも当たり前のように。
「カレの近くに」のチカ視点で語られていて胸に迫るものがありました。
ハルがひょうひょうとしているけど、あの生き方はかっこいい。
でも表面だけ見ている人にはわからない。
その良さがチカにはわかる。
その描き方の説得力。
ハルの一途さがどこからくるのかわかってくるのかもいい。
経験人数がお互い一人だけなことが贅沢だと2人共通認識なのもすばらしい。
夫婦茶碗→夫夫茶碗、婦婦茶碗できます
の貼り紙に変える店主が粋でした。
初読み作家さまです。
正直なところ、前半はあまりハマらないかもと冷静に読んでいました。
が、後半から郎のスキンシップや陽向への好き好きが溢れ出してから萌えがすごかったです。
郎の年下の生意気さ、かわいらしさ、子どもの頃からずっと陽向を好きでい続けてきたのがわかる描写がたまりません。
陽向の気持ちが郎を向いてくるのと同時にいろんな顔を見せてくれる展開がすばらしかったです。
年下攻めの良さが詰まりまくり。
年上おっとりかわいい陽向に萌える郎が、固まったり、我慢顔になったり、顔を両手で覆ったり…全部好きです。
両思いになったらすぐ最後まで!ではなく、一旦お互い様子を見るところもかわいいです。
清水さんもめちゃくちゃいい子でほっこりしました。こういう女性キャラの描き方も好きです。
初読み作家さまです。
ケンカップル大好きですが、本作は怖い顔が多くて本気のケンカやん〜となりました。
私の中でのケンカップルはもうちょっと軽口でボケツッコミのような笑えるものだったので、こういうケンカップルもあるのねと勉強になりました。
表紙でケンカのトーンを示して下さってますもんね。
仕事のライバル同士、受けはトップ営業マンで自信家なのにどこかズレている。
寡黙な相手は実はずっと受けが好きだった。
この設定、既視感が結構ありません?
おもしろければ全然いいですが。
ぶつかり合いながら進み、それが時々バチっとハマる2人がよかったです。
特に波瀬の楳沢への思いを我慢する姿が萌えでした。
くっついてからのやりとりが期待のケンカップルぽさでとても好きです。