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萌×2作品

アドバンスドレビューアー

女性renachiさん

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ただエロいだけのストーリーじゃない

導入は墓場での覗き行為で、メインキャラ二人のインパクト大の出会い。その後主人公はなりゆきで不調のAV男優の勃起介助をすることになる。最初はキスだけだったのが徐々にエスカレートして――という、前半はエロ重視かと思わせる流れ。

だが話は意外な方向に進んでいく。海は元々天涯孤独の身の上で、一人でいろんな事情を抱えていたが、さらに海自身が気付いていなかったことに瀬戸崎が踏み込んでいく。
目に見えて何かが解決しなくとも、海の心の中に表れた明るい変化に、読んでいて温かい気持ちになれた。

全体のページ数が少ないせいか、くっつくまではあっさりめ。二人が恋人になってからは、海の視界に映る瀬戸崎の描写がすごく良い。瀬戸崎の一途っぷりを示す仕事の選択や地に足のついた提案も良かった。

ネタバレなしで!と期待を煽るどんでん返し系ではないが、何も知らずに読んだ方がより楽しめる作品だと思う。ただし少々センシティブなテーマなので、人によって受け取り方はいろいろあるかもしれない。

それと男女の絡みがそれなりに描写されている。見知らぬ男女と、瀬戸崎とAV女優の絡みと。苦手な人は注意。
挿絵はカラーだった。
面白かった。

熱血再建映画のごとき雰囲気が好き

そういえばこれBLだったな……とうっかり忘れるほどBがLしないお話。
窮地に陥ったレストランに問題児シェフを呼び寄せ、再建を目指す熱血系の王道ストーリー。大筋は映画や漫画でありがちな内容だが、初出時は新鮮だったのかな?面白いから王道なんだという感じで、既視感アリアリでもワクワクした。

視点主はメインカプ二人それぞれと、名前有りモブ?のギャルソンの三人で、ころころ切り替わる。心理描写に重きを置いて読もうとすると、なぜこの場面で別視点に移った?と思うシーンがいくつかあり、恋愛小説として読みやすい構成ではなかった。ストーリーを追う分にはとても面白く最適。
文章は比喩表現が綺麗で好き。

恋愛より人間ドラマ的な面が大きく、最初にメインキャラの伏線を散りばめて、それらを徐々に回収しながら進む。
今作では理人の仮面がはがれたのかな。ずっと敵ばかりの中で生きてきたと気を張る描写が長く続き、弱ったところで久我に過去を打ち明ける。まだ父親のことや上司の意図など謎は残っているが、久我に心を開いたことで恋の気配が見えてきた。
最後の変わりっぷりはすごかった……キスだけであそこまで動揺する理人は今後支配人としてやっていけるんだろうか(笑)

BLの相手役はたぶん久我。正直まだ上手く魅力を掴み切れていない。やりたいようにやる独裁者、だが主張は正論ど真ん中で客を平等に大事にしてるシェフという。キャラ設定があまりにベタすぎて、この作品独自の萌えどころが見え辛かった。
タイプでいうと、とても好きな性格のキャラなので今後に期待大!

レストランスタッフは皆良い人で、わちゃわちゃ感もあって楽しかった。坊宮がお気に入り。

巻末はパティシエ一のお話。こちらはちょっと読むのがしんどい。普通じゃなきゃダメなのか、偽物の家族じゃダメなのか。今となっては語り尽くされたテーマを短編でさらっとやられても、消化不良になってしまう。
とりあえず一はメインカプに絡んでこないらしいと分かって残念。笑顔描写は久我より一の方が萌えた。

メインカプやキャラへの萌えは少なかったが、ストーリーは好き。既視感がここまでなければ神だった。BLとしてはここから始まる雰囲気だったので、次巻が楽しみ。

情景の全てが目の前に浮かんでくる

なんかとてもすごく小説していた……情景の全てが目の前に浮かんでくるって小説では当たり前のことなんだっけ?BL小説を続けて読むと、そうでないものに慣れて麻痺してくる。おかげでただの描写にもものすごく感動した。

ストーリーやメインキャラは好きなタイプでもないし、萌えツボにもはまらない。でも読み応えとサブキャラの魅力が抜群で、読後の満足度は最高。これってちるちる評価的には何が正解なんだろう?知らんけど★4てことで萌え×2。

高校でルームメイトになった、要領の良い金持ち次男坊と人付き合いが下手な帰国子女のお話。二人の関係性に変化が訪れるのは、聖人に泥棒疑惑がかけられてから。当然聖人はやっていないが、この事件の真相の半端さがとてもたちの悪いものに感じた。

それまで散々独占欲を見せてきた圭が、これを機に聖人を手中に収める。自分が直接手を下して聖人を孤立させたわけでなく、他人の後ろめたさに付け込み利用して、窮地に陥る聖人を興奮しながら見守っている。
自らの手を汚していないところが狡猾で、冷静さを失うほどに病んでいないのがとても厄介。それでもまだ男子高校生で、若さ故の暴走として、前半の圭視点は失恋という結末に納得して面白く読めた。

社会人になり、圭のストーカー行為からの再会後、聖人視点から見る圭はめちゃくちゃ怖い。笑顔を「へらへら」と表現されているのも聖人の憎しみが伝わってきて、圭の好感度が上がらない。

これでどう決着をつけるのかと思っていたら、登場時から個人的に推しキャラとなっていた篠塚が登場し、電話一本でまあいいか、と思わせてくれた。正直メインカプより断然篠塚に魅力を感じる。寮での振る舞いも際立ってカッコ良かった。

話を戻して聖人の件。危機からの吊り橋効果的ショック療法で、聖人は圭を受け入れる。好きだったあのときの気持ちが戻ってきて……という描写なので不自然じゃないが、もう少し圭に変化が見られてからの方が良かったかなあと思う。まあこれはただの読み手としての感情だけど。

前半は黒い思惑丸出しの圭視点で、サイコパス傾向のある自己中気味な性格のブレなさが素晴らしく、小説として面白かった。
別作品のスピンオフらしい、知らずに読んだが問題なし。スピン元も読んでみようかな。

地味ながら味わい深いストーリー

じっくり読みたい地味なお話だと思う。凝った設定が散りばめられているが、どれもこれも問題は静かに解決していく。敵の思惑とメインキャラの心情が絡み合った人間ドラマな感じ。日夏を軸にして読むと味わい深さを堪能できる気がした。

導入は射場視点。かつて自分をレイプした男が日夏で――?という始まり。最初こそそこにこだわる射場が描かれていたが、徐々に話の中心は日夏に移っていく。
日夏は、暗い過去や現在の仕事から人間関係まで設定が盛り盛り。性格もなかなかに掴み辛く、とても興味をひかれる人物だった。

ストーリーは裏社会でつながる大物たちの暗躍を特に楽しく読んだ。言葉の裏を読み合うあの独特の会話シーンが好き。後から事実が明かされ、パズルのピースがはまるような爽快感を得られるのが良い。
そこに食い込んでくる射場と日夏の駆け引きも面白く、まったく敵わず地団駄を踏み続けているような射場の番犬っぷりが日夏の魅力を引き立てていて、そこも良かった。

いよいよ解決へ、という終盤は、六戸部が意外にあっさり話に応じてしまい、ここはちょっと肩透かし。大物が次々登場しながら、暴力も激昂もない静かな幕切れ。もう少し緊迫した心理戦くらいは欲しかったが、日夏の立場的にはこれが一番ぴったりの解決方法になるのかな。いわゆる盃を交わしたってわけじゃないだろうし。

外狩の歪みには、BLとしてとても惹かれるものがあり、もっと深く掘り下げて欲しかった。ただし描かれていれば外狩が全部持っていく可能性があるため、仕方ないのかもしれない。射場が負けてしまうから(笑)

射場は重要なシーンで蚊帳の外感が出ていることがあり、メインカプの攻めとしては物足りなさを感じたのも正直なところ。日夏の救済に射場は必要不可欠だけど、交互視点で心理描写も書かれているのに、主役二人というより主役日夏と準主役射場みたいな。
どちらか一視点にした方がバランスに違和感がなかったかも……と思った。

と、不満はありつつ読み応えのある物語を存分に楽しんでいたのに、一点大きく好感度の下がるエピソードが。六戸部と狛の中途半端な匂わせは何だったんだろうか。
全てが綺麗に畳まれていく中で、ここだけ話が締まらない。しかもメインカプがまだ安定していないのにサブカプに意識を逸らせる悪手。シリーズものでない一巻完結作として見ると、この点が好みじゃない。スピンオフ狙いなら残念。
それ以外はとても良かった。

ユウティがいっぱい可愛かった一冊

ついにDEADLOCKシリーズ既刊本を最後まで読んでしまった。次は待つしかないのが辛い。
番外編の3冊目はディック×ユウトの比率が高め。大きな動きは、パコとトーニャの関係が進展したのと、ディックをユウトの家族に紹介した件。それとコメンタリーにちらっと気になることが書かれていた。

特に好きだったのは、「Ordinary day」の最後の一行。ヨシュアの心に触れられた気分になると、毎度ほろりと泣ける。ロブ×ヨシュアの話が「How to find happiness」で終わってくれたのも良かった。

ディック×ユウトの話では、ディックとユウティの出会いが知れて良かった。チャーリーのことは思い出さなかったのかな?ってのはひっかかったが。
全体的に感情表現豊かなユウティの出番が多く、かなりの癒やし要素になっていた。ユウティ視点の番外編なんかも読んでみたい。

ディックもユウトもヨシュアも、自分や相手が当たり前のように明日を迎えられる奇跡を大切にしている切なさが好き。一秒ごとの幸せに重みを感じているのが伝わってくる。
当然本編ありきの感想で勝手に受け取っているだけかもしれないが、一つ一つのモノローグやセリフの背景を考えると心に刺さる。ディック視点で特にそう感じた。

コメンタリーにあった今後についての話は、読みたいけど読むのが怖そうな構想。でもこのシリーズが「BUDDY」で終了とは思いたくないし、それではシリーズが締まらない。初期3冊のような綺麗で感動的な終わりを期待したい。

神でなく萌×2にしたのは、刑務所時代のディックの描写にどうしても違和感があったから。当時のディックはここまで自分自身とストレートに向き合っていなかった気がするが、回想でなくその時間軸のこととして書いているならブレてきてるんじゃないかと思った。
これは番外編1・2でも感じていたことで、時間経過と共に作者の中で当時のキャラ、特にディックの解釈が変化してきているような。細切れに書いていたら仕方ないかもだが、やっぱり作品名を冠したものだし、本編を大事にしたい気持ちが強いので気になった。

甘々を堪能したので次はぴりっとしたお話も欲しい。続刊が出ますように。

やっと読めた結婚式エピソード

ずっと読みたかったロブの結婚式エピソードが読めて満足。そこに至るまでの過程も書かれていて良かった。
今回はサブカプのお話たっぷりめ。お久しぶり感のあるダグ×ルイスも重要なイベントを乗り越えて安定カプへ。なんとなくネトの存在に安心しつつ……今更だが美男カップル多すぎ(笑)

ロブの心理描写は自身の過去との比較が多め。どこか別のとこでも同じようなことが書かれていたので、作者の中でキャラ像が確立されてるんだなあと思った。時間をあけてこんな細切れに書かされるって大変そう。

私的メインの結婚式は、式の前後がとても良かった。特に「ロブ・コナーズの人生最良の日」ラスト一行がたまらなく好き。ヨシュアには申し訳ないが、ロブがほんのりユウトに対して切なさを醸し出す描写が好きすぎて。
最後の書き下ろしを読んだ後で再読すると、ちょっと意地の悪さも出してるモノローグなのかどうなのか……と楽しめるとこも良い。成熟した大人で人間が出来てるキャラの人間臭さが見えると惹かれてしまう。

ディック×ユウトは記憶喪失ネタや元恋人の弟ネタなど。
記憶喪失話は別の人が書いた二次創作と思いたい。正直英田さんどうした?と言いたくなった。文庫三冊分もかけた復讐の原動力となったディックの過去の扱いが雑で、キャラをもっと大事にして欲しいと思った。ディックが可哀想で仕方なかった。

書き下ろしはユウトイライラな展開。ディックには言えないことをロブに愚痴りながらヨシュアの前でいい人ぶるロブを糾弾するユウトに違和感。他のカプに口出しするユウトは苦手かも。
ノエルはもうこの世にいないので、どうしても後味が良い終わりとは思えないが、そこもひっくるめて二人で生きていくってことなんだろうな。この話はディック視点で読みたい気がする。

このカプの話は「Sunset & Love light」が一番好きだった。ロブの結婚式帰りのドライブ。夕陽を背景に愛を語らうシチュエーションが素敵。

漫画は番外編集1でちょっと語られてたエピソード。ユウトに似てたらしい犬はユウティにもそっくり。震えながらディックを引き止めるチャーリーに泣けた。

サブカプたちが人生の節目を迎える中、メインカプは大人しめだった印象。ユウトの親への紹介まで描かれるのか気になるところ。今後もシリーズを追っていきたい。

やっぱり本編キャラが好き

シリーズ外伝二作目。メインカプとのつながりが(まだ)薄い、殺人事件の容疑者と刑事のお話。人が殺され、命の危機に瀕するシーンもあるのに、恋愛色は濃いように感じた。両視点で両者いろんな方面から悩んでいて、心理描写メインな印象。
事件解決後には、本編キャラが一堂に会するサービスシーンもあり楽しかった。ホームパーティーが自然な舞台設定良いな。

一夜の過ち(?)から最悪の再会を経て始まるダグとルイスのお話。刑事と容疑者の関係性に魅力を感じたが、ダグはプライベートでがんがんルイスに接触しまくるので、せっかくのこの設定に萌えられるところがほぼ無く残念だった。

事件は小さなヒントを各所に落としたりミスリードを狙ったりと、ほんのり推理小説風。そこまできっちり書かれてるわけじゃないので、ラノベらしさを保った読みやすさ。ちょっとドラマっぽさもあったかな、犯人の動機独白とか。

細かいところまで心理描写が丁寧で、二人とも何に対しても本当にたくさんのことをよく考えていた。心を決め、やっと相手に向かっていこうとするとこは、ぱっと晴れたように逸る気持ちが伝わってきてとても良かった。
ルイスとダグは今後も大丈夫だと思える安定したカップルな気がした。

このシリーズの本編は、ずっと緊迫感を保たなければならない状況ばかりだったので、ルイスとダグを見ていると頭を恋愛の悩みでいっぱいにできる平和さについて考えてしまったりした。
ユウトとディックもすっかり穏やかな様子で、本編が嘘のように生活感を醸し出していた。そのわりに常に事件に巻き込まれ続けているのが面白い。こっちのカップルは不死身感が安定してると思う。まあ幸せそうで何より。

で、いつの間にか結婚していたらしいロブ。詳細は番外編で書かれたのかな。
知らないところですれ違いコントの主役になっていたり、肝を冷やす再会を果たしたりと、今作ではお笑い担当のよう。昔の悪事がバレそうになって焦る元遊び人なんて最高にツボ!これは萌える。個人的推しキャラなので元気そうで嬉しかった。

ストーリーは面白く文章も読みやすいが、やっぱり読者に親切すぎる説明過多な点が苦痛。一冊の中の出来事なら、百ページ前のことだろうとあらすじ説明は不要。読者の記憶力をゼロと想定して書いたもののよう。万人受けのためには仕方ないのかな。

今作はダグとルイスが主役のはずなのに、どうしても本編キャラに意識を持っていかれた。一番ワクワクしたのはロブとルイスの再会シーンで、もはや事件は関係ナシ。
独立した作品ならまた違ったかもしれないが、シリーズの中の一冊としては印象が薄くなってしまうかもしれないと思った。

読者に親切すぎるのも考えもの……

場を整え次巻の盛り上がりを御膳立てしてくれているような第二巻。シリーズものとしての枠組みが王道パターンで安心感がある。
ラスボスに迫りながら、ユウトが迷いを断ち切り今後への決意を固めるまでの話かな。新キャラで仮の相棒?のロブが魅力的で良かった。

前半は一巻のあらすじ説明を随所に挟み込みながら、末端の事件を次々解決していく。何でも上手くいきすぎなのは一巻同様。背後も含めた追うべき敵の姿が、じわじわと明かされていく。そこで見える国家最高権力の影なんて話をBL小説で読めると思わなかった。

BLに関係のないところで好きだったのが、FBIの描写。リアルな内部は知らないのでイメージだが、権力とプライドのすごくそれらしい感じが出ていて、ぽいな~と楽しく読めた。

ロブとユウトの禅問答みたいな会話も面白かった。深いのか煙に巻いてるのか絶妙なラインのようでいて、単に翻訳文章的雰囲気の妙でもあるような。
でもユウトは押せばいけそうな空気を出しておいていざとなったら拒むんだから、ちょっとロブに同情するかも……この不憫な当て馬感大好きだけど(笑)

メインカプは気持ちを確かめた後に別々の道に進むと決める。ある意味では同じ道だが、それゆえに敵対関係となる。この関係性はめちゃくちゃ萌える!燃えるともいう。

今作で進んだストーリーだけを見ればとても面白い。ただあまりに前作のあらすじ説明を作中に懇切丁寧に入れすぎていて、テンポが悪くなっているのがイマイチ。一巻を読んでいなくても分かるよう配慮したのかもしれないが、正直クドいと思ってしまった。
用語の説明も親切すぎ、そのせいでスピード感が失われており残念。数十ページ前の出来事だと説明セリフで補足するのも読者に過保護すぎだった。

カタカナのキャラ名・社名等がどんどん出てくるが、この作品は不思議と混乱することなく一度ですっと頭に入ってくる。逆にそれで説明を不要と感じてしまったところもあると思う。余計なものを省くと物語があまり進んでいない気がする。

今作ですっかりロブ推しになってしまったが、最後はディックが巻き返してくれるんだろうか。何はともあれ次は最終巻、とても楽しみ。

王道要素詰め込みまくり

面白かった。洋画でよく見るやつ~と思ったら展開もド王道のやつで。ラストの締め方は翻訳小説のシリーズ一冊目といった雰囲気。あまりこうしたものを知らなかった発売当初に読んでいれば新鮮に感じられ、もっと夢中になっていたと思う。

冤罪で投獄されたユウトがFBIに取り引きを持ち掛けられ、犯罪組織のリーダー探しをしていく。この時点で、BLであれば主人公の相手役を疑う流れができ、ピンチに陥り、実は別に真犯人がいたと分かる――というお手本ストーリーが浮かぶ。
が、まさか本当にその通りに進むとは思わなかった。さらに相手はFBIと対立するCIA。なんて素敵なロミジュリ設定!

主人公のユウトはレイプされようと懲罰房に入れられようと自分を見失うことなく保っていて、刑務所の雰囲気に染まりきらないおかげで読みやすかった。読み手として受ける精神的な痛みがほどよい塩梅で、いつ読んでも楽しく没頭させてくれそうなエンタメ性に惹かれる。刑務所ものとして気負う必要がない。

ディックは常にユウトの目を通した描写で、とてもキラキラしている絵が浮かんだ。少しずつ態度が変わっていくディックと、心が傾いていくユウトが良い。
恋愛的にはここからが本番だと思う。離れてしまったのもあるが、刑務所のような閉鎖空間で生まれた恋愛感情は、外の世界に出ると変わってしまうこともある。そこらへんの微妙な心の機微もぜひ次巻で読みたい、が、そう単純なものにはならないだろうな。

モヤつくのは、ユウトの冤罪の顛末があっさりした描写で終わってしまったこと。結局どこからどこまでが罠で黒幕がいたのかいないのか、BLに関係ない点だが随分雑な扱いで、ラスト付近はバタバタしていた。
(追記:ここは次巻で説明があった。謎ページ配分……)

王道展開が多分に詰め込まれているお話で、各所で似た展開がある別作品(BLではない)がチラ付き、完全に入り込むことはできなかった。
ただ一歩引いたおかげか、別の何かが見えた気がする。良い場面で神視点になっていて、文章から興奮しているのが分かり、作者さんこのシーン書くの楽しかったんだなあと思ったりした。これはこれで面白かった。

細部までしっかり描写された安定感のある王道なので、何度読んでも先が分かっていても楽しく読めると思う。即次巻が欲しくなる終わり方も好き。

優柔不断刑事と切ないヤクザの恋心

とにかく表紙が素敵すぎる!タイトルロゴも凝っていて、思わずポチり。どっちもカッコ良くて眼福。

受け視点の短編二本、間に攻め視点のSS二本という構成で、一話目はエロ特化作品のよう。キャラを掴む前にエロシーンが始まり、あまりの説明不足になんだこれ?となる。
二話目のSSでエロに至るまでの説明があり、三話目はまるでこれが一話目かのように親切な書き出しで始まる。一話目にあるべき設定説明の補足がぽろぽろあって、書いた時期に開きがあるのかな?と思った。

田辺のセリフはところどころ切なくて、だんだん可哀想になってくる。大輔を好きな気持ちにはさっぱり共感できないが、それでも肩入れしたくなるキャラ。
冷静に考えたら付き合ってるわけでもないし、田辺が勝手に体を張って守って庇っているだけ。でも気持ちはそちらに寄っていく。大輔があまりに優柔不断で、嫌がるくせに気を持たせる態度に見えて、田辺への同情が湧いてるのかも。

特に好きだったのが、「スキって言わないでいてやるから来い」みたいな田辺のセリフ。いろいろ分かってて受け入れてる感にきゅんときて。それでもやっぱり離婚して欲しいってとこは言葉にするんだ、っていう真剣さが伝わる切なさに萌える。

この一冊だけだと、田辺は大輔にはもったいない男としか思えない。仕事かつ不倫なのに感情がふらふらしている大輔の魅力が分からない。自分に言い聞かせている内容も中途半端で、こんな精神力で組対刑事は務まらないんじゃないかと心配に。
続けて読んでいけば大輔の良さも分かるかな。結婚に矜持があるなら、「嫁と別れて」に対し「じゃあお前はヤクザ辞めれるんか?」くらいの返しが欲しい。大輔にとってはそれくらいのことっていう何かがあれば、納得できる。

文章はたまに大事なとこで前後のつながりがおかしくなっていて、筆がノると自分の世界に没頭しすぎてしまう作家さんなのかと思った。一冊の中でムラがある気がする。

攻めの魅力で読まされたお話。インテリヤクザといっても下っ端で、泥臭く必死に大輔を守ろうとする田辺に泣ける。田辺が報われることを願って次も読みたいと思う。