窓月さんのマイページ

萌×2作品

エキスパートレビューアー2022

女性窓月さん

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大学生ドーテーの夢、破れる

絵柄が少し変わって、より可愛い感じになりました。どちらかというと前作の方が好きです。

カプは大学生の先輩後輩。ストーリーは性経験上のすれ違い?といった感じかな。あれやこれやエチは描かれているけれど、主人公(攻め)の願望成就のために組み込まれた設定のような気がして、笑いながら楽しませてもらいました。

陰キャの田淵は、再履修することになった英語クラスで一年後輩の夏目と知り合います。陽キャでめちゃくちゃ心が優しい夏目に惹かれた田淵は、ゲイの自分を受け入れてもらえるかもしれないと思い切って告白したところ、アッサリOK。そこから田淵にとって(傍目には笑えるけど)男のプライドをかけた一人相撲が始まるのでした…

夏目の過去が暴露される後半からトーンが一転して若干シリアスな展開になりますが、ヘタレに見えた田淵が意外にもガッツのある男気キャラだったお陰でハッピーな結末になります。まぁ、そんな苦さもありますよ、恋愛には…、、みたいなキリキリした切ない描写をサラッとぶち込むところにBLのLを感じて満足です。作画といい意欲的なエロといい、作者様のポテンシャルにますます期待が高まります!

前半、プレイシーンが多いのでエロメインのように装っていますが笑、個人的には攻め受けの恋愛感情を引き立てる''余興エロ"といった印象を受けました。今回も受けの体が大きいのに顔とか性格が可愛いらしかったのがよき。あらすじにド淫乱とあるけど、属性の括りとしてはそうかなと思います。でもなんかなー、ちょっと自分の解釈とは違うかな。もちろん、誰とでも寝るという意味でのビッチでもないというか…。とってもイイ子なんだけどなぁ。ただ、メインカプのみでお話が進むわけではないので、光属性の方には地雷が埋まっている可能性があるかもしれません。

めずらしくその後の二人が読みたくなってしまったお話でした。攻めの田淵にはお疲れさま、これからも頑張れ!と声をかけてあげたい笑

カバーデザイン問題

DK好きの血が騒ぐ…。カバーイラストの雰囲気からちょっと敬遠してました。でも中身の絵柄とストーリーのイメージが違う!良くも悪くもカバーイラストで敗北する確率の高さにモヤモヤすること多し。これ、なんとかならないもんかと地味に歯噛みしてます。

個人的にすごく好きでした。絵柄もすっきり系の可愛いさだし、時々クスッと笑えるし、カップリングもお似合い。キノとヤノの仲間たちもいいやつらばかりで、こういう明るいタイプの青春ラブって偶然出会って読めると汚れた目が(心が?)浄化されて元気をもらえる。

作者様がお上手だったので読み手としてはそんなに気になりませんでしたが、当て馬的なキャラが腐女子なのかな〜ってところは用心すべきところでしょうか。ガッツリ本編に組み込むなら振り切るか、モブ的にギャグかほんのりくらいにしておかないと扱いが難しい。今じゃモブも主役になってきているから、モブすらも難しくなってきているかもしれませんが…

ポイントは攻めがアホだっていうとこですね。でもキメるとこはキメる!受けも男の子っぽさと乙女な一面がいい具合にブレンドしていて、エッチな流れになると色気がもわわ〜んと…。受けの方が背が高いので性癖が刺激されたのもあります笑

王道を新鮮に描ける力、絵柄と作風に魅力を感じまして、あらためて注目したい作家様だなと思った次第です。

伊織サンがヤバい件

こういう、オカルトちっくな因襲もので、あくまで舞台は現代日本っていうお話、沙野先生独特の世界観ですよね。しっかりと作家様の色がある。でもって濃厚ラブなところがこれまた素晴らしい……好きや〜!

三百年にわたり主従関係を結ぶ九城家と伏見家。伏見家は「夢を生む」特殊な能力を持つ家系で、久城家の庇護を受けるかわりにその能力を提供し、互いの協力によって生き延びてきました。そして現代では両家共に国家レベルにまで影響力を及ぼすフィクサー的存在として暗躍している…という、なにげにぶっ飛んでるSF風設定。本作の推しポイントは年の差で主従です。そんでエロス滾るプレイですよ沙野作品といえば。

伊織サンがエロい…。暁さまにお仕えする14才年上の教育係なので年齢は40代前半。彼の言動はBLだから興奮するのであって、冷静に考えたら結構ヤバいやつですよね笑。なんたってハイライトは着衣&マスクプレイでしょう。どこであのマスク入手してきたんだ伊織サン。ネットで選んでる姿とか想像してしまうよ。。伊織の方が従で暁の方が立場的には上なのにプレイ中は下克上ですから、お約束だけどすてきすぎます。こんなん、ナンボあっても困りませんからね〜笑。暁が伊織のスーツを汚してとっさに謝ってしまうところ、キュンときました…。

本作は両視点で進み、攻めの本心が意外に早い段階で暴露されています。実はお互いのことを強く思い合っているからこそすれ違いが続いてしまうもどかしさには延々とヤキモキ。いや〜、作者様によって表現される恋愛心理は本当にすごいとしかいえない。いつも身悶えてしまいます。

シリアスで文体も硬めな作風なので、受け攻めともに雄雄しいキャラ付けをイメージされるかもしれませんが、わりと受けは乙女系です。攻めのことが好きすぎて気が狂いそうなのに、潔癖なのでそういう自分が許せない。だけど体が裏切るエロさがたまんないですね…。

というわけで、ところどころギャップ萌えが堪能できる本作。ラブの部分に思いっきり耽溺することができました。九城家と伏見家の関係性が全てにおいてキモとなっておりますので、そこにハマれば盛り盛りなストーリー部分も受けとめられるのではないでしょうか。

兄弟絡みも嬉しいオプションてす。兄の朔と湊士も萌えるし、暁の弟、無邪気な惺と黒猫のクウスケには癒されました。

幼馴染みDK

なんとなく試し読みしてたらハマってしまいました。ちょっと大人なカバーイラストの雰囲気を裏切る、王道な幼馴染みもの。二度書きますが、王道です。メイン二人の中学卒業式から大学進学までの期間を描いた、もだキュンラブです。

主人公の瀬那はぽやぽやしていて天然なタイプだけど顔だけは良くて、女子からはモテモテ。生まれた時からずーっと一緒にいる稜大にベッタリでした。稜大の方もなんだかんだ瀬那のことを一番に思ってくれているはず、、だったんだけど、卒業式にノリで告ってみたらガッツリ拒否られて地味にショック…。

二人には途中から幼馴染み仲間になった圭人がいて、瀬那の相談役になってくれています。瀬那のふらふらした気持ちに喝を入れてくれたり、危ないところを救ってくれたり…これ書いていて、あれ?少女マンガ路線かな?、、と一瞬頭をよぎりましたが笑、とにかく片思いにキュンキュン♡な青春BLそのもの。どうしてカバーイラストがブルーやホワイト系じゃないの?ってくらいDKしてました。

個人的に作者様の絵柄は個性的だなーと感じていて、作品を拝読するのは今作が初めて。キャラの正面顔が面長な感じでとても綺麗で表情がハッキリしています。時どき可愛い感じの絵柄が挟まっていたりして、画力に不思議な魅力があるなぁって感じました。瀬那の方が若干、背が高いのもたまらんポイントですね。

一番近くにいた人が突然よそよそしく感じられる切なさ、高校を卒業したら一緒にいられなくなってしまうかもしれない焦り。攻めはデキる子なので、落ちこぼれの受けが置いてけぼりになっちゃうの?って心配になるけれど、そこは安心できるところ。王道ですから、本編終了後の描き下ろしでラブラブしてます!

イチャラブが見たい方にはちょっと足りなすぎるかもしれないけど、キュンキュンは摂取しました。メインカプのカップリングも安心感がありましたが、個人的にはこっそり圭人を推してます。

運命改変ラブストーリー

クロスノベルスさん刊行の新作。タイトル買いです。電子版が配信されましたが紙版で購入しました。クロスノベルスは製本その他お金かけてくれている資金潤沢なイメージ笑

今回は輪廻転生もののようですが、パラレルワールド的な感覚で拝読しました。もともとがシリアスでドラマチックな作風なので、テーマの重さを回避すべく腐心されたのかな?という印象もアリ。読みやすいけれど、全体的に駆け足気味でもうちょっと粘って読み切りたかったかも。

お話の舞台はアイルランドで、カップリングは攻めのクライヴがアイルランド人貴族、受けのユイは父親が日本人で母親がケルト系民族の血を引く家系。彼は母方の血による強い支配を受けています。ユイに日本人の血が流れているところが作者様のこだわりという感じがして、地味に好きなポイントです。

主人公のユイは男子が早世する家系に生まれたため、母親から誰かを愛し、愛し合うことを禁じられて育ちました。けれどそれは彼が代々受け継いだ能力を利用するための口実でした。

ユイには大好きで大切な人がいましたが、その相手は事故に遭ったために記憶がありません。二人が義理の兄弟のような複雑な関係にあったことも、ずっと一緒にいることを約束したことも覚えていない。そうなってしまった原因は、実は現在からずっとずっと時を遡り、ある王子とドルイドの巫女との間に起きた愛ゆえの悲劇によるものでした——

…というストーリー展開なのですが、二人は夢の中で自分たちの過去世を何度も目撃し、目覚めては忘れを繰り返して現世でついに気付きを得ます。相手を生かすために我が身を犠牲にすることはもうやめよう、と。

シンプルでとても深いメッセージが込められていてズンと胸にくるのですが、より重さが加わるのは、メインカプとそれぞれの母親たちとの関係性が絡んでくるところです。彼らの母親はとてもわかりやすく露悪的に描かれており、どちらも今でいう毒親といわれるタイプなのかもしれません。

作者様の無垢な受け像が非常に好みで、今作のユイも読んでいて癒されました。彼は自分の母親もクライヴの母親も憎まずに彼女たちに寄り添います。二人に利用され、罵られ、好きな人と引き離されても、です。ユイは健気なだけじゃなくて、自分以外の人のために動く慈悲の塊、聖母系の要素も備わっていて我がない。そこがとても癒されるんです、現実にはなかなかいないタイプだから笑

エンディングはやっと二人が結ばれる修正版を拝むことができそうで、ホッと一息つくことができるかな。そこにたどり着くまでに二人は何回バッドエンドを迎えたのだろう…。

ケルトといえば、美しい歌声を聴かせてくれる音楽で馴染みがありますが、主人公にもその才能が託されています。悲恋を繰り返す二人が、その歌声によって導かれていくさまも運命的。クラシック音楽や郷土料理に彩られた今作も作者様ならではの味わいでした。

イラストご担当の氷堂れんさんは初めてお見掛けしました。中のイラストは可愛らしい雰囲気で、カバーの大人っぽい二人とのギャップが楽しめます。

正統派ファンタジー

作家様がTwitterでシリアスなファンタジーと宣伝されていたので購入。着衣の笠井先生カバーなのも期待感を高めます。分厚っ!…いのですが例によって読みやすく想像しやすい文章なのでスイスイ読み進められました。

今作は攻めザマァっぽい流れで、攻めが立身出世のために主人公のわがまま王子を利用しまくってきたツケが自分に返ってきてヤキモキするという、設定的には美味しい展開でしたね〜。オズワルドが性格悪いです。攻めキャラとしてはアク強めですが、いかんせん受けに対して色んな思いをこじらせすぎているんですよね。相手を認めたいけど認めたくない。可愛いけど憎たらしい……男のプライドが窺い知れて、同性に向ける嫉妬は怖いなと。いや〜、ここまでくると、やっぱり好きと嫌い、愛と憎しみって、なんらか執着してるっていう意味では一緒の感情じゃない?って思えてきましたよ笑

オズワルドがあんなに側にいたのにエセルのことをよく見ていなかった過去を悔やむシーンにグッときました。本作は鏡がキーモチーフとなっているので、比喩的に使われていて意味深。おなじところでグッときた方、いらっしゃるかな…。オズワルドのセリフには重くて胸に刺さるもの、読者もハッとさせられるものが多くありました。

ホント、冒頭から読者を惹きつけるのが上手くて、先が気になってどんどん読んでしまうこと請け合いです。出来が悪いうえに学習意欲もなく、小姓だったオズワルドにべったりで救いようのないアホぼんだったエセル王太子。彼が一転眠れる才を開花させ、それまで蚊帳の外だった政治参画していく動機付けがめちゃめちゃファンタジーしてて、王道すぎて和みますよこれ。

ラブラブなラブストーリーを期待したらちょっと質が違うかもしれません。なんたってオズワルドがエセルに抱く愛憎まぜこぜな心情が屈折しまくっていてわかりづらい。そのお陰か?エセルの成長物語&王宮での地位奪還作戦の方にも集中することができるんですよね。当て馬的なマルジンの配置も上手いし、奇を衒った無駄な展開もなく、序盤から投げられた聖痕の謎も納得のいくように回収されて、美しく幕を閉じます。

最後まで読み終えたら、オズワルドの愛の深さがわかります。…彼はそういうふうにしか表現できない人なんだなァと思うと、とても愛おしく思えてきました。

真面目に恋愛してます

ゲイバーでアルバイトしている見た目天使な主人公と、そこに通う目つきの悪いコワモテ客の清らかラブストーリー。こういうお話、ホッとします笑

作者様の笑いのセンスがところどころに発揮されていて、フスフスと笑いながら読み進めました。ところが一皮むくと、ドッカンドッカン会場を沸かすような一大エンターテインメントとは真逆を行くといいますか、キャラクターの心情変化をじっくりと追っていくタイプの、とても真面目なお話だったなぁと読後にあらためて思った次第。

テーマとしては、人って見かけによらないよね〜っていう、けっこう無自覚に陥りがちな偏見を切り口にしたもの。見た目や雰囲気だけでその人をジャッジしまうのって、ジャッジする側がそれまでの人生で知りうる経験則でしか判断できてないってことでもある。だから、お互いに思っていること(しかも、本音)を伝え、うちとけていくことで見えてくる相手の意外性にときめいたり、おおーっ!て感激したりできると嬉しいし、それまで決めつけてしまっていたことで死角になっていた世界の一隅が照らされる発見や楽しみがあります。頭ではわかっていてもなかなか自覚できなかったりするので、物語を読んだりすることであらためて気づかせてもらえるんですよね。

悠真と一緒に峰守のキャラを探るのが楽しかったです。読みながら、キャラも、キャラの向こうに透けて見える作者様のことも、絶対裏切らないだろうと信じてはいるんですよ。いるんですけど、ヨシミさんと圭介がまたやいのやいのと妙なアドバイスをしてくるもので、そこでえっ、もしや?なんて疑ってしまいました笑

小椋ムク先生のイラストもたくさんあって嬉しかったです。動物入りのパターンはめちゃくちゃ可愛いいし、最後の一枚は色っぽいしでとっても楽しませていただきました。

キャラ文庫のBLは根が真面目なのか?みんな真剣にラブしちゃってませんか?個人的にはなるべく変わらないで欲しい路線ですし、そこがレーベルカラーの好きなところなんですけどね。

テーマはブレない

主人公のうたも、ミャオ君も、ズーランディア(ゲーム)上ではとてもほんわかしています。束の間現実逃避ができるから、安心しきって本当に幸せそうに見える。それがARUKU作品の魅力でしょうか。

作者様の描くお話は、パッと見ありえないほどファンタジックでありながら、同時にそれを生み出す主人公のリアルで過酷な境遇を突きつけてくる。そんな彼らのために辛い現実世界からの救済として純愛が用意されているかのようにも思えるのです。

本作の主人公は『恋に落ちる花』系統の、理想と現実を両天秤にかけて悩むタイプ。最終的に右田川はきちんと結論を出しますが、結局何も失わない。ミャオ君の正体が知れた時のテンションの低さが気になるけれど笑、それはキラキラした夢のような恋から、日常を形作っていく愛への移行の重みを覚悟したからなのかも…。しかし今回も余韻がすごかった。

作者様は女性の嫌な部分を容赦なく晒してこられるので、なんかあるんかなと思わなくもないです。おそらくARUKU作品世界の女性キャラは現実の象徴なのかもしれない。自分も女ではあるが女の嫌なところがいっぱいあるので、まりちゃんのその後がどうなったかは深追いしないでおこうと思います。

今回は全濡れ場に作者様の気合いを感じました。右田川のモノローグにもありましたけど、キャラの手がゴツゴツと男らしくて、読み進めていくうちにだんだんと色っぽく見えてくるのが不思議。今まで気にしたことがなかったポイントでした。

うたとミャオ君のゲームの世界がすんごく可愛いくって、癒されました。結果二人を結びつけることになった弓崎のアバターもちょっと毒があって笑えるし、ログインボーナスアイテムとしてポシェットを選んじゃったりとか、ポイントを一生懸命貯めて買ったアイテムとか細かいセンスがすごくツボでした。可愛かった…。評価は本編そのものプラス、ゲームの世界に捧げてしまった感じです笑

イラストが!

書影に度胆を抜かれて、お初のタッグ(多分)に歓喜しました。雑誌掲載分+書き下ろしの構成となっていますが、書き下ろしの方がドラマチックで面白かったです。

作者様十八番の外国人と日本人カプ。時代は明治期、主人公の佳依は能楽師です。能楽関係も先生お好きですよね。今回は絵本をモチーフにした、なんと死神もの。和洋折衷ファンタジーです。とにかくイラストがハマっていて、作品のイメージにぴったりでした。

佳依が子供の頃に亡き母親から読み聞かせてもらっていたフランスの絵本。それは、移動遊園地の真ん中にあるメリーゴーランドの前に立ち、たった一人であの世への門番をしている淋しい神様のお話でした。幼いながら神様に同情した佳依は、自分が友達になってあげたいと思っていましたが、大人になったある日、絵本の中のおとぎ話にそっくりな経験をすることに…。

能の保月流宗家に生まれた佳依は、パリ万博で能を披露することとなった若宗家で異母弟・勇舞の付き人としてフランスに同行します。そこで佳依が危険な目に遭うたびに助けてくれるフランス人貴族風の男性と出会い、子供の頃に読んだ絵本と酷似した不思議な体験をしていきます。

前半は佳依が勇舞にえげつないほど苛められまくるんですが、まぁそれは拗らせた執着ゆえ。勇舞はただ、佳依の愛情が欲しかっただけだったんですね。とんだお子さまでした。前半のクライマックス後に勇舞の人格が180度変わりますのでお楽しみに。

後半の読みどころは、一子相伝で保月流に伝わる『冥祭』という謡曲。『冥祭』を残した佳依の祖先との繋がりがさらにストーリーを広げていきますが、最終的に風呂敷はきちんと畳まれます。それとは別に、『羽衣』が頻繁に出てくるのですが、こちらはサブリミナル的に主人公のお役目を暗になぞらえていて、エンディングでの回収でホロっときてしまいました。終盤は色々と詰め込まれていて、片がつくのか焦りましたけど笑

このお話自体がまるで能の舞台そのもののように彼岸と此岸が会する場となっていて、メインカプは物語が終わった後も特別な形で愛を育てていくことになります。それは、長い時間をかけて倦むことなく、芸事と同じように鍛錬し続けたとしても保てるかどうかすら怪しい不確かなものかもしれませんが……と、まぁ、真面目に考えてみたくなっちゃいましたよね。もともとがシリアスな作風の作者様でしたので、、

前後編ともに展開が性急だったのがちょっと残念。もっとネチっこくじっくりと進めてくれてもよかったのに〜とも思いました。構成上仕方がないですね。伯爵のリアクションにクスッと笑わせてもらったり、黒猫がせっせとお手紙を運んでくれたり、お約束のように上等で美味しそうなお菓子が登場したりと和むシーンが多々あり、作品の雰囲気も少しずつ変わっているのねと感慨深い気持ちになりました。ちなみにわたしは作者様の別の作品に出てくるシャンパンプレイが忘れられない読者です笑。あのハードな感じも恋しいです。

頽廃と官能

作者様の単発ものを楽しみにしています。今回は電子で購入。正直なところタイトルがあまり好みではなかったんですが、「ヤッてるブロマンス」を目指されたとのことで、メインカプの関係性には萌えるところがありました。タイトルやイラストを含めちょっと古き良きな印象があって、今作の意図したコンセプトなのかなと思いました。

とりあえず裏社会、女絡みが苦手な方にはおすすめしません。

本作の魅力は柏木と拝島の関係性に尽きます。二人を盛り上げてくれる柏木の住むハイソな世界と、拝島がギリギリ縋りついているゴロツキの世界。表向き良識人の集まりのようでいて実は社会の暗部とも繋がっている、全てが表裏の「海辺の社交界」が出会いの舞台となっているところからして秀逸です。

柏木も拝島もヘテロで女のあしらいはお手のもの。けれど、女性相手なら上手く回せるのに、男同士になると金や体の関係だけでは割り切れない。相手を目の前にすると湧きあがる情動に抗えない様が段階を経て描写されていくのですが、そのシーンがめっっっちゃくちゃ官能的なんですよね…。BLの醍醐味です。

プラス、拾った仔猫が成長したらハンパない美猫だった、みたいな楽しみも。拾った側はいつ出て行っても構わないと思っていたけれど、猫が捨てられていた場所に戻ってしまうのがいつしか忍びなくなっていた…、みたいな。あの煙草のシーン、たまらなく好きだよ〜(何度も脳内プレイバックしてます笑)。

フィクションとはいえど柏木の住む世界の趣味には妙にリアリティがあるので、あの時代の記憶に距離感をもって見られたら完璧な舞台装置の一環として楽しめると思います。おそらく読み手の年代によって抱く印象が全く変わってくる部分かもしれませんが、個人的には洋邦ひっくるめたノスタルジックな映画のワンシーンのようで、ワクワク?ザワザワ笑?して楽しかった。

全体的に良かったんですけど、もう少し二人の恋情の部分に集中したかったような物足りなさが…。拝島のバックグラウンドについてももっと知りたくなりました。恋情についてはSS「あの夏」と電子特典「夜の戯れ」で多少は満たしていただいたかな?

石田先生の絵も進化していて、線が細いのに「ガチッ」というか「みしっ」とした質感があり、大人の色気が増してます。拝島のヴィジュアルがイメージしにくかったので、今回はかなり挿絵に助けられました。