SS付き電子限定版
甘やかされ、我が儘放題に育った愚かで傲慢な王子。
不思議な老人から「真実を写す鏡」を見せられます。
そこに写った恐ろしい未来とはー?
と言った、どこか童話を思わせるお話になります。
これね、大変美しく華やかな印象を受ける表紙ですが、内容としては結構シリアスだしハードなものなんですよ。
でも、めちゃくちゃ面白いんですよーーー!
や、400ページ超えとかなりのボリュームでありながら、あまりの面白さに一気読みしちゃって。
これ、ファンタジーとして傑作すぎる。
そして、主役二人のラブ部分が萌えすぎる!
もうさあ、山場ではブワッとこみ上げるものがありましたよ。
オチには鳥肌が立ちましたよ!
この作品、本当に凄い!!
ちなみにですね、あらすじや作者さんの作風等から、かなりダークなものを覚悟してたんですよね。
でもそんな予想は外れ、どちらかと言うと心踊らせてくれる痛快な冒険活劇の要素の方が強いんですよね。
シリアスだし重い部分はあるものの。
まぁそんな感じで、痛いのが苦手な方もぜひ読んでみて下さい。
内容です。
伝説の英雄王の生まれ変わりの証・薔薇の聖痕を持って生まれたエセル。
甘やかされ放題だった彼は、我が儘で癇癪持ちのどうしようもない王子に育ちます。
そんな彼が唯一心を許して愛を望むのが、かつての小姓で若き子爵であるオズワルド。
実はオズワルドですが、英雄王と共に国を救った偉人で伝説の宰相の生まれ変わりの証・刺草の聖痕を持つ者なんですね。
彼が運命の相手だと疑わず、睦言だけを耳に入れてやりたい放題、傍若無人にふるまう日々。
そんな中、エセルですが、突然現れた不思議な老人により悲惨な未来を見せられてー・・・と言うものになります。
えーと、こちらですね、繰り返しになるんですけど、とにかくストーリーがめちゃくちゃ面白いんですよ。
や、そもそもね、最初読んだ時、序盤の主人公があまりに酷くて、ドン引きしたんですよね。
こう、酒に溺れ、すぐ癇癪をおこし、周囲に当たり散らしてあまつさえ暴力を奮う・・・。
えっ?
これ、本当に小中先生が書いた受け?
てな具合に。
また、こちらも小中作品で一番と言っていいんじゃないかってくらいに攻めの性格が悪くてですね。
宰相の座を狙う野心バリバリのオズワルド。
彼は、エセルの本当は孤独な心につけ込み、彼の恋心を利用してのし上がろうとする。
こう、睦言を囁きながら、心の中ではコケにして見下げてって感じで。
エセルですけど、まぁ本当にダメ人間に思えるんですけど、そこは小中先生。
実はどこか憎めないんですよね。
侍女に癇癪を起こしていても、ただ引っ込みがつかなくなってるだけで本心では焦っていたり。
あと、そんな我が儘放題ではありながら、オズワルドへの思慕は一途で可愛いと言いますか。
こう、根っからの悪人とかでは無く、ただ単に何も教えられてない可哀想な子供なんだなぁと言う印象を受けるんですよね。
と、ここまでは、愚かな王子とそんな彼をいいように利用する周囲や攻めと言う、なんともほろ苦い展開。
が、ここからがこのお話の本当の面白さと言いますか、真骨頂と言いますか。
エセルですが、謎の老人によりこのままだと訪れる悲惨な未来ー。
自分は死に、国は崩壊し、宰相として最後まで国の為に尽くしたオズワルドと弟王子が殺される・・・。
それを知る。
そして、愚鈍でどうしようもないと思っていた。
そんな現在の自分が形成された、周囲の思惑を知る。
そこで、悲惨な未来を変えるべく、心を入れ換えて立ち上がる。
いや、主人公成長ものの側面もあると思うんですけど、ここからの彼の反撃だったり、腐敗した国の立て直し部分だったが、とにかく面白いんですよ。
こう、一人一人味方が増えてく様だったり、相手の裏をかこうと知略を巡らす様だったり。
もう、ワクワクさせてくれる。
またそんな中で、一途で思いやりがあって賢くてと言った、主人公の本来の姿が明らかになっていくのも胸がすくと言いますか。
どんどん魅力が増して行く主人公の姿に、惚れ惚れしちゃうと言いますか。
ちなみにこちら、しつこいですが、攻めの性格がめちゃくちゃ悪いです。
彼の内心と言うのはかなり複雑で、もう読んでると、愛と憎しみは紙一重なんだなぁと言う感想しか出てこない。
そう、彼の中で愛が勝ってるのか憎しみが勝ってるのか、今一分かりにくかったんですよね。
分かりにくかったんですけど、山場でようやくスッキリすると言うか。
こいつ、ただ単にめちゃくちゃひねくれてるだけじゃん!みたいな。
てか、実はかなりの執着系じゃね?と。
そして、アホだな!と。
もうね、こんな緊迫したシーンなのに、申し訳ないけど萌え転がっちゃいましたよ。
この後の「聖痕」のオチでは、グッときちゃいましたよ。
ああ、二人は真実、運命の相手だったんだなぁと。
胸にこみ上げるものがあると言うか。
と、そんな感じでとにかく素晴らしい作品でした。
ラストがですね、余韻の残るとても素敵なものなんですよね。
私はこういうラスト、ついついホロリときちゃうんですけど。
最後まで、本当に素晴らしかった。
読み始めた頃は、エセル王子があまりに嫌なやつすぎて感情移入ができず、これ最後まで読めるか?と怪訝な顔でページを捲りました。
ですが、起承転結の承の部分あたりから途端にストーリーが転がり出して、読む手が止まらなくなって、深夜0時から読み始めたものが現在朝の6時ですよ……。
この歳になって徹夜して本を読むなんて…。
寝る前にちょっと読んで寝ようかなって思ったら、とんだ大火傷みたいになっちゃいましたが、私は後悔していないです!!!!
今回はBLなんですけど、王太子による国家再建物語が主軸です。
BLじゃなくとも、楽しめる骨の太い内容でした。
ゼロどころかマイナスから始まる王太子国家再建計画は、徹夜して読んじゃうほど面白いです。
でも、BLとして、きちんと恋愛模様も押さえてて、王子の恋のお相手オズワルドともマイナススタートがどんどん引き付けられてくのがたまらない!!
最終的に面白いこと書いてて、最近流行りの溺愛とか執着とかそんなものを通り越して、「俺の心のすべての感情があなたに向けられている。愛憎、好悪、嫉妬、羨望、執着……すべてだ」ってすごくないですか?
読みながら、私の胸中では(心全部系BLじゃん。まさしく、愛じゃね?いやまてまて、愛じゃ片付けられんくね?クソデカ感情すぎん???)ってなりました。
小中大豆作品の中でも重厚めかもしれないです。小中先生ファンなら絶対買うことをおすすめします。
あ。あとあと、小中作品なので、刃傷沙汰はありますが、刃物出てきた時点でこれぞ!って感じして好きでした。やっぱ、小中作品は刃物でクライマックスを迎えてほしいですよ、私は。
堂々の1400ページで、ほんとねるねるね練るくらいには手が止まらないので、覚悟してページ開いてください。
最近、BL小説界ではファンタジーが大流行で、私としては若干食傷気味だったんですが、こちらはお話の運び方から何から大変面白かったです。
「就寝前にちょっとだけ」と読むのはお勧めしません。きっと止まらなくなって、次の日、大変な目にあいます。
私が特に面白いと思ったのはオズワルドのキャラクター。
貴公子然としているのにぜんぜん貴公子ではない。
いかにも悪人なのに全く悪人ではない。
おまけに、貴公子を装っている訳でもなく偽悪者という訳でもない。
でも本来、人ってこんなもんじゃなかろうかと思う訳です。周りの状況にあわせて変化していて、白黒はっきりしている訳じゃない。
そしてこのオズワルドが抱く『気持ち』もはっきりしないものなんですね。
自分に依存するエセルを軽蔑しているのにいざ離れられてしまうと焦り、どんなに自堕落生活をしても咎められないエセルを激しく憎みながらも同じくらいの強さで愛してしまう……この複雑さ、そして人間臭さにクラクラしちゃいました。
こんな風になっちゃったのは、エセル同様、オズワルドも親に愛されない子どもであったからだっていうのがね……エセルっていうのは『もう一人の自分』なんだろうな。だからこそ、お話の後半部でのエセルの『変身』と言ってもかまわないほどの立ち直りは、オズワルドを激しく感動させたと思うのですよ。
私、個人的にはこのお話を『攻めザマァ』だとは思わないんです。
意識していなかったから自分では気づいていなかったけれど、エセルが自分の運命を引き受け、なおかつ世界に立ち向かうことは、オズワルドの『叶わぬと思っていた夢』みたいなもんだったんじゃないのかなぁ。
ひどい目に合って反省するのとはちょっと違う。
彼はとんでもない喜びを手にしたんだと思うんですよね。
読む手が止まらず、最後まで一気読みしてしまいました。
電子なんで、本の厚みが実際わからないため購入して開いてから、うお!400P以上ある!と気づいた次第で。
なんというか、骨太な話でした。
単にBがLしてるだけのお話ではなかったです。
オズワルドの属性が「腹黒」とあったので、読む前はエセルを周囲から孤立させて囲い込む系なのかと思ってたんだけど、全然違うんですよ。
オズワルドは、エセルのことなんかこれっぽっちも好きではないの。
それどころか心の中では見下げてるし、立身出世するための踏み台でしかない。
ある日、エセルが不思議な老人から見せられたのは、過去の真実、そして今、それから訪れる悲惨な未来。
それによりオズワルドの本音を知ってしまい、愕然とするエセル。
そこからお話は大きく動き出すんだけど、オズワルドへの想いとかひとまず置いておいて……という感じになるんですよね。
だって、正直惚れた腫れたやってるような状況ではなく、やがて国が滅亡するか否かという崖っぷちだから。
そこからのエセルは、ただただ素晴らしい。
ブラボー。
なんか、エセルが置かれてきた状況が、改めて本当に不憫で。
幼い頃から食事は一人でポツンだったエセルの状況とか泣けてくるし、オズワルドが側にいてくれるようになったらそりゃ必死で追うよねと。
だって普通なら、無条件に抱っこ抱っこ抱っこぉぉぉ!!の時期だもの。
で、オズワルドの心中がこれまた複雑。
最初はひたすら憎しみでしかないような感じなんだけど、読んでいるとそれは憎しみなのか愛なのか判別できないというのかな。
最後に一度だけあるベッドシーンでの会話に唸らせられましたね。
萌えすぎて死にそうです。
まずそれまで一応ですます言葉だったオズワルドが自嘲のあまり「‥‥なあ、笑えよ」と言葉遣いが変わったところにキュキューン。(私だけ?)
そして最後の最後に「エセル。愛している。あなたが俺のすべてだ」というところが、本当に本当に本当に良くて。
というのも、ベットシーンだというのに「大嫌いだ」からスタートし、もっと甘い言葉をとエセルに泣かれて「愛してる」と言うものの「愛だなんて言葉だけでは言い表せない」と言い始め「俺の心のすべての感情があなたに向けられてる、愛憎、好悪、嫉妬、羨望、執着」などとごちゃごちゃ言うわけです。
でも、このごちゃごちゃ言ってる内容が凄まじくて萌える。
そういった複雑な感情や言葉全てが積み重ねられてきたうえで到達した「愛している」「あなたが俺のすべて」なんですよ。
「エセルに対する想いについて」をオズワルドに書かせたら多分凶器になりそうな分厚い本が完成すると思うし、そういった複雑な感情をオズワルドも持て余しぎみだったと思うんです。
そんな彼が、最後の最後に「愛している」というシンプルな言葉を使うに至った。
ここが、きたーーー!!!!!って絶叫したくなったし、「あなたが俺のすべて」というのも真実だなーと思えて。
これらの「愛している」と「あなたが俺のすべて」の重みが凄まじいとこが好き。
それに、それまでコイツ一筋縄じゃいかねーな!って感じだったオズワルドが初めて見せる「幸福そうな笑顔」ってやつにも、「最後まで……私のものにしていいのか」とオズオズしちゃうところにも、キュンとさせられちゃったわ。
くっそー!と思いながらも。
そして最後のしめくくりが凄く良かったですね。
他作家さんで申し訳ないのですが貫井ひつじさんの「狼殿下と身代わりの黒猫恋妻」の最後のたった一文なんですが、ここがとても好きで、こういう生涯を後世の語り手によって締めくくられているようなお話もっと読みたいなーと思っていたところだったので、嬉しかったです。
そしてマルジン……。
一瞬、もしかしたらエドワードと?と思ったけど、「エドワードの子孫たちが」とあったので、エドワードは妃を持ったんだなと。
で、電子の特典SSは、「ある家庭教師の決意」で、マルジン視点なんですね。
その最後に「生涯エセルに仕えた。エセルよりもオズワルドよりも長く生きて、代々の王太子の家庭教師を務め、やがて王となった彼らを〜」とあるんだけど、どんだけ長生きしたのマルジン……。
だってエセル達も早逝したわけではないんですよね。
そして「代々の王太子&王となった彼ら」ということは、エドワードの次の次くらいまでは面倒を見たってことでしょ?
そこにはマルジン本人や周囲もあずかり知らぬ何らかの呪術がかかってるのかしら??
小中先生だし笠井先生だしマストバイ。たまらんかった。王たるものとはと泣きそうになるシリアスお話、本編440Pほど。仮想の中世ヨーロッパ、カタカナ名前が大丈夫で国の興亡話が好きな方はぜひぜひ。どっぷり浸れます。こういうの大好きなんで神にしました。電子、番外編付きだったら、絶対買おう。
ルスキニアの王太子エセルはいつも不機嫌。侍女たちに大概ひどいことをしていますが、建国王の生まれ変わりと言われる薔薇の形のあざを胸に持っているので、国民の心のよりどころとなっています。建国王に仕えた名相の生まれ変わりと言われる刺草の形のあざを持っているオズワルドも、エセルに良くしてくれていると思っていたのですが・・と続きます。
攻め受け以外の登場人物は
マルジン・カレグ(受けの家庭教師)、アンナ(父王の側室)、エドワード(アンナの子)、オリバー(受けの専属騎士)、父王、フリーダ(父王の側室)、その他実権もつ貴族たち。マルジン、好き。(なんとカラー口絵にも登場しちゃうのだ!)
++好きだったところ
機嫌悪い超わがまま王子が、そうならされていた原因を取り除き、自分の周りの状況を冷静に把握したときの、絶望感。そこからの地道な這いあがり作戦。そこが良かった。
周りの策謀により無知な状態におかれた王太子。唯一心を許していたオズワルドの思いを知り孤立無援になったはずなのに、そこから「好きな人がひどい目にあう未来を回避しなくては」と頑張る。この王子、親からも十分愛されていなかったからか、自分のことを愛してくれる人、大好きな人のことをすごく大切に思うのです。昔侍女だったアンナ、兄と慕ってくれるエドワード、そして自分を蔑んでいるであろうオズワルドも。真実を知り、味方を少しずつ増やし、未来をなんとか変えていこうと足掻く姿がすごく胸にせまってきたんです。早めにマルジンが参入してくれたから孤独感が少し薄まったのも良かったでした。でないと苦しくてしんどすぎた。いやほんと善人。王たるべき素質が生まれながらにしてあるという方。
オズワルドは最初「感じ悪っっ」てところでしたが、だんだん複雑な彼の心境がわかってきて、マルジンときゃいきゃい言い合うところも良く、最後は本当に「あー良かった!」です。「一生かけて証明すれば」という彼のセリフが大好き。信じようって気になりますもん。
そうですね、攻めに惚れたというよりかは、受けの頑張りに涙し、敬服するお話でした。マルジンもいい味だしてましたし、エドワードは可愛いし、読み応えあるけどちょうどいい長さだし!国の興亡話は楽しい!(どうしても付け加えたい挿絵話!カラー口絵1枚目が超神です!金髪碧眼万歳!)