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神作品

PREMIUM レビューアー

女性chikakumacoさん

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世界であなただけ。僕らのエデン。

うわああああ。泣きました!しとどに泣き濡れました。
これは、お久しぶりの。浄化系BLなのではっ⁈ 心の中のスタンディングオベーションが鳴り止みません‼︎
そもそも途中から。この暗い倉庫だけが舞台の、2人芝居の様な様相を呈してたと思うんですよね。西央くんの、喬の、長い長いモノローグ。何ページにも渡る長台詞。
いや、これは舞台で観たい。諸々無理めなシーンはあるけども!ソコじゃなく。
これは、しち面倒くさい事を、自分の負荷としてくだくだしい説明をしていたりするけども。シンプルに美しい、恋の物語なのだ、と思う。そしてそれは基本的で紛れなく純粋な。人類の営みで、未来永劫変わる事の無い、愛の物語なのだと。

上巻で、オメガバースの黎明期を体感する事になった西央くんと喬。西央くんが、喬の様な、頭が良くて優しい、優秀な男の子に出逢えて良かった、と私は安堵していたんだけど。
支配者であるところの α の側面をも喬は体感してしまう事となる。西央くんを守りたい、優しくしたい、この数日間の間に恋に似た感情の芽生えを感じる一方で、凶暴なまでの西央くんに対する支配欲に駆られてしまう。自分の中に沸々と湧き上がる黒い感情に怯える喬。
悪魔の様に、自分の精神に響く声もまた、紛れも無く自分自身なのだ。
この嫌な感覚と闘っている頃。西央くんもまた、こんな事になる前に付き合い始めた彼女の事よりも、喬の事を切なく想っている。ここら辺は、オメガバースあるあるで。
身体を触られて嬉しいのも、抱かれたくて、または抱きたくて仕方ないのも、互いに相手の方は、性欲処理への欲求なんだろうと切なく想いあっている。
自分ばかりが好きで、好きで、仕方ないのだと。
喬は気付く。支配したいのでは無い事を。西央くんに選ばれたいのだと。
それはもしかしたら。相手を好きになる事よりも、支配する事よりも。ずっと難しくて。素晴らしいこと。愛情を乞い願う事。

そうは言っても、まだ高校生で。親に、庇護される存在の子供なだけの2人。高校生らしく、ヒートの終わりをただ、秘密基地でお泊まり会をする様に穏やかに寝む夜。
夜が明けて、それぞれの日常に戻る前に。ひたむきな気持ちを言葉にする2人の、清々しい朝には涙。もうずっと涙。2人の間に起こった事は。喬の考察だと、人類の進化の途上かもしれないと言う。ヒートからずっと平熱が高いのに、平気な身体になったのも。ウイルスと闘う免疫機能が高まったのかもしれない、と。
おや。と、ここで未曾有のウイルスに見舞われた私たちの世界を思うとき。
そんな未来があっても良いな、と思うのだ。
ラストには、おそらく世界中で、始まっている。驚異的な人類の進化を予感させて終わる。
この舞台を見終えた明日は、昨日よりちょっと清々しい気持ちになれる。
私たちは明日もまたマスクをして出掛けなくてはならないけれど。人類の進化はもう始まっていると、信じたい気持ちになっているのだ。

あの、肌の熱さを。忘れられるわけがない。

ずっと。紙面から饐えた匂いが漂っている様に感じていたのに。
本編は4年後。闇カジノを経営する矢代からはその匂いはしない。パリッとしたスーツを着こなして、歳は重ねたかも知れないが、やはり美しい。美しいのだ、この男は。
三角さんに組に戻る様に言われてもいるが、矢代にその気は無い。

百目鬼は天羽さんの計らいで、小さな組に所属している。三角さんの傘下では無い。
顔に遺った傷が、凄みを足していて。百目鬼はやはり寡黙で。忠実に働く。
言葉少なく、自分の事を話さない。綱川は、百目鬼を気に入ってはいたが、やはり素性を知りたいと思っていた。
別の件を追う事で、百目鬼は矢代と再会してしまう。
綱川に、「人は変わるもの、変われるものか?」と問われた矢代は、「変わるもの」と応えたが、綱川は「どうせ変わらない」と言う。
これは。百目鬼のことか。矢代のことか。
この世界から、足を洗って欲しくて。捨てたのに。百目鬼は紛れも無く極道になり「変わって」しまったかの様に見える。
一方で、矢代のその美しさは「変わらない。」
矢代が情報を得る為に、暴力的な刑事との情交を交わしていることも「変わらない。」
それを知って、カッとした百目鬼は。「俺とも出来ますか。」と矢代に詰め寄る。というところで、次巻へと続く。此処は綱川の家なので、まさかおっ始めるとは思えないし。矢代はぬるりとかわすだろう。
それよりも。無防備な色気を漂わす矢代の身体は綺麗で。細くて。大きな体躯の百目鬼に、簡単に押さえ付けられてしまいそうなのが、脆くて。哀しい。

前巻までの、鬼気迫る抗争は、平田の死で終息したかと思われたので。4年後のこれは、新章のスタートを切ったと思って読んでいる。夜の様な表紙は、白々と明けて。
昼日中の明さを漂わせると信じていたのに。また闇夜に戻ってしまったかの様に。
黒々とした表紙。闇の中、独り。百目鬼だけが描かれた表紙に暗澹たる気持ちになる。
闇の中で、百目鬼は何を想うのか。一途に想いを寄せる彼の胸中に浮かぶものは、ただ矢代の面影だけか。

ところで、平田との死闘により、矢代が片目の視力を失っている事に驚いた。(そして、また私は6巻を読み直す事になり。そこに行き着くまでの、前巻までをまた、読み直す事になる。)冒頭で、矢代がよろけたり、ドアにぶつかったりするのはその為だ。平衡感覚が危ういのだろう。
それはおそらく、身体の他の機能にも影響を及ぼしている筈で。私はそれがとても悲しい。
そんな矢代に、七原と杉本が変わらず就いている事が嬉しい。七原は矢代の変化を知って、側で支えている。
ヤクザに見えない様にと前髪を下ろして、ラフなスタイルで。刑務所にいる竜崎を面会に行くエピソードも楽しい。竜崎が赤面しているのを面白く思っている七原。
七原が居てくれるとホッとさせてくれる。

三角さんが、天羽さんの目を盗んで、若い女と「夢の国」で遊んでるのは何か、可愛いけどショック〜。まぁ、天羽さんが「姐さん方」と言うくらい何人も愛人を持っているのはさすがだけど。三角さんが真実に愛した女性は、天羽さんの母親だけなんだろう、というのをおそらく天羽さん自身が知っている。というのもニクい。三角さん、カッコいいんだから。

4年という歳月を経て。変わるものと変わらないもの。彼等の行き着く先には何があるのか。この闇は明けるのか。どうか。死にゆく諚にない事を願う。

人騒がせな彼等の行く末を見届けて。

ああ。結局ね、もの凄いハタ迷惑なバカップルなんだよなぁ、って。
呆れながらも。ジワリ涙する。壮大な「構ってちゃん」同士の恋の行く末を。
どうか見届けて。

そもそも。内海は、自分を気にして優しくしてくれた、自分を見つけてくれたと赤嶺を慕いそうな心持ちだったのに。その後、無理矢理犯されて。そんな事を直ぐに忘れて、冴木さんといる時だけ笑顔を見せている赤嶺に可愛さあまって憎さ倍増となっていた。
ただ悔しくて。憎くて。その気持ちが自分を見てほしいという。恋そのものだったと気付く。で、いいのかな。そんな風に割り切れるものでも無いのだ。だって。6年。6年間もの間、ただ赤嶺への憎しみだけが、内海を生かし、突き動かして来たのだから。

そして。赤嶺も。ただ叶わぬ想いを上司である冴木さんの為と思って、会社を裏切ったのに。当の冴木さんは自分の気持ちを知って尚、その気持ちを利用したのか。
最も好きになって欲しかった人に、見てもらえない、切ない、苦しい想い。
それが内海が抱いている気持ちと同じだと知った時。赤嶺はじっとしていられなくなる。

そもそも、赤嶺、内海、元は冴木も勤めていた会社が結構ブラック。社長は反社と繋がっていて、危ない橋を渡っているし。内海が犯される原因となった会社の飲み会にしても、飲めないと言っている社員に飲酒を強要したり。ロクなものでは無い。挙句、社員を人とも思っていない。単なるコマだ。利用しては捨てる。消そうとすら、するのだ。
何を扱っている会社なのか。
内海は、吸収合併した会社に残るというが、この会社が黒過ぎてゾッとする。

どんなに傷つけられても。心削られ、痛みを伴っても。
この感情だけに生きる。
些か唐突にも思えるラストへの疾走が、2人の肌を突き破る様で。とてもハラハラしました。
激しい感情をぶつけて。ぶつけられたから。今、好きだと言えるのかもしれません。
命尽きるのかと思われた、ラスト周辺のぶち抜きのキスシーンが壮絶で。
よもやメリバかと思ってしまいましたよ。
強い感情に支配された6年間を忘れる事は無いけれど、2人で生きて行くと決意した2人は、きっと。
これからはずっと大丈夫。そう思わせてくれたラストでした。
紫能了先生の、前作「主張ホストNYU BOY」を読みたくなって。今、再読して。やっぱり泣いてしまったんだけど。紫能了先生は、強い感情と「その人らしく」生きることをテーマに描き続けて行く方なのかな、と思いました。次回作もとても楽しみにしています。

修正は白抜きなんですけども、とても激しくエッチぃです。そんな馴れてもいない狭いところにグイグイ入るのがやっぱり不思議。

8人の戦士 2 コミック

池玲文 

王蛇合戦の前日譚と甘あま後日談。恋人である前に戦士なのだ。

もうコレで完結編なんて、寂し過ぎる‼︎
本編も物凄い読み応えでは、ありますが、各カップルで、1巻ずつみっちり描いて欲しい案件でもあったりするのです。作者の想いと読者の声に比例して、割かれた様に思えるページ配分だと思います。なので、マシュー×ハートが、一番きっちり描かれているのが嬉しい!私もこのカップルが一番のお気に入り♡
彼等の出逢いから、結ばれるまで。を詳しく詳しく描いてくれています。んもー!
島で、ある意味純粋培養されていたハートは、王蛇合戦に出場する戦士になりたい!と思って来ただけなので。自らがエッチなお誘いをしているとは露程も思っていない。引き締まったお尻をプリプリ見せびらかし、その鍛え上げられた肉体に反したピュアっピュアな可愛らしさに、マシューはイチコロ。けど、彼はイギリス仕込みの紳士でもあるので。とーっても優しいんですよね。日々のお尻誘惑の波状攻撃にも耐えに耐え、ハートの信頼を培って行く。ハートも留学するだけあって、文化の違いを受け入れながら勉学に励んでいるので、ピュアと言っても良識はある。「お尻を誉められるなんて、最高の口説き文句だよっ!」照れながらマシューの好意を受け入れるハートの初々しさよ。その愛らしさにマシューは、マシューは!止まれません!

続きまして。驚かされたのは、月の一族ブランの、ロロ様への片恋。ずぅーっと「タイプじゃ無い。」と、言い切っていたロロ様も、強引だったブランの、寂しい生い立ちや、思わぬ健気さに触れて。つい、絆されちゃうんですよねぇ。いや、だって。ブランがあんなに可愛い子になれるなんて思ってもみないじゃないですか‼︎ そう、戦士たちは皆んなピュアっ子。これが「好き」という気持ち、これが恋。そんなの分からないままだけど。ロロ様の「ビキビキーンッ!」を健気に受け入れるブランはまさしく恋する男の子。

めでたく婚約した、ユダとピサウ。牧歌的な島のアナログさにはそぐわない程の、先進的な仕事。ユダは、3Dプリンターで何でも作れちゃう優秀な技師だった。っていう。自然に囲まれたこの島々では、意外にも先進国に劣らない産業も発達している様子。現王様であるサーフィアも世界でも有数のビジネスマンみたいだし。
ピサウを好きな気持ちでは誰にも負けないユダだけど、やはり前作同様にピサウのお兄さん達には疎まれている様子。ピサウは兄達に愛されて育った可愛い弟なのだから。
大掛かりなペニスサックは正装みたい。結婚式にも装着!

美しいレジを抱く、王・サーフィアの濡れ場を挟んで、憑依体質のヴァンピアとサイコルナガ。癒しの一族の筈なのに、ヴァンピアは精霊が憑依すると鬼畜責め。けど、サイコルナガとしては、可愛いヴァンピアを抱きたい気持ちもあって。このカップルのみ、リバップル。
うーん、男前のサイコルナガは実は責め立てられるのも好きっていうのをヴァンピアは見抜いてる⁈

番外編でしっかり描かれてたからか、戦士の中で一番子供のタリングちゃんに執着する叔父の話はサラリと。タリングちゃんの母はそれを絶対に許さない様子。そりゃね!

カバー下、スモウレスラーは「王蛇合戦」をしているわけじゃないよ!の話。
確かに、誰かの当たり前は、変なことなのかも。「変じゃない国なんてないのかもしれない。」という、池先生のコメントがクスッと笑わせてくれました。
修正は真っ白抜き。えーっ⁈ 番外編、あんなに見えてたのにーっ⁈っていう驚き。

人間とそうで無いもの、を分つものは何か。

前半はやはり胸クソで。読み手側からしてみれば、些か早急にも見えるのだが。
とにかく。進藤は、「としおさん」を引き取る決意をする。進藤は、性的にとしおさんを見ていないし、そういう「使われ方」をすべきでは無い、と主張する。
「それ」に憐憫が湧いたのか、そういう感情は良くないよ、所詮少年は「鉄と肉の塊」なのだから。と、進藤を押し留めようとする、叔父や医師、同僚たち。
この、同僚のクズ感が凄い。進藤が一晩、自分の部屋に「としおさん」を泊めた事を下衆の勘繰りも甚だしく。「それ、そんなに良かった?」と、言い放ち、進藤の目の前で「としおさん」の股を開こうとする。これまでなら、「としおさん」は素直に脚を開いたろうに。しいつの間にか情操が育っていた「としおさん」は、必死で抵抗をするのだ。それは羞恥。強い拒否。
進藤が「としおさん」に教えてきた事。それは、「としおさん」も一己の人間であるという権利。
叔父は「そんなに気に入ったのなら新しいのをくれてやるのに。」とほざき。
医師は進藤に「失望した」と言い。
同僚は、「そればっちいから、新しいのを貰えばいいのに。」と言う。
研究所は狂っているので。第二、第三の「としおさん」を作るのか。
医師は、「私たちの罪」と言っているので。今後はそれを辞めている未来を期待したいのだが。そこは詳しくは描かれていない。不穏なのだ。

物語の当初、やはり「としおさん」を肉塊扱いしていた為か。以降、進藤は、「としおさん」に丁寧語で話す。「としおさん」を人扱いしているという表現なのか。
ここでハタと気付く。「人でなし」から人になったのは、進藤だという事を。
およそ表情の乏しい進藤もまた、「としおさん」と過ごす内に、自分の中の「人間」を見つけた事を。
進藤は決して。「としおさん」を性的玩具として扱わない。「としおさん」は雛鳥の様に、初めて優しく接してくれた「しんどお」に懐く。そういう風に作られたからなのか、多分「しんどお」に抱かれたがってもいる。ただ、哀しい事に、進藤は決してそれをしないだろう事を私たちは知っている。進藤は人だから。

時々、進藤がキスをする。小さなギャグ絵から、そのシーンだけが、美しくて。生々しくも見えて、泣きそうになる。「としおさん」にとって、それは「ご褒美」で、進藤にとっては、それはまぎれも無く「愛情」なのだ。

このあと、延々と続く可愛らしい2人の、何気ない日常が。錆びた夢なのか。
私にはとても考察し切れない。
気付いた事が一つある。絵は1巻に比べて、この後に続く「右」と「左」に続くものに近く。柔らかく、優しくなっていて。その事に私はなんだかホッとする。

信じ合うということ。愛するということ。

私も、何も考えずに右、左、と読むのが順序なのだと思っていました。
中には左、右という方もいるかもしれません。私は本編を読むのが恐ろしく、右→上下巻→右→左、という順番で読み進めたのですが。結果、この読み方で良かったと思います。
時系列的にもそれが自然な気もするのです。
もちろん。それは個々人の自由な選択だと思います。

穏やかに、優しく。2人きりの世界で生きて行けたら良いのに。
生きて行くという事は。社会性を身に付けるという事。人はどこかしら社会と折り合いをつけて生きて行かねばならないという事。
「としおさん」は「えみちあ」という、近所の子供や、よく行く商店の親父など。小さな社会と束の間、繋がりを持っている。もとより、進藤は「としおさん」を飼い殺しにしたいわけでは無い。「としおさん」があまり難しい事が分からない、という事を知っているからこそ。「としおさん」に生きる上での選択の自由がある事を伝えたいのだ。
だが。周りはそんな風には見てはくれない。進藤が「としおさん」の事情をひけらかし、説明して回る事でも無い。
「えみちあ」の母親の立場にしてみれば。それは容易に理解出来る事だ。彼女が悪いのでは無い。得体の知れない独身の男が、ひっそりと少年と暮らしている。親子っぽくはない。しかも少年は学校へ行っておらず、言語に障害がある。大切な幼ない一人娘をそんな得体の知れない男の子と2人きりにさせたく無い気持ちは分かる。何かあってからでは遅いのだ。
小さな社会の中で、それは。いた仕方ない事だと分かっているから。分かっていても。進藤は辛いのだ。なので、些か急なのだが、進藤は引っ越しを敢行する。
それは、小さな怒り。やるせなさ。普段から静かで感情を波立たせない様にしているかの様な、進藤の感情が揺れ動いて。進藤はただとしおさんを守りたい、と思っている。

新しい土地。新しい場所。引っ越しの荷解きの際、としおさんは奇妙なものを見つける。
それは。自分に酷似しているけれど、記憶に無い、自分の様な写真。
遂にこの時が来たのか。進藤は、彼に出来る精一杯の気持ち。常の様に、出来る限り、淡々と(している様に見える。)としおさんの事情を伝えるのだ。
脳をいじられ、セクサロイドの研究の為に。記憶を全て失っていること。
それは、当時のとしおさんにとって。ただ一人妹の為であった事。
今後どうするのかは、としおさんが自分で決めて良い事。
ここからは、もう。涙、涙で、泣きながら読むしかありません。
普段から、感情が欠落しているかの様に、静かな進藤の胸の内を思うと。
そして記憶を失くしても、「としおさん」のとしおさんである優しい本質は何も。何一つ変わらない、ということ。
妹さんの姿を遠くからそっと見守るとしおさんの優しさにも涙、です。

本文中で、進藤の語っていることが全て。進藤にとって。「としおさん」は「類なき存在」であって。それは恋とは違うかも知れないけれど、紛う事なき「愛」なのだと。
切なくて美しくて、歪なんだけれども。とにかくこれは愛の物語なのだと思ったのです。
とてもとても辛くて、沢山涙したけれど。全部読めて良かったです。
いつまでも二人で、穏やかに。生きていて欲しいと思います。
「としおさん」は大人になる事は無いのですが、進藤は「としおさん」を遺して死ぬ事になるのでしょうか。それとも。としおさんが、いつか劣化して動かなくなって、亡くなってしまうのでしょうか。そこまで考えて、涙が止まらなくなりました。

緩慢に続く、それは夢か現か。

非常にキツい物語の後に長く続いていく、後日談。
優しくて、可愛いくて。その事に私は涙してしまう。
進藤は下巻の後半から、既に「としおさん」に様々なものを与えている。義手。感情や、お金や、身の回りのこと。生活をするということ。
「としおさん」は、素直に愛くるしく。小さな子供が初めて見る世界に感動して行く様に、「しんどお」を彼なりに愛し、「しんどお」の為に「出来ること」を自ら見つけて行く。
初めてのデート。誕生日。「ばあすでぃぼおい」。初めての贈りもの。「しんどお」の為に毎日作るお弁当。「としおさん」にとっては、全てが新鮮で、何もかもが「しんどお」に貰ったもの。
私は、物語の発端の上下巻を読むのが恐ろしくて。これが甘あま後日談だと分かった上で、先に読んでしまったヘタレだけど。それでもジワリ来るものがあって。
そうして上下巻を読んでから。これをまた読み返してみると。ジワリ来るところでは無いのだ。一度読んだのに。今度は号泣してしまった。

「…オレがとしおさんにしてやれることなんて、高がしれてる。」
「…もらってばかりなのは、オレの方だと思いますよ。」

としおさんが一己の人として扱われ、「うれしい」も「楽しい」も。まぁ、たまにしょんぼりも。全て「しんどお」と培った世界。そして。むっつりと自分の殻の中で淡々と生きて来た進藤にとっても。人として生きる路を見つけた瞬間。
進藤もまた、「としおさん」に寄せている気持ちが紛れも無く愛情なのだと気付く。
進藤の、これまでの生き様や育ちは描かれていないので。彼がこう、「割り切った」性質に育った経緯は分からない。ただ、進藤もまた。「としおさん」との静かな生活を通して血の通った人になれたのだ。(感涙)

上巻にあった様な、「夢」をもう。彼等は見ない。これはまた、彼等の「錆の夢」なのか。
それも分からない。ただいつまでも。小さな幸せの積み重ねの中で、彼等の「生きて行くこと」が続いて行けば良いな、って願っている。

拒まない男 コミック

三月えみ 

幸せなら、それも合法。目眩く展開に酔わされて。

はぁ〜。嘆息するしか無い。何なの⁈ オシャレなの⁈ 目眩く展開に、ドギマギ。
カッコいいオシャレ映画を観せられた様な。この充足感。心の中で、私はスタンディングオベーションを高らかに贈る。何なの、もぅ。素晴らしいとしか言いようが無い。

探偵業を営む黒瀬は、比較的大手のホテルの美麗コンシェルジュ、白石律に惚れている。
隙のない優秀なホテルマンである律は、時々黒瀬の有能なアシスタントもしている。
律は、探偵業に興味があったと言うが…。
ホテルマンは決してお客様の情報を漏らす事は無い。
対して、探偵は依頼人の要望に忠実に、調査対象を探る。
コレは。嘘と秘密の攻防戦なのか、と読み手側に思わせておいて。まぁ、その通りなんだが。互いの思惑を越えて、物語は核心に迫って行く。
黒瀬は律への愛情に眩惑されているだけなのか。素直に身体を開く律の言葉に嘘はあるのか。

ヤルことヤリまくってしまってから。『結婚したい!』と本気で願い出る黒瀬。どうやらハニトラでは無いものの、恋という本質を分かっていない律。
分かっても無いくせに、周囲の人も本人をも巻き込んで、人生の目的を黒瀬そのものにして生きて来た律の、完全なるストーカーものとして読めてしまうんだけど、彼等をずっと見守り続けて来た諒太さんの、「幸せなら、それも合法」という言葉が全て。
愛情が上回っていて、相手が喜んでいれば。それは外野がとやかく言う事では無いのだと。
本文中で全て回収されて行く気持ち良さとは別に、描き下ろしの、「もうひとりの拒まない男」視点からの裏回収とでも言うのかな、種明し的なモノにもクルものがあって。
オシャレの上にオシャレの上塗り的な。温かさとカッコ良さに痺れてしまうのだ。

同性愛を差別され、父親に見捨てられ、引きこもりのニートであった頃の律は、コロッと太っていたのに。引きこもりを脱して、徐々に美しく成長して行くのも良い。
黒瀬のアシスタントをする時、気分を出しているのか、何やら「細か過ぎるモノマネ」的なコスプレをしているのも可愛い。特に、ピシッと髪を撫で付けたホテルマンスタイルとのギャップがイカン!コレは萌える。何を着ても『かわいい。』と、隣でデレデレしている黒瀬もいい。
普段澄ましている、ホテルマンの顔が快楽に乱れるというギャップももちろん良い!
何重もの意味で。とっても良いのだ。

同性愛者である事は、社会的に大っぴらにする事は、簡単では無い。そういう主題を盛り込みながら。周囲の人たちや本人の苦労や、過去に置いて来た気持ちをも曝け出し、浮き彫りにして行く。暴いて行くと言っても良いかもしれない。
律の父親との訣別や葛藤、それを見守り続ける周囲の温かさ。冒頭に登場した中田議員までもが、後に物語のキーマンとなっていくコトには本当にビックリ。
皆んなが律の恋を応援してる。彼が生きて行く事を応援している。そんな物語でした。
いやー、美辞麗句しか思い付かないよ。

修正はトーンに細っそい白線シャーッ。つまりとってもエロいよ。

愛しのふぐり姫

焼きたてのふわっふわのバターロール⁈ ふわふわ完熟生さくらんぼ‼︎ マシュマロ‼︎
かつて、これほどまでにふぐりを愛で、ふぐりを愛し、ふぐりをリスペクトしたイケメンがいたであろうか⁈ 否‼︎ 彼こそがふぐり王‼︎ 彼こそがふぐり姫の伴侶に相応しい。その名も皇‼︎

いやぁー。素晴らしい!素晴らしかった!深夜にほこほこ。夢見も良い読後感。
本当ーっに楽しかった!
まず絵が美しい。テンポ良く繰り出されるちみっこ二頭身は、邪魔になる事も多いのだが。本作は全然気にならないし、むしろ可愛い。全然大丈夫。
特にキラッキラに輝く皇さんのちみっこ絵は、彼の手放しの嬉しさを最大限に表していて。とっても微笑ましい。彼はふぐり愛が過ぎるド変態で、好きになったら何が何でも手に入れたい「戦闘民族」なのだが、実に育ちが良く紳士なのだ。エッチの時はそれなりにガッついているが、それでも。悠海を気持ち良くさせたい!というその溺愛っぷり、愛撫の丁寧さには愛しさと優しさが溢れていて。そんなん、「ふぐり姫」こと悠海がメロメロになるのも仕方ないよね!

悠海は、以前の職場で本気で愛した上司に弄ばれて捨てられ。その失恋の痛みから恋を諦め切っていた。それでも美しい悠海にはいつもセフレがいたので。その場限りの発散で良かったのだ。それなのに。突然現れた皇は、悠海のふぐりに一目惚れしたと言い、執拗に迫り、恋人になりたいと願う。こんな何もかも兼ね備えた男が、自分の様な男に本気になるワケが無い、と軽くあしらおうとしたのに。いつしか身体から堕とされて。な、BL標準装備な展開になって行く。必死に逃げる悠海。追う皇。
そして湧いて出てくる当て馬こと元上司で元彼。小さなすれ違いや誤解。
皇にも本命女は居るの⁈ ぐるぐるする悠海。と、盛り沢山に彩られながら、もうすぐ、もうすぐよ‼︎ ワクワクしながらハッピーエンディングを見守る私たち‼︎

ここはあるあるで。名家の長男である皇にはお見合いも用意されていた様だが、皇家の育ちの良いところ。悠海は温かく迎えられるのだ。素晴らしい!
家訓の「果報は勝ち取れ!」もいい。
お母様の「いろんな形があるって、素晴らしいじゃない。」男とか女とか。関係無くて。
愛する息子の選んだ人を、全力で尊ぶ家族の温かさにもきゅんきゅんです♡

皇のやや一方的なふぐり愛からスタートした恋だったかもしれないけど。皇との恋に向き合う事で、辛かった過去を清算して、前を向ける様になった悠海も愛おしいですし。
もちろん。やわやわふぐりだけで無く、悠海の素直さ、美しさ、強くて優しいところにも惚れ抜いている皇の、何の裏も無いストレートさにも惚れ惚れします。
エッチも特盛り!身を焦がす様な本物の恋に溺れて、幸せを満喫する悠海に、心から良かった〜って、読んでるこちら側まで幸せになれました!

修正はトーンとほっそい白線。ほぼ見えてます。もちろん柔らかくまぁるいふぐりもね!

あっ!タイトルの「 f 」って。「fuguri」の事なんですねぇ。そんなところもクスリと笑えます。

朝顔は、朝に咲くのではなくて。朝に向って咲くのだと。

本年度「アワードにノミネートされなきゃ死ぬリスト」にエントリーされていたので、買ってみました。このリストには、見落としていた名作が隠されているので。楽しみにしているところ。そして、私は感嘆する、この名作を見出した姐様、凄い。素晴らしい!と。
簡単に申しまして、「当たり!」でした。何故、ちるちるは発行時に大騒ぎしていなかったのだろうかと。不審に感じてしまう位には。

秀斗はクラスでも人気者。サッカー部で、友達も多くて。目立っていてカッコいい。そんな秀斗を遠巻きに見ながら、所詮「別世界の人だ。」と思い込んでいた幽玄。いつも大人しく目立たぬ様に。俯きがちな幽玄に明るく声をかけてくれていたのに。
ところがある日。呆気なく。秀斗は亡くなってしまう。
クラスメイトだけど、特に親しいわけでは無かったから。幽玄は皆んなの様にその死を悼む事は無い。現実味がおよそ無いのだ。だから泣かなかった。泣けなかった。
この物語の凄いところは。喪失から、全てが始まるところ。
幽霊となって現れた秀斗は、この世に未練があるから成仏出来ない。自分の成仏を幽玄に手伝って欲しいと申し出る。何故、幽玄は秀斗に選ばれたのか?
「だってキミ、俺のこと好きだったろ?」幽霊になっても生き生きと明るく笑う秀斗に半ば強要された形で、秀斗の未練を贖う手伝いをポツポツと始める幽玄。借りっぱなしの本を返却する。告白待ちの女の子への返事。喧嘩をしていた親友との仲直り。そして素直に話が出来なくて、すれ違ったままの家族との絆。幽玄は、秀斗の周りの人を通して秀斗の人となりと。自分の閉じた殻を破り、外の世界と繋がる事を覚えて行く。馴染めなかったクラス。自分には無理だと思い込んでいた友達との会話、交流。そうして気付いて行くのだ。今、生きていて。それは当たり前の事では無くて。美しくて素晴らしいことだということを。
目にも留めていなかった、夜から咲く朝顔のことも。それが静かに、美しい色を湛えていることを。
亡くなってから。そうして。幽玄は深く深く。秀斗を愛していたことに気付く。
本当の愛を知り、生きる意味を知る。朝は美しいことを。
心が震えることを。いつか費えてしまう命の今、一生懸命に生きることを。

とても泣きました。切なくて切なくて涙しました。
普通にBLあるあるならば。実は秀斗は昏睡していただけで、それは生き霊で、とか。
遺体が焼かれていなくて奇跡的に息を吹き返す。とか。
ちょっ早で、15年後に生まれ変わりに出逢うとか。
ところが。物語はそんなご都合主義を許さずに。静かに静かに幕を引く。
描き下ろしには。2人の出逢いを、静かに。秀斗視点から。明るく笑う秀斗を遠くから見ていたのは幽玄だけでは無い。秀斗の方も、控えめに佇む幽玄を見つめていたのだ。
きっと。初めから両想い。作者のせめてもの、温かい贈り物の様にも思えるのだけれど。
やはり寂しくて。切なくて。涙。

「アワードにノミネートされなきゃ死ぬリスト」にノミネートして下さった姐様には本当に感謝。とても美しい物語でした。