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表題作淋座敷空慰

風俗店店長 吉行零(開高十佐)
拾われた元声楽家 雨矢二三

その他の収録作品

  • 第一話 ゼロ・ゼロ・ゼロ(上)
  • 第一話 ゼロ・ゼロ・ゼロ(下)
  • 第二話 痴呆のデスマッチ
  • 第三話 壊色(上)
  • 第三話 壊色(下)
  • 第四話 御破算に願いましては
  • 第五話 切断された小指に捧げるバラード
  • 余禄 星と月は天の穴/漂う部屋/原色の街
  • あとがき

あらすじ

一切の過去を捨てた男・吉行零の前にかつて性の玩具として扱った後輩に瓜二つの男・二三が現れた。二三の存在を、過去が自分に復讐するように感じた零だったが・・・。
何かを喪失した二人の男を軸に恋の残虐と愛の変容を描く、前シリーズ「茜新地花屋散華」待望の続編登場。

(出版社より)

作品情報

作品名
淋座敷空慰
著者
ルネッサンス吉田 
媒体
漫画(コミック)
出版社
茜新社
レーベル
EDGE COMIX
シリーズ
茜新地花屋散華
発売日
ISBN
9784863492172
3.7

(10)

(4)

萌々

(3)

(1)

中立

(0)

趣味じゃない

(2)

レビュー数
4
得点
35
評価数
10
平均
3.7 / 5
神率
40%

レビュー投稿数4

生き続ける深沢、変容し増殖する愛

最初、なぜ十三は二三とくっついてしまうのか、納得がいきませんでした。だって、深沢君とあんなに・・・!と。(だって私は深沢君ひいきだから)

だけど、十三、深沢君を愛したまま、二三とくっつくんですよねぇ・・・。というか、深沢君は全く出てこないにもかかわらず、深沢と分かち合った愛がずっと十三の中に生き続けていることを全編通して感じられるのです。十三は二三を通して(過去のこととしてではなく)今も深沢を愛しながら、二三自身のこともまぎれもなく愛している。

「愛は増える」というけれど、こういうことか、と。

私の勝手な解釈です。

今回は「茜~」よりも、人間らしくなっているので読みやすいです。十三の愛し方も大人になってます。

続編としてお話が続いている、というだけでなくパートナーが変わってもちゃんと十三というキャラクターの中で深沢とのことが続いていて、十三の血肉になっていることをしっかりと書かれていることがうれしかったし、そんな続編を書いてくれたこともうれしかったです。続編ってこういうことなんだな、と思いました。

何よりこの作家さんの、表現したくてもできない部分まで描き切ろうとする熱意と真摯さが好きです。こんな感覚をあいまいにせずここまで明確に作品に表現してくれる作家さんに出会ったのは、私は初めてでした。非常に稀有な作家さんだと思います。

人生の味わいとはあえて挑戦する難解な迷路の中にある、と思ったことがある人にはぜひ。

3

作者のトリックにひっかかってはなりませぬ!

『茜新地花屋散華』の続編になる。
失踪した開高十三が戸籍を買い”吉行零”として生きている、その世界に現れた捨てた男・深沢にそっくりな二三(つぐみ)との出会いと、この二人の再生のお話です。
茜新地より、非常にわかりやすい展開だったと思います。
あそこでは、こむずかしい哲学や理論をびっしりと文字の表現として埋め尽くし、混沌とカオスをかもしていたのでしたが、よく考えればそんな難しいものではなく、単純なラブ甘な話だったのだ、と作者のトラップにまんまとひっかかった感があったのですが、これは最初からストレートでした。

そして何より、嬉しいのが(?)加筆・修正がかかっていることです。
ラスト間際、二三が囲われていた元ヤクザの元に連れ戻されれ、男達に輪姦されるシーン。
雑誌掲載時、局部は白く塗りつぶされ、ページも少なかったのですが、今回その修正が解かれ、ページが増やされています。
他にも、足されたシーンが見受けられて、物語の補完がされていました。

エロビを作って販売したり、男子女子に売春をさせる部屋の店長をしている零(十佐)がある日、ゴミに埋もれている傷だらけの男・二三を拾う。
だた平穏な日々が過ぎていく中、二三は零の作成するビデオに出演したいと言う。
零を好きだという二三に求められるまま、そこに欲情を覚えるのか、わからないまま、二三に惹かれている自分を意識しながらも二三を関係を持つ零。
はっきりと二三の存在意義を意識したのは、二三が行方をくらました時だった。

前作において、まだ十佐はまるで世捨て人のような自分自身がもう死んだ人のような印象を与える男だった。
今回もそのスタンスは変わらず、二三を受け入れながらも受け入れられないと二三を突き放してしまう。
そこから先が青春時代と違う部分だった。
二三は深沢と違う。
初めて覚えた執着と魂の苦しみ、そして怒り。
どこが零の気持ちを動かす原因となったのか、具体的にはなく、それは些細なピアノであったり、文鳥のかわいさだったり、二三のかわいさだったり、二三の過去だったり、色んなものがあったかもしれないが、茜新地ではいつも彼の周りには人々がいて、その中で感じていた孤独が、今度は本当に一人きりでいることの孤独であることの違いが、新しい自分としての感覚が、過去と違う気持ちになる部分なんだろうか、と思ったりもする。

一見痛そうな外見をした、これは実に甘い、甘いラブストーリーだったのです。
二三がどんなに零を理解して愛しているか、それが指詰めを二三が零に行う行為で表わし、何か自分にはエンゲージリングの交換の儀式にみえてきたのですよ!?
ラストの河川散歩のシーンは、変人のプロポーズで思わず笑いさえ~
描き下ろしの短編しかり。
零(十佐)は変態だった話とか(知ってるけどww)
些細なエピソードに、密かに愛が隠れている。

そういう意味で何だか今回は全然痛くない話だった。
絵がグロなので、つい痛いと勘違いしてしまうのだが、もうそんなトリックにひっかかるものか(爆!)
あ、でもほんとに痛いのもあります(涙)
ああー、やっぱりこの世界観が好きだ!

5

ただ、恋をしていた

 前巻の茜新地よりずっと読みやすい続編でした。単純に、言葉が間断なく羅列された長文のモノローグが減ったというのもあるし、物語が結末に近づくにつれ、メインの登場人物達の心を取り巻いていたベールがどんどん剥がれ落ちていき、いろんなものが簡素化されていったからでもあると思います。そう、この作品に描かれていたことは、実はとても単純なことだったのです。愛というものの本質を知るまでに、あまりにも長い時間がかかったというだけで。

 自分自身の存在を定義付けられないほど、虚無の中を彷徨っていた十三。何者にもなれなかったという彼が、初めて、自分という存在を認められるようになる。恋は執着、というそこそこありふれた言葉。言われなくとも誰しも分かっているようで、実は意外と気付いていなかったりすることかもしれないですね。相手に惹かれるのと、相手を離したくないという気持ちは一見イコールのようでも、必ずしも常に同じとは限らない。深沢は十三を惹き付けてやまない存在だったけれど、彼を打ち捨てても未練を感じなかった十三が、二三が消えた時には我を忘れた。

 瓜二つだった二三と深沢は、十三にとって何が違ったのか? ピアノが弾けるか否か? 追い縋らないか否か? あるいはそもそもの出会い方だったり? それは十三にしか分からないことであり、むしろ彼自身にも理由のはっきりしないものなのかもしれませんね。恋に溺れれば、己の魂は剥き出しになり傷付きもする、しかし、愛は恋をした先にやっと訪れてくれるものでもあると思います。臆病で無関心を装って、泥の中の深いところに潜ってしまっていた十三の魂がやっと地上に表れて、初めて激情を覚えた。そこに至るまでの気の遠くなるような長いプロセス。独特の表現ではあったけれど、結局は誰しもが辿りうることだったのかもしれません。萌えたか、と問われれば頷けはしないけれど、最後に見れた十三のささやかな笑顔は非常に印象に残りました。

0

前巻よりは読みやすいかなあ。

前巻とまとめて買ってしまった事を少々後悔。
まあ、でも続編は面白いという事もあるし!と読んだのですが、前巻よりは読みやすい分受け入れられない部分も大きくて。
え?深沢はどうしたん?って思うじゃないですか。
前回、特にメイン二人に思い入れがあった訳ではないですが、結局は過去の男も今の男もどっちも好きって事ですよね。
引きずってるというのとも何か違うし。うーん。

そこらが受け入れられないとただ痛いだけの話になってしまいますねえ。
こういうテイストの話は嫌いじゃないだけに、自分には合わなかったのは残念です。

評価下げてすみません。

1

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