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表題作深海の太陽

新進のカメラマン 鮎川光輝・25歳
カメラマン 浅生真琴・30歳

その他の収録作品

  • ひとひら
  • あとがき

あらすじ

両親に愛されず十代の頃からゆきずりの男女の家を泊まり歩く生活をしてきた浅生真琴は、カメラマンとなった今も心に空虚を抱えたままだった。
自分と同じ孤独な目をした光輝という少年を気まぐれに構ったこともあったが、つき離したまま音信不通に。
十年後、再会した光輝は屈託ない笑顔が魅力的な好青年に成長しており、浅生に情熱的に迫るのだが。

作品情報

作品名
深海の太陽
著者
森田しほ 
イラスト
山本小鉄子 
媒体
小説
出版社
幻冬舎コミックス
レーベル
幻冬舎ルチル文庫
発売日
ISBN
9784344825727
3.2

(4)

(0)

萌々

(1)

(3)

中立

(0)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
2
得点
13
評価数
4
平均
3.2 / 5
神率
0%

レビュー投稿数2

君は僕の太陽だから

昨年末出た「罪の海に満ちる星」はかなり重たい設定でしたが、この作品もまた主人公達は過去の子供時代に虐待を受けたという設定のかなりやるせない過去を持っています。
二人ともそうだと一体どんな?という謎が生まれるのですが
それは彼等の年齢差と出会った時が関係していました。
主人公の浅生はすでにカメラマンをしている20歳、そして隣の家の子供だった光輝は15歳の中学生。
悲愴な環境の当時の光輝の救いに浅生はなっていたのでした。
それから10年後の再会。
救いのなかった浅生は刹那的な生き方をしており、再会した光輝はそれでもワンコのように彼を慕う。
突き放そうとするのに、それでも追いかけてくる光輝。
浅生の心には、自分は汚れているという思いがあり、光輝を怪我したくない、傷つけたくないという思いが働いている。
それは10年前も同じではあるのですが、再会したことで、光輝が浅生にとって、光輝にとって浅生が、それぞれの太陽となっているのです。
なので、光輝の健気さが、浅生を素直に、そして明るい方へ引き上げるお話になっていたのだと思います。

浅生の過去もかなり悲惨でした。
親は自分たちの事だけで子供に全く構わず、だから彼はもう中学生の頃から夜の町を徘徊してぬくもりを求めていた。愛情を一時の体のぬくもりですり替えていたのです
愛されたいと誰よりも願っているのに、大人の汚さを見てしまっているために愛が信じられないでいる。
ずっとずっとそれで生きてきてしまっているので、愛する人が欲しいのに踏み込もうとしないで諦めている。

光輝は母親の再婚相手とそりが合わなくて虐待されていたようでした。
冬の寒空にシャツ一枚で放り出されているところへ、関わりたくないと思いながらもスエットとスリッパを貸してもらったのが縁で、隣の浅生の元へ通いだす。
それには、光輝の父親がカメラマンで、浅生もカメラマンであったことが親近感を増した一因でもあるようでした。

きっと、再会したとき浅生が幸せそうにしていれば、光輝はそれで何もかかわらなかったのかもしれなかったのだろうなと思われます。
それが、まだビッチを装う(現実そうだが)浅生が中学生の頃の光輝の救いだったからこそ、浅生が好きで、もう泣かせたくない辛い思いはさせたくないと一途な気持ちを再燃し彼に訴え続けたのでしょう。

浅生が光輝の気持ちを受け入れて、自分に素直になるのに何か激的な出来事があったわけでもありません。
過去を回想し、とにかく今気強い光輝の押しと、本当は影ながらも控えめに彼を見守っていてくれた友人たちのおかげかもしれないです。
そう言った意味で、浅生はネガティブ傾向ですが、話としては前向きに明るくできていたのだと思われます。
年下ワンコ攻めがあまりに健気過ぎて、萌えに到達しなかったのか、超越してしまったのか、それとも素直でない浅生が魅力的かと聞かれればそれもどうも?なお話ではありました。

こういうときの定石なのですが、、、、浅生の友人でもある久坂と夏希のカプが非常に気になりますw
特に夏希がゴツイ人に描かれてましたwww
彼等の話もあるのでしょうか?

1

あの日の少年は自分、でも今目の前にいるのは・・・

前作もどっぷり重い作品だったこの作家さんですが、今回もやっぱりシリアス系で
子供の虐待が主人公二人の後ろに見える内容でした。
それでも前作よりは痛い感じが若干緩和されているようなソフトな雰囲気がありました。
出会いは受け様が20才、攻め様が中学生で、同じマンションに住んでいることから
始まるのですが、受け様が部屋に帰ってくると薄暗い廊下に学生服の上着だけに下着1枚
そして裸足で廊下にいる攻め様を見つける。
その寒さを必死で我慢している姿に受け様は着るものと履物をそっと置く。
でもそんな行動をした後に後悔もしている、それは受け様も似たような境遇だったから
人に憐れまれる事が嫌で精一杯強がってこんなことは何でもないと思いながら暮らして
その事が思い出され、攻め様にした行為の偽善的な行動に自己嫌悪。
でもその事が切っ掛けで、攻め様に遠慮気味に懐かれるようになるのです。

それでも、受け様は攻め様よりも幼い時から性別に関係なく泊まるところを求めて
刹那な暮らしをしていた事があり、攻め様に懐かれるような大人ではないと自嘲気味。
そしてそんな関係も受け様と同じような暗い目をしたサディストな男が現れた事で
受け様は攻め様が自分たちと同じようなことになる事に恐れ酷い言葉で傷つけ突き放す。
そして10年がたって、カメラマンとなった攻め様と再会し、昔と同じように慕われ
それ以上に思いを告げられ恋人にと・・・

攻め様は虐待を克服して、希望に向かって進んでいたように感じます。
それは攻め様の、星は今は見えないけれど、そこにある、みたいな言葉でも分かる。
でも、受け様にはそれが見えていないのです。
受け様が気が付けないだけで、大切な存在がいつも傍に、大切な存在がいつの間にか
受け様には出来ていた事実を攻め様と出会ったことで気が付くことになります。
攻め様の初恋が10年たって実、健気なお話でもなるのです。
こんなワンコみたいに懐かれたらどんなに捻じ曲がった受け様でも絆されますね。
書下ろしは本編の暗さを払拭するような甘々な展開になっています。

1

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