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表題作青春残酷物語

守衛哲朗,美大の講師&彫塑家,高校時代の同級生&元恋人
遊佐晴親,三流アイドル俳優,高校時代の同級生&元恋人

あらすじ

まるで災厄のように、過去からやってきた男。
美大の講師をしながら彫塑をやっている守衛哲朗のもとに、突然現れた男。
―それは、現アイドル俳優、そしてかつての恋人・遊佐晴親だった。
十年前、二人は言葉もかわさず、白い雪の中をただ歩いていた。
戻る意志もないまま…。
一度も肌を重ねたことのない、決して忘れたことのない「恋人」。
だがすっかりノーテンキになった彼は今、殺人犯として追われていて…。

作品情報

作品名
青春残酷物語
著者
菅野彰 
イラスト
山田睦月 
媒体
小説
出版社
新書館
レーベル
ディアプラス文庫
発売日
ISBN
9784403520334
3

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萌々

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中立

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趣味じゃない

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レビュー数
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得点
3
評価数
1
平均
3 / 5
神率
0%

レビュー投稿数1

思春期の病と再会愛

BLとして読むには難しいお話だ…。

攻め視点です。

彫塑家の哲朗は、大学講師や美術系専門誌の寄稿などしながら細々と暮していた。ある日、年齢を詐称してアイドル俳優をしている元同級生・晴親が自宅を訪ねてくる。テレビのワイドショーによると、晴親は所属事務所の社長を刃物で刺して逃亡中。なぜ晴親は自分のもとへ姿を見せたのか…?哲朗は10年前に彼と自分が起こした心中未遂事件の記憶が嫌でも蘇ってくるのだった——

とまあ、シリアスかつミステリっぽい展開のようですが、キャラがみな洒落気のある人たちなので、重くはないです。でも、BLとして読むにはテーマが深すぎて、萌えとかキュンどころじゃないかも笑

晴親の変貌ぶりに驚愕する哲朗というのが物語の伏線でしょうか。10年ぶりの二人の再会シーンは作者様らしいドタバタ感が出ていて、いかにもな事件の始まりを予感させます。

哲朗のことを「古の恋人」と呼んだり、最後に哲朗が渡したラブレターをネタに自分を匿えと恐喝してきたり……晴親って、こんな男だっけ?記憶の中の彼はもっと儚くて生きるのが辛そうで、だからあの時、一緒に逝ってあげようと自分は寄り添ったのではなかったか?

哲朗は晴親が誰かを庇っているのではないかと察知しますが、警察の初動が悪かったせいで容疑者が別にいることが後に判明します。その容疑者と晴親との関係が明かされるところが物語のクライマックス。ここがシリアスで胸がヒリヒリする…。

同時収録されている「海辺の家」では事件解決後が描かれており、哲朗の家にはなぜだか人が集まってきて、賑やかなエンディングに救われます。本編からずーっと老犬のクリストファがいい味をだしてくれていて、ほっぺたが緩みました。

まだ28歳の哲朗が10歳ほど老けて見えたり、同い年の晴親が21歳だと偽って活動していたり、思春期以後の精神的な成長度がそれぞれ象徴的に描かれていて面白い演出です。ラブレターには何が書いてあったのかも気になりますが…。

哲朗側の「老けた」領域に渡ってしまった自分は、今だったら晴親らが抱える苦悩が厨二病のひと言で片づけられてしまうのかな、と寂しい思いがしました。10代の頃の、あの神経が剥き出しで研ぎ澄まされてピリピリと全身が痛い感じ。男子なら男子ならではの…。それらの一部でも受けとめてくれる人がいるかいないかで、青春とは残酷なものになる。そんなふうに読みました。

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