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王子様の身辺警護は一筋縄ではいかなくて!?
収録作二つとも雑誌で既読ですが、改めて読むと、どちらも男臭い世界観が本当に素敵。
既刊「天国も地獄も」の描き下ろし番外編も、思わぬサプライズで嬉しかったです。
■「フェイス 」前編・後編 /「それは秘密にしておきたい」
来日した某国王子(攻め)を警備する桜田(受け)。奔放で男好きな王子の護衛に手を焼くが……
目の前の男は本当に王子なのか、疑いつつも攻めに惹かれていく桜田が男前可愛いです。
攻めも桜田を「チェリーちゃん」と呼ぶお茶目な面と職業人としてのプロ意識のギャップが素敵。
恋人になってからも、国家機密を預かる者同士簡単には会えない二人。
相思相愛だけど外国人同士でもある二人の、戯れに諜報活動するピロートークに萌えました。
カバー下の羊に変身3コマ漫画も含め、職業の堅さと素の可愛いさのギャップが魅力的な二人でした。
■「愛はない」全3話
作家の友部は、自殺した従姉妹の葬儀で、彼女のひとり息子で中学生の陽斗と出会う。
母親の金を盗んだ友部を恨む陽斗は10年後、精悍な青年となって陽斗の前に現れ…
若くて不遜で実直な陽斗に対し、どこまでも大人(たまにちょっとセンチメンタル)な友部。
従姉妹の金は陽斗のため銀行に預けたのに、陽斗に誤解されても釈明しない。
陽斗に犯されても動じず、逆に締めつけてイかせる。
陽斗に惹かれつつも若者を汚してはならないと自制している面もあり、ヘラヘラした言動の中に垣間見える優しさが魅力的です。
ラストのリバがまた秀逸。
何故そんな憎々しげな表情で陽斗を抱くのか。何故そんなに何度も謝るのか。
両想い→ハッピーエンドという単純な話ではなく、陽斗に手を出してしまった後悔や罪悪感も伝わってくる、大人ならではの複雑な感情がズシンと胸に響きます。
二人の今後については何も分からないまま、情事の最中で唐突に終わるラストに何とも言えない渋さとペーソスがあり、西田作品の中でもかなり好きなお話です(友部の母親のテキトーさにはツッコミたくなりましたがw)。
■「天国も地獄も 番外編」(描き下ろし)
列車の中で、カタコトの占い師の女性に話しかけられる姫野。
彼女は姫野が過去に人を殺したことを言い当て、未来にもう一人殺すことを予言する。
人が何年生きたか、何年生きるか見えるという彼女に、姫野は自分と城田どちらが先に死ぬか尋ね……
女性の答えに笑みを浮かべる姫野。
その未来を想像すると哀しいけど、二人にとってはとても納得できる結末なのだろうと思います。
戻ってきた城田にキスされて幸せそうな姫野の表情も良くて、ちょっと切ないけど満ち足りた気持ちになれる番外編でした。
初めから順に読んで行くわけですが、まず「フェイス」を読みながら、なにこれ面白い! ってなって、読み終わりたくないと思ったのですが、ちょうど1冊の半分くらいで終了。もっとこのお話読みたかったなーと余韻に浸りつつ、こんなに面白かったのに次のが面白くなかったら嫌だなって「愛はない」を読んだわけです。
が、「フェイス」を上回る面白さでした。リバでした! リバ好き、年の差好き、としてはたまらなかったです。二人の関係性も。
そして西田さんの描く男の人は、男っぽくて色気がある。独特の間があって、台詞がいっぱいあったかと思ったらほとんど喋らないシーンで表情だけで魅せられる。その表情を勝手に読み取って、じんわりと心に響くのです。
で、いいものを読んだなーと思い「天国も地獄も」の番外編は数ページです。「天国も地獄も」を思い出すのに時間がかかりました。読んだ本をちゃんと覚えてられる能力が欲しい……。
そして、あとがきありました!!!!!! あとがきの破壊力に爆笑! カバーをめくって爆笑! 最高の読後感でした。
西田さんの本はずっと買ってはいるのですが、どうしても初期作品の印象が強くて、最近はあんまりだなー(失礼)と思っていたのですが、これは近作で一番好きです。
西田さんの描く男たちの、なんとも愛おしい感じが好き。
今回のカラフルな表紙の本は、二つの話足す『天国と地獄』のSS。
シリアスなんだけれど、センスのいい笑いが混ざり
ちゃんと充実感があって、キャラに愛着が湧き、
短編と言っていい長さの話にも関わらず
ここで終わっても続きを読んでも満足という感じは、
西田さんならではの世界だろう。
◇◆ ◇◆
表題作は、来日したブンバー王国の王子とその日本人SPの話。
男遊びがお盛んな王子に振り回される中で感じる違和感、
王子は本物なのか?偽物なのか?
で、まぁ、あれこれあって、くっつくんだけれど
「ここに……俺のおちんちん」以下「おちんちんと言って」〜の
いざって時の可愛らしい諜報合戦のやりとりが好き。
可愛すぎる!
カバー下の羊の漫画がまたすごくいい。
大の男のどこか間抜けな愛おしさよ!
二編目の『愛はない』は、チャラチャラとした作家・友部と
彼が従姉の葬式で出会ったそのまだ中学生の息子・陽斗の話。
母の残したお金を使ってしまったという友部に
「絶対許さない、覚えてろよ」と立ち去っていった陽斗だったが
その後10年近くが経って再会し……
中学生がちゃんと西田さんの描く男なのも、
成長後の精悍でまっすぐなところも、
友部のろくでもなさと不器用な優しさや甘さも、
そして単純ではない成り行きと結末も、味わい深い。
ちなみに、リバです。
巻末の『天国も地獄も』の短編は、
読み終わって「あああ‥‥」と幸せな、でも切ないため息をついた。
オチがなんとも洒落ているのだ。
◇◆ ◇◆
西田さん名義での作品はこれで最後だという情報に
この後はどうなるのか?と気になりつつ
新たな飛躍を期待したい。
西田東さん初読みでした。いやぁ、読めてよかった〜としみじみ。
冒頭の「遠足と同じですね」「いや 遠足とは全然違う」から噴きました。どんな方が描いているのかと。
さっぱりした絵柄の中の何気ない台詞が、モノローグが、いちいち胸に染みるんです。途中何度もうわーうわーと心の中で感動したり泣いたりしました。ギャグも独特で面白い中、ぐっとくるものが在って素晴らしかった。
リバありと耳にしていましたが、表題作の次に収録されている「愛はない」という作品のメインで攻めになる方が受けを相手にする前、元々別の人とスる時は受けている感じで、その後最終的には受けになった年下の子に無理矢理されてしまって、最後攻めてゴールイン。それほどリバ!という感じはありませんでした。
この「愛はない」も切なく、けれど切ないテーマに頼りすぎない自立した感動があって、読んでいて自然と涙。
描き下ろしは他コミックスの番外編が収録されていましたが背景がわからないなりにそちらの御本も気になるなぁと思わせられ。あとがきはヤバイの一言です、笑
カバー下も可愛かった〜!
またひとり良い作者さんに出逢えました、
ありがとうございました。
ところでSP桜田はどうして最中ずっと目を瞑っているのだろう…
表題作の「フェイス」の偽王子XSPの話と「愛はない」の叔父さんX甥子の話二つ収録している。両方とも西田テンポ満載。「フェイス」では早い段階で偽物王子がばれて影武者というのがわかった。西田先生の作品を読むとき、大きな切り札より小さな不意打ちされるのがよくある感じ。ラブシーンが抑え気味、決して深入りしない。話全体軽いテンポの中で不意に胸にしみる間が出てくる、そこがとても好き。
表題作より次作の「愛はない」はとても印象的。西田先生の作品の中でも個人的に屈指の好きな作品である。
母を亡くしたちび助が、叔父さんである青年に家に連れて帰られ、母の金が騙されたと思い、結局叔父さんの家を出てしまった。10年後ちび助が大学卒業し、騙された金を奪い返し、そのおじさんに復讐しようとした。
が、叔父さんの家にもどり、長くいればいるほど、憎しみ以上の感情が抑えきれなくなる。叔父さんも、だんだん大人の余裕が持てなくなり、ちび助の気持ちに気づいて動揺した。二人の心理戦が見もの、お互い素直になれずも相手に惹かれてしまうところがたまらない。
「嫌なやつなら忘れろ」と、ちび助は友人に言われたが、嫌なやつのはずなのに、どうしても忘れられない自分がいた。復讐とか金とかどうでもよくなり、ただただ側においてほしい、捨てられたくない思いがこどものまんまだ。思わず涙が出てしまった作品。切なさがぬぐい切れない、何度読んでも飽きない作品。