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数回目の再読。
自己肯定感が低く性格難ありの受けが、七転八倒でボロボロになりながらようやく自分と向き合い、ずーーーーーーーーーーっと差し伸べ続けてきた攻めの手をようやく握る。
砂原作品でしか得られないカタルシスがありますが、これもその一つです。
受けの一葉は砂原さんの作品で時々見かける「めんどい受け」ってやつです。
継母から「気持ち悪い顔」と言われ続けたせいで、自己肯定感が皆無で、自分の顔や人の目もまともに見れずに育ってしまった人。
だけど事故をきっかけに顔を整形し名前も変え、ホストの面接を受けに行った先で中学時代の同級生・黒石と再会します。
黒石とはごく短い間に付き合っていたことがあるけど、ある理由で天国から地獄という経験を一葉はしているんですね。そして黒石がナンバーワンホストであることを知り復讐したい一心で、自分がナンバーワンになって見下ろしてやると決意します。
と、書くとホストクラブを舞台に男のプライドをかけたサクセスストーリーのようですが、違います。
整形前も整形後も顔に雁字搦めになっている一葉と、ナンバーワンホストなのにホスト風情が皆無の黒石とのすれ違いストーリーです。
中学生の頃の黒石は真面目で朴訥な田舎の少年で、ナンバーワンホストとなった今でもプライベートは古ぼけた一軒家に住んでてジャージなんか着ちゃってて、口下手で不器用というオラオラ感が皆無のお方。
おまけにあの頃と同じように目尻に優しげな皺が出来て…とか、一葉が黒石のことを憎みつつもまた好きになっちゃうのもわかるというか……。
一葉に拒絶されて雨に打たれながら涙を流す黒石のシーンが、好きです。
不動の岩を思わせるような泰然自若の男かと思いきや、こっそり一人で泣いちゃうとか、ぎゃああああってなる。
で、ふつーなら、あそこでくっついて終わりなのに、終わらないところがこの作品の手強いところ。
それにしても黒石がほんと忍耐強くてアッパレです。
色々問いただしたいこともあるだろうにじっと待ってるし、一葉にぶんぶん振り回されても愛想を尽かさない。
最後、絶倫発揮してて萌えるけど、ほんとよく今まであれこれ我慢出来てたねと感心する。
「めんどい受け」と書きましたが、でもそれが一葉にとって生き延びるための術であったとわかるから見放す気にはなれません。
彼の「あの言葉と、たった一度のキスが拙い自分のすべてだった」というところが、哀れを誘います。
本当に「すべて」だったんだよねと。
顔の問題じゃないってことに気づくまでの一葉の七転八倒と、マリアナ海溝のように深い黒石の包容力が光る作品だと思います。
ホスト×ホスト、それもNo.1×No.2という組み合わせ。
私自身はホストクラブに足を運んだことはないのですが、この華やかな男だらけの世界には興味津々で、ホストものが大好物です!
『優しいプライド』に続く砂原先生によるホストもの。
こちらもめっちゃ面白かった!
継母に「気持ち悪い顔」と暴言を吐かれ続け、容姿に対するコンプレックスを持つ一葉。
陰気で人の目を見られない一葉は、会社をリストラされ、自暴自棄のまま交通事故に遭います。
事故を機に、一葉は顔を整形して過去を捨ててやり直すことにするのですがーー…
この、整形して別人に成りすます……と、いう設定が面白い!
そして、ホストとしての第一歩を踏み出そうという時に出会ったのが、一葉の因縁の相手・黒石です。
罰ゲームで告白された黒石に本気になってしまった一葉は切ないのですが、黒石には黒石の本心があるのですよね。
この黒石は何ともホストらしくないホスト。
寡黙で誠実で一途で、一葉にだけ向けられるムッツリさにも萌え上がりました♡
個人的に、黒石かめっちゃツボでした〜!
中学の時に一葉を〝ホモ〟と言って虐めていた相手や、大学時代に〝20点〟と揶揄していた女子が出てきて、一葉の傷を抉り出すのが辛かった。
それでも、全て黒石の一途さに救われたなあ。
整形がバレてどうなっちゃうの……と、不安でいっぱいでしたが、まさかのオチ。
コンプレックスのせいで、あまり鏡を見てなかったかな?
まぁ、人は自信や身につけるもので雰囲気ガラッと変わりますもんね。まぁ、よかったよかった。
エロも描き方が上手いですねー。めちゃめちゃ官能的。
ずぶ濡れのスーツを脱がす描写にも萌えました♡
バーで黒字が出るようになったら犬森を雇ってあげて欲しいな。
この子がシリアスな雰囲気を中和させてくれて、すごく和みました。
ドラマCDを何回も聴いて大好きで原作を読んでみました。
音声が脳内で声優さんの声で聴こえてくるようでした。
とにかく辛い苦しいお話ですね。
黒石も一葉もずっと忘れられず。
金崎のクソ加減も相当で。
中学のあの短い間の付き合いで芽生えた気持ちを…。
何も言わず一葉を見守る黒石。ホストになっても中身は変わってなかったみたいで。
一葉に入れ込む黒石。まるであの当時を取り戻したいようで。戸惑う一葉。
復讐なんて一葉には無理なんだよ!本当は良い人なんだから。
呪いにかけられた一葉が気の毒で。継母の呪いがようやく解けて前を向けるようになって。
なぜそこでホストに?だけどあのお店に行かなかったら黒石と再会できなかったしなあ。
黒石が絶倫で良かったです。
ホストxホストBL。
ですが、きらびやかさは無く逆に泥臭ささえ感じる作品。
というのも、主人公のホスト・白坂がとにかく暗い。
子供の頃からの容姿コンプレックス。
自動車事故を契機に形成手術で顔を変え、名前も変え、都会に。
ところが、紹介されて行ってみたホストクラブに中学時代の同級生・黒石がいて…
中学時代、黒石が告白してきたので白坂も真面目に考えて少しの間付き合ったのだが、実は黒石は罰ゲームとして告白してきたのだった。白坂は深く傷ついて…
白坂は恨んでいた黒石に復讐を誓って、なりふり構わずナンバーワンホストを目指していく。
…で、実際黒石を抜いてナンバーワンになるのですが、これはサクセスストーリーではありません。
黒石も内面に暗いものを抱え、そんな2人が関係を通じて過去を越えていくというようなお話とでもいうのかな。
これはまさに小説としての効果を発揮してる作品で、というのも「顔」が重要な焦点なんですよね。「絵」で描いてしまうと展開の妙が失われる。まさに文字で書かれているものを想像力で補うことが大切なポイントになります。
呪縛から解放されて、心も解放させていく白坂。
重い枷を外して、白坂と向き合う黒石。
とにかくベースが暗い物語なので、2人の未来に幸あれ、と思うのですが、ホストクラブに黒石と白坂と、もう1人中学時代のイジメ野郎・金崎という男もいる。そこは偶然の重なりすぎ、と引っかかった。
そして、次作はその金崎のスピンオフです。
2005年刊。
自身の顔の醜さが原因で周囲に蔑まれていると思っていた一葉は、20代半ばにしてリストラに遭い、再就職に回った面接先全てで不採用となる。
どん底の気持ちが引き金となって死ぬ間際の事故を起こして大怪我を負った一葉は、九死に一生を得て吹っ切れたものもあったのか、顔を変えて過去を捨てたつもりで上京する。
一葉の顔に対するコンプレックスの根深さはネガティブながらも共感を汲み取れるものがあった。
冒頭にある一葉の”顔を治す為の手術”って整形とは違うんじゃない?って引っ掛かりは、クライマックスで「ああ、やっぱりね」となるが、でもまぁ生まれ変わったと思い込める強いきっかけが必要だった訳だ。
上京してホストクラブを紹介された一葉は、皮肉にも過去の苦い思い出となった黒石と再会する。
一葉の感情は彼への復讐というよりも『ざまぁ見ろ!!』を見せつけたいかのようだが、そんな痛々しさを包むような黒石のフォローに包容力を感じる。
既にトップホストである黒石は店から離れると普段着はTシャツにジャージ、住まいは昭和の面影が色濃い平屋と、センスとはかけ離れたギャップの持ち主だ。
一葉と離れていた間の黒石の境遇も切ないものがあるが、ホストに染まり切らない彼の素朴さ切実さにほっとできる。
実はこの話、メインは復讐ではなく黒石と一葉の過去の初恋の拗れの修復にある。黒石にとっては親の都合で転校しただけで、一葉への一途な想いは消える事がなかったので、一葉が絆されていく様子を待つ辛抱強さは健気なものだ。
しかし黒石だけでなく、金埼といい一葉の元知人といい偶然の再会率が半端ない。
この辺りは都合が良すぎる気もするが、一葉が顔のコンプレックスという呪縛を断ち切るには必要な過程として受け入れられる。
ぶち切れた一葉が金埼に向かって殴り掛かる場面は結構好きだな。
まぁ整形に対しての是非はともかく、一葉が自ら立ち直った事、長年の拗れを解消して黒石と無事に両想いになった事、ホストを引退して立ち上げた二人の店のオープンを祝して乾杯。