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苦手だと思っていたホスト物。いやー、面白かった。
小さい頃から顔にコンプレックスがある白坂が、事故をきっかけに整形し、別の人物として生きていこうと上京。ホストクラブで働き始めるわけですが・・・そこには中学の同級生黒石が。
偶然が重なりすぎている気もしなくは無いですが、歌舞伎町に集ると考えれば、そう広いところでもないですから幼馴染と遭遇するのはアリかもしれませんね。
また、ホストクラブですから、一癖も二癖もある男や女が登場してくれるので、そんじょそこらの男しか出てこないBLと比べたら、よっぽど奥が深い作りになっているなと感じました。
親から刷り込まれたトラウマのようなコンプレックスって、ずっと引きずっちゃうでしょうね。他人からみればそんなにたいしたことでなければ余計に「コイツなに?」って思っちゃうんだろうし。そして、皆一言足りないから誤解が誤解を生み、いじめられたり疑心暗鬼になったり、どんどん悪い方へ行っちゃう…紆余曲折は多すぎるほどあるものの、白黒コンビがまとまってよかったよかった。
この二人、根本的にどこも悪くないのに、周りに振り回されちゃってるので、とことん可哀想なんですが、やってることが男前なのでそこのところがまたいいんです。
特に好きなのは、白坂が雨の中黒石の家を出たものの、気になって戻っちゃうシーン。このあとハッピーエンドで終わりそうなのに、残りのページがやけに多い、これまでもヤキモキしてるのにまださせるのかー?って感じですが好きだな。
そして、これとリンクしているお話が、「真夜中に降る光」になりますので、是非読んでください。
ホストクラブが舞台の再会ものです。トラウマを持つ受けの視点で話が進んで行きます。白坂一葉(受)は、顔に対するコンプレックスに苦しんできました。それは、幼い頃に、義母に「気持ち悪い顔」と言われたことに遡ります。たかが顔、とは言えないですよね。義母の言葉は、「器量が悪い」という意味で発せられたものではなく、生さぬ仲の子供に対する悪意(とその母への嫉妬)から出たものでした。顔とは、その人を代表するもの。相手の顔を否定するとは、相手の存在そのものを否定することなのではないか、と思います。義母が否定したかったのは、一葉の器量ではなく、一葉の存在そのものだったのでしょう。結果として、一葉は自分の顔へのコンプレックスを植えつけられ、自分の顔を直視することができなくなり、「自分は駄目な人間だ」と自己否定へと陥ってしまい、さらには、他人と顔を合わせることもできなくなり、対人関係を築くことができなくなります。一葉は、自分の存在そのものを否定的に捉えてしまうことによって、他人と対話することができないできたのです。
リストラされ、再就職にも失敗した一葉は、事故(自殺未遂のようにも見えます。未必の自殺といったところでしょうか。)で重症を負います。その後、整形して、「一夜」という別の人間として人生を再出発させ、ホストになります。そして、勤め先のホストクラブで中学時代の同級生である黒石篤成(攻)と再会するのです。一葉と黒石は、中学時代ひと夏だけ付き合っていましたが、行き違いがあって、一葉は黒石に裏切られたと思い、彼をずっと恨んできました。そして、再会した篤成に復讐の念を抱くのですが、そんな一葉に篤成は「好きだ」と告白します。一葉の「顔が好きだ」と。
「顔」、それは一葉がそのために人生が上手く行かないと思い、ずっと嫌悪してきたもの。昔の自分と今の自分で違うのは顔だけ。結局は全て「顔の美醜」で決まってしまうのだ…そう一葉の心はやりきれなさに包まれます。篤成の好意はしかし、決して一葉の「顔」の美しさにだけ向けられたものではありませんでした。彼にとって、一葉の「顔」というのは、一葉の存在そのものだったのだと思います。篤成は、今も昔も言葉が足りないんですね。一葉は、復讐心から篤成を弄ぼうとして彼と付き合い始めますが、やがて彼の不器用ですが真面目で真っ直ぐな在り方に惹かれて行きます。
オチは、なかなか意表を突かれますが、私はとても共感しました。一葉がコンプレックスから解放され、本当の意味で生まれ変わって、心から笑えるようになった姿には心を打たれました。大切なのは、自分の価値を認め、自分という存在を愛すること。そう思わせてくれた、とても真摯な作品でした。
口数の少ない無骨な先輩ホスト黒石×整形で人生再出発・繊細な白坂
初恋相手とのすれ違い後の再会。
ホストモノを初めて読みましたが、危惧したようなぎらぎらした感じや煌びやかな雰囲気は控えめで、じんわりと温かくなるお話です。タイトル通り切なくて少し甘い、全体を包むそんな空気感がとてもすきです。
整形をしてその後付き合いだすという流れに、最初は躊躇しました。いつかは真実がばれてしまうし、人工的な美しさに惹かれて恋に落ちるというのも、どうなんだろう…と。黒石は顔が好きだと告白の理由を言うので。
しかし最後にその引っ掛かりがするんと解けます。咽喉の小骨が取れるようなすっきりとした無理のない理由が隠されていました。
中学時代に付き合っていた黒石と白坂。ひと夏の恋と言うには余りにプラトニックでしたが、付き合うきっかけになる黒石の言葉が白坂にとって存在価値を感じられた唯一でした。そしてその恋が黒石にとっても26年間の唯一。
一途だったのは黒石だったのでしょう。10年越しの想いが実って付き合いだし、つれない態度を取られても、白坂が心を開いてくれるのをずっとじっと待っています。
最後は2人でこれからを開いていくというような、ささやかな希望のあるハッピーエンドです。呪縛から解かれた白坂と、その隣にいて見守るような立ち位置の黒石。
本当に真面目というか、恋に対して真摯な内容なのですが、黒石はちゃんと?むっつりです。無論ツボ。
好みの作品がないかなとちるちるでランダムに探していて、この作品のあらすじを読んだらどうも知っている話の気がする。でもちるちるの読了の本棚にも入っていないし、手元に本もないし、Kindleにもなし他の電子版にもなしと、うーんとずいぶん考えて思い出しました。以前CDを聴いたことがあったのです。
そっかそっかと、そうなるとどうしても読みたくなり、Kindle版を早速購入。
一葉は自分の顔にとてもコンプレックスを持っていた。継母には気持ち悪い顔で見るなと言われるくらいだった。
そんな一葉は24歳の若さでリストラされヤケになって車を走らせ大事故にあう。整形をしなければならないほど顔にひどいけがを負う。
新しい美しい顔を手に入れた一葉は一夜と言う新しい名でホストの職に就く。
そこで中学生時代の同級生で唯一心を通わせたと思っていた黒石に再会する。
一葉は後からその黒石が裏切っていたことを知り、整形で一葉とわからない黒石に復讐をしようとするが…
本当にこの作家さんは人の気持ちを表現するのが上手いなと作品を読むたびに思います。
一葉はコンプレックスをかかえ家族にも恵まれず学校生活も荒んだものでした。唯一希望だった黒岩との時間も裏切りと知り、リストラにあい事故にあい、散々なところから一葉が立ち直る物語。
黒岩との長い長いすれ違い。一葉の容赦ない言葉に黒岩も傷つきます。この辺りはお互いに辛いですね。切ないです。とても。
新しく手に入れた顔で自信を少しずつ取戻し、間違った方法ではあるけれど黒岩への復讐という目的があって前に進むことが出来た一葉。
そんな一葉を傷つきながらも支えやさしく接する黒岩に一葉は本当の意味で癒されていく様がとてもいいです。
外見ではなく心、気持ちの問題というのがよくわかる作品です。
お互いを求めているようで辛い状況が続くので最後に一葉がいろんなことから解放されて初めて黒岩を求めるところがたまりません!
ふたりが新たな生活を始めるシーンはとても爽快で嬉しい気分になりました。
BLCDと合わせてみると更に好きになった作品です。
砂原先生は個人的に好きな作家なんですが、数多く出されている作品の中でも
この小説は印象深い話で大好きです。
ホストという職業をしながら二人の距離が縮んでいくんですが、
復讐するというほのぐらい受けの目的があるわけで
途中はらはらする場面が幾度も訪れます。
受けのことをいじめてくる先輩ホストもいてむかむかするし、
寡黙な攻めの考えていることはさっぱりわからずにもやもやするし、
これいったいどうなるの!?と焦れるんですが、最後はハッピーエンドです!
受けの盛大な勘違いとそれによって引き起こされるすれ違いに大変萌えさせてもらいました!
この後はふたりで末永くおねがいしますー
最後まではらはらしながら見守っていたので
ふたりが幸せになってくれてとっても嬉しかったです。
勘違い、すれ違いネタが大好物の方は絶対に楽しめる作品です。ぜひぜひ。