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『僕らに名前をつけるなら』の下巻。
個人的に大洋図書さんの表紙ってすごく好きで、いつもとっても素敵だなーと思っているのですが、今作品の表紙もとても素敵です。あがたさんの描かれたイラストはもちろんですが、紙質とか、タイトルの文字とか。
さて、それではさっそくレビューを。
上巻の終盤で和泉に触れた馨ですが、そんなときに馨のスマホが鳴る。連絡してきたのは「母さん」。
一気に現実に戻る二人だけれど、かかってきた理由が母親の事故を知らせるものだった。
取るものも取り敢えず母のもとへと駆け付ける二人だが、そこで和泉は久しぶりに母親と再会し―。
母親に息子だと告げることのない和泉。
和泉が息子だと気づかない母。
んー?
なぜ息子と名乗らず、そして母親も息子に気づかない?
と思いつつ読み進めましたが、うん、この母子の再会が非常にいい意味でインパクトがありました。
馨が母親に「(和泉は)大切な人」と伝えるシーンがあります。
彼らのお母さんは、二人の想いに気づいてたんじゃないのかな、って。
気づいたうえで、「兄弟」という枠にとらわれることなく、自分の思うように生きていってほしい。そんな彼女の言葉にしないエールみたいなものを感じました。
和泉が馨の想いに応えることができるか。
ここがこのストーリーのキモになるわけですが、二人の高校生生活、過去の回想、そして寮で二人ともに過ごす時間。そういった描写が実に繊細に、時に圧倒的な質量をもって読者に迫ってきます。それ故に、少しずつ和泉が馨を受け入れるようになっていく心情がダイレクトに伝わってくる。
二人が、「傍から見た自分」は気にせず、「自分たちが名付けたい関係」になればいい、と腹をくくるシーンがありますが、その展開が非常に秀逸でした。
あがたさんにしては、と言っていいかな。
二人の関係がモダモダ進むこともあって濡れ場は少なめ。
少なめですが、修正が甘いことと、何より二人の相手を想う気持ちが強まってからの濡れ場なので、とにかくエロく、そして甘々でした。描き下ろしの「馨の自慰シーンを和泉、目の前で観察」のストーリーがエロかった…!
馨が中学生の時に女の子とイタす描写があります。
詳細な描写はないですし、このことをきっかけに兄・和泉に対する思いを自覚するシーンなので重要なシーンではありますが、女の子とする、という展開が苦手な方は注意された方が良いかもしれません。
「兄弟もの」は、どうしてもこの兄弟という枷を外せるか否か、に終始しがちな展開になるものが多いので、既視感のあるストーリーになるかと思いきや、萌えあり、切なさあり、葛藤ありと内容も盛りだくさんで非常に読み応えのあるストーリーでした。
作家さんが「これは光属性の兄弟もの」とインタビューでおっしゃっていた意味が分かりました。
私はこの作家さんの「不等辺三角形の定理」「証明」で既に兄弟のお話を読んだことがあるので、この兄弟は陽の当たる道を歩むふたりなんだなと感じました。
葛藤はあるのですが(むしろ上巻では兄が思い悩む姿が多いです)下巻はそれらを綺麗にまとめている印象です。上下巻の尺でこれだけ丁寧に収められているのは作家さんの力量かなと思いました。逆にこれ以上悶々とする描写は間延びしてしまうというか…かといって背徳感を増すような展開にするときっと続刊になってしまうと思うし……。まとめて最後まで読みたい身としては、とても素晴らしい上下巻の完結でした。
既に同じ事を書かれてる方もおられましたが、弟・馨の押せ押せで最後まで話が終わらなかったのがとても良かったです。ちゃんと兄からの気持ちを伝える、という悩みぬいた兄・和泉の不器用な意思表示が見られて萌えました。
また、母親とのシーン「母は気づいていた」とあるように、母は気づいていながらもあえて声を掛けなかったところにグッときました。
それは「ふたりの関係に気づいているから」なのか「和泉が言い出さないならこのままでいよう」なのか…。
大事な場面だからこそ読者に答えを委ねる形をとった作家さんは凄いなと思いました。
なのでこのシーンをどう受け取るかによってこの作品の印象が変わったりするのかもしれません。
私個人としては3話で和泉が「母さんは言葉にしなくても見透かされてるのかなと思うこと多かった」と言っているので、前者なのかな?と思っています。
番外編は馨と女の子とのシーンがありますが、私は逆にこのシーンがとても印象的でした。和泉に向ける視線とは全く違うんです。情事中にも拘わらず冷めたような目で女の子を見る馨にぞくっとしました。枕に女の子の化粧がつくのもリアルで。
ここで馨は自分の兄への気持ちを自覚するんですがモノローグの「自分のことが、少し気持ち悪かった」に全てが集約しているように感じられました。決してこの気持ちに抵抗がなかったわけではない、というか…。
この番外編を読んで馨の気持ちが分かるので、また上巻から読み直したくなります。(そしてあとがきに書かれていた馨の髪色の変化を含め…)
エッチシーンは今までの作品に比べると多くはないのですが、その分濃厚でとても眼福でした。何と言っても短冊修正…!この作家さんは局部がとてもいやらしく描かれるので、ようやくこの修正具合で世に出てくれて嬉しかったです(笑)
また描き下ろしはかわいいふたりが見られます。
上巻「僕はおとうと」下巻「僕のこいびと」というタイトルですが、これは弟の馨視点なのでしょうか。
"おとうと"から"こいびと"へ。だとするとラストの馨の答えは―――…。
相変わらず秀逸なタイトルをつける作家さんだと思いました。
今まで読んできた兄弟BLの中でかなり上位に入ります。
既にレビュアーさんも書かれていましたが、読むたびにどんどんいろんなことに気づかされます。何度も読み返そうと思います。
上下巻同時発売の有難みを実感です!
上巻読後の雄叫びのまま一年待ちとか無理です、一気読みできて本当に良かった。
上下巻の本編は兄の和泉目線で展開していくんですが、
下巻で馨が和泉と同じ高校に来た経緯が描かれ、
番外編と描き下ろしは、馨目線で展開する和泉への執着が丁寧に描かれていて、
黒髪中学生から大人っぽく成長していく馨が拝めます。
急接近した二人に京都の母が事故と連絡あり、母の元へ行く二人。
母はケガをしているも元気で、息子であることを言わない和泉に、気付かないフリで終わる母との再会。
馨から2年前に京都で、和泉と元カレが一緒にいるのを見て腹が立ち、
同じ学校に来たと聞かされ、離婚して離れてからずっと自分を忘れず、
馨が想い続けていたことを知った和泉に、少しずつ禁忌を越えていく気持ちが強まっていく。
ここまで来ると、年下執着攻めの押しで一気に…となりそうですが、
京都から戻った後、馨は和泉を避けることもなく、以前より距離を取りつつ普通にやりとり。
焦れる和泉が禁忌の葛藤を越えて、自分から動く姿が見れるとは…ステキな告白でした。
距離を取っていた馨の理由に萌えまくりで、いつも強気な馨だけに可愛くて堪らない。
そして、和泉と繋がる馨との展開が…まさか初めてとは思っていない馨の反応が可愛い上に、
和泉は初めて挿れられてトコロテンのどエロで、その後もとろエロ…。
子どもの頃、タイプの違う二人はお互いに、
「友達にはならないよ、兄弟だから一緒にいただけ」と言ってましたが、
じゃあ恋人なら?という、逆発想の禁忌ものなのかな。
再会後に実は兄弟と知ってから、色んな呼び名でいた二人。
逢坂先輩・矢野、兄さん・馨…そして、和泉・馨。
上巻で初めて連絡先をやりとりした場面が、ビックリ萌えに繋がるとは思ってませんでした。
バレて恥ずかしがる馨の反応が可愛くて、イチャイチャが堪らん二人。
先輩と後輩、兄弟、恋人…これから先もずっと家族でパートナーでいて欲しい。
番外編での馨目線、中学生の頃にみた和泉と元カレのキス。
激しい嫉妬と、彼女とのエッチで和泉を性対象として重ねる場面からの執着が半端ない。
再度上巻を馨目線で読み直すと、初めと違う印象になります。
じわじわとくるので、何回も読み返してしまう、そして読むたびに萌え度が上がる。
馨の滾る想いが、静かにじわじわ伝わってくるんですよね…。
実は一読目は萌評価だったんですが、二読目には萌2になり、三読した今は神よりの萌2。
この作品は何度も読み返したくなる…神に変更しているかも。(→翌日神に変更しました)
下巻の表紙、馨の赤い髪と眼に紅い頬。
上巻の青い和泉も色っぽいんですが、馨の滾る感じが程よく表現されていて大好きです。
ガチ兄弟もの…ステキな萌えカップルでした。
※紙本:修正は細~い短冊です。描き下ろしの馨ソロプレイを見る和泉がエロい。
下巻、素晴らしかったです。
爆萌えです……。正直、上巻を読んだだけでは、まあ萌くらいかな〜と思っていたんですよ。
それがそれが……。よかったです。
お互いがお互いを好きだと自覚す(して)るんですが、
そこが可愛くて可愛くて……。
球技大会の後夜祭で女の子に告白されようとしていた弟を他の誰かにとられたくなくて、邪魔してしまった兄。
そこで弟への気持ちを告白します。
体操着姿の男子が抱き合っているシーン、たまりません。しかも兄は萌え袖。
弟が兄の居場所を突き止めたのって、
偶然、兄がかつての恋人の先輩といるところを目撃してしまったからでした。
その時の先輩が持っていた学校指定バッグを特定し、学校を探し当てた。
そして当時の自分の偏差値では難しいため、兄と再会することを夢見て猛勉強の末、今があるんですよ……。良い執着具合。
あとですね、エロの方も良かったです。
結合部をがっつり描いてくださってて、超ハッピーです。
感じている兄の表情もどエロくて良いです。
僕のこいびと もエロ可愛いお話でした。
ストーリー ★★★★★
登場人物 ★★★★★
エロ度 ★★★★☆
弟×モブ女子のそういうシーンがあります。
苦手な方は注意してください。
あがた先生がブログでそういったコンセプトでこの話を執筆したというだけあって、しっとりした優しい物語でした。
私は近親相姦に抵抗がないので兄弟ものはよく読みますが、やはり病み系だったり訳ありものが多い中、こちらは最後まで安心して読めます。
兄弟BLの入門書のような感じ。葛藤はあるのですが、精神的にキツイ…というような展開はありません。等身大の葛藤という感じでしょうか。
その分、ふたりの心理描写を丁寧に読ませてくれるので、背徳感よりも「萌え」が勝ります。
LINEの名前、幼少期の思い出、兄の元カレ、そして、二度目の朝が来たら……のモノローグ、
上巻にいろんな彼らのつ繋がりが散りばめられていて、ひとつひとつ拾い上げるようにして読むととてもじんわりとした気持ちになります。
イルミネーションの前でふたりが交わす言葉はとても印象的で、改めてタイトルを考えさせるシーンでした。
そして、誰にでも当てはまる台詞だと思います。本当にとても綺麗な終わり方でした。
重たい兄弟ものはあまり「何度も読み返す」という気分にはなれないのですが、この作品は読み返したい作品です。
と言いつつ、私はあがた先生の普段の作品から漂う陰鬱とした雰囲気が好きなので「次は今回と真逆の重めな兄弟ものも描きたい」とおっしゃっていたので、そちらも是非見てみたいと思いました。