電子限定描き下ろし付き
トラウマを持つ大学生×大切な人を亡くした研究員の、ハートフル・ラブストーリー
「たゆたう種子」のスピンオフ作品です。
この作品を契機に本編も読んだ感じなんですが、なんで早く読まなかったんだろうと後悔。
画がすごく好みで、脇も含めてキャラに愛着が湧く丁寧な描写、どちらも厚みのある作品でした。
本編主人公のピュアな天然受け葉純が可愛くて、
この作品では変わらない天然ぶりと成長したスーツ姿の葉純に激萌えですが、
根井は話題だけなんて…顔見たかったよ~。
本作は研究員になった木庭先生のその後、セクシャルに悩むイケメン大学生由木とのお話です。
元カレの死を引きずる受けとトラウマ持ちの攻めという、
けっこうデリケートな題材で、もっと深刻になってもおかしくない感じなんですが、
何故かほのぼのテンションで細かい笑いが散りばめられていて、
気づけば優しい気持ちになって癒されているという、不思議な作品でした。
男が好きなのか女が好きなのか解らない由木。
DK時代に親友に告られて、恋愛感情でないまま抱かれようとして出来ずに関係が拗れ、
その後は彼女とエッチしようとしても出来ず、
国宝級のイケメンと周囲に揶揄されながら、深刻な悩みを抱えていた状態。
タチならイケるかもしれないと、木庭がネコだと知りゲイだと言って近づいた由木に、
ウソだと知っても悩みを聞いて優しく対応してくれた木庭を、本当に好きになっていく。
そんな由木の想いに淡々と応えていく木庭に、読んでいると違和感が…。
やっぱり元カレを忘れられないと立ち止まると、どこかホッとしている自分がいる。
傷を引きずったまま進んでもイイことはないからね。
だからこそ、元カレの死は自分に原因があるとずっと責め続けている木庭が、
過去と向き合っていく由木と共に、気持ちを整理して一緒に一歩踏み出そうとする場面にジンとくる。
どうやったら思い出になるのかは人それぞれですが、
否が応でも時間と共に周囲はどんどん変わっていくという現実、
一人取り残される悲しさはありながらも、どこか救われている気持ちの方が強いのかも…
せつなさはもちろん、温かさを感じさせる繊細な描写が素晴らしいラストでした。
ミモザ使いが印象的で、それぞれに意味合いを持たせているんですが、
木庭のミモザの思い出話が一番好きです。
ミモザの中に元カレとの青春の思い出が詰まったままでいて欲しい。
この作品だけでも充分楽しめますが、是非「たゆたう種子」も見て貰いたい。
本当にキャラ作りがステキな作家さんです。
※シーモア:修正は白抜きです。
表紙を彩るミモザが作中にもたくさん出てきます。
ミモザの花言葉は、友情・密かな愛・真実の愛……など。
どの言葉がこの作品に当て嵌まるのか?
それは、読み手次第だと思います。
性に悩むイケメン大学生・由木と博士研究員・木庭の
心がじんわり暖かくなるかハートフル・ラブストーリーです。
大学生の由木は過去の恋愛で傷付き心を閉ざし、
自分の性的指向にも疑問を抱いています。
ある日、バイト先でゲイを公言する木庭に出会い……
「俺もゲイなんです」
……と木庭に伝え距離を詰めていく由木ですが、
実は由木はゲイを自覚しているわけではありません。
由木は女の子と付き合っても勃たず、
男友だちと付き合っても出来なかった(受)
そんな自分にコンプレックスを持つ由木は、
大きなトラウマを抱えていることに気付いていません。
木庭は優しく、相手を慮ることができます。
だけど、大切な人を失った過去をずっと引きずっているのです。
ギズを負った2人が少しずつ心を通わせていき、
一時は付き合うところまで進展します。
いざ、Hに挑もうとするもトラウマが蘇る由木と、
やはり過去の恋人を忘れられない木庭……
交わりそうで交わらず離れていく2人が切ない(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)
トラウマと向かい合う由木と、
過去から許される木庭。
〝何かが100%誰か一人のせいということはない〟
……これは、作中に出てくる言葉です。
何が・誰が悪いということはなく、いろいろな要因が重なって
悲しみも喜びも起こるのだと思うのです。
2人が誰かを、自分を、責めることなく生きていって欲しい。
剪定しても翌春咲き誇る強いミモザのように、
折れても傷ついても咲き続けて欲しいと思える2人でした。
白黒つかない関係のままの2人ですが、
これからに希望を持たせる素敵なラストだったと思います。
由木はゲイというわけではなくトラウマに囚われていただけで、
木庭を好きになったのは木庭だったからなのでしょうね。
読み終わって、素敵な作品だった〜と思いながらカバー下の後書きを読んで、初めてスピンオフ作品だと知りました。
たまたま本屋で手に取って衝動買いをしたので前知識は全くありませんでしたが、スピンオフ元を知らなくても充分に楽しめます。(私は読み終わっても気づかなかったので…)
登場人物それぞれにいろいろな悩みがあります。
一面的な悩みではなくて、多面的な悩みです。
人間は何か一つの問題や悩みを抱えていたとしても、それが一つの原因からによるものだとは限りませんよね。いろいろなものが積み重なってその人を作り上げていると思います。
そんな悩みや問題がひとつひとつ丁寧に描かれており、乗り越えたり躓いたり、二人の距離が縮まったり遠のいたり…
一冊だけど、とても読み応えがありました。
「ハラハラドキドキ!」とか「キュンキュン可愛い萌え!」という感じにはなりませんが、じわじわと、心が温かくなるような、何度でも反芻したくなるような作品です。
「たゆたう種子」のスピンオフと知り立て続けにこちらも。中陸先生の登場人物の作り方とっても好きだなと気づく。木庭先生が由木に披露した水切りやミモザに関する知識が、小林との会話に由来しているという描写が堪らなく好き。小林のことは忘れなくていいし、小林が木庭の一部を形成していて、それが由木にも伝わって…こんなふうに人と人が繋がっていくんだなぁ、みたいなじんわり感。
木庭が「君のことが怖くて犯罪にでも〜」って早々に由木に言うとか、性的接触も付き合いに必要なことをしっかり言うとか、彼の人格に一本筋が通っている。電子限定おまけ漫画の"悪い笑顔"なんてのもそう。
ラスト木庭が思い浮かべた小林の表情にこっちまで泣けてしまったよ。死んだ人にはもうどうやったって勝てないんだけど、別に争わなくたっていいんだよな。
【たゆたう種子】スピンオフ
前作でガッツリ絡んでた先生・・・というか先生が話を回していたといっても過言ではない重要人物が満を持して主人公!
しかし、前作でスピンオフを熱望した人は多いと思いますがそれと同じくらい、先生の中の「小林」の存在のデカさに心囚われた方も多かったはず。
そんな小林を忘れて次の恋に進むのはちょっと寂しい・・・なんて思ってしまって、買ったはいいがなかなか読めず約一か月積んでいました。。。
いざ読んでみれば・・・♡
先生の中の小林の存在感は否定もせず消しもせず、しかし先生の中の罪悪感は少しだけ軽くして未来への扉をそっと開けた素敵な作品でした。
はっきり大学生の由木とくっついて綺麗なハッピーエンドという感じではなく、小林を忘れられない先生を丸っと受け入れて愛し続ける由木。という終わり方にホッコリ癒されました。
しかし、描き下ろしや特典描き下ろしでは幸せそうな未来もちゃんと描かれてて嬉しかったです。