イラスト付
ずっと想い続けるだけだった長い恋が実るまでを、時に切なく、時にほろ苦く、優しくしっとり綴った作品になります。
えーと、今回、攻め受け共に、月村先生では珍しいタイプじゃないかと思うんですけど。
人懐こくて明るいけど実は繊細な受けに、無口で無愛想な攻め。
あれ? こうやって書くと、受けはそうでも無い気がしてきた。
一応誉めてるんですけど、いつものごとく地味で、これと言って特に何も起こらない話なんですよね。
でも、とにかく、丁寧に綴られる主人公の恋心だったり、二人の絶妙な距離感と言うのに萌えるのです。
えーと、ぶっきらぼうな攻めが分かりにくい優しさを見せ、明るいけど臆病受けが、そばで笑顔を見せ続ける的な。
もう、甘くて切なくて可愛くてと、心を撃ち抜かれっぱなしなんだけど!
ついでに、幼馴染み(女子)といい、攻めの父親といい、嫌なヤツも一人も出てこなくてと、とてもあたたかいお話でもあって。
こう、痛さもゼロ。
読後感も最高に幸せ。
いや、最初こそ攻めのオラオラっぷりにびっくりしちゃったけど、後々意外と可愛いヤツだと分かってくるしね。
まぁそんなワケで、王道の片思いにキュンキュンしたい姐さんに、全力でオススメしたいです。
とりあえず、私は萌え転がりました。
ザックリした内容です。
地方都市の閑静な住宅街にある美容院で、美容師をする昴大。
美容院の店長で元同僚でもある遠藤に、長い片思いをしているんですね。
そばに居られるだけで幸せで、決して想いを成就させたいとは思わずと、自分の気持ちをひた隠しにして。
そんな中、遠藤と幼馴染みのすずが結婚する事に気付いた昴大は、ショックからヤケクソでキスしてしまいー・・・と言うものです。
まずこちら、昴大ですが、明るく人懐こいムードメーカー。
ただし、実はとても臆病で繊細だったりします。
両親が不仲だと言う幼少期の家庭環境により、道化役を演じ続けた結果、現在の彼が出来上がったんですね。
こう、何を言われても笑いにして返す事で、自分を守ってる感じでしょうか。
対して、攻めとなる遠藤ですが、こちらは無口で無愛想。
えーと、月村先生と言うと包容力のある溺愛攻めがお約束ですが、今回は全然タイプが違うんですよね。
仕事が終われば「すず(幼馴染み)の所でメシ食って帰る」。
そこで昴大が「じゃあ俺も」と言えば、「図々しい」みたいな。
で、昴大に軽口を叩かれる度に「うざい」みたいな。
いや、何だろう・・・。
やりとりだけ見ると、まさにオラオラ系。
実は最初、「げえっ」ってなったんですよね。
それが読み進めるうちに、無愛想で言葉がキツイだけで、実はとても優しいし誠実なんだと分かってくる。
えーと、おためごかしとか一切せずにストレートに言ってしまう為、煙たがられるみたいな。
と、こんな二人で、甘酸っぱく切なく、時にほろ苦く、しっとり読ませる恋模様。
二人の出会いから、都内の人気店で同僚として過ごした時間。
そして、母親が亡くなった事で実家の美容院を継いだ遠藤に、勢いでついて行く事になった昴大の、幸せな一年間。
二人の絶妙な距離や関係性だったり、昴大の恋心だったりが、繊細に丁寧に語れます。
いやこれ、昴大がですね、とにかく可愛いしいじらしいんですよ。
そばで見ていられるだけでいいと、気持ちをひた隠しにする。
で、好きだとバレないように、(わざとらしく)彼女が居るふりとかしちゃって。
いや、やってる事があさってと言うか、ちょい空回りしてるんですよね。
一生懸命滑車を回す、ハムスターを連想させると言うか。
でも、そんなワタワタしてる様が、可愛くてキュンキュンさせられてしまう。
何だろう・・・。
こう、臆病なのも勿論あるけど、男だと言う点で、自身が絶対に恋愛対象にはならないと思ってるんですよね。
この部分の切なさと言うのがしっかり書かれてるんですけど、傷ついても平気なふりを懸命にしてるのに、グッときちゃうと言うか。
あと、こんな感じでくっつくまではちょっぴり切なかったりするんですけど、結ばれた後は激甘。
そもそも、こんな感じの主人公なので、盛大な勘違いをやらかして突っ走っちゃうんですよね。
で、誤解が解けて想いが通じあうー。
これが、うっとりさせてくれて・・・では無く、爆笑!
の後の、激萌え!
いやもう、告白シーンでこんなに笑っちゃう事ある?
てか、えんちゃん(遠藤)、分かりにくすぎー!
デレが、もう凶悪だよ!!
いやね、最後に遠藤視点のSSがあるんですけど、「うざい」にそんな意味が!?と、びっくりしちゃうんですよ。
ついでに、めちゃくちゃ昴大の事が好きじゃんかよ!と、ニヤニヤしちゃうんですよ。
こういうSS、もう大好きーーー!!
う~ん・・・。
この二人、本当に正反対なんですよね。
相手の気持ちを優先して、常に明るく気遣いし続ける昴大。
人との軋轢も何のその、ストレートに自分を主張する遠藤。
互いが互いの、そんな部分に惹かれあったんだろうなぁと。
ところで、イラストが苑生さんになりますが、めちゃくちゃ美しくてうっとりしました。
そして、修正が甘い!
今回、エロがわりとしっかり書かれてるんですけど、エッチシーンの挿し絵に「おおっ!?」となりましたよ。
キスシーンも美しすぎて、ため息ものですよ。
と、とにかく「片思い」を真っ正面から丁寧に綴った作品。
最高でした。
昨日の夕方に購入し、深夜寄りの時間に仕事がらみの飲み会から帰って来て「ちょっとだけ」と読み始めたらさあ大変!最後まで読んじゃったよ。(なので今はとても眠いです)
このお話は『ハラハラさせる』とか『切なくて気になる』とか、そういう『続きが気になって仕方がない』というタイプのものではありません。だって主人公の2人の恋が成就するのはお話の6割程度の処なんですもの。
「んじゃ、なんで?なんで止まらないの?」と言えば、多幸感です。
このお話、多幸感に溢れている。
お話が醸し出すフワフワした幸せ感から抜けたくなくて、それに浸っていたくて、途中で本を閉じられなかったんですよねぇ。
幸せな気分になりたいと切望する姐さま方は今すぐ読んだ方が良いよ!
月村さん作品なので、切なさ要素はあちらこちらに散りばめられています。
表題作は昂大視点。
美容師の昂大は同期の遠藤に恋をしています。実らせることは不可能と頭から諦めている恋ですが。
この昂大くん、子どもの頃から両親が不仲だったため、その間を取り持つために『家庭の道化師』を務めて来たんですよ。面白い事を言って2人を笑わせるとか、ふんわりした雰囲気を保って家庭がギスギスしないようにするとか。その努力にも関わらず2人は離婚し、お母さんは出て行っててしまうのですけれども。その後自分がゲイであることに気づき、フェミニンな雰囲気を友人から『そっちの人?』とからかわれても、今まで培った『おちゃらけ』スキルで煙に巻いて来ました。そして今は、お客様とのコミュニケーションが大変上手な美容師さんになっている、という訳です。
お話ではさらっと書かれていますが、考えてみると割と悲惨なんです。でも『可哀そう感』は少ないの。
方や遠藤。スカウトが店に来るほどの美丈夫で美容師としてのセンスが申し分ない。おまけに努力家で技術を磨くことにも熱心。だけど、全く愛想ってものを持たない人なんです。あまりものを喋らず、人に意見を言う時も配慮をしない。つまりお客さんにも「その髪型は似合わない」とズバッと言っちゃうし、先輩のことも遠慮なく批判する。
だから昂大くんも最初から遠藤に好感を抱いていたわけではないのです。
でも、とても気になる存在だったんですね。自分が言いづらいことをズバッと言ってくれたりするので。
決定的だったのは、昂大くんをよく見てくれていたことでしょう。彼が単なる『おべんちゃらを振りまく太鼓持ち』ではなく、職場の雰囲気をよくするために行動していることを遠藤は良く解っていたんです。
遠藤の母が亡くなってしまい、その美容院を継ぐため彼は実家に帰ることになります。
送別会の酔った勢いで、押しかけ的に昂大くんもそれについて行くことになり、2人は遠藤の故郷で一緒に働くことになります。そこにいるのは遠藤と幼馴染のネイリスト。お似合いの2人が「くっつくんだろうな」と昂大くんは思っていて、切なくもあり、片一方では遠藤への想いを隠し続けることが必要なくなるので「いっそ早くくっつけ」と思ったりと、千々に乱れる恋心。
ここまでもコミカルに進んできましたが、ここから先がもう、幸せ感のオンパレードですよ。
超メガトン級の多幸感ですよ。
『多幸感』という言葉が本編にも登場する位、多幸感にあふれているんですよ。
同時収録、遠藤視点の『雪の日の帰り道』も良かった。
お腹いっぱいの後に出てきた『大好きなスイーツ』とでも言ったら良いのか。
ほんと、読後は幸せまみれになりました。
幸せを求めるみなさま、ご一読を強くお勧めします。
作家買い。
月村さんて包容力のある攻め×薄幸受けを描かれる作家さまのイメージが強いですが、今作品はそのイメージを大きく覆すCPでした。ツンデレならぬ、ツンツンツン攻め(デレなし)×健気で一途な受けくん。
が、めっちゃ良かった…!
作品の評価を大きく左右するキャラ設定ですが、今作品は完全にキャラ勝ち。主要キャラが素敵すぎて悶え捲ってしまう、そんな作品でした。
主人公は美容師の昂大。
子どものころから不仲な両親のもとで育った彼は、両親を仲良くさせたくて道化を演じる子。場の空気を穏やかにさせることが得意で、周囲に常に気を配る男の子です。
そんな彼が片想いをしているのが、同じ美容師仲間の遠藤(あだ名はえんちゃん)。
イケメンで、美容師としても有能なえんちゃんはとにかく寡黙。
そして、思ったことはお客さんであっても遠慮なく言ってしまう。だから先輩美容師に嫌われてもいる。
が、地道な努力を怠らないえんちゃん。そんな彼に昂大は秘めた恋をしている。
ある日、えんちゃんが地元に帰ることになった。彼の亡き母の残した美容院を継ぐために。
えんちゃんと離ればなれになりたくないと願う昂大だが、とあることをきっかけにえんちゃんの地元に行き、一緒に働けることになり―?
読んでいるうちに、この二人が片両想いだというのは透けて見えてきます。
でも、ジレジレと物語は進んでいく。なかなかくっつかないのです。
が、この少しずつ進む彼らの恋心が可愛いというか、切ないというか。
月村作品ならでは、と言っていいでしょう。
ゲイである葛藤を抱える受けさんの健気な恋心がきちんと描かれていて、そこにがっつり萌えるのですが、今作品のキモは、ツンツン攻めの、えんちゃん。
彼がめっちゃ良い。
毒舌だし、結構きついこともポンポンと言い放ってしまう。
言い放ってしまう、そんな彼の心の奥底に見え隠れする昂大への深い愛情が、なんともじんわりと読者の心を温かくしていきます。
主要CPのこの二人の可愛さはもちろんなのですが、この作品をより一層ほのぼのなものにしているのが魅力あるサブキャラたち。
えんちゃんの幼馴染でネイリストのすず。
えんちゃんのお父さん。
彼らの存在もまた、すごく温かくって癒されます。
個人的にはえんちゃんのお父さんのスピンオフが読んでみたいなあ。
素敵なイケオジの恋のお話。
めっちゃ萌えると思うのです。
本編は昂大視点で描かれていますが、終盤にえんちゃん視点の「雪の日の帰り道」が収録されています。
ツンツンツン、に見えた彼のデレが、めっちゃ良いのですよ、皆さま。
月村作品ならではの切なさ、は、ややなりを潜めていますが、それをはるかに上回る温かい読後感に気持ちがほっこりします。
そして特筆すべきは苑生さんの描かれた表紙。
美しすぎる…!
この表紙、そしてタイトルから、切なさが全面に押し出された作品かと思って手に取りましたが、いい意味で裏切られました。
めっちゃ良かった。
文句なく、神評価です。
月村先生の新刊。超絶萌えました!ヤバイ!
間違いない。この本を読めば心が10代の頃に戻れる!(鏡は見ないでおきました)
気軽にすらすら読めるのに、萌はたーっぷり詰まっているという、幸せな一冊♡
美容師の昂大は同じ美容師の遠藤に長いこと片想いをしている。
都内の人気美容院から亡くなった遠藤の母が営んでいた地方都市の小さな美容院に移り、一年。
長い長い片想いが動き出す——。
本当にキャラがよかった!
長身超絶イケメンだけど無口無愛想な攻めと、周りの空気を明るく優しくするような受け。
遠藤は無口でたまに発する言葉は結構辛辣。
でも昂大はそんな言葉をうまくかわし、場の空気を和らげます。
2人のやりとりに「えんちゃん(遠藤)マジ冷たい!」「昂大ハートつえーっ」などと一人でニマニマほっこり。
でも遠藤があまりに無愛想で冷たい感じだから、これどうやってくっつくんだろ?と思っていたら…。
諦めと別離の決意と、ある意味ヤケクソで昂大が遠藤にしてしまったキスが、2人の仲を劇的に変えていきます!
もう、中盤あたりからのこのくだりがヤバすぎた。
こんなん悶えるわ!
後半は甘いしエロいしで、多幸感ハンパなかったです。
『雪の日の帰り道』は遠藤視点から。
つい辛辣なことばかり言ってしまう遠藤の本当の気持ちや、遠藤から見た昂大の姿に、これまた萌えた。
素直に「かわいい」って言ってあげればいいのに〜言えないんだろうな〜(笑)
苑生先生によるエロい一枚には、思わず目が釘付けになってしまいました。
外で読むのは“大変危険”な素晴らしいカットでした。
ありがとうございます♡
「女子か」て何度も攻の遠藤くんが言うんですけども…
君は君でコドモか!て何度も思いました。
言葉の足らなさ下手さ、感情の持て余し方。
人としてオトナではなく、評価わかれるとこかもとも思うのですが、
でもだけどめぢゃめぢゃイイ…!!!!
「常にデレてる」発言のあたりでは既に、これアカンめっちゃ昴大のこと好きやろ君、て、脳内のオッさんが遠藤にビシビシ突っ込んでいて、字面通りに読めなくて困りました。
そして畳み掛ける言葉足らずの破壊力!!!
結婚の誤解以降の怒涛の遠藤語録は、どれがトドメて言えないほど凄かった…!
最低限過ぎて誤解しか生まないのに、好きしかなく。言葉より事態が飲み込めなくなるほど幸せが詰まっていて。幸せ自体を疑う昴大くんの回路が、めっっっちゃくちゃワカル!!!
はあ…浮力を持った脳が戻ってきません。
同じ空間にいられるだけでいいととにかく想いを秘めようとする昴大くんの八方美人癖は哀しくて胸が痛かったけれど、遠藤の言葉の真意を混ぜ返せなくて素直になってく様子もうれしい切なさでズキズキします。
月村先生の、受さんを崩していく攻様、て根本がとても好きです。
オマケの遠藤視点のお話も、やっぱりオコサマか!て思うところは多々ありますが甘さの追い討ちでした。降参です。
苑生先生のイラストも遠藤の空気にとてもはまっていて素敵でした。電子の白発光体の修正に慣れてしまった目には、いいの!?てギョッとするほどそのまんまなイラストも入っていて大変ありがとうございますでした。
ですが一つ!どうしても残念だったのは。紙書籍の新書、展開上すごくすごく大事な場面の挿絵の位置が本文より2ページくらい早すぎて、先に展開を知りながら読まないといけない箇所があるところー!アアーそんなことしちゃうのかーってわかりながら読む悲しさ!!
電子もあの位置なんでしょうか…あれは良くないと思います…。発売を楽しみにしてすぐ紙で買っただけに残念でした。
しかしそんなことも吹っ飛ばすほど遠藤の言葉選びの下手さと強さにどっぷり浸かっています。ひと月経って今頃レビューで、
ボンヤリ浸り続けてる頭にも浮かぶベスト of 遠藤語録は
「失っとけ」
です。