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今夜ここで何が起ころうと、それは満月のせいだ
吸血鬼と人狼と神や妖精や魔術師などなど、人間も人外も大集合なファンタジー。世界観やキャラクターの作り込みが細部までしっかりしていて読み応えがあった。
めちゃくちゃ良かったのが「運命の血」!ヴェルギルの止まった心臓を動かすことができる唯一無二の相手がクヴァルド。吸血鬼のこの設定がとても好き。
そしてなんといってもラスボス戦闘シーンがすごい。緊迫感の中にいくつもの人間ドラマがあって、サブキャラの愛の強さに泣きそうになったり。もちろんヴェルギルとエダルト、ヴェルギルとクヴァルドのドラマも泣ける。
全体的に、洋書でファンタジーを読んでいるみたいだった。視点主がころころ替わる三人称の書き方や代名詞の使い方、キャラクターの反応などなど。たとえばおどけて目をぐるっととか、英語圏の作品でよく見る表現。
頭の中で動き回るキャラクターのリアクションが派手めで、異国感が強まって良かった。
気になったのは「ル」。登場人物一覧からも分かる通り、メインキャラからサブキャラまで名前に「ル」の登場頻度が高すぎて、全部カタカナなうえに文字列の見た目も似た印象になり、ゲシュタルト崩壊しそうだった。
面白かったけど、人間からの差別など、かなり理不尽な状況があり、そこでの正義感が強すぎるクヴァルドの描写は精神的に元気なときしか読めない。
暴言暴力を浴びても、その加害者の子供を助けるんだ!と頑張って、お礼どころか謝罪もされないムカムカを乗り越えられるときでないと。下手に和解して安っぽくならない点は良いけど、心情的にはストレス。
番外編はいちゃいちゃとエロで甘々だった。セリフもモノローグもとろとろの口説き文句が大量で、とにかくすごい。「君に夜明けを捧げよう」はシビれた。
他サイトレビューに「 ライトノベルに辟易した人におすすめ 」 「 BL史上初の世界に翻訳されるべき大作 」 、 云々の大言壮語に惹かれ、即読んでみました。 落ち着いて、ゆっくりと。
………が、高評価を下した方には申し訳ないのですが、作品の良さが全く分かりませんでした。 少なくともその他のライトノベルと大きく差をつけるほどの良さがどこにあるのかが。
地図のリアルさ、エスプリや皮肉の効いたセリフにうっとりとし、最初こそ斬新な刺激を感じましたが、徐々に「奇をてらうための、雰囲気を気取る為の口調とテクニック」を見ている気がしてきたんです。
人物はセリフを駆使して必死で動いているのに、肝心の物語そのものがどこかに置き忘れられてしまい、序章の持つ雰囲気と情景が後続の章と乖離するというか、かみ合わなくなってゆく様に心がしぼんでゆくのを止められませんでした。
確かに壮大なストーリー設定には目新しさはなくてもそれなりに面白いと思う。だけど書きたいことを書くためだけに書いているような運びに気がついた時、心がさめてしまったんです。
こういう事はBL作品としてはしょっちゅうある事だとわかっていても。
酔って書いたのか、抑制を失ったセリフが読んでいてイタイ。
なまじっか筆が立つゆえに筆に酔い、物語の本分を失ったか、 物語の壮大な設定に筆力を生かしきれなかったのか?
序章の耽美な雰囲気を貫徹し、最後まで読み手を引っ張ってほしかった。 序章の埋没と死を眺めるのは寂しかった。
結果を言えば、凄い地図で体裁を整えるという労苦や手間を施す理由が全く見当たらない内容でした。 ……まさに普通レベルのソッチ系のBL。
「 世界に翻訳されるべき」作品だったらば、何故あのイラストなんだ、っていう不審感は直感だったんですね。 いや、すみません。
他に考慮しなければならない不安は、電子書籍という媒体は脳内に映像を送り込んでくるので、本来よりも3割増しで作品を良く見せる落とし穴がある。
人それぞれの評価を大切にしながらも、今後は電子書籍市場の販売戦略に踊らされないように良作を探さなくては。
でも、やっぱり、残念でした。
完成度が高く、読んでいる最中も楽しく、そして読み終わった後も楽しい作品でした。
BLでこれだけ完成度の高い作品に出合えたことに、感謝すら覚えたほどです。
本当に素晴らしい。
読んでいると、指輪物語のような一つの映画を見ているような世界観に
どっぷりと浸ることができる素晴らしい作品でした。
よく考えられている設定や、背景はきちんと最後に向かってより上げられ
完結へと導かれていきます。
本当に面白かった。
名作だと思います。
読めたことに感謝です。
こういう作品があるということが、本当にうれしい。
映画三本分観たくらいの読後感でした。今まで感じたことのない満足感に浸っています。ベタですがアーサー王や指輪物語の世界観をイメージしながら読んでいました。引き出しが少なくてすみません。
一方的に信頼をおいているレビュアーさん(念のため交流はないです)が本作をちるちるに登録してくださり、とても情熱溢れるレビューまで寄せてくださったので、ぜひ読んでみたくなりました。
ファンタジーももちろん好きだけれど、萌えに刺さるのは日常系の方が多い読者にとって、この作品はファンタジーだからこそ上品に描ける「超」ラブストーリーだと思いました。
内容については他のレビュアーさんが詳しくまとめてくださっていますし、素養の無い者が作品の世界観をアレコレこねくり回してもボロが出るだけなので、ファンタジー愛好者よりもむしろ敬遠している方にこの作品の面白さが伝わるといいのにな、と願っておりますが…
序盤から半ばまでは、忍耐力必須です。
でも中盤から一気に面白くなりますから!
読みはじめは物語の世界観を把握するまで色々覚えなければと不安になりますが、ゲームのプレイ初期と同じで、(読み)進めていくうちになんとなく把握してくるので心配いりません。そこで合わないと感じたら潔くやめましょう。相性を見定めるのに、試し読みで十分です。
わたしにとって本作の一番の魅力はキャラでした。メインカプのみならず、脇役も存在感があって、ストーリー展開に勢いをつけてくれている上に無駄がない。
ヴェルギルは吸血鬼として長生きな分、ユーモアのセンスに長けていて、後半になるにつれ人間以上に人間臭さを見せてくる姿がたまりません。人狼のクヴァルドはナドカ(人外種)の中ではまだまだ子供で、仔犬呼ばわりされてしまうくらい。ヴェルギルにそう呼ばれるたびにムッとしていたのに、いつのまにかお腹ゴロンしてて…。三つ編みのエピソードが大好きです笑
全てにおいて正反対な二人ですが、出会って以降の距離感の詰め方に萌えます。言葉や体で交わす彼らの思いが、徐々に読者にだだ漏れてくるので…ムフ
それぞれが相手への思いを自覚していき、気持ちを伝えようか葛藤しながら満月を理由に激しく求め合うなんて、エロスの極みですよね〜。でも、それとはまた別の愛の形として、ヴェルギルとエダルトの関係も切なくて萌えるんですよもう。
誰かを愛する行為が死と引き換えだなんて、これ以上のLOVEがあるでしょうか。ファンタジーだからこそ、そのような無情な世界観がうまく生かされているのだろうと。
カップリングがB Lとしてテッパンなのも悶えますよね。カバーイラストご担当のイラストレーターさんとは別バージョンという意味で、さて、どんな絵柄で妄想しようかと、そういう楽しみ方もさせていただきました。(挿絵はありません)
二人の肉体美や毛並みや毛髪、瞳の描写、ヴェルギルの体に施された意外な装飾がさりげなく官能的に描写されています。一瞬、なぜかガチムチな兄貴たちがよぎるのだけれど、萌えポイントは純国産だと思いたいです笑
『アレキサンドライト』的な古典的耽美とも違うし、アメリカが舞台のDEADLOCKシリーズとも比べられないし、ガッツリ翻訳B Lでもないし…思い浮かぶのはやはり海外のスペクタクルファンタジー映画で、これはもう作者にしか描けないB Lではないでしょうか。
吸血鬼と人狼のカップリングが初めてでしたので、『怪物くん』しか想像力のタネがないわたしは、なぜこの二人が惹かれ合うのか、果たしてどんな結末が用意されているのか、後半はハァハァしながら導かれるように読み進めてしまいました。
最後の番外編は神!です。ここは本編を読み終えられたご褒美タイムですね。書いてくださって本当に嬉しくありがたい読者サービスでした。
作家様がTwitterでご自身の文体について翻訳小説寄りの癖があるとおっしゃっていましたが、冒頭から世界観を把握するまでのことなので、中盤以降は全然意識してませんでした。リスペクトしている仔犬養ジン先生のオリジナル作品の方がわたしには試練でしたので笑
それより気になってしまったのが、受け攻めの視点がしょっちゅう入れ替わるところ。読者には地味にキツいポイントというか…。最初は同じ章内でも混乱してしまい、後々章ごとにこれはヴェルギル、ここはクヴァルド、と読んでいて意識しないといけなかったので、そこがちょっと苦しかったです。番外編ではそれも全く気にならなくなったので不思議ですが。
たとえ血生臭いシーンがあったとしても、最初から最後までどんな描写も逐一美しく表現された壮大なファンタジーB Lでした。ある人にとっては上質という表現がふさわしいかもしれないけれど、上品という方がわたしにはしっくり。脳内では座裏屋蘭丸先生の美麗な絵柄で勝手に映像再生されてました。
本当にこれからの作品も楽しみです!
なんだか時間を忘れて読みふけってしまいました。
非常に面白く、骨太で読み応えのあるファンタジー作品です。
長期に渡って構想を練られていなければ、ここまで読み手を夢中にさせるお話は書けないのではと思います。
それくらい作家さまの熱意やこだわりが随所に感じられる作品でした。
まずは文章について。
他レビュアーさま方も仰っているように、やや硬質さのある文体で綴られています。
個人的には、これ程までに壮大な物語を描き、魅力を引き出すのならばこの文体しかないだろうなと。
世界観に合っていて私は好きでした。
良い意味で突き放したような素っ気なさを感じるからか、物語全体を俯瞰的に見られて良いなと思いました。
雰囲気的にはモノクロームロマンス文庫の文体が近いでしょうか。
物語は、神や神話が信じられ、人間と「ナドカ」と呼ばれる人ならざる者が共存している架空の世界。
人間と人外が共存する為の「協定(ノード)」というものがあり、それを護り司る「氏族(クラン)」と呼ばれる人狼を中心とした組織があったりと、独創的な設定が光ります。
永きに渡る時を退屈に過ごし、日々を流れるように生きる吸血鬼のヴェルギル。
とても享楽的で臈長けた魅力のある、いつも人を揶揄って言葉遊びをしているような掴みどころの無い人物です。
そんな彼の退屈で平穏な永遠のひと時を、文字通り拳で破って入り込んで来たのが、愚直なほどに真っ直ぐな性格の年若き人狼・クヴァルド。
真逆とも言える性格の2人が"吸血鬼違い"をきっかけに行動を共にし、無差別に殺戮を繰り返す悪名高き最古の吸血鬼・エダルトを追っていく内に、神話や歴史の大きな渦に飲み込まれ、やがて隠されていた真実を知っていく事になる。
ヴェルギルとクヴァルドの両視点で、現在と過去を交えながら、神話や歴史、文化、この世界で生きる者達の人間ドラマが読み応えたっぷりに描かれています。
架空の世界の神話や歴史と聞くと小難しい印象を受けますが、性格が真逆な2人の旅の様子と共に少しずつ語られていくので、そこまで難しくは感じられないと思います。
文化や種族に関しても同様ですね。
今作の1番の魅力は、なんと言ってもやはりストーリーでしょう。
巧妙に、さり気なくあちこちに散りばめられていた伏線の数々が自然と回収されていき、気が付けば次々と明かされる真実に唖然とする。
読み進めていく内に、ここまで考えていたのか、という驚きとお話の面白さにぞくぞくしました。
吸血鬼と人狼、凸凹コンビのような2人の旅からこんなに壮大なお話になるとは思ってもみませんでしたし、これだけの重厚な物語と設定を自然と読ませてしまう筆力の高さが本当にお見事です。
物語だけではなく、登場人物達の心理描写も非常に丁寧。
千年もの永きに渡る時を死んだように生きていたヴェルギル。
たった1人のはみ出し者の人狼の若者と出逢った事によって、彼の失われ忘れかけていた何かが動き出す。
年齢的にはかなり年嵩のヴェルギルが、真っ直ぐなクヴァルドに心乱されていくのがたまらなく良かったんですよね。
いけ好かない相手とのただの協力関係だったはずが、孤独を抱える者同士が共に過ごし、互いを知る毎に言いようの無い感情が生まれ始める。
少しずつ2人の距離が近付き、触れる度に愛おしさのようなものが育っていく様子が唐突には感じられず、あくまでも流れるように心情が変化していくのです。
相手の容姿を「色」を使って表現するところが好きでした。
「満月のせい」にしながら本音を隠す2人がもどかしくも切なかったりして、物語の雰囲気は壊さないまま上手く描かれていたように思います。
初回の満月の夜から、中盤・終盤の変化も見どころのひとつですね。
エギルとヒルダ、ディアドラという少女とマルカスという鬼人(デーモン)、そしてグレタという少女と放浪民のシーンも印象的。
放浪民のシーンは、ヴェルギルとクヴァルドの関係性により深みが増した気がします。
ヴェルギルとグレタのやり取りも含めて大好きなシーンです。
そして、絶対悪のようなエダルトがどうして殺戮を繰り返すようになってしまったのかについても納得がいくものでした。
メイン2人以外の登場人物達のそれぞれ形が違う愛の物語、人間ドラマも必見です。
見知らぬ世界の地図。
謎だらけのまま始まる序章。
一体これから何が始まるのだろうとわくわくする。
一気にラストまで見届けた後に序章を見返すと、これを序として持ってくるセンスが本当に素晴らしいなと。
読後の余韻に浸りながらまた読み返してみたいと思います。
文句無しの神評価にしたいのですが、ラストがほんの少しだけ駆け足気味に感じたので、ここまで丁寧に描かれた物語ならば、数年後の手前辺りも欲を言えばじっくり読みたかったなという気持ちがあった事と、章途中で名称や用語からルビが外れてカタカナ表記のみになってしまった点だけがやや気になりました。
漢字も含めて用語として記憶していたので、漢字+ルビのままであればもう少しすっきりと読めたかなと思います。
ここで読み辛さを感じる方もいらっしゃるかもしれません。
なので、限りなく神に近い萌2評価で。
オリジナリティ溢れ、読み応えのある重厚なファンタジー作品がお好きな方におすすめの良作です。
ファンタジーとしての完成度が高く、何より、楽しんで書かれているのが分かる素敵な作品でした。
初回限定の同人誌版を購入したのですが、小口染めの蒼色が大変美しい装丁でした。
再販分・続編も年内に頒布・電子版にて配信予定だそうです。楽しみですね。