【電子限定おまけ付き】【イラスト付き】
繊細な描写がとても良い作品だった。文章は好き。ストーリーはメイン二人でずっと同じところをぐるぐるしてるだけだった気がして、恋愛成就の満足度が低い。終始不機嫌なロシェルの描写を読み続けるのもキツかった。
引きこもりの主ロシェルと足の悪い下働きキオのお話で、ほとんどがお屋敷の中だけで進む。そこに少々ファンタジー要素が入ってくる、不思議な世界観。
二人の関係性は、一言気持ちを伝えればすぐに物語が終わってしまいそうなほど出来上がってる。身分差や婚約者の存在はあれど、ロシェルがキオ以外と接触を拒み、癇癪持ちかつ怒りでしか他人と繋がれないキャラなので、キオしか相手になれなさそう。
ロシェルがこんなことになった背景にはそれなりの理由があるが、それでも酷い言葉や態度ばかりを見続けるのはしんどい。特に子供時代のロシェルは耐え難かった。
気持ちを自覚したキオの取った行動は、魔法使いに頼るというもの。そして愛を忘れたいと願ったキオのその後は、なんとも中途半端。
キオの足の真実も、唐突に作品のトーンが変わる異質なエピソードで、いろいろと違和感だった。
最初から最後まで二人だけの世界を見ていた印象。結論はずっと目の前にあったのに、心の問題で引き延ばし、動きのあるエピソードでストーリーが盛り上がる展開が足りない。静かで美しいととるか、静かすぎて退屈ととるか。
どちらにしてもキャラクターに魅力を感じず、自分には合わなかった。キオとロシェルは医療の助けを借りて欲しい。
全編通して切なさ漂う、”失った記憶”が鍵となる主従ファンタジー。
中庭みかな先生、初めて読む作家様でした。
正直なところ、前半〜中盤までは盛り上がりに欠けるなあ…と思いなかなか読み進められなかったのですが;
終盤、キオ(受)の左足の怪我の真相、そして失った記憶や消されたはずのロシェルへの恋心が消えない理由が一気に明らかにされるシーンがすごかった…!!
思わず「うわ」と声が出てしまうほど驚き、なるほど、と納得し、じーんと心に来るものを噛み締めました。
キオの左足を毎晩必要以上とも思えるほどに介抱するロシェル、そして彼や屋敷のキオを囲む人たちの”キオを守りたい”という気持ちがストレートに刺さった…
ロシェルの婚約者であるクラリッサが全く悪役などではなく、本当に心の綺麗な女性だったのも安心して読めたしキオの切なさがよりダイレクトに響いてきて、とても良かったです。
欲を言えば…
二人の初えち、あんなふうに強引で性急な感じではなく(無理矢理ではなくてキオも望んだことだったけれど)、ロシェルの愛を優しくじっくり感じさせてくれるものだったらなあ…とは思うのですが。
きゅっと切ない胸の痛みを感じながらも、最後にはしっかり幸せを感じることのできる、主従ファンタジーでした。
Dearest:「いとしい人(恋人)」
冒頭から四分の一ほど、過去から今の経緯解説部分。
キオを取り巻く色々な人が登場する。
魔法使いが登場するだけあって、ナンデモアリな展開。
魔法で忘れていた記憶を取り戻す話。
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●キオの親:
父親は、生まれる前に死亡
キオを産んで間もなく母も風邪で死亡。少女のような容姿の女性だった。
●キオ:17才
左足の怪我で、歩行困難。
母の死を悲しむキオに、ジェラルドが勧める「忘れる魔法」を断っている。
実は、「死を求める心」を秘めている。
キオは、一度過去で死にかけている。というか死んでいる?
●ジェラルド:屋敷の主 元騎士団長 妻を亡くしている。
●ロシェル:20歳 屋敷の主の一人息子。キオよ3歳年上。
絵が趣味。3才で母親が死亡。
魔法で記憶を失い、感情を上手く表現できない。
●クラリッサ:18才。美貌のロシェルの婚約者。
●グース:料理人 優しい人 白薔薇を一株隠し育てていた。
●イアン:ジェラルドの部下。幼馴染。明るく気さく。
●「勿忘草」:記憶を消す魔法使い。魔法は、人によっては廃人になる。
挿絵目当てで購入しました。
初めての作家様だったのですが、とても良いお話で他の作品も読んでみたくなりました。
キオの心がとてつもなく綺麗で、胸が痛みっぱなしでした。
優しくてロシェルの幸せを願っているから
恋心を手放したくなって『忘れな草』に頼ってしまったんですね…。
そのキオの気持ちが切なくてたまりませんでした。
読みながら途中から、このお話はハッピーエンドになるのだろうか…?と
とてつもなく不安な気持ちになったんですけど、ちゃんとハッピーエンドでした。
でも、全然想像していなかった展開なのですっごくびっくりしました。
まさかそんな過去があったなんて…と思いました。
過去の出来事のお陰で、キオは心を手放さなくて済んだので良かったです。
個人的には登場人物がみんな良い人だったので
キオの心以外に胸を痛めることがなく、それが良かったなぁって思いました。
クラリッサが嫌な子だったらもっと苦しかっただろうなぁって。
想像もつかなかったハッピーエンドだけど
綺麗にまとまっていてすごいなぁと思いました。
「忘れな草」という魔法使いは、人の悲しい記憶を消してくれるーーそんな世界でのお話です。
執事のキオと、癇癪持ちの若主人ロシェル。ロシェルに婚約者ができたことで、キオは「忘れな草」にロシェルへの恋心を消してほしいとお願いしにいきます。
もう本当に、本当に切ない。キオのロシェルへの恋心を「忘れな草」は、恋ではなく「最愛だ」と表現します。
小さなキオの体いっぱいにつまった、ロシェルへの恋心。なによりも尊い想い、最愛。それをロシェルの幸せのために手放そうとするキオのいじらしさに涙が止まりません。
しかも、実はキオの過去には本人さえ覚えていない知られざる秘密があって…。
それを知った時、あまりの苦しさに嗚咽が抑えきれませんでした。
最後の最後までどんでん返しがある物語です。
ただ優しい、切ない、甘いだけではない、読者の心の痛みに寄り添い、そっと優しい花をたむけて去っていってくれるような…どこまでも優しい読後感でした。
素晴らしい名作です。