電子限定描き下ろし漫画付き
涙腺、死んだ…。
伊月と芳野が通じたことを環が知ってしまった場面で終わった上巻。
下巻は始まりから壮絶でした。
芳野に対する折檻の合間に差し込まれる環の過去が悲しい。
好きだった男。
一緒にいたいと願った男。
その男が違う女性を娶ってから、孤独の中にいた環が見つけた一縷の望み。
それが伊月だったんですね。
もっと大事にしていれば。もっと愛を注いであげていたら。
もしかして望んだ未来があったかもしれません。
でも結局上巻で見た通り、環が伊月に示したのは過去の男に注いだ愛情のかけらも感じられないほどの無関心だけだったように感じてしまう。
その男と似たような姿に育っても、その男ではないという虚しさから?
そのせいだけとは言いきれないけれど、芳野に気持ちを向けてしまった伊月に、絞り出すように告げる懇願が悲しくて、涙なしには読めませんでした。
お互いを庇い合う2人を前に、怒りをぶつけるしかない環を見ているのがつらかった。
自ら命を絶とうとした伊月の構えた銃で環が怪我をしたのが、出会った日に伊月が轢かれたのと同じ左足というのも興味深いです。
主人公の左足が不自由という文学作品の論文を書いたときに調べたのですが、足は「現実」「立場」「男性」などの象徴で、足が悪いふりをしていた伊月は「立場」を守るために「男性」である自分を押し殺して抱かれていたのかなとか、環は隠居という形で結城のいる「現実」から逃避して…って、さすがに深読みしすぎですね。
環が退いたあと、家督を継いだ伊月が屋敷でパーティをする場面がまた素晴らしい。
何の憂いもなく楽しむ招待客に混ざって、芳野に手を取られて2人で踊るシーン。
上巻でひとり踊っていた伊月のシーンは、このための伏線だったのか、と。
鳥肌が立ちました。
場面は打って変わって、軽井沢の別荘で隠居生活を送る環のもとへ、結城がやってきます。
ここからが本番だったんですよ、みなさま!
もうずっと涙が止まらなくて画面は見えにくいし、だけど先は知りたいし、でも知るのが怖いし、どうしたものか分からない状態で何とか読み進めました。
幼い頃の出会いから、現在まで。
環と結城、両方の視点で知ることができます。
知りたくなかった。つらすぎる。
この時代の家というものがどれだけ重いものかは計り知れないけれど、こんな運命なら出会わなければ…と思ってしまう。
でも出会ったから、今まで生きて来られたんだなとも同時に思う。
自分だけが耐えているようなつもりでいた結城には腹が立つし、この期に及んで会いに来るのにも腹が立つ。
だけど結城にはそういう生き方しか用意されていなかったんだよな…。
時代と言ってしまえば時代のせいだし、家のせいだと言ってしまえば、そんな家に生まれてしまったことを呪うしかないけれど、どうにもやるせなくて。
現代に置き換えてはいけません。
そうすると、結城が社交の場と東京では良い夫と良い父を完璧に演じて、愛人のもとへ足繁く通う下衆野郎に見えてしまう。
時代を変えなくても同じか!
だけど…、環がしあわせそうなんですよ、本当に。
過去を思うと、もっとちゃんと陽の当たるところでしあわせになってほしかった。
でもこれが当時の2人に許された最大のしあわせなんでしょうね。
本編の描き下ろしも環の健気さが際立っていますが、電子限定描き下ろしもこれでもかというくらい切ないです。
つらい。
鼻をかみ過ぎてガサガサです。
鼻セレ◯のような柔らかいティッシュを用意して読んでください。
全体の感想として、上巻のレビューでも書きましたが、下巻も"綺麗"という感想です。
ですが上巻とは異なり下巻では儚さを伴った綺麗さがありました。
下巻は千代森視点のお話でした。
自分のものに手を出したとして、千代森に折檻されているという痛々しいシーンから始まります
芳野も伊月もお互いを思い、自分の方を罰してくれと懇願する姿は愛でしかないんだと痛感しました。
千代森は愛してやまなかった相手と生涯を共にすることが叶わず、寂しく、虚しい日々を過ごしている中で、愛しい人に似た伊月と出会いました。
千代森の中で伊月に求めてもらえることは結城に求めてもらえることと同義だったと思います。
だから、自分とは違う相手と幸せになろうとしているのが、再び捨てられたようで、苦しくて、伊月を責めている言葉は、結城に向けて叫びたかった言葉のように感じました。
その後いろいろあり、千代森は田舎に、伊月は家督を継ぎ、芳野はその元で支えるという展開になりました。
(静岡にいこうと芳野に誘われた時の伊月がただただ可愛いかったです、、、
また、主人だったためというのもあると思いますが、両思いになれてからは芳野の後ろに隠れたり、笑顔が無邪気で、年相応の行動がみれて幸せでした、、)
田舎で暮らしていた環の元には忘れたくても忘れられない結城がやってきて、2人の視点からの回想シーンが見れます。
環の視点の回想シーンで、環に感情移入をしすぎて、結城が子供が産まれたと伝えにきたことがとても腹立たしく感じました。なぜ、わざわざ直接?爪剥ぎをした仲で、お互い言わずとも少しはわかっていたのでは?また環を傷つけるのか?と。
でも、結城視点の回想シーンで、先に想いを募らせていたのは結城の方だったと、一目惚れだったとわかりました。
子爵の家ということもあって、同性愛は受け入れられず、子供を成すことが使命という当時の考えがひしひしと伝わってきました。
環を傷つけた 君も幸せになってくれ の言葉は環と幸せになれなかったことを押し殺して伝えたことで、環を忘れたことは一度もなく、これまでずっと好きだったことも知れ、パーティーを開くため開いた名簿にある、環の名前を見て、責務を果たせたことから心が緩み心の中で本音が吐露されていくシーンで、本当にお互いがお互いを思い合っているのに、結ばれることができなかった2人をみて苦しくなりました。
その後、結城の子供の写真を見たあと、やっと伝えることができた環の想いに涙が止まりませんでした。
2人の子供を作ろうという結城の提案に馬鹿げているとは分かっていても、それに縋りたい環。
お腹が痛くても、出したくないと繰り返す環は愛らしかったです。
流産だったという環の言葉に結城は初めて言葉で環に想いを告げて、子供がいなくても2人きりでもきっと楽しいという結城の言葉は夫婦のようで、2人が何もしがらみもなく結ばれていれたらよかったのに、と酷く思わせる言葉でした。
結城は妻子持ちで、仕方のないことといえばそうなのかもしれないけど、結局は不倫になってしまうため、腐れ外道なんだろうと思い、辛い運命だと感じました。
上下巻一気読みしました。
絵が綺麗でモノローグも美しく、お話としての完成度がめちゃくちゃ高いです。
上下巻通して痛々しい部分はあれど、伊月と芳野はハッピーエンドを迎えられて本当によかった。
濡れ場の描写がとても綺麗で最高でした...!
さて、もう一つのカップル、環と結城のお話ですが、多分ここで評価分かれるんじゃないのかな...?と思います。
政略結婚とはいえ、攻めが子供までできた上の不倫エンドは他作品でもなかなかないんじゃないでしょうか。
言葉にしてみれば結城サイテー!で終わるし正直今レビューを書きながら思っています。
この二人の恋を正当化することはできません。
おそらくそれは環が一番分かっているんですよね。
でもこの時代の政略結婚にどうやって立ち向かえばよかったんでしょうか。
どうやったって正しく幸せになんてなれなかったのではないかと思います。
離婚するor二度と会いに来ない、が物語として綺麗に終わる落とし所なのだと思うのですが、その結末をどうしても選べない、二人の想いの強さがよく伝わってきて、私個人としては好みでした。
でも環はきっとこれからもずっと辛いね...どちらにせよ地獄です。結城は地獄のような男なので.........
これから先この二人がどうなるのかはわかりませんが、神のみぞ知るということで。
芳野と伊月の話のみだったら萌2だったと思います。
後半二人の挑戦的な結末を評価したくて神評価にしました。
好みは分かれると思いますが、私は好きです。
『踊る阿呆と腐れ外道』の下巻。
同日発売になりましたが、上巻だけ買ってくると後悔すること必至です。上下巻まとめて購入されることをお勧めします。
ということでレビューを。
上巻で決着がつかなかった伊月と芳野の恋ですが、今巻の序盤で彼らの恋の結末が描かれています。
描かれていますが、今巻のキモは、彼らの主人の環のお話がメインといえるでしょう。
環が、伊月に固執し、愛した理由。
それは彼の哀しい恋の経験が理由だった―。
上巻に引き続き、環の恋のお話も既視感ありありの王道のストーリー。
ですが、環のお話もめっちゃ萌えた…。
階級制度が存在していて、身分差がある時代。
男同士であるという禁忌。
子を成し、「家」を存続させていかなければならない、その責務。
環視点で進むからでしょうか。彼を捨てた結城(上巻でも登場しています)が外道に見えて仕方がない。けれど、その結城の行動、そしてセリフの一つ一つが、「大正時代」というバックボーンにきっちり合っているんですよね。
だからこそ、「仕方がない」。
そう、環は思うしかなかった。
時代に、そして家に翻弄される男たちの恋の行方に萌え禿げるかと思いました。
愛しているから別れを告げた環の一途で深い愛情に、思わず落涙。
結城、クソかよ!
とバッサリ言えない環が、だからこそ伊月を愛し拠り所を求めた環が、不憫で可哀想で、でも萌えた…。
伊月と芳野のように、何を捨てても二人でいることを選択できたなら。
その二人の描写からの、環の過去の恋の回想へ移行する、そのストーリー展開が非常にお上手で、だからこそ読んでいて萌えが持続しどこまでも高まっていく。
最高か。
で、今作品の素晴らしいところは、ワルツ、そして爪を剝ぐ、といった行為が彼らの感情を端的に見せるツールになっているところかと思われる。
環の過去、伊月と芳野の現在、そして環の恋。
それらを、そういったツールで読ませる。
上巻の序盤でも書きましたが、凄い作家さまだな、というのが正直な感想。
他の作品も読んでみたいと思います。
上下巻読んで、絵がとても綺麗で、話の構成も分かりずらい表現がなく、すんなりと頭に入っていくので読みやすいですかったです。
メインとスピンオフで、
運命に抗った者たちと運命に抗えなかった者として
対照的なストーリー設定になっていて、
個人的にはスピンオフがメインじゃないかと思うくらいスピンオフの話に魅入られました。
最後の特典の5ページは、結城には環が必要なんだなって再確認させられて良かったです。特典は必読です!
健気受けや、切ない話が好きな人にはオススメです。