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表題作そんなはず、ない

西宮京士郎,25歳,アパートの隣人で管理人
小日向千紘,27歳,服飾デザイナー

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

服飾デザイナーの小日向千紘は、引っ越した先で年下の隣人・西宮京士郎と出会う。いいものではなかったお互いの印象は、何者かに背中を押され階段から落ちそうになった千紘を居合わせた京士郎が助けたことをきっかけに一転、二人は良き友人関係を築いていく。これまで友人らしい友人がいなかった千紘にとって、沈む心に寄り添い支えてくれる京士郎の存在は心地よく手放しがたいもの。だからこそ、突然のキスと告げられた「好き」の言葉に戸惑ってしまい……?

作品情報

作品名
そんなはず、ない
著者
椎崎夕 
イラスト
八千代ハル 
媒体
小説
出版社
幻冬舎コミックス
レーベル
幻冬舎ルチル文庫
発売日
電子発売日
ISBN
9784344848207
2.7

(17)

(1)

萌々

(2)

(9)

中立

(1)

趣味じゃない

(4)

レビュー数
5
得点
41
評価数
17
平均
2.7 / 5
神率
5.9%

レビュー投稿数5

大切にして

椎崎先生買い。弱いのです、椎崎先生の書かれる「自分を大切にしない人」のお話。今回もわかっちゃいるけど大好きで、萌2にしました。今回は自分を大切にしないデザイナーさんが大切にしてもらえるお話、本編280P弱+あとがき。

部屋に変なポスティングされたり、無言電話があったり後を付けられるようになり、緊急的に引越をした千紘。今まで住んでいた所のセキュリティなんて結局意味がなかったので、今回の引っ越し先は、セキュリティなんてあったもんじゃないというおんぼろアパート。二階だし飛び降りたら逃げられるか、と考えていたのですが、周りの人間からは「もっと違うところに」と言われていて・・と続きます。

攻め受け以外の登場人物は、
加世子(元義父の妹)、佐山(受けをライバル視する社員)、孝典(元義兄、受け勤務先の部署統括者)、愛梨(受け母親が面倒みていたモデル)、社長(受けの元義理父)、信(攻めの幼馴染、きゃんきゃん五月蠅い)、他取引先やら会社同僚ちょこちょこ。くずが二人もいましたよ。

++好きだったところ

椎崎先生の王道話と思うもので、今回の受けも自分の事を全く大切にしない方でした。過去ストーカー被害を受けた時に信用してもらえなかったり、見た目で「女性を手玉にとる遊び人」と思われることや、母からの教え「他人なんて好き勝手言うもの、悩むだけ無駄」等があって、人から誤解を受けていてもそれを正さないで放置。困って煮詰まったら、そこから脱出(今回は引っ越しという方法)を図るという方。

先生の過去作で何作かそういう方を読んだことがあるのですが、私はどうもそういうタイプに弱いのです。今作の方は洋服のデザインに才能があるようで、そこを取り立ててもらっているのですが、就職先は母が離婚した元夫の会社。超縁故採用と思われても仕方のない状況で、社内はあんまりいい環境ではないと感じます。読んでいて、あまりの仕打ちに不愉快になられる方もいらっしゃるのではと思います。長い間ぐたぐだした後にしゅっと助けられる、もしくは自分で前に進む等する、煮詰まったところからの解放感、安堵感が、私には堪らないんです。

攻めは今回は最初印象最悪な状態から始まって、「大丈夫か、これ」とドキドキでしたが、最後は溺愛守り倒しでしたので、やっぱり安堵感でいっぱいでした。

先生の今までの作品がお好きな方でしたら是非。自分を少しだけ大切にするようになってくれるお話です。

3

受けが頼りなくて心配になる

あらすじを読んで大変好みだった為、購入です。

引っ越してきたばかりの主人公が、年下の隣人と知り合う。
初めこそ互いにいい印象じゃなかったものの、ひょんな事から行き来し合う仲になり、やがて友人同士に。
彼との友情に心地好さを覚えるものの、ある日突然キスされてー・・・って感じでしょうか。

こちら、あらすじは間違っちゃいませんが、そこから受ける印象と実際の読後感と言うのは若干ズレがある気がするんですよね。
こう、隣人である二人の恋愛がメインじゃなく、主人公が置かれている理不尽な状況の解決部分がだいぶ幅を利かせてると言うか。

そもそもこの主人公・千紘ですが、昔から変な人物に付きまとわれやすく、更に元義父の会社でデザイナーをしてるものの、コネ入社だと周囲から孤立している。
そう、椎崎先生お得意の薄幸系美人受けなのです。
今回、攻めの隣に引っ越してきたのも、ストーカーから逃れる為で。

これね、西宮(攻め)がすごくいい男なのです。
最初こそぶっきらぼうで取っ付きにくいものの、やがて面倒見の良い男前攻めだと分かってくる。
千紘と言うのは、育った環境とその見た目とによって、昔から誤解されたり理不尽な目にあう事が多かったんですよね。
で、それを大事にせず、一人で受け流す事で解決して来た。
西宮がですね、そんな千紘に対して、人を頼る事の大切さを教えるんですよね。
一人で頑張らず誰かを頼れと。
一見、一人で解決するって素晴らしい事だけど、それって誰も信用してないって事でもあると思うのです。
それじゃあ、周りの人間は寂しいよねと。
年下ながらその事が分かってる彼は、めちゃくちゃいい男だと思うんですけど。
実際、頼りにもなりますし。

まぁそんな感じで攻めはとてもいい男ですし、薄幸受けが救われると言うストーリーも素敵だと思います。
ただ若干、引っ掛かる部分もありまして。

えーと、これは完全に個人の勝手な印象だし好みですが、主人公である千紘が、なんか面倒臭いと言うかハッキリ言っちゃうと鬱陶しいんですよね。

彼は職場でその才能とか境遇を妬む後輩から、かなり陰質に粘着されるんですよ。
また、正体の分からないストーカーも飼っている。

これね、大事にしたくないだのどうせ訴えても信じて貰えないだの言って、延々とやられっぱなしなんですよね。
この後輩にも腹が立つけど、いい年してやられっぱなしの主人公にも腹が立つ。
最初は共感して気の毒に思うんですけど、いつまでも続くと逆にイライラして来ちゃうんですよ。
もうちょっと上手く立ち回れんもんかなぁと。
過去の経験から臆病になってるにしても。
なんかこう、自分が我慢してればいいみたいな「いい子ちゃん」ぶりにイラっと来ちゃう。

また、彼は危機管理意識が非常に薄いと言うか。
こういう状況なら、てか状況じゃ無くても、もうちょっと防犯意識を持とうよ!と。
や、ストーカーの正体も分かってない状況なのに、勝手にもう解決したと思い込む。
ついでに「宅配便が来るんだったー」とかって、相手も確認せず不用意に玄関のドアを開けちゃう。
ちょっ、こいつ大丈夫か!?と。
案の定襲われますが、反撃の一つも出来ずに周囲が助けてくれるのを待つだけ。
そこは、蹴りや頭突きの一つもお見舞いしてやろうぜ!と。
なんか、何だろう・・・。
異様に頼りないと言いますか、ふわふわしてて心配になってくると言いますか。

ちなみに、周囲を頼る事の大切さみたいな事を先に書かせていただきましたが。
えーと、それもすごく大切だと思うんですけど、周囲に保護者みたいのが何人も居て、皆で千紘を「可愛い、可愛い」みたいな状況にも、若干違和感と言うか。
だって、27歳の成人男性だし。
周囲がわーっと動いちゃうのはどうなんでしょうね?的な。

まぁそんな感じで、萌える部分もあるんですけど、若干引っ掛かる部分もある。
でも全体的には好みの為「萌」で。

ところで、悪役である千紘の後輩ですが。
見事に嫌なヤツで、出てくるたびに不快感が半端なかったです。
もう、悪意の塊。
ネットだとこういう人ってたまに見掛けますが、それが現実に出てきちゃった感じでしょうか。
彼の存在が、今作の雰囲気をだいぶ悪いものにしちゃってますね。

10

ハラハラしっぱなし

もう最初からお話に引き込まれて夢中になって読みました。

余りにも不遇な主人公の千紘、彼を取り巻く見えない悪意と既に諦めたかのような生き方にハラハラして焦ったくなりました。

それは彼の家庭環境から来るトラウマなのですが、そんな千紘に変化をもたらすのが隣人の西宮なのです。

お互いに最悪な出会いをしたものの、誤解が解けて2人は親しい友人関係になります。初めて出来た友人に浮かれる千紘が、不器用で健気なんです。

そんな中にも忍び寄る悪意がとても気持ち悪いです。話の流れから1人では無く複数存在することが分かって来て、とてもおぞましく感じました。


ただ人間そんな簡単には変われないもので、1人で抱え込む千紘にとても焦ったくなりました。

手が差し伸べられているのに、取ろうとしないのです。

これって千紘が大事な人達からしたらとても寂しいことだと思いました。

そんな中、以前から付きまとっていた人物が近づいて来て脅しを受けた千紘は、ショックから西宮に拒絶する態度を取ってしまいます。

それでも絶対絶命の中で思い出したのは、西宮の言葉なんです。
初めて他者を頼ろうとした千紘、あれよあれよと事態は好転して行きます。
みんな待ってたんですよね。千紘のことが大好きで大事なんです。

そして事件が解決して来るにつれて、落ち着いて来た千紘は西宮への気持ちを認めるのです。
これで晴れて告白して恋人同士になるのかと思っていたら、お互いに誤解があって拗れてしまいます。
特に千紘の誤解はあり得なくて、無いわ〜って呆れてしまいました。
ここら辺でスンってちょっと冷めてしまいましたね。これさえなかったらもっと評価が上がったと思います。

切なさを盛り上げるにしても限度があると思いました。きっと千紘に関しては好き嫌い分かれると思います。

2

安定感

安定の椎崎作品。お話の中に漂う空気感に惚れ込んでいる作家様なので、読後の満足感はありました。年齢的には攻めが年下ですが、カップリングは作者様の作品イメージを裏切りません。ナチュラルに同性カップルが登場する点もしかり。個人的には安心感と同時に、なんとなくマンネリ感も否めませんでした。

服飾デザインを手掛ける主人公の千紘は、才能と容貌、さらに人脈に恵まれているために、やたらめったら妬まれたり執着されたり、子供の頃から苦労してきました。大人になっても波風を立てないように自分の存在をある意味殺すことに慣れてしまった彼は、親の七光りを言い訳にトラブルから逃げ続けることで当座を凌いでいましたが——

職場の人間関係にそろそろ限界を感じていた頃、千紘は初めて抱く恋愛感情にも心乱されて決断を迫られます。感情の処理に戸惑いながらも少しずつ前向きに問題解決に向けて動いていたところ、彼が抱える根本的な困難を乗り越えなければならない事件が…!でも、千紘のことを可愛がってくれている元義父とたくましい女性陣の助けを得て、最悪な事態にはならないので大丈夫。

千紘が恋心を自覚していく流れ、そして彼なりに気持ちをリセットして前向きに軌道修正していく段階がとてもよかった。

メインの二人よりも、脇キャラが強烈ですごかったです。千紘の職場の後輩・佐山と、西宮のツレ・信。めっちゃくちゃ負のオーラを放ちまくっていて、千紘の味方たちを完全に食っていました笑。電子版おまけ「だから、こっちを向いて」に千紘と信のエピソードが描かれていますので、読んだ方はそこで信のイメージが少し変わるかも。

受けのセリフ回しについては、もう慣れるしかないかな。あの「、」で切る独特なリズム。キャラの息づかいを正確に表記しているからか、舌足らずっていうか、媚びるような甘えるような印象が強調されて、どうも自分的には女の子っぽく感じられてしまって。愛梨ちゃんの喋り方も独特でした…。うーん、そういうキャラ付けが通常ということで笑

今の自分が好きな路線からズレてきているのはうすうす感じていますが、作品の雰囲気は変わらず好きです。

0

ちょっとしんどい

あらすじを読んで、これは好みの系統かもと思ったのです。
良い印象を持っていなかった者同士が、あることをきっかけに親しくなっていく。
誤解や思い込みがあったり、最悪が最良に変化していく過程が描かれたBLは王道ではありながらとても好み。
あらすじ通りと言えばあらすじ通りのお話でした。
主人公である千紘と、アパートの管理人・西宮が交流を深めていく様は良かったのです。

しかしこれは…ううーーーん。すごくもやつく。
なんともいえないもやもやが胸に残る読後感でした。
もっと千紘と西宮にフォーカスを当てた話だったのなら印象が違ったと思うのですが、その周囲がうるさすぎたのかもしれません。
椎崎先生が書かれるやや自己犠牲型の受けは決して嫌いではないですし、そんな受けをさり気なく気遣う攻めだって悪くはない。
親しくなるまでの過程も、親しくなってからの2人のやり取りも好ましいものだらけなんです。
我慢我慢の連続で受け流してばかりだった薄幸受けが、攻めやごく親しい仲の人々の協力もあって一歩踏み出していく流れも本来であればすっきりとするところ。

ただ、良かったエピソードの数々をはるかに上回ってしまうほど、作中に登場する悪意を持った人々の描写をストレスだと感じてしまったのも事実で。
自己犠牲型の千紘の性格+ストーカーや仕事の人間関係のもやもやオンパレードが私にはちょっと盛り込みすぎに感じられ、さすがに湿度の高い悪意が多くはないか?と、すっかり萎えてしまいました。
素直に恋愛パートに萌えられるバランスで読みたかったな。
攻めが最後までいいやつだったのが救いです。

0

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