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表題作ギフテッド~狼先生は恋をあきらめない~

露崎祭,21歳,先天性獣化症の大学生
宇野哲平,16歳,引きこもりの教え子

その他の収録作品

  • 恋は思案の外
  • あとがき

あらすじ

【先天性獣化症】というめずらしい症状のため、狼のような姿で生まれてきた祭は、人と違うことで偏見の視線を受けながら育ってきた。それでも、母や弟たち家族は皆優しく、友達も少なからず居る。社会の中で心に刺さる棘を時折意識しながら、それでも大学生になるまでまっすぐ生きてきた祭。そんな祭はある日、家庭教師と教え子として出会ったクールな高校生から目が離せなくなり……? 人とは違う【個性】を抱えた二人が等身大の互いを見つめ合う、優しくも瑞々しいデビュー作。

作品情報

作品名
ギフテッド~狼先生は恋をあきらめない~
著者
寺崎昴 
イラスト
笠井あゆみ 
媒体
小説
出版社
幻冬舎コミックス
レーベル
リンクスロマンス
発売日
電子発売日
ISBN
9784344848160
4.1

(105)

(53)

萌々

(31)

(11)

中立

(3)

趣味じゃない

(7)

レビュー数
20
得点
425
評価数
105
平均
4.1 / 5
神率
50.5%

レビュー投稿数20

何物にも代えられない”ギフト”

初読み作家様でした。最高に胸に沁みるお話だった…!
あらすじは他の方が丁寧に書いてくださっているので、感想のみを。

胸が痛くなったり悲しくなったり怒りを感じたり、想いを確かめ合った二人に心からおめでとう!!良かったね!と言いたくなったり…もう、めちゃくちゃに心揺さぶられる作品でした。。

笠井あゆみ先生のイラストも本当に素晴らしくて。哲平が初めて笑顔になったシーンの挿絵が特に個人的に「神!」だった。祭じゃなくても恋に落ちるわ。。

病気で獣人姿である自分が、想いに応えてもらえるわけなんてない、とはなから諦めている祭の気持ち。
家庭教師が終わったら哲平と離れてしまう…離れたいけど、離れたくない。誰かと幸せになって欲しいと願うけど、ずっとずっと一人でもいて欲しい。寂しい。
そんな、片想いの切なく矛盾する苦しみや葛藤がもう、刺さって刺さって仕方なかった…

ありのままの自分を好きだ、と本心から100%言い切れる人なんてどんな人でも、いわゆる「普通」の人でもきっと少ないだろうけれど、応えてくれる人に出会えた時、無理なく自然に自分を受け入れることができるようになるんじゃないか、と希望が見出せる、そんなお話でした。

本のタイトルでもあり、レビュータイトルにも書いた「ギフト」に関する、祭の就職先の塾長の言葉もとても良くて、じーんとしました。

物語として心動かされる最高のものだったんですが、獣人の特徴を生かした二人のエッチもね。最高だった…!えっち以外にも、ふさふさ、もふもふも、尻尾ふりふりの獣人特徴を存分に堪能でき、萌えの宝庫だった…と最後に付け加えておきます(*´˘`*)

0

先天性獣化症

半額セールだったので電子版で読了。絵師買い。

▶先天性獣化症:架空の病名だと思う。全身獣毛、尾もある。遺伝疾患。
▶ギフテッド(英: gifted):先天的に顕著に高い知性と深い共感的理解、高い倫理観、強い正義感、博愛精神を持っている人々を指す。
 ★この作品では、意味合いが違う「ギフトを与えられた者」と言う意味。

特設頁 https://bit.ly/3K4FWqt も読んだけど、
題名に二つも、ギフテッド+獣人と「先天性の異常」を題名に含むので、萎えて読む気になれなかった作品。


一読後の感想。
著者の過去作をチェックして感じたのは、「一般的なもの、普通」を逆転したかったのかな。
「愛しのChat Noir」は、Dom/Subユニバース
「獣人王子の花嫁」は、ケモノな絶倫王子の一途な溺愛。
「ヴァンパイア社長は大和撫子をご所望です!」では、吸血鬼。
「トランスバース~完璧なαの抱かれ方~」では、抱かれるα。
・・と、書いてきて、
今作は、「ギフテッド~狼先生は恋をあきらめない~」
「普通」ではないけど、みんなとそれも違うそれも多様性の一つで個性である・・というテーマ。
 奇病の為に差別されることにうんざりしている主人公。
 家庭教師で担当する教え子は、ゲイばれ+虐めにあい、不登校になった美少年。
ハピエン。

明るいタッチの文調だけど ・・なんだか違和感。
差別と偏見ではなく個性とするなら、差別ありきの奇病設定は、どうなんだろう??
可哀そうを引きずるような「奇病」という設定で、何度も差別を愚痴る主人公。
当たりまえに獣人が登場する世界観にしたほうがすっきりするのじゃないかと思った。

0

ギフテッドの意味

獣人と人のお話かと思って購入したのですが少し違いました。
獣人と人が共存している世界のお話ではなく、
基本的には人ばかりの世界なのですが
『先天性獣化症』という症状で、狼のような姿で生まれてきた祭(攻め)。
そんな祭と、とあることが原因で引きこもりになった哲平との恋のお話。

祭の母の上司の家に家庭教師として働くことになった祭。
その教え子が哲平です。

二人共トラウマや暗い過去を抱えていて、
その中で一生懸命前をみて生きていくお話でした。
(すっごく大雑把な説明になります。)


ゆっくりゆっくり進んでいく二人の恋。
読んでいてもどかしくもありましたが
確実にお互いの心を溶かしていくような甘い恋です。

将来のことを考えると問題はまだあるので、
今後どうなっていくんだろう…続編が読みたいなぁ…と思いました。
祭の家はクリアしてるようなものですが
哲平の家は親が過保護なところがあるので
絶対に賛成はしてもらえないだろうな…と。
そんな問題を乗り越えた先の二人もみたくなりました。

0

うきうきした感じの文体

私は初出版のこちらではなく、短編売りだった『トランスバース~完璧なαの抱かれ方~』を先に読みました。どちらの作品にも一本、太い芯が通っていると思ったんですね。それは『自分らしく生きる』っていうテーマなんだろうと思います。

でもね、お話のテイストとして、大きく違う所があるのよ。
こっちのお話の方が、作者の語り口がウキウキしている様な気がするのよね。

いや、お話は『先天性獣化症』という、獣に近い見た目でで生まれた露崎祭くん(彼の場合は狼です)とゲイばれした所為で不登校になった宇野哲平くんが、家庭教師と生徒という立場の中で心を通わせ恋を成就させるまでを書いたもので、間には『マイノリティとして生きることのつらさ』が繰り返し繰り返し出て来るので、決して楽しいばかりの話ではないんです。
キャッキャウフフモードではないんですよ、確実に。

でもね、なんか筆が躍ってるの。
文章に熱があるっていうか、書いていて楽しそうなの。

あとがきを読んで解りましたよ。
寺崎さん、獣人フリークなのですね。
好きで好きでたまらないものを書いた文章は、もうそれだけで読み手に喜びを与えるのだと思います。外見だけではなく内面も、獣人の描写が楽しくてたまらなかったのだろう寺崎さんのことを好きになっちゃいました。

0

コンプレックス持ち同士

遺伝子異常で獣人に姿の大学生が諦めていた伴侶を見つけるまで

「先天性獣化症」という遺伝子の異常で獣人の姿で生まれてきた大学生の祭(攻め)は母親から家庭教師のバイトを紹介されます。
担当するのは、高校から引きこもりになった母親の上司の息子・哲平(受け)。
引きこもりになった理由は聞かないというのが条件でしたが、なんらかの事情で深く傷ついているらしい哲平に対し、自身の経験も踏まえてうまく勉強を教えていきます。
自身も卒論や就活などを抱えながら哲平の家庭教師の仕事をこなしていくのですが…



自身が獣人というコンプレックスを持っている祭は哲平が殻に閉じこもろうとするのを敏感に感じ取り、うまくコミニュケーションを取っていきます。
偏見の中生きてきた祭は、それでも家族に恵まれ真っ直ぐ育ちました。友人もちゃんといましたが、幼少期から続く差別的な対応により周りと一線を画すようになってしまっています。
そんな祭と自身のセクシャリティに傷ついた哲平は相性が良かったのでしょう。

祭は見た目が人と違うだけの等身大な大学生です。
精神的にも大人になろうとしている途中といった感じです。

これは私の勝手な心情ですが、獣人が出てくる話って異世界系かオメガバースでしか読んだことがなかったので、狼の獣人って基本スペックが高くて肉食系なスパダリな印象でした。そのため先に表紙をみていた印象と違いすぎで読んでいてちょっと混乱してしまいました。
特に劣等感でうじうじしている姿が思ってたんと違うと思いすぎて集中できませんでした。

ストーリーはとても良かったと思います。
ただ、コンプレックスとの折り合いをつけることに時間がかかり(理不尽な偏見に晒され続け仕方ないとは思うけど)、2人の恋愛の比重があまりおかれていなかったように感じたため、萌を感じることがができませんでした。
もうちょっと恋愛しているところを読みたかったです。

祭の弟・楽視点のSSが良かったです。
本編ではいきなり爆弾落としてきたり、味方なのか敵なのか時々わからなくなった言動の時があった楽ですが、最後の方でずっとちゃんと味方だったんだとわかってホッとしました。
本編でイチャイチャしているところはほとんど読めなかったけど、楽視点で2人が仲良くイチャイチャしてるんだなというのが読み取れて、こういう仲良くしているところをもっと読みたかったなと思いました。

0

質の高いデヴュー作

帯の段階で獣人がBLの設定でよくある獣人ではなくギフテッドと言うタイトルから落ち着くところはある程度推測された状態で読んでいました
話は一人称中心で非常にわかりやすく淡々と進んでいるのですが
キャラの感情や行動、地の文にちりばめられた言葉や間が特別な言葉を使っているわけではないのにとても良くて
コンプレックスを克服できない2人の感情がとてもよく表現されていて
切なさに胸が痛くなりすぎて何度も本を置いては息を整えて読み返すをくり返しました
読むのをやめたいとは1度も思いませんでした
読みながら何箇所か付箋を貼ってしまったくらいです

何かドラマチックなことが起きるわけではないけれども
自分の中の壁を相手の存在に力をもらい越えていく様をよく表現されていて読み応えがある良いお話でした

デビュー作と伺いました
ぜひ次回作も読ませていただきたいと思います

3

良かった。

祭がすごく良い意味で達観してます。
こう何というかバランス良く、自分の置かれた状況とかと折り合いをつけてる。

弟君も良い子です。ちゃんと自分で考えて判断して行動できる子です。お兄ちゃんのこと好きなんだなぁ。と感じました。

哲平君は可愛くて、頑張り屋さんです。
ただ、この先祭との交際にはこちらのご家族がかなりなハードルである事は間違いなさそう。
おばちゃんは心配です。笑

とても丁寧にその時々の感情の動きが描かれていて、安心して気持ち良く読めました。

笠井先生の描く哲平の笑顔がとっても可愛かったです。

2人の未来を応援したい気持ちで読みました。


1

新人作家さんですが面白い

表紙につられて買ったら新人作家さんということで、読んでいきましたが面白かったです。
今後も頑張ってほしいと思える完成度でした。
ただ、差別や迫害の話をやるならもっと深淵まで描いて欲しかったです。

1

笠井先生のイラスト最高!

ホントは萌えかなぁと思ったけど
笠井あゆみ先生のイラストが神100%で
神にしました!
お話の内容は、設定は面白かったけど
まぁ最初の方でこうなるんだろうなーと…
イラストは素晴らしく、獣人の祭が素敵でヨダレ物でした!!

0

文句なしの神!!

てっきりモロなファンタジー小説かと思ったんですよね。
だけど、読んでみたら違った。

「先天性獣化症」のため狼のような姿で生まれてきた攻めという点ではファンタジーです。

だけど特異な見た目のせいで「普通」から外れてしまっている攻めの祭が抱えているコンプレックスや劣等感。
それが決して特異な悩みというわけではなく、予想以上に等身大なんですよね。
大なり小なり、私たちが抱えているものと同じなんだなと思える。

特異なファンタジー設定と、等身大で瑞々しいキャラによるリアルな日常との融合というんでしょうかね、そこが凄いです。

そして私自身、末妹が「普通」ではない見た目(生まれついての難病のため常に鼻にチューブを挿して酸素ボンベを携帯してる)だったので、攻めの弟にやたら共感しちゃいました。
一緒になって注目されてしまう恥ずかしさや葛藤。
そして恥ずかしさを覚えてしまう自分自身に対する嫌悪。

あの頃の、幼かった頃の自分の気持ちが蘇ってきました。

物心つく前から無遠慮で無神経な洗礼を浴び続けた末に、「(兄が獣人で)だったら悪いか」と友達に言えるまでになった弟の姿は、かつての私が通ってきた道でもありました。
そういうところも実に等身大というのかな。
けっしてお涙頂戴的な大仰さもないし、リアルな感じがとても良かった。

あとがきで幼い頃から獣人好きで、獣人がいる世界線についてたびたび妄想を繰り広げてきたとありました。
大人になってからは、よりリアルに「私たちの住んでいるこの世界に獣人がいたら、彼らはどういう扱いを受け、どんな問題を抱えることになるのだろう」と考えるようになった末にこの小説ができたとあって、ものすごく納得したんですよね。

だからか!!と。
獣人が流行ってるから書いてみよう〜!みたいなノリもないし、獣人の売りでもある安易なモフモフ萌えアピも無いし、詰めの甘さとか破綻してるところもない。
お見事としか言えない完成度というんでしょうかね。

「ギフテッド」の意味も良かったです。
最初の頃の祭がそう言われたら、絶対に受け入れられなかったと思うんですよね。
だけど受けの哲平と出会って、少しずつ変わっていき、その与えられたものに感謝する。
ここの着地点もお見事で、とても良かったです。



13

きれいなお話

先天性獣化症の主人公が恋した相手は、家庭教師として雇われた先の教え子でした。

主人公の祭が獣人の姿なのは、もちろん色々な比喩を意図したものなのだろうと承知しています。当事者にしかわからない重荷や苦しみを背負ってくれている彼には、弟の楽、母親、衝突しながらも親友となった森川と村瀬という理解者たちがいます。就活中、なかなか内定をもらえなかった祭を採用した塾の経営者も「理解のある」やり手。彼(女)らがいるからこそ、初めての恋を実らせようと勇気をもらったんだよ!っていうメッセージは、本当に美しいし、感動的です。それもこれも祭の人間性(獣人性?)が異様に出来すぎているからじゃないかと…。

マイノリティとして生きるメインカプは、若いながらもそれまで負ってきた苦悩によってか、年齢設定の割に老成しています。なので、二人のラブは落ち着いた大人同士の初恋のようにも読めました。

お話の世界観も文章も完成されていますし、メッセージ性もはっきりしており、さらにラブストーリーの部分もしっかりと読ませくれて、本当に非の打ち所がないと思います。ただ、肝心の同性愛の扱いについて、今って未だそんなに理解がない時代なのかなぁ〜と、ふと感じてしまったんです。たとえその理解が表面的なものだったとしても。

BL萌えの理由に、世間から後ろ指をさされても惹かれあう二人を見守りたい、っていうのは確かにかつてはあったんですよね。でも、なんとなく周囲が色々な差別に意識的になってきているこのご時世、性的指向自体を否定される主人公のお話を目にすると、なぜだかBLを摂取する意味を見失うような気がして萎える自分がいるのです、最近…。

本作は上手くまとまりすぎていて、心動かされるというよりかは、きれいすぎるな〜っていう感想を抱いてしまいました。これが10年以上前の作品だったら、また感触が違っていたかもしれませんが…。

2

意外性のある話

先天性の病気で狼みたいな見た目で生まれきた攻めの祭視点です。
とてもいい意味で、BLらしくない一作。
男同士の恋愛というよりも、「普通」ではない男ふたりが出会い、成長し、自分自身を受け入れるまでの話です。その過程で、お互いに惹かれ恋に落ちる。
祭の抱えている葛藤や苦しみは、誰もが似たような悩みを持ったことだろう。感情の描写や家族や友人との関係の描写もとてもリアルで、獣人という設定ではあるが祭と哲平(受け)はものすごく身近にいるように感じる。
スポットライトが二人の恋に当てているではないので(あくまで自分はそう感じます)、ほかの日常系BL小説もちょっと違い、正直に言うと途中でBLを読んでいる感覚はあまりなかったです。
もちろん萌える部分もあります。哲平が弟と仲良くなったのを見て嫉妬する祭や、少し手が触れ合うとドキドキする描写、哲平を思って抜いたシーンとか、好きだなぁと思いました。
とてもいい意味で、表紙からは思いつかない内容です。
逆にいうと、
普段よくある獣人モノ・エロが多いかもと思って読むと「なんか違う」と感じるかもしれないのでご注意ください。
いらない情報ですが、私は後者でした。あわよくばエロ描写が多いかもと思って完全に表紙目当て、碌にあらすじを読まずに購入しました。笠井あゆみ先生の耽美なイラストから漂ってくる官能的な香り、「笠井先生=官能、エロ多め」というイメージが先にあったので……(笑)

今作はデビュー作だと読後に知り、びっくりしました。寺崎先生の今後ほかの作品もチェックしたいと思います。

1

また楽しみな作家さまが!

商業デビュー作と知り、また素晴らしい作家さまの誕生を嬉しく思いました。

祭の悩みや劣等感が瑞々しい感性で書かれていて、若くない私まで当時の気持ちが甦るようでした。

祭や哲平の悩みは形は違えども、普遍的に誰にも普通に存在するものです。そして年を取った今なら穏やかに受け入れる事が出来ますが、若い時は自分の中で消化出来ないのです。

それは自分の子どもを見ていても分かるので、祭の母親の気持ちにも、とても共感出来ました。

そして祭の友人たちや哲平の両親の様な人たちにしても、彼らのような人々は皆さまの周りに普通に存在するのではないでしょうか?

この作品の凄い所は、獣人の祭が主人公ではありますが普通の普遍的なテーマを扱っている小説だという事です。
BL枠で書いて頂いたことに感謝します。だってそうじゃなきゃ私は手に取らないだろうから…。

そして祭の就職した学習塾の学長の言葉がいちいち素敵でした。
祭や哲平だけで無く、誰もがギフテッドなんですね。

作者さまの次の作品がとても楽しみです。

それから笠井あゆみ先生の描かれた祭がとても素敵でした。口絵の色っぽい姿に暫く見入ってしまいました。

3

重なる痛みと優しさ

今回は先天性獣化症の大学生と高校を中退した少年のお話です。

攻様が大検を目指す受様の家庭教師となった事で
抱えていた孤独と悩みを分ちあえる人を得るまで。

攻様は母のお腹の中にいた時に先天性獣化症と診断されます。

健康な人間の両親から、何の前触れもなく突然
全身が毛で覆われた子どもが生まれるこの病気は
難病のひとつと認定されていますが

病気の1種と結論付けられた現代でも
人間の姿とはかけ離れた見た目での差別や迫害、
人々の好奇の目にさらされる日々を送る事になります。

攻様も例外ではなく、生まれてこのかた
注目されずにいられた日はなく、
悩まずにいられた日々もまたありませんでした。

攻様はその見た目のみに注目されない様に
何事にも真面目に励み、難関大学工学部に進学します。

4年生になる春のある日、母親の紹介で
高校を中退した少年の家庭教師をすることとなります。
その少年こそが今回の受様になります♪

受様は入学した高校に通えず中退したといいますが
彼の父親には「引篭もった理由を聞かない」事を約束させられ
どんなにもっさりした子かと思っていた攻様でしたが、
受様は想像よりもしゃんとした見た目の綺麗な男の子でした。

受様は攻様を見てびっくりしたようですが
何やら言いたげな様子と呟かれた言葉に引っかかりますが
複雑な心境が伺える表情は攻様には馴染のものでした。

抱えている者は違うだろうけれど自分達はよく似ている

そして迎えた4月、
攻様は受様の家庭教師として受様の自宅に通い、
少しづつ打ち解けていくのですが

受様の通っていた高校が弟の通う学校と知った受様は
やがて受様が高校へ通えなくなった理由を知る事になり・・・

寺崎先生の商業デビュー作は
先天性獣化症で狼の容姿をもつ攻様と
高校を中退した弟の同級生との恋物語になります♪

もふもふ好きなのでカバーイラストから
ファンタジックな獣人モノなのかなと思ったのですが
本作の攻様は狼耳と尻尾のあるだけの普通の人間で
シリアスな現代モノでびっくりでした。

病で獣化するという切り口が面白く
自分ではどうしようもできない事に対する憤りと諦念、
自分と言う存在を巡る家族への思い等
重いテーマをぶつけながらも

悩み苦しみながらも前を向いて進もうとする攻様と
引篭もっていた受様が攻様との付き合いで変わっていく
様子がとても自然で好ましくドンドンと引き込まれていき
とても楽しく読ませて頂きました (^-^)v

受様はどこにでもいそうな普通の男の子ですが
ある理由から他者に深く傷つけられ
引篭もる事になってしまいます。

そんな受様を心配した両親が
目を付けたのが普通とは違う攻様だったのです。

受様と親しくなる中でゆっくりと見えてくる受様事情は
攻様の心を揺さぶっていき、
攻様が自分を受け入れてくれる家族や友人のためと
折り合いをつけていた関係をも変える変化へと
繋がっていきます。

誰もが過ごす日々の中でゆっくりと変化していく
2人の心情が丁寧に描かれている素敵なお話でした♪

5

魅力的なデビュー作

こちらが作家様のデビュー作とのことで驚いています。
すごい作家様がデビューされましたね。

あのですね、まずお話がすごく面白いんです。
読み始めから一気にあとがきまで読んでしまったというか。
本当に読みやすい文で、なおかつ登場人物の1人1人に自然と心を持っていかれる。
何気ない発言のひとつひとつにサクッと刺さるものがあったりして、印象に残らなかった人がいないのです。
なんだろうな、上手く言葉に出来ないのが悔やまれる。
一言で言うのならば、良かった。とても良いお話でした。
ちゃんとBLなのですけれど、恋愛以外の部分も読み応えがあって非常に惹き込まれました。
私はこのお話、すごく好きですね。

個人的に、人を「個性」という言葉で括るのが少々苦手で。
「個性」って、本人よりも周囲が使うことの方が多くないですか?
都合が良い言葉だなというか、使うことによって、逆に差別や区別をしている感覚になるというのかな…これは私だけかもしれません。
なので、出版社によるあらすじにはうーん?となってしまったりして。

主人公である祭が獣人なわけですが、彼がこの世界では難病に指定されている先天性の獣人であるということを除くと、描いているものは普通の高校生や大学生という、まだアイデンティティが確率されていない若者達の日常なんですよ。
祭も哲平も、別に個性的でもなく、その周囲の人々もごく普通だと私は思うのです。
何も特別なことはないですし、特別な脳力だってない。
正直、2人だけではなく誰も彼もがどこにでも居そうな人ばかり。ここがすごく良かった。
マイノリティに対する反応や言動を含めて、ああ、こういう人って居るよねと思えるリアルさでした。

それは、人によっては目に見える形かもしれないし、人によっては目に見えないことかもしれない。
誰だって何かしらのコンプレックスを抱えていたり、どうにもならない生きづらさや、「なんだかなあ」なんてやるせなさというものを内に秘めながら日々生きていると思うのです。
上にも書いた通り、読みながら、分かるなあこのやり取り…なんて思うこともしばしばありました。自分の日常にも置き換えられる部分があるんです。
人の心の繊細な部分をテーマに描かれた作品なのですが、攻め視点で綴られる物語の空気は決して重たくはなく、リアルでいて、それでいてとても前向きなもの。
優しさだったり、人のあたたかさも感じられる。
私は祭の家族が好きでした。特に弟の楽くん。

難しいテーマやマイノリティ描く中で、メッセージ性がありつつも、作中で誰かを優遇することも、"こうあるべき"なんて言葉もないのがお見事です。
あくまでも自然に、流れるようにメイン2人の成長を見守りながら、ふと気がつくと読んでいる自分も少し救われる部分もあるというか。
「人生そんなに悪くないかもな」なんて気持ちになれる優しいギフトを貰えたような、とても素敵な1冊でした。
作家様の次回作も楽しみにしております。

11

ふわふわもふもふ、優しいお話

今回がデビュー作の寺崎昴先生
小説家さん、凄いですよね…尊敬です。笠井あゆみ先生のイラスト買いでしたが読み進める手が止まりませんでした。

さて、わたくしそんな評論家のような大それたことは出来ませんが、素直に感じた感想で一人でもこの作品を手に取る方がいてくれたら嬉しいなと思って、初レビューさせて頂きます。
なので、うまく伝えれられないかと思いますがお手柔らかにお願い致します…<(_ _)>

原因不明の難病として扱われる、"先天性獣化症"
子供の頃から獣人が大好きだった寺崎先生はこの世界に獣人がいたら、どんな風な扱いを受け、どんな問題を抱えるのだろう…とそんな風に考え、この話が出来たんだそうです。


攻め視点の話でした。
試し読みをした時は、獣人だけどおおらかな性格の優しい青年だなぁ、って感じたけど実際は、読み進めれば進むほど、ふつふつと常に煮えているものがあって、それが沸騰して吹きこぼれないように常に弱火で煮て、煮すぎて煮詰まってしまいそうなそんな心を抱える獣人で、深いコンプレックスをもつ一人の青年でした。

煮詰まらないように、そっとお湯を注いでくれたのが哲平の存在でした。
彼も同性愛という性的マイノリティを抱えていたけど、祭と出会い、祭りに惹かれ、将来を考えることが出来て祭と一緒に前を向くことが出来るようになります。


自分では変えられない、神様から与えられたギフト。
与えられた者のことを、"ギフテッド"というそうです。獣化症と、同棲愛はそれぞれに与えられたギフトだけどお互いにとっては、それが"パートナー"という代えられないギフトになのだと。

このギフトの話を、祭の就職先の塾長さんが祭にするのですが、その塾長さんの言葉がすごく響きました。
『勝てると思った勝負にしかベットしない、あなたはいい講師になる』
こんな塾長さんが作った塾に通いたかったなぁ。

と、タイトルの由来が最後に分かって
すごくスッキリと読み終えることが出来ました✨


そして笠井あゆみ先生の挿絵は今回もため息が出るほど綺麗で眼福でした。
哲平が大学に入学して、祭の生徒ではなくなるまではキスまで…と清い関係wです。
いつもなら濡れ場のシーンで挿絵をわっくわくしながらページをめくりますが
今回は、ゆっくりと静かに流れる二人の時間に、自然と歩調を合わせていたようでした。合格通知を貰い、祭の生徒を卒業したし、祭は一人暮らしを始めるし、もう阻むものはない若い二人は思う存分イチャコラするのでしょうww

8

若かった

デビュー作とのこと、おめでとうございます。笠井先生ホイホイで購入したんですけど、好みの年齢からちょっと外れていたので、申し訳ないです、中立にしました。先生ごめんなさい、甘いも辛いも通り越したようなおっさんの方が好みみたいなんです。「大人なりたて」や高校生の方がお好きな方には良いのではと思うお話、本編230P弱+攻め弟視点の後日談6P+あとがき。

アルバイトとして、母の上司の息子の家庭教師をするべく、その家に向かった祭(まつり)。何かの理由により高校中退し、家に引きこもっているその息子(哲平)にいざ会ってみると、彼は祭の特異な風貌(狼そのまんま)自体を嫌悪している様子はなく、戸惑いつつも少しずつ慣れてきているようで・・と続きます。

攻め受け以外の登場人物は
攻め母、弟、攻め大学友人少々、子ネコ2匹(表紙の子たち)ぐらいかな。攻め母も攻め弟も大学友人とのエピソードも、それぞれ「うんうん」と頷くものでした!今、就職活動している人にはややツライところもあるかも。

++攻め受けについて

攻めさんは先天性獣化症という難病のため、生まれた時から狼。人型化しません。シッポは感情を表現します。大学4年で母子家庭だから就職したいんだけど、その風貌があってなかなか内定まで行かず苦戦中という状況。見た目が狼なので、人から見られるのは諦めていて、やさぐれてはいないけど、少々の事ではもう何も悲しまないという様子に感じました。

受けさんは高校でゲイバレして中退しちゃった、誠意ある真面目なタイプの子。この町には居づらいので大学は遠くに行こうと思っている状況です。

そんな二人が出会って、少しずつ心を通わせ・・・というお話でした。

恋物語としては青ずっぱい系といえばよいのかな?ゆっくりしているし、恋話関係で盛り上がるというより、ゲイバレした受けの成長記であり、狼の姿を持った攻めの成長記でもあると言えばよいのかと思います。

めちゃめちゃいいお話だと思うのです。攻めが就職しようとする塾の塾長のお話が凄く良かったです。「勝てると思った勝負にしかベットしない、あなたは良い講師になる。」この辺りのエピソード、めっちゃ勇気づけられる言葉があったので、お話は本当に良かったんですけど、どっちかというと恋話で萌えたいタイプなので、評価は中立にしてしまいました。若い攻め受けが好きで、その方々の成長記!がお好みでしたら、良いと思います!

9

みんな、ありのままの自分を好きになりたい

ファンタジー感満載の表紙ですが、等身大の恋愛を丁寧に綴った、ごくごく日常のお話。
とても繊細で心に沁みる優しい作品でした。

こちら、コンプレックスがテーマになるんですよね。
主人公である攻めは先天性獣化症であり、受けもまた、人とは違う個性を持っている。
そんな、それぞれ劣等感を抱えた二人が偶然出逢い、ゆっくりと心を通わせ、やがて互いが大切なギフトだと気付く。

これは完全に私事ですが、事故による怪我で、手に障害があるんですよね。
私にとってはこれが一番のコンプレックスで、長らく新しい自分の手を受け入れる事が出来なかった。
怪我が治ったあとも、ずっと包帯を巻いてましたもん。
そうすれば、変形しちゃった自分の手を見なくてすむから。
その上プライドだけは無駄に高いから、周囲には「自分は全然気にしてない」と平気なふりをして。

今作はまさにそんな難しく繊細な部分。
人のコンプレックスを扱いますが、上から説教臭く高説をたれるでは無く、馴れ馴れしく分かったふりをするでも無く、ごくごく自然に優しく寄り添ってお話を書いてくれています。
終盤でタイトルの意味が分かりますが、思わず泣いちゃいましたもん。

誰でもコンプレックスの一つや二つ抱えてると思うんですけど、読み終えたあとは少し前向きになれる、とても素敵なお話だと思います。
あと、素直にこれがデビュー作ってすごいと思う。
ベテラン並みの完成度と、なにより読ませて心を動かす力がありますよ。本当にすごい。

ザックリした内容です。
先天性獣化症と珍しい症例を患い、狼のような姿で生まれてきた大学生・祭。
偏見の目にさらされつつも、それなりに折り合いをつけ真っ直ぐに生きているんですね。
そんなある日、高校を中退してひきこもりになってしまった少年・哲平の家庭教師をする事になってー・・・と言うものです。

まずこちら、繰り返しになりますが、ごくごく等身大の恋愛を丁寧に綴った現代ものになるんですよ。
攻めはいわゆる獣人になるんですけど、それも「先天性獣化症」と言う症例扱いで。

家庭教師とその教え子。
二人の出逢いから、どこにでもありそうな日常のエピソードを繰り返し、少しずつ少しずつ二人の距離が縮んで行く様が丁寧に綴られます。

これね、見た目が明らかに人とは違う祭。
彼から見た世間と言うのは、時に残酷で時に酷く冷たいのです。
また、一見「普通」の哲平。
彼もまた、人とは違う個性を持ったが故に、心に深い傷を負って高校を中退、引きこもるに至った。

祭ですが、決してスパダリでは無いのですよ。
弱さも抱えているし、鬱屈もある。
それを隠すのが上手い分、哲平より根が深い気さえしちゃう。
ただそんな彼だからこそ、哲平のささいな表情等の変化に気付き、優しく寄り添えるんですよね。
踏み込みすぎないように。
少し距離が近づけば、今度は辛さを吐き出して重荷を下ろせるように。

そして哲平ですが、どこか庇護欲を誘うのです。
生真面目で、不器用で、また甘えるのが下手で。
最初こそ、そんな何か心に傷を抱えているであろう哲平を、まるで弟のように守ってあげたいという意識でいた祭。
それが、少しずつ少しずつ恋心に変化してゆくのもとても自然で。
互いに異質な存在であるが故に、世間から弾き出された二人。
だからこそ、分かりあえる部分があると言うか。

ちなみに、理解者だと自身では思いながら、気付かないうちに実は誰より酷い差別をしちゃってる事って普通にあるのかもと怖くもなって。
哲平の母親ですが、祭に対してとてもフレンドリーです。
でもそれは彼をキャラクターのように見て喜んでるだけで、実は同じ人間扱いをしてないんですよね。
だからこそ、祭を繊細な「個性」を持つ哲平の家庭教師にした。
なんとも皮肉だし酷い話で、この事実が分かった時にはとても心が痛みましたよ。
彼女が息子である哲平を愛してるのは確かだからこそ、余計に。

あとですね、このお話。
特別派手な出来事は無く、そんな感じでとても静かに、穏やかに二人の恋は進むんですよね。
ちょっとした誤解やスレ違いはあるんですけど。
で、それがとても素敵だと思うのです。
こう、激的な出来事なんて無くても、ささいな日常を繰り返して、人は分かりあえるし、恋にも落ちる。

また、世間の冷たさに苦労したり傷付いたりした二人ですが、同時に世間には理解者も存在すると言うのがとても素敵で。
彼等との出逢いにより、二人の意識が変化して行くんですよね。
みんな、ありのままの自分を受け入れて欲しい。
そして、自分に自信を持ちたい。
これまでの殻を破り捨て、前に一歩踏み出した二人に、なんかもう心が晴れ渡るようですよ。

これね、読み終えたあと、自分も肩肘張らずにもっと自然にしていい気がしちゃって。
私事で恐縮ですが。
えーと、コンプレックスを克服とまではやっぱりいかないんですけど、少し気持ちが軽くなったと言うか。
まぁ、手が変形してても恥ずかしくはないよねと。
そう、過剰に反応してるのは私だけで、別に世間の人は私の手なんかいちいち気にしちゃいないんじゃないかと。
むしろ、無理してやってた事も、人に頼るようにしようと。
要は何を言いたいかなんですけど、同じようにコンプレックスを抱える方が、今作を読んで元気になって貰えると嬉しいなぁと。

最後になっちゃいましたが、こちらBL的萌えもしっかりありますので!
なんかなぁ、全然上手く伝えられてない気がするけど。
えーと、エロ時の意外と男らしい哲平とか。
うん。確かに彼は「漢!」ですわ。

20

タイトルの意味。

初めてお見掛けする作家さまだな、と思いつつ、笠井さんの描かれた美麗表紙につられて手に取りました。

んー。
これがデビュー作?ホントに?

というのが読後の感想。
めっちゃ良かった…!

設定、ストーリー展開、キャラ。
どれもが素晴らしく練られていて、一気にこの作品の持つ世界観に引きずり込まれてページを捲る手が止められませんでした。

ネタバレ含んでいます。ご注意ください。





主人公は祭。
彼は先天性獣化症という病を抱えて生まれてきた。見た目が狼のようなのだ。
その見た目ゆえに少なからず苦労をしてきた彼ではあったが、家族や信頼できる友人にも恵まれ、そのハンデに負けないよう奮闘するナイスガイである。

ある日、祭は母親からとアルバイトを持ちかけられる。母親の上司の息子さんの家庭教師をしてくれないか、というものだった。時給やバイトの内容はかなりの好待遇、けれどなぜ自分に?

そう思いつつそのバイトを受ける祭だったが、生徒として出会った哲平もまた、秘密を抱えていて―。

というお話。

祭、哲平。
人と違うことで、孤独や悩みを抱えてきた二人が、お互いに出会ったことで唯一無二の存在になっていく。

一言で説明するならばそういうストーリーなのですが、なんて言うのかな、すごく深いんですよ。

祭は見た目からマイノリティ。
それ故に、子どもの時からつらい目に遭ってきたことがきちんと分かる。くどすぎず、あっさりしすぎない、過不足のない文章でそれらが描かれていて、読んでいて祭の過去や切ない現状がきちんと読み取れる。そのために読者もまた、彼の気持ちに少しずつ感情移入してしまう。応援してしまう。

けれどそこで祭の現状に対して憤りしか感じないのではなく、もう少し突っ込んだ気持ちにもなる。

それは、祭や祭の家族の存在。
彼らは現状を憂うのではなく、そこから何ができるのかを常に模索しています。嘆くのではなく、世界に対して恨むのではなく。そんな強く逞しい生き方に感銘を受けました。

そんな祭が恋した哲平。
彼もまた何かを抱えています。
切ないです。

けれど、祭と出会い、傷をなめあうのではなく前進しようと思えるようになっていく。

バックボーンとしてはかなりシリアスというか切ない系のお話なのですが、それだけに終始していない。タイトルの「ギフテッド」。どういう意味なのかなと思っていましたが、その意味が分かった時、寺崎さんの温かさっていうのかな。お人柄が垣間見えて非常に温かな気持ちになりました。

笠井さんの挿絵目当てで購入しましたがめっちゃ良かった…。
ちょっととんでもない作家さまが出てきたなっていう感じ。

で。
笠井さんの挿絵は今回も神だった。
笠井さんらしい濡れ場は控えめ(ストーリー自体エロ度が低いからね)。
イケメンの祭に、そこはかとなく漂う色香をまとう哲平。これぞ純愛!って感じの2人のイラスト。

笠井さんはその麗しすぎる絵柄に目を奪われますが、キャラの内面までその絵柄で描き切る。その画力に完敗です。

何もかもが素晴らしく、悶絶しつつ読破しました。
文句なく、神評価です。

10

獣人のビジュアルにも萌え

──生まれた時から、自分じゃどうしようもなかった。

先天性獣化症により、「普通」とは違う見た目の祭。
次々にバイトをクビになる祭の次のバイトは、引きこもりの少年・哲平の家庭教師で……。

受け入れてくれる家族や友人がいながらも、どこかコンプレックスが消えない祭。
そんな祭が勉強を教えるようになった哲平もまた、人に言えない苦悩を抱えているのです。

人間はどうしても〝自分たちとは違う〟ものに対し、厳しい目を向けがちです。
その中には、善意の中で傷付けてしまうものがいたり、親しいからこそ無遠慮になってしまったり、はたまた悪意全開で向かって来たり。

人の機微に敏感な心優しい哲平が、なぜ高校を中退しなければならなかったのか。
家族思いの祭は、なぜ祖父に無視されなければならないのか。
自分の努力ではどうしようもない事で理不尽な扱いを受ける……その切なさがたまりませんでした。

寺崎先生が心底獣人を愛していらっしゃって、耳や尻尾から伝わる気持ちの描写が丁寧で可愛いです。
そして、祭が思い悩む姿を通して、人間も獣人も同じなんだよ……そう訴えかけてきます。(考え過ぎかも?)

「世界で一番恐ろしい病気は、孤独です」

マザーテレサの言葉ですが、どんなに周りに人がいても、心から理解されなければそれは孤独と同じだと思う。
本当に怖いのは、獣化症でもセクマイでもない。
2人が心を通わせ、お互いに抱えているものを理解していく。ここに惹かれ合う理由があったように感じました。
  
とはいえ、重めのテーマの割にライトな仕上がりで読みやすかったです。
生まれながらに持った個性が、神様から与えられた〝ギフト〟だという考え方も素敵だと思いました。
哲平の分かりにくい癖が可愛くてキュンとしたし、コミカルなボケとツッコミも楽しませてもらいました。
祭の弟・楽もめっちゃいい子。
Hはほんの少しですが、節度あるエロさが良かったです。

笠井あゆみ先生のイラストは本当に素敵で、眼福の連続!
肌色職人じゃない先生もイイ‼︎
祭がカッコ良く哲平は美人で、ジャケ買いするに値する素晴らしさだと思います。
デビュー作で笠井先生とは、贅沢だけどいいですね。

9

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