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表題作幾千の夜を超えて君と

司波彰正,自称27歳,山道で突然飛び出して来た謎の男
矢代樹,27歳,司波をひいた無職の青年

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

深夜の山道をドライブ中、見知らぬ男が突然飛び出してきた!? 自殺行為に驚愕する矢代(やしろ)だけど、大量に出血した男はなぜか服の下に傷一つない。しかもその男・司波(しば)は、なんと「俺は死ぬ方法を探してる」と告白!! 不老不死の薬を飲んで以来、150年生き続けているという。死という終着点を失くし、この世に居場所を見出せず永遠に彷徨う…。放っておけない矢代は、共に「死ぬ方法」を探すことに!?

作品情報

作品名
幾千の夜を超えて君と
著者
中原一也 
イラスト
麻々原絵里依 
媒体
小説
出版社
徳間書店
レーベル
キャラ文庫
発売日
電子発売日
ISBN
9784199010408
4.1

(71)

(37)

萌々

(19)

(9)

中立

(1)

趣味じゃない

(5)

レビュー数
18
得点
289
評価数
71
平均
4.1 / 5
神率
52.1%

レビュー投稿数18

すごい結末だった…!

本人の意思ではなく、不老不死の薬を飲み、死ねない体になってしまった司波と何故か暗闇と閉所が恐ろしい矢代が七夕の霧雨の夜に出会う。

司波はある一人の男への思いを引きずり約150年も孤独に耐えて生きていた。矢代はそんな司波を不憫に思い、司波が死ねる方法を一緒に探す決意をする。

司波が不老不死の薬を飲んでしまった経緯や、矢代が暗闇と閉所を怖がる理由が重なり、全ての謎が解ける。

あとがきで先生ご自身も賛否両論ある(きっと否が多いでしょう)と仰っていますが、本当にビックリする終わり方でした。これをハピエンと解釈するのか、メリバと思うのかは読み手によるのかな…と思います。属性としても夜明けなのか黄昏なのか…(きっと黄昏なんでしょう)。でも私はこの最後に至るまでの重要なポイントになっていた霧雨が最後こんな風に使われてるというところに先生のこだわりを感じ、とても良かったなと思います。

0

引っかかったのはラストじゃない

欝々とした雰囲気が漂う作品で、重苦しさから逃れたい一心でぐいぐい読める。切り替え頻度の高い両視点に感情移入を阻まれ、無心でストーリーだけを追えて面白い。前半半分までは神評価。ラストはとても好き。

メイン二人はどちらも秘密を持っていて、どちらの視点に移っても暗くしんどい。わずかな明るさが見えると、すかさず光を閉ざすように意味深な描写を差し込み、どんよりした空気を保ち続けるのが良い。素っ気ない文章が陰を引き立て、とても好き。

引っかかったというか落胆したのは、中盤で矢代の秘密が見えるところ。使い方は昔ながらの、といった感じだが、設定そのものは今流行りのアレか……と。この時点で残りの展開はいくつかのルートに絞られ、結末も限られる。ラストに向けた感動の作り方が見えすぎなのが残念。

後半は感情移入しない読み方が仇になり、どのルートか確かめるただの作業に。構成を考えればこうしなければ成立しないのは分かるが、ベテラン作家とは思えない安易さ。流行りもの設定作品の一つという小さな場所に印象が納まってしまった。

前世設定にBLを絡めると、まったくの同一人物でない点がモヤる。今の矢代と昔の彼で自我が統合されているわけではないし、今の矢代には司波を知らずに生きた27年がある。司波が矢代の中に彼を見ないことはなく、今の矢代として一緒にい続けられるのかと。

ストーリーの重さに比べると深刻さの釣り合わない描写になるかもしれないが、BLとしてはそこが気になった。まあ私だったら生まれ変わりだろうと自分は自分だと思いそうだから気になるっていう、それだけ、たぶん。

ラストはとても好き。既視感を覚えながらも、不老不死ものの落としどころとして好みのタイプなので、言葉にできないぎゅっとなる感じやもどかしさを感じられて良かった。

その後あとがきを読まなければとても後味良く幸せな読後感に浸れた。正直一番引っかかったのはココ。特定の一人について二十年前のことをこんなところでこんな形で出した後に小説への情熱とプライドを語られても……。
元々ファンなら好意的に受け取れたのかな。作家をよく知らない私には作品の余韻をぶち壊すのに十分な不快なあとがきだった。

1

ラストシーンが美しい

私にとっては初めての作家さんでしたが、あとがきを読んでデビュー20周年のベテラン作家さんだと知りました。
あらすじも知らず、多分ランキングに入ってる時に買ったのだと思います。
不老不死の男と転生する男のファンタジーBLでした。

最初の出会い方がなんだか唐突な感じがして、その後の展開にも「そんなに上手くいく?」と感じる所が序盤にはあるのですが、読み進めると何故そういう風に2人がするすると引き寄せられていったのかが分かります。

お互いがそういう相手なんだと気づくまでのすれ違いが切ないし、もどかしいし、危ない目に遭ったりもするのでハラハラしました。
死を求めていた司波が「死ななくてよかった」と言えるようになったことが感動的でウルっときました。

幸せな描写は長く続かず、その先は読者に委ねる書き方と、ラストのハッキリと再会を表現しない部分にモヤっとする読者さんもいるかもしれません。
私もハピエンを求める性格なので、イチャ甘が短いと物足りなく思ったりもしますが、この作品はこのラストだからこその余韻と深みが印象に残り、忘れられないインパクトを残すのだろうと思います。

1

不老不死とは

作家さん買い。
最初はあらすじを読んでて「どうかなぁ、不老不死ってファンタジー寄りなんかな〜」と入り込めないかもと不安でしたが、読み始めたらなんのその。

死ぬことが出来ない司波、それをなんとか助けてあげたい矢代。矢代には過去にトラウマを受けたのか、閉所、暗所に恐怖を感じるという精神疾患があり、今は休職中の身。
矢代はいつの間にか司波に対する感情があることを自覚します。司波の方も同じように、過去に好きだった人がいるのに、矢代に巡り合ったことで、死んだように生きてきたことから抜け出します。

不老不死を治すために色々調べる二人。
途中、小室教授?とのやり取りがまさに不老不死の辛さ、悲しさ、やるせなさを感じさせます。娘さんのためになるのはどういう行動か?

そんな中、矢代が前世の記憶を思い出し…。運命、というのが一番しっくりくる言葉。
エロは司波が生い立ちからして百戦錬磨な設定なので(多分)、もうちょい派手でも良いかな?って思ったりしましたが、物語のバランスからして控えめになっているのかな。

いやぁ、切ない。でも幸せが感じ取れる。そして二人の感情の動きがリアルに感じ取れて、そしてラストは…。
作者のあとがきにありましたが、私はこのラストで良かったと思います。予定調和なラストよりも、そういう二人が居たんだ、どこかに存在するのだろう、と思わせる終わり方で。


2

泣けて仕方ない。

いやぁ……言葉が出ないですね。
涙と鼻水がひたすら出て、明日は腫れぼったい瞼確定です。

不老不死の男・司波と出会い、「死にたい」と願う司波の願いを叶えてやろうと思う矢代。
死ぬ方法を一緒になって探しているうちに、「死なせてやりたい」と思っていたはずなのに、「死んで欲しくない」と思うようになる。
心が変化していく過程が丁寧に描かれていて、なかなかだなぁ〜なんて思ってたけど、いやはやラストで全てを持っていかれました。

私は基本、光の腐女子、夜明け成分もOKなので、全てがうまく解決して大団円!!やったね!!はっぴっぴー♪みたいなのが大好きなんですよ。

でも、このラストはアリです。
琴線に触れました。

本当になんて美しいのかしら……。
矢代の包み込むような愛を感じます。
本当に慈愛に満ち満ちていて、泣けて仕方ない。

そして司波も「いまだ死ねない」という状況だけ見ると、抜け殻状態で生き続けなくてはいけなかったあの頃と変わりがないのに、何百年待っても心は穏やかで幸せも感じられるって……。
愛し、愛された、そして今も愛しているってことはここまで人を強くするのね。
そしてどんな形でも矢代なのね。
ここも泣けて仕方ない。

蝉の羽化のシーンもとても印象的でした。
「命は尽きるから美しい、俺はただ浅ましく生き続けるだけだ」と言う司波と、残った抜け殻を見て、「司波の心も、とうの昔に誰かのもとへ‥‥」と思い重ねるシーンが本当に美しい。

文句なしの神です。
そして作家生活20周年、おめでとうございます。

2

羽化

中原先生デビュー20周年おめでとうございます。
先生の描きたいものを描き続けて下さい。いつも楽しみにしています。

タイトルからはロマンチックなイメージを、裏表紙のあらすじからはヘンテコもの?イメージを持ちましたが、とんでもない!社会派と言いますか生き続けるとは、問い続けるお話だったと思います。

これはぜひネタバレを見ないで読んでほしい。

司波が150年の人生、死ぬ方法を探し続ける、愛する者を自分のせいで亡くし自分を責め苦しみ、彼を殺した者を恨み続ける人生。

そこから矢代と出会い一緒に死ぬ方法を探すうちに、羽化を始める。今までの自分から殻を破って新しい生き方を選んでいく。

矢代の暗所閉所恐怖症の原因とは…。
やたらしつこい小室教授の本音とは…。
夢に見る恐れ苦しみ誰かに謝り続ける自分は…。

二人の約束。生きるのが楽しみになりましたね。

最後はいったい何百年後でしょうか。

中原さんのこういうヒリヒリした社会派な作品も大好きです。またオヤジギャグものやヘンテコとんでも物も大好きです。ハードボイルド物も…以下略。

2

不老不死の男の切ない物語

中原一也先生デビュー20周年、
「小説を書く勉強をしている最中」という中原先生が、節目に書いた「泣けるBL」。
お勉強中なら、来年の作品はもっと面白いものが公開されそう、期待。

同じテーマ、愛を問う「拝啓、百年先の世界のあなたへ」と併せて読むことをお勧めしたいです。

不死の男の願いをかなえる物語 
後半に向け徐々に深まる恋の成就と別れの予感。

著者曰く
「プロットの段階から頭の中の物語を形にするのは難しいと思っていた作品で実際に難しかった」
「賛否分かれるラストでも自分が書きたいならこれからも勇気をもって書いていこうと思いました。」

愛とは?生きるとは?を、読みながら主人公と一緒に考えさせる、読者に問いかける展開で、重苦しかった。
寂しさを凌ぐほどの愛を得て、人生観が変わる。

ハードボイルド猫小説「はけんねこ~あなたの想い繋ぎます~(画:KORIRI先生)」と基調は同じかな、大事なのは「愛」。

著者紹介に「得意分野 ハードボイルド、ヤクザもの、オヤジ」と書かれているけど、今後の中原先生の作品は変化がありそうな気がします。

6

前略 中原一也さま

デビュー20周年、おめでとうございます。

「記念作がこれか」と思いました。
先生の十八番ともいわれる『オヤジ』ではなく、大人の男同士がプライドをぶつけ合うノアールでもなく、また、ぶっ飛んだ(そのくせ知的な)コメディでもなく。

直球ですね。
照れが先走ってしまうところがある様にお見受けする中原さんが「愛について」真直ぐ語ってくれた物語だと思いました。
ありがとうございます。
私はこのお話、大好きです。

とある理由から死ぬことができなくなった司波が死に方を探すのは、心の痛みに堪えかねてしまうからですよね。
だってその『不死』の所為で、彼の大切な人が命をなくしたのですから。
死にたくても死ねない事実を突きつけられるたびに、絶望の淵に追いやられる司波の姿は、普段淡々と不死を受け入れているように見えるが故、余計に悲しくぐっと来るものがありました。

そんな司波を「なんとかしてやりたい」と思い、心を寄せていくにつれて「一緒に生きて行きたいと思うのは自分のエゴか?」と葛藤する矢代の心情も痛いほどよく理解できました。

もう、切ない切ない……久しぶりに文章読みながら泣いちゃいましたよ。

あとがきで「賛否分かれそうな(否の方が多そうな)終わり方にしてしまった」と書かれていますが、私はこの終わり方、好きです。
私としてはこの少年が、たとえ司波の待ち人でなかったとしても、それはそれで良いのではないかとまで思っているんです。

愛するというのは各々がたったひとりで持っている気持ちです。
そのひとりとひとりの気持ちが奇跡的に交わった時があるということ。
その記憶を風化させることなく持ち続けていることこそ、死によってすら分かつことが出来ない『恋愛』の存在を示すんじゃなかろうか、と思いました。

中原一也さま、
ずっと書き続けてください。
また中原さんのお話を読ませてください。

9

いつか会えるその日を。

皆様のステキなレビューを拝見して、俄然読みたくなって手に取りました。


受け様の矢代は、社会生活が困難になるほど重度の暗闇と閉所への恐怖心がある。
なんとか克服したいと夜の山道を運転中、男が車の前に飛び込んできてぶつかってしまう。
手当てのため自宅に連れ帰ると、すっかり怪我がなくなっている男。
この不可思議な男が攻め様である司波。

司波は不老不死であり、死に方を探していると言う。
やめとけ、と分かっていてもどうしても放っておけず、矢代は一緒にその方法を探すことに。

視点が、矢代、司波、と入れ替わり、過去の思い出も入るけど、スムーズに読み進められました。


自分を助けるために命を落とした幼馴染の"アイツ"に対する罪悪感と孤独の中で長い年月を生きてきた司波。

矢代と"アイツ"の関係は、途中で気付いたのですが、肝心の矢代はなかなか辿り着かず、ハラハラしっぱなしでした。
想いを伝え会う事ができて、本当によかった(つд;*)

死に方を探して生きてきた司波に、生き甲斐ができたのもよかった〜。



ラスト、先生が賛否あるだろうとあとがきで先生が書かれてましたが、なるほどなぁ。
私としては、幾千の夜を独り捜し続けて来た司波なので、できることなら抱きしめあえる肉体を持った姿であって欲しかったかな。
だって、また独りなんだよ。
切ないじゃない(ノ_<。)



イラストは麻々原絵里依先生。
しっとり硬質な感じがお話のイメージに合っていて素敵でした。




中原先生、デビュー20周年を迎えられたそうで、おめでとうございます。
たくさんの素敵なお話を世に送り出して下さってありがとうございます。
これからのご活躍も楽しみにしております。

7

20周年おめでとうございます

中原先生だし麻々原先生だからマストバイ。中原先生20周年とのこと、おめでとうございます。あとがきによると「自分の書きたい気持ちを大事にしてきた」とのこと。先生のその気持ちで書かれたと思われる当作の終わり方、私は今一つぴんと来なかったので、申し訳ないです中立より萌にしました。じゃあどうだったら嬉しかったの?と考えても、「これよ!」というものが思いつかず、煙る霧雨に隠されている心地です。読む人によって七色の感想が出てくるんじゃないかなと思うお話で本編240p弱+あとがき。

霧雨の降る夜の山道を車で走っていたら、森の中から出てきたものと衝突。車から降りて見れば男性が血を流して倒れています。「救急車は要らない」と言い張るので、とりあえず家に連れて帰ってみると本当にどこもケガをしていない。「死なないんだ」「死に方を探している」と言い始め・・と続きます。

攻め受け以外の登場人物は
仁井原(精神科医、受けのかかりつけ医)、小室(准教授)、攻めの幼馴染ぐらい。

++攻め受けについて&超ネタバレあるので要注意

攻めさんは昔結核になった時に、幼馴染が手に入れてくれたものにより死ねなくなった方。長い間生きているからか、無という印象です。怒る、笑う、嬉しい、楽しいなどの感情をあんまり感じないです。(まあ当然か)メンタル強いんだよな。

受けさんは暗い所や狭いところがとても苦手な故に職を失っている方。おちゃらけた所は微塵もなく、真面目な方という印象ぐらいかなあ。

お話は感動するタイプのシリアス純愛王道かな。笑うところやニマニマするところが少なく、どうなるどうなると気になるタイプだと思います。そして「あらら」と思ったのが最後。2回読んでも、個人的にはしっくりきませんでした。血肉ある状態で巡り合ってほしかったかなあ・・・

キャラ二人の恋話に萌えるというところはあまりなく、お話も「わあHAPPY!」という感じにはなれず、今一つ気分が上がらないまま読み終わってしまった一冊でした。この結末で書ききられた先生に敬意を表して中立より萌です。中原先生好きだし次ご本出されたらまた買いますから許して。

4

死ぬことのない生とは

今回は死ぬ方法を探す男とある理由で休職中の男のお話です。 

攻様の望みを知った受様が共に行動する事で
攻様が新たな希望を見出すまで。

受様はいつの頃からか
闇に言い知れない恐怖を感じるようになります。

やがて光の無いところばかりか、
閉所でも恐怖を抑えられなくなり
とうとう塾講師の仕事を休職する事になります。

週1の精神科のセラピーでも状況が良くならず
受様は闇に慣れようとレンタカーで
山道を走ってみるのですが

突然黒い影が飛び込んできてドン!!という衝撃と共に
タイヤの悲鳴が響き渡ります!!

人を轢いた衝撃に震えながらも
とにかく救助しようと車外に出た受様でしたが
倒れている男の脈は思いのほかはっきりしています。

しかし、地面に触れた自分の手は真っ赤に染まり
慌てて救急車を呼ぼうと震える指で番号を押していると
血塗れの手に手首を掴まれてしまうのです!!

その手の主が今回の攻様です♪
攻様は血を流しながらもむくりと起き上がると
出来心で飛び込んだと受様に謝罪し、
病院は嫌いだから救急車はいらないと言うのです!!

それならと受様は自宅で手当てをすると申し出て
マンションへと連れ帰るのですが
攻様は大丈夫と言うだけで身体を見せてはくれません。

血を流したいと言う彼に風呂を貸す間に
着られそうな服を用意してバスルームのドアを開けると
全裸の攻様と対面する事になるのですが

慌てて外に出ようとした受様は
攻様の躰にすり傷どころか青痣すら見つけられず
思わず「怪我は治ったんですか」と口にしてしまいます。

攻様は困った顔で「怪我は治ったんだよ」と言いますが
受様も治ったのは見てわかりましたが
なぜ治ったのかがわかりません。

すると攻様は「俺は死なないんだ、というか、死ねない」
と盛大な爆弾を嘆かれてきて!?

不老不死となった攻様と
事故で攻様と関わる事になった受様の物語になります。

攻様は不老不死の薬を飲んで以来死ねず、
27才から年も取らない躰になっていて
150年の月日を生きていました。

どうやっても死ねないとわかっていながら
「死に方」を探し続けているという攻様に
受様は「一緒にさがしましょうか?」と
言ってしまうのです。

そんな受様を攻様はお人好しだと評しますが、
受様は昔から困っている人を放っておけない
性分だったのです。

そうして2人は攻様の「死に方」を探し始めるのですが
攻様が不老不死になった過去が巧みな伏線となり
受様が苛まれている闇と閉所の恐怖と
受様が誰かの役に立ちたいという思いさえもが
徐々に攻様の過去と重なっていきます。

なので読み進めていく中で
受様の見る夢と恐怖心との関連は想像できるのですが
攻様と受様の恋の行方と辿り着く結末は全く見えず、
ハラハラ&ドキドキ、一気読みしました。

とっても面白かったです (^-^)v

本作は非常に難しい題材を扱っていて
読み手によって終幕はかなり賛否がありそうですが
攻様は希望を繋ぎ続ける道を選んだのかなと思いました。

5

とても美しいラストだった

キャラ文庫&麻々原絵里衣先生のイラストということで予約購入しました。

不老不死をテーマにしたローファンタジー。

不老不死という意味では同じキャラ文庫の『拝啓、百年先の世界のあなたへ』と設定が重なるところがありますが、本作はまた全然違ったテイストのお話となっているところが本当にすごい…!!今回も時代を越えて誰かを思い続ける壮大な物語で、すでに設定的に掴まれちゃっている自分としては、お話にハマれるかどうかだけが不安でした。

主人公の矢代は、雨の降る暗い山道で車を運転中に男を轢いてしまう。出血が酷く救急車を呼ぼうとしたが拒否されたため自宅へ連れて帰ると、男は何事もなかったかのように無傷だった…。その謎と、矢代が山道を走っていた理由が次第に意味を持って重なっていき、最終的には二人の不穏な出会いそのものが必然だったと明かされる、宿命のラブストーリーです。

お話の雰囲気としてはシリアスなのですが、時おりクスッと笑えるシーンもあって緊張感を和らげてくれます。真面目な顔で笑わせてくれる作家様らしさにちょっとホッとしちゃいました笑。クライマックス付近での思わぬ展開に手に汗を握ったり、100年越しの劣情を爆発させる攻めのエロス全開な濡れ場に大歓喜したりと、一読者としてはたまらない「コレよ‼︎」感に浸れてホント、泣きそうなくらいテンション上がりました…!(一時期かなり先生から離れていたので)

結末のインパクトに影響を受けてしまう読者なので、本作はラストシーンに全てを持っていかれたため「神」になりました。映画のようなラストはきっと、読む人によって受け取るものが違ったものになるでしょうけれど、わたしにはこの上なく美しいシーンとして胸に刻まれました。いままでに触れてきたBL小説の中でもきっとずっと忘れられないものの一つになるだろうと思います。

愛し合う二人のうちどちらかが永遠に生き続けるのだとしたら、必ず愛する人との長い別れを覚悟しなければならない──本作は、死んでしまった方が生まれ変わることで再会が叶うお話なので希望が持てます。たとえ死んでしまったとしても、その人の魂は生死を超えていつもあなたと共にあるよ、とBLを通して伝えられると、むちゃくちゃ響いて慰められるの不思議です。映画やアニメ、音楽の歌詞とか他のエンタメ分野で同じテーマが取り上げられられてもただずーんと悲しくなってしまうだけなのに、なぜかBLだとより切なく胸にギューッと迫ってきてしまうんですよね…。

作家生活20周年を迎えられた中原先生の今作もそうでしたけど、好きな作家さんの新作はローファンタジー率が高く、流れ的に今アツいのでしょうか?近年、先生はファンタジー系で成功されていらっしゃるようなので今後も着々と進化を続けていかれるだろうと思いますが、先生のオヤジ萌えに少々危機感を覚えてきております笑。時にはファンタジー抜きのお話もぜひ!

9

映画のようなラストシーン

矢代(受)は山道で轢いてしまった不老不死の男・司波(攻)から、「死ぬ方法を探してくれ」と頼まれます。それを承諾した矢代は司波と共に過ごすうちに不思議な夢を見るようになっていくのですが…というストーリーです。

司波と矢代がそれぞれ語るので、二人の関係がすぐに分かります。必然的に惹かれていく二人ですが、なにせ司波は不老不死。どうなるのかどうするのかというのが気になってあっという間に読んでしまいました。

そしてラスト。
映画のようなラストシーンだと思いました。これは映像になるぞと。私は基本的に小説を読んでいても映像が浮かばないタイプなのですが、一瞬ぶわーっと脳内に溢れました。すごい。王道だけどありきたりでもある、でも安心感があって大好きな、一般的なハッピーエンドかと予想していたんですが…持ってかれました。しばらく反芻して過ごしそうです。

5

二十周年おめでとうございます!

ここ最近の中原一也先生の作品て、外れが無くてどれもがツボを押した萌える作品なんです。

こちらの作品も最初から独特の雰囲気を持っていて、矢代と司波視点でお話が進むので彼等の関係が読者には何となく分かるものだから、不老不死の司波と矢代が選ぶ未来がどうなるのかと目が離せなくて、ページを捲る手が止まらないんです。

間違い無く中盤までの評価は神でした。
そして最後のシーンもとてもドラマティックで感動したのも確かでした。かなり余韻が残りました。

あとがきで中原先生は、ラストは賛否分かれるだろうし、例え否が多くてもこのラストにしたかったとありました。作家としてご自分の表現したい事がハッキリしてるから、多くの読者に愛されているのだと再確認しました。

なので何故にわたしが途中まで神だったのに萌2にしたかと言うと、これはもう好みの問題なのです。
実は私の中で中原先生の作品の中の一番は「拝啓、百年先の世界のあなたへ」なんです。
もう少しで発売から一年経ちますが、あの作品がとても印象的なので比べてしまうんです。あの作品は号泣して家人が心配して部屋を覗きに来るくらいでしたので、それに比べるとまだ冷静に読めた点で神にはなりませんでした。

読了後にベッドで横になってから、どうしても現実的な事を考えてしまったからなんです。
本当に死ぬ方法は無いのか?とか、人類が滅んでしまったら司波はどうなるのか?とか、矢代は必ず人間に生まれ変わるのか?とか、そうなると不老不死の薬だけでなく、もっと大きな力が働いているのでは無いか?とか…。そこがどうしても引っかかってしまったんです。

もうそう考える余地があるだけで神にはなり得ませんでした。

5

余韻がハンパない…ネタバレなしで読んで欲しい!

うーん、すごい。
忘れられない作品になりました。
今まで読んだ小説の中でも、相当印象深いラスト…ここに全て持っていかれた。

不老不死の男と、その男が死ぬ方法を一緒に探す青年の物語。
悠久の時をたった一人で生きる司波の深い哀愁、過去への後悔、別れと邂逅…不老不死にまつわる様々な要素をしっかり踏襲した作品になっています。
司波の過去は悲しいですが、当時の時代背景は考慮してもいいのかもしれません。

正直、司波と矢代の関係性は早々に気がつきました。
その分もどかしさも感じるストーリー運びだったと思います。
ただ、司波がどうやって不老不死に決着を付けるのかという点…これが物語を読む推進力につながり、最後までドキドキハラハラさせられた。

ラストはもう………圧巻!!
誰にも想像できないであろうこのエンディング。
あまりの美しさと切なさに涙が止まりませんでした。
なんて優しく壮大なんでしょう。

あとがきで先生も仰られていますが、賛否両論かもしれません。
希望のような呪いのような…。
ただ、私は絶対的に支持したいと思えた。
この余韻は後を引く。

10

号泣してしまった

不老不死の男と、そんな男と偶然出逢い、彼を死なせてあげたいと願う男の物語です。

もうこれ、テーマとしては重すぎるし、胸がちぎれそうに切ないんですよ。
でも同時に、めちゃくちゃ心に響く素晴らしいお話でして。
いや、それまでもボロボロ泣きつつ読み進めましたが、終盤で二人の真実が分かったとき、もう号泣しちゃって。
あまりに悲しいんですけど、同時に感動で胸がいっぱいなのです。
落とし処まですごすぎる・・・。
いや、こう来たか~しか出てこないですよ。
しばし呆然としちゃいますよ。

こう、甘くて楽しくてと言う作品を求める方には絶対オススメ出来ないんですけど、強く心を動かされる壮大なお話を読みたい方にはぜひにと言いたいです。

で、内容です。
深夜の山道で、突然飛び出してきた男をはねてしまった八代。
大量に出血しながらも傷一つないその男・司波ですが、なんと不老不死で死に場所を求めていたんですね。
何故か彼を放っておけない八代は、一緒に死ぬ方法を探す事にしてー・・・と言ったものになります。

まずこちら、繰り返しになりますが、とにかくめちゃくちゃ切なかったりします。
えーと、攻めである不老不死の男・司波と、穏やかで優しそうな受け・矢代の両視点でお話は進むんですよね。
で、二人が二人とも、それぞれ抱えるものが重いのです。

妓楼の前に捨てられ、汚泥ような世界で生き、やがては結核を患って死ぬ運命にあった司波。
それが思いがけず飲む事になった「万能薬」により不老不死の身体になり、実験台として酷い扱いを受けた後、戦後の混乱により自由の身に。
そして今、長すぎる人生に疲れ果てた彼は死ぬ為だけに日々を生きる。

また、ごくごく普通の青年に思える矢代。
彼は彼で、暗闇と狭所に対する尋常じゃない恐怖を感じながら、同時に誰かに対する強い罪悪感を覚えて生きる。

いやこれね、二人で共に過ごす時間と言うのがとても優しいんですよ。
こう、幼い頃に叶えられなかったささやかな望みを実行してみたり、ただ一緒に日常を過ごしたり。
そんな日々の中で、互いに安らぎや相手に対する愛おしさを覚え始めるのが、とても自然に綴られていて。
もう、こんな毎日をずっと続けていければいいのにと。

が、そうは問屋が卸さない。
不老不死に関する文献を調べる中、矢代は司波が死ぬ事が出来る方法を見つけて・・・と続きます。

これね、矢代ですが、最初は司波に同情し、彼を死なせてあげたいと願うんですよ。
それが、共に過ごして司波の孤独な魂や優しさに触れるうちに、いつしか死んで欲しくない、共に生きたいと願うようになる。
それでも、司波の為に死なせてあげようとする。

また司波ですが、彼は彼で、永遠に生きる自分が矢代の重荷になる事を恐れるようになる。

いや、何だろうな。
互いが互いを想うが故に、自分を押し殺そうするのがとにかく切ないんですよね。
なんで、これほど想い合う二人が、共に生きる事が出来ないのよと。

またこちら、徐々に徐々に真相が明かされってタイプなんですよ。
そこで、矢代が暗闇を恐れ、何故か罪悪感を覚えながら生きる真相。
そして、失った誰を想いながら、司波が自分を罰するかのように生きる理由。
それらが分かってきます。

これね、途中で色々予想がついて行く時点で、めちゃくちゃ切なくて泣けるんですよ。
司波の過去があまりに凄惨だし、彼が想い続ける「誰か」の最期も悲惨すぎる。
この「誰か」がキーパーソンになるワケですが、彼の事を思うと涙が止まらなくて。
ただ愛する人を救おうとしたばかりに、これはあまりに痛々しすぎる。

ただだからこそ、全てが分かるともう圧巻で。
こう、ブワッと鳥肌が立っちゃうと言うか。

「彼」が最期に強く願った事。
それがこうして今、二人の間で繋がったんだろうなぁ。
本当、ページが見えないくらい号泣しちゃって。
ああ、やっとこうして、二人は巡り会えたんですよね。
切なくて切なくて胸が潰れそうなのに、同時に深く感動で。
もう、胸がいっぱいで言葉にならないんだけど!

あとこちら、テーマとなる不老不死ですけど。
ありがちで皆が望むようなラストにはならないです。
でも、これが二人の選んだ形で、彼等は幸せなんだと思う。
えーと、ちゃんとハッピーエンドなんですけど、また泣けてしまいました。
願わくば、彼等の未来が幸せである事を。

16

最後の一行の美しさに涙が溢れます

デビュー20周年の中原先生の最新作

不老不死の男と、彼が死ねる方法を一緒に探す男

過去の記憶、夢、現在が交互に語られ、パズルがはまって行くように物語の全体図が現れる

人魚、八百比丘尼なとの民俗学的資料の挿入や過去のエピソード等、またもや新しい中原先生に出逢えます

物語の始まりから纏わりつくような闇と絶望、仄かな明るさと染み入るような優しさ

すべてがラスト一行の美しさに凝縮されていて、読後、空を仰ぎたくなります

私にとっては、心が広がって行くような、これ以上ない素晴らしい結末でした

そしてあとがきの先生の覚悟と真摯さに打たれました

20周年、心よりおめでとうございます!
そしてありがとうございます!

13

萌えすぎてしんどい。

作家買い。
作家買いですが、挿絵を麻々原さんが描かれていて、発売日を心待ちにしていました。

中原さんはドシリアスなものもコミカルなものも、アンダーローなものからファンタジー要素てんこ盛りなものまで幅広く描かれる引き出しの多い作家さまですが、今作品はシリアス寄り。そしてファンタジー要素を含む作品でした。

ネタバレ含んでいます。ご注意ください。





主人公は矢代という青年。
彼が深夜の山道をドライブしているときに、一人の青年を車で轢いてしまう。突然の出来事に動揺する矢代だったが、車で轢いてしまったその男・司波は病院に行かなくていいという。そんなわけにもいかずとりあえず家に連れて帰る矢代だったが、実際司波の身体に傷は残っていなかった。

驚く矢代に司波は「自分は死なない」と告げ―?

司波は不老不死の身体を持っている。
なぜ、いつから。
そして、その怪物のような身体を持つ彼は何やら心に秘めているものがあってー。

という出だしで始まるストーリーですが、矢代にも何やら秘めていることがあることが少しずつ見えてきます。「不老不死」という分かりやすいキーワードが前面に出ているのですが、読み進めるうちにそれだけではないことが少しずつ見えてくる。

このストーリー展開が非常に秀逸。さすが中原さんという感じ。司波の不老不死、に加え、二人ともに「何か」を抱えている。で、全く無関係に見えるそれらがきちんとつながっていく様は圧巻です。

死ねない司波のために、死ねる方法を一緒に矢代は見つけ出そうとする。そこから二人のいわば「死ぬ方法」の答え探しの旅が始まっていくわけです。そして共に歩いていくうちに少しずつお互いを知り、心を通わせていく。BLという二人の恋愛を軸にした観点で読んでも、不老不死というミステリアスな観点から読んでもめちゃめちゃ面白くて、そして萌える。

結局司波は死ぬことができるのか、矢代の抱えているものは解決できるのか。
結末が気になってページを捲る手が止められませんでした。

で。
ああ、なるほど。
そういう結末ですか。

お互いを深く愛したからこそ選んだ道。
それが正解だったのか、はたまた不正解だったのか。
読み手によって受け止め方は様々だろうなと感じました。個人的には果てしなく切なく、純愛。そして萌えた。

で、とにかく秀逸だと思ったのはラストシーン。
うわあ…。
良い…。
めっちゃ良い…。
このシーンも賛否両論ありそう。というか、感じ方、受け止め方で読後感も変わりそうだな、と。分かりやすいハピエンではありません。けれどどんな形であっても、どこであっても。いつまでも。お互いが唯一無二の存在なのだと。じんわりと心に染み入ってくる。温かさと切なさが入り交じってちょっととんでもなく萌えてしまった。

ここ最近の中原作品は本当にヤバい。
最高過ぎてヤバい。
これ以上の萌え作品はもうないんじゃないかと思っているのに、さらにその上を遥かに超えてくる。

萌えすぎてしんどい。
ヤバい神作品が、ここにあります。

12

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