自殺した兄の弟×遺骨泥棒

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表題作遺骨の旅路

春日時生,23歳
畔木蓮,25歳

その他の収録作品

  • 二人の旅路
  • カバー下イラスト

あらすじ

兄が灰になった夜。
弟・時生の前に現れたのは――兄を持ち去る男。
追いかける時生に男は、兄の友人・漣と名乗り「遺骨と旅をさせて」と泣きわめく。
時生は自分の同行を条件に旅を承諾したが、道中で漣の兄への、友情以上の熱を知ってしまい……。
旅は、「三人の恋路」へと進み出す――。

兄を抱えた旅は、
2人の救済と
3人の恋路へ

作品情報

作品名
遺骨の旅路
著者
こん炉 
媒体
漫画(コミック)
出版社
プランタン出版
レーベル
Cannaコミックス
発売日
電子発売日
ISBN
9784829686577
3.8

(45)

(16)

萌々

(15)

(8)

中立

(5)

趣味じゃない

(1)

レビュー数
10
得点
169
評価数
45
平均
3.8 / 5
神率
35.6%

レビュー投稿数10

兄の心残りが切ない

結局、兄の元が自死した理由ははっきりとは明らかにされていない。

小さい時から全てに於いて優秀な兄と比べられて育った弟は兄や周囲、環境から逃れて生きてきた。
兄のことを疎ましく思ってきた弟、時生。
漣というのは兄の親友。
実は元に恋していた。
さらに実は元も蓮のことを好きだった。

蓮に突然告白されて走って逃げたけど、思い直したのか温泉旅行に漣を誘う。

なのに直前死んでしまう。

元にはその先が見えていたのかもしれない。
好きな人と両思いになっての、その先。

同性とは後継ぎは作れない。
病院を営む父や家族の失望。
周囲の視線、噂。
弟とは今や疎遠ともいえる仲。
誰も頼れなかったんだろう。

漣と2人だけで恋愛と情欲の巣に閉じこもるには大人過ぎたんだろう。

2人とも長い間気持ちを隠し過ぎた末の悲劇。

兄の想い人をかっさらってしまった形の弟。
5年待ったって、つまり時生が漣と肉体的に結ばれるのは兄の死後5年ってことで、、、
いや、5年なんてあっという間に過ぎます。
長い時ではありません。

とにかく時生のいいとこどりはないわー

あ、エッチシーンは最後のみです。
私はエロエロ大好物なんですが、なくても大丈夫。ぜんぜんなくてもOKなひとです。
こういうお話には不要と思います。
いえ、あってもOKです。

8

向き合うための旅路(ネタバレ有り)

漣と時生と元(遺骨)の短い旅の話。
突然の肉親、友人の死に、各々がどう向き合っていくのか。
その中で、それぞれが秘密にしていたことを少しずつ打ち明けて漣と時生の距離が縮まっていきます。

はられた伏線の回収が面白く、ノートのメモ書きにはドキッとしました。

最初は元の死の真相を明らかにするための話なのかと思っていましたが、違いましたね。
元の死に関して、漣は幻影を見、時生は肉親の立場から想像することしかできなかったように思います。
死者は語ることはなく、残された生者同士が必死に寄り添って生き抜こうとする話だと思いました。

漫画としては、元の死の真相が明かされた方がスッキリするのでしょうが、語られないというのまた一つの面白さだな〜。

時生がボロボロの漣と5年間もどうやって過ごしたのかは妄想で補います!二人が上手くいったのは素直に嬉しい!!

好みが分かれる作品だと思いますが、私は凄く好きです!

4

読み手を選ぶ作品かもしれませんが

こん炉さん作品て、いつも表紙がとってもきれい。
そしてこのタイトルに、このあらすじ。いやー、つい買っちゃうよね、という素敵さを秘めています。




主人公は時生。
優秀で、子どものころから「優等生」だった兄・元が自殺した。
その兄の葬儀の晩、兄の遺骨を盗もうとしている男と時生は出会い―。


兄の遺骨を盗もうとしていたのは蓮と名乗る兄の友人だと名乗る青年。蓮は、元と行く予定だった旅行に元の遺骨とともに向かいたいと言う。優等生だった兄の死をこれほどまでに悼んでくれる蓮の存在に興味を引かれた時生は、蓮とともに、兄の遺骨をもって一緒に旅に出ることにするが。

ストーリーとしてはかなり王道って言うんですかね。
予想通りというのか、そういう展開だよね、という部分を大きく覆すことはない展開です。

が、時生と蓮という心に大きな穴を持った二人が、「元」を介して繋がり、そして大切な人を喪ったという共通の心の痛みを抱えて少しずつ心を通わせていくストーリーに心が大きく動かされました。

キズを舐めあうのではなく、二人の心の穴の形に、お互いがぴったり嵌まった。
そんな感じがしました。

今作品は時生×蓮のお話ですが、元という青年が不憫でしたね。
彼は自分自身に枷を嵌めてしまった。
蓮を愛し、一緒に生きてくこともできたはず。けれどそれができなかった。
だから蓮を、一緒に連れていきたかった。

そこが蓮と共に生きることを選んだ時生との違いだったのかなあ…。

人の死を描いた作品なので全体としてはダークでシリアスなお話なので、もしかしたら読み手を選ぶかもしれません。が、決して「死」をメインにとらえたストーリーではなく、「生」へのエールのような、そんな作品だったと、私はそう感じました。

4

悲しくも美しい、読ませる

死人が出る話とかシリアスな話とか悲しそうな話は基本読まないのですが縁があって手にとって読んだところすごくよかったです。引き込まれる、努力しなくても話に入り込ませてくれる。確かに辛く悲しい内容だけど終わり方に救いがあって嫌な気分になりませんでした。絵も綺麗。映画のような話で実写化したらいいのではないかと思いました。

1

兄の優し過ぎる優しさに包まれたふたり

私は主人公2人以上に、ほんの少ししか登場しない兄の『元』の偽りのない優しさが全編を包み込んでいて、彼の思い残しを残された2人が知ってゆく、まるでロードムービーのように感じました。

兄の『元』は何もかもに恵まれているようでいて、実際には彼の望むものは何ひとつ手に出来ないでいるどこまでも優しい男です。彼は両親や地元、先生や同級生といった周囲の全てに見えないレールを敷かれ雁字搦めになりながらも、そこから外れる事は多くの人を傷つけると考えていたように感じます。

比べられて卑屈になり疎遠となった弟の事も心から心配していたと思うし、好きな人とずっと一緒に居たかったと思います。彼は“我”をはらず“争い”を避け懸命に生きていた事でしょう。彼が示すサインは図書館の落書きのように細やかでした。

誰も傷つけたくなくてどうしていいか分からなくなって追い詰められた彼の選択は最悪の形に思えるのですが、彼はそうまでしないと解き放たれなかったのかと思うとその健気さに愛おしささえ覚えました。

亡くなってもなお、兄の『元』は弟と好きな人を見守り続けます。2人は別々の角度から見ていた『元』を共有しあう事で、初めはまるで別人のように感じていたそれぞれの『元』像がパズルのピースのようにはまって、『元』の本心と優しさを知る事になります。

優等生で誰にでも優しい『元』の弟に対する愛情、好きな人に対する恋情。片方は語り合う機会を拒まれ、片方には遠い旅館のノートにこっそりと想いを綴るに留まりました。

もし、漣の想いに答えて両親や家や地元の人達の医師としての自分への期待を裏切る事が出来るのか。閉鎖的な田舎町の期待と好きな人の側で生きられない悲しみ。傷つける事が分かっているから打ち明けられなかった恋心。彼の細やかな他者へのサインは生きているうちには届く事はありませんでした。

彼がなぜ、ああいった最期を選択したのかは明確には描かれていません。ただ2人が『元』の記した細やかなサインを見つけても、5年もの間好きな人を側で見守り続け、漣がひとりぼっちにならない事を確信してやっと旅立てたのです。漣には他ならぬ大好きな弟がいてくれる。『元』は最後まで大事な人の幸せを優先してしまう哀しくて優しい人でした。

余談、もし音声化して頂けたら元と時生の兄弟を阿座上洋平さんの2役で聴いてみたいと思いました。素晴らしい演じ分けをされるのではと期待してしまいます

1

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