自殺した兄の弟×遺骨泥棒

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表題作遺骨の旅路

春日時生
23歳
畔木蓮
25歳

その他の収録作品

  • 二人の旅路
  • カバー下イラスト

あらすじ

兄が灰になった夜。
弟・時生の前に現れたのは――兄を持ち去る男。
追いかける時生に男は、兄の友人・漣と名乗り「遺骨と旅をさせて」と泣きわめく。
時生は自分の同行を条件に旅を承諾したが、道中で漣の兄への、友情以上の熱を知ってしまい……。
旅は、「三人の恋路」へと進み出す――。

兄を抱えた旅は、
2人の救済と
3人の恋路へ

作品情報

作品名
遺骨の旅路
著者
こん炉 
媒体
漫画(コミック)
出版社
プランタン出版
レーベル
Canna Comics
発売日
電子発売日
ISBN
9784829686577
3.8

(51)

(17)

萌々

(18)

(9)

中立

(6)

趣味じゃない

(1)

レビュー数
11
得点
190
評価数
51
平均
3.8 / 5
神率
33.3%

レビュー投稿数11

映画のような壮大さを感じる

電子書籍サイトで途中まで無料読み、2人の旅がどうなるのか気になり、そして単話ではなく、1巻まとめて読むべきだと思い、単行本を購入しました。

家に忍び込み元の遺骨を盗み出そうとして取り押さえられた不審な男、漣。 
悲しいのか、と尋ねられ、わからない、元のいない世界なんて考えてもいなかった、と落ちて散らばった遺骨を握りしめて泣きます。
約束していた旅行を一緒にするために遺骨の一部を分けてくれと頼む漣、自分の知らない兄を知っている男は兄の自殺理由を知っているかもしれないと、弟の時生は、兄の遺骨を貸してやる代わりに、旅に同行することを条件にします。

回想でしか出てこない元、という男を中心とした三角関係の旅が始まります。
死んでしまっているから決して進むことのない、愛、気持ち、関係がとても切ないです。

元、という死んでしまった男だけが共通点の2人の旅。
車内で、元とはどんな男だったのか、自分にとってどんな存在だったのか、思い出しながら、確認しあうような会話が続きます。
2人とも元の自殺理由が知りたい、それぞれに思うところがあるのが苦しいです。
それぞれの弱さと強さと、お互いに向ける思いやり、それをつないでいるのは自殺してしまった元という男。

目的地に到着して、徐々に元の考えていたこと、感じてきたことが、2人に伝わり始めます。
記憶と、事実と、つないで、感じ取る漣、時生。

3人の旅の終わり、漣の気持ち、時生の気持ち、そして未来。
描き下ろしの短編、二人の旅路、は2人の未来が描かれています。

最後まで味わい深い作品でした。

0

兄の優し過ぎる優しさに包まれたふたり

私は主人公2人以上に、ほんの少ししか登場しない兄の『元』の偽りのない優しさが全編を包み込んでいて、彼の思い残しを残された2人が知ってゆく、まるでロードムービーのように感じました。

兄の『元』は何もかもに恵まれているようでいて、実際には彼の望むものは何ひとつ手に出来ないでいるどこまでも優しい男です。彼は両親や地元、先生や同級生といった周囲の全てに見えないレールを敷かれ雁字搦めになりながらも、そこから外れる事は多くの人を傷つけると考えていたように感じます。

比べられて卑屈になり疎遠となった弟の事も心から心配していたと思うし、好きな人とずっと一緒に居たかったと思います。彼は“我”をはらず“争い”を避け懸命に生きていた事でしょう。彼が示すサインは図書館の落書きのように細やかでした。

誰も傷つけたくなくてどうしていいか分からなくなって追い詰められた彼の選択は最悪の形に思えるのですが、彼はそうまでしないと解き放たれなかったのかと思うとその健気さに愛おしささえ覚えました。

亡くなってもなお、兄の『元』は弟と好きな人を見守り続けます。2人は別々の角度から見ていた『元』を共有しあう事で、初めはまるで別人のように感じていたそれぞれの『元』像がパズルのピースのようにはまって、『元』の本心と優しさを知る事になります。

優等生で誰にでも優しい『元』の弟に対する愛情、好きな人に対する恋情。片方は語り合う機会を拒まれ、片方には遠い旅館のノートにこっそりと想いを綴るに留まりました。

もし、漣の想いに答えて両親や家や地元の人達の医師としての自分への期待を裏切る事が出来るのか。閉鎖的な田舎町の期待と好きな人の側で生きられない悲しみ。傷つける事が分かっているから打ち明けられなかった恋心。彼の細やかな他者へのサインは生きているうちには届く事はありませんでした。

彼がなぜ、ああいった最期を選択したのかは明確には描かれていません。ただ2人が『元』の記した細やかなサインを見つけても、5年もの間好きな人を側で見守り続け、漣がひとりぼっちにならない事を確信してやっと旅立てたのです。漣には他ならぬ大好きな弟がいてくれる。『元』は最後まで大事な人の幸せを優先してしまう哀しくて優しい人でした。

余談、もし音声化して頂けたら元と時生の兄弟を阿座上洋平さんの2役で聴いてみたいと思いました。素晴らしい演じ分けをされるのではと期待してしまいます

1

いい!題材が萌える

そうなんです。題材が良すぎて、一巻で完結させるのは難しかったんじゃ無いかな。
時生は田舎の医者の息子。次男で優秀な兄の元といつも比べられ、閉塞感を感じていた。兄からのたまには二人で飲もう、の誘いを冷たくあしらった後、兄は自殺してしまう。

遺骨を前に物思いに耽っていると、いきなり現れた畔木蓮という男性が「元の遺骨が欲しい」という。一緒に旅するはずだったのに、と涙を流す。
時生は遺骨を旅行の間、貸すと言い、自分も行くと言う。

二人は元の思いや苦しさを思いながら、時生は蓮に惹かれ始めて…

ちょっと駆け足になっているんですよね。蓮に惹かれているところが。
もったいない。めちゃくちゃ萌えるシチュな気がするんですが、さらっと流れていくストーリーになっていて、あれって言う間にくっついて終わってしまった。
元の思いが蓮を連れて行こうとしているシーンとかも良いんですが、そこで時生の想いを告げて終わっちゃう。(ちゃんとその後結ばれますが)
数年後の彼らも好感をもって読めました。流石に直後に付き合うとかは萎えそうだと思っていたら、時間をかけながら二人の距離を縮めてたんで、これまた素敵な話じゃ〜とは思うものの。あっさり結ばれちゃうんで。

非常に勿体無い!!!と思う作品でした。

1

悲しくも美しい、読ませる

死人が出る話とかシリアスな話とか悲しそうな話は基本読まないのですが縁があって手にとって読んだところすごくよかったです。引き込まれる、努力しなくても話に入り込ませてくれる。確かに辛く悲しい内容だけど終わり方に救いがあって嫌な気分になりませんでした。絵も綺麗。映画のような話で実写化したらいいのではないかと思いました。

1

しっとり

兄を亡くした弟×兄をひたむきに想う人
って、組み合わせを意図したわけじゃないのに立て続けに3作読んでしまったせいもあり、他2作は兄が健在の時から意識してたんで、ひっかかりも少なかったけど、故人をひたむき熱烈に想い続ける人に何故惹かれるのか!?兄のことを強く想っていながらも、兄と比較することなく個人として見てくれるとこや、情の深さに惹かれるのかな…今作に関しては時生も5年間想い続けて世話焼いて少しづつ気持ちを解きほぐしていった点が良かっです!ただ、その肝心の両思いになる過程は飛ばされて濃縮されちゃって、兄と漣の悲恋に心持ってかれたので素直に良かったね!!と言いづらい…。漣が思い返して好きな気持ちを自覚するシーンはじんわり沁みわたり、兄が何を考えてたのかを思い至るまでの魅せ方、漣が兄を想う気持ちや過去のやり取りなどの盛り込み方が素敵で、兄の死にお互いに責任を感じながら焦燥感切なさいっぱいの旅だったので、5年間のことももう少し見たかったかな。このぼわーんと余韻ある感も味わい深いですが…しっとりした雰囲気に浸りたい時に読み返したいです。

3

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