電子限定おまけ付き
冥花すゐ先生の吸血鬼のお話でした。それだけでワクワクします。
面白かったです。
だだ、甘さとかわかりやすいラブはなくて、何といいますか、戦って抗っていました。
ヴァンパイアハンターの秋夜は、ブルーブラッドヴァンパイア(始祖吸血鬼の一族)のアジュールに見初められ(執着?)、彼岸花が枯れるまで恋人に。それまでにアジュールを愛せば花嫁に、そうでなければ望みを叶えると一方的にゲームを持ちかけてきます。
※※ここからは自分なりの考えと感想を書いています。
ネタバレも含む内容になるかもしれないのでお気をつけ下さい※※
アジュールは1000年も生きている吸血鬼なので、浮世離れをしているし、あまりにも人間の感覚と違いすぎて
なんで恋人にそんなことしたり見せたりするの?
となりました。
でも多分、アジュールはアジュールなりに愛しているつもりなのだろうな。
わかりやすい愛の形ではなかったので、やや難解ではありました。
アジュールにとって渇きを満たす相手となった秋夜。 アジュールにとって愛は痛みを伴うもの。秋夜は痛みや苦しみを与えてくれる存在。
喰っているようで喰われてる。いや、お互い様だから共喰いなのかな?
読み返すとまた新たな気付きがあって、スルメ感のあるお話でした。
このお話から萌えや浄化やハッピーは摂取できないと思います。どちらかといえば、聡美で甘美でかなりダークな雰囲気。
でも面白かったですし、とても好きなお話です。
いや、この作品、お話の設定としては、季節は秋で、彼岸花がメインモチーフなんですけどね、読んでいる今現在が、気温34度の真夏日なので、こう、ヴァンパイならではのひんやり感が気持ちいい。
そして、どんな季節でも、基本的にヴァンパイアは、もう、ヴァンパイアってだけで、自動的に神認定しちゃうほど性癖なんです。
オマケに茜新社のEDGEコミックも、個人的にハズレのないレーベルだし。
なので、まあ、神以外の評価はあり得ないって事で。
作家買い。
冥花さんはもともとダークな世界観のお話を描かれることが多い作家さまですが、今作品はその中でもちょっと突き抜けた感のあるダークさを孕む作品だったように思います。タイトルからもわかるようにヴァンパイアものですが、BLに多く見られる作品のようにダークながらも甘い、といった体を成した作品ではありません。流血描写も死の描写もかなりありますし、甘々な作品を好まれる方には若干ハードルが高い作品かと思われます。
ネタバレ含んでいます。ご注意ください。
秋夜はヴァンパイアハンター。
ヴァンパイアに血を吸われてしまうと、その吸われた人もヴァンパイアになってしまう。ヴァンパイアの被害に遭う人をなくすため、彼は日々奮闘している。
そんな彼は、ある日一人のヴァンパイアに会う。そのヴァンパイアは、「ブルーブラッドヴァンパイア」と呼ばれる、ヴァンパイアの始祖・アジュールで―。
秋夜はヴァンパイアハンターとして闘っていますが、彼がなぜハンターになったのか、なぜハンターになることができたのか、という部分が少しずつ見えてきます。ブルーブラッドヴァンパイアに会ったら、倒そうとせずに逃げろと口酸っぱくして言われていた秋夜。が、その教えに反しアジュールを倒そうとする理由が、秋夜にはあってー。
秋夜に執着するアジュールと、アジュールを滅そうとする秋夜。
そんな構図を思い描きながら読み進めましたが。
んー。
アジュールは秋夜に固執し、抱きつぶしますが、そこにいわゆる恋愛感情があるわけではない。アジュールは彼なりの想いがあるのですが、BL的な、というんでしょうかね。愛情があって固執しているわけではないので甘さは皆無です。
そして秋夜の方も。
アジュールを滅そうとして失敗して、そしてアジュールの「花嫁」となってしまうわけですが、彼の方にもアジュールに対する恋心があるわけではない。アジュールに、まるでおもちゃのように、壊れるまで抱きつぶされる秋夜ではありますが、そこから彼が這い上がってくる部分がおそらく今作品のキモだと思われます。そうまでして彼を突き動かすものとは一体。カッコいいのですが、彼が愛しているのは、アジュールではなくって「あの人」なんじゃないかなあ、と思いました(「あの人」に関してはぜひとも手に取って確認していただきたいです)。
秋夜は、自分の目的のためにアジュールにあることをさせますが、その目的の果てに何があるのか。アジュールは最後、一体どうするのか。ハピエン、なのかな。メリバなのだと私は感じましたが、この結末の感想は人それぞれなのかもしれません。
評価が凄くい難しくって、この作品の持つ世界観は冥花さんにしか描けないと思う。そういった意味で、唯一無二の作品なのだと思います。ストーリーも予想を裏切る展開で面白いんですよ、とっても。ただ、BL的な萌えがあるかと問われると、うーん。といった感じ。愛、というよりは執着、あるいは共依存、そんな感じなのかも。彼らは彼らでしか、ハマるピースがない。唯一無二の存在ではあるのです。
BL的な萌え、という部分ではなく、面白さという部分に焦点を当てて、評価は萌え×2で。
なかなか残酷なお話でしたが、それはそれで楽しむことができました。
個人的な感じ方かもしれませんが、1つ1つの要素がどこかブツ切れのように感じてしまいまして...
雰囲気は好きだけれど、想像していたよりはあっさりとしていた過程だと思いながらたどり着いた最後。
終わり方にぞくぞくと来ました。
始祖吸血鬼を滅ぼすということは、アジュールも消してしまうということ?
自分自身を滅ぼしてしまうのでしょうか。
アジュールが一族を滅ぼして、彼自身もいなくなれば秋夜の願いは叶えられる。
吸血鬼に完全に取り込まれてしまったように見えて、秋夜の方が上手だったように感じました。
冥花すゐ先生は初めて読みましたが、唯一無二の雰囲気にぞくぞくとさせられました。読んでいて楽しかったです。