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もう…読みながら切なさや憤りを感じて泣いたり、二人の愛の表現にじーんと来たりと感情が忙しく、夜中に顔がぐちゃぐちゃになりました。。夜中でよかった‥
こちら、『バイオリニストの刺繍』の続篇になります。
前作は二人の出会い〜恋人同士になるまでが、全編攻め視点で描かれていました。
こちらは恋人同士となった二人の”それから”が、受けの吹野視点で描かれています。
『バイオリニストの刺繍』を読み終わった時点で夜中12時を回っていたのですが、我慢しきれなくて続篇にも手を出し、読み終わって気付いたら3時半になってました。
「貪るように読む」とはこのことか、という衝撃。
砂原先生の紡ぐ言葉、文一つ一つがキラキラと星のように美しくて夢中になりました。
(以下内容に触れます)
オリオン座の星たちって、一列に並んで近くにあるように見えるのに、実際は互いに何百・何千光年も離れているんですね。知らなかった。
周囲に馴染んでいるように見えても、実は浮いた存在、「普通」の皆とは違う存在だと自らをオリオンの星に例える吹野の姿が切なくて、もう序盤からうるうるでした。
前作では二人の関係が「海」を介して表現されていましたが、今作では「星」と「空」。遠く見える二人を繋ぐもの。
夜、館原が吹野の手をとり、赤く光るシリウスの方向へ掲げてエンゲージリングにするシーンが本当に美しかった…挿絵も最高でした。
物語終盤、館原の恩師の夫人が吹野に語る言葉も印象的です。
「聞こえてたって、(心に)響かなきゃ意味がない」。
胸を打たれて、しばらくじいっとこの言葉に見入ってしまいました。
ラブ、の部分ももちろん官能的で素敵なんですが(キスで伝える二人の合言葉が素敵すぎて震えた)、それよりも何よりもヒューマンドラマとして堪能させていただきました。
すっかり砂原先生ワールドにハマってしまったので、これから先生の他の作品も読みまくりたいと思います。この冬は読むものに困らなさそう。素敵な本との出会いに感謝です✨
タイトルに「オリオン」を選んだのが肝
・・オリオンはギリシア神話に登場する巨人狩人の名前
赤い1等星ベテルギウスと白い1等星リゲル、
オリオンの帯を表す斜め一列に並んだ二等星は、遠い星
神話では、嘘を信じた恋人のアルテミスに矢で射抜かれてオリオンは死亡する。
小説に登場する三人は、
館原:バイオリニスト
瑠音:ピアニスト
響 :刺繍作家
響は、聴覚障害。唇読で読み切れない会話が館原との関係を歪ませていく。
BLは、世間が認めない障害をのりこえて成就する試練の恋愛がテーマだけど、
この物語は、更に聴覚障害と演奏家、という設定なので、波乱含み。
読み応えあった。
個人的な性癖を超えて砂原先生の筆力に圧倒されました。
正直なところ、萌度はそんなに高くはなかったんですよ。
で・も・ね!
文章の美しさ、透明感、表現の豊かさ、登場人物のこころを読ませる繊細な情景描写…軽く震えました。
とてもとても好きでした。
特に印象的な場面、星空にあるシリウスをエンゲージリングに仕立てる演出、あっま~~~い!!甘すぎる!でも、この恋人溺愛中のロマンチストなイケメンバイオリニストなら、しれっとやりかねない!っていう説得力がありすぎるんですよね。最高にロマンチックなプロポーズに痺れました。
館原の恩師や共演者の美人ピアニスト、吹野の家族、担当編集者などの周辺人物を通して、ふたりの関係性の変化が徐々に見えてきます。以前はそれぞれ異なる自分だけの世界をもって孤高に生きてきたふたりが出会い、一緒の時間を過ごし各々の世界を共有しながら愛情を深めていくプロセスを追体験できた気がして心が温もりました。恩師の死に対して傷心の館原に、”愛しい”という気持ちを募らせる吹野の心境の変化が描かれている一連の描写がとてもよかったです。
終盤、館原のコンサートで吹野と一緒になった菅井夫人の言葉、”聞こえてたって響かきゃ意味がないでしょ”って、さり気なく深すぎてじーんときました…。”本当に大切なことは目に見えないんだよ”っていう某名作の有名フレーズを連想させるものがあります。本当に美しい音色は心で聞いて心に響くのですよね。その場面から最後まで、テンポよく洗練された言葉に運ばれて心地よい余韻を残して読了しました。
砂原先生らしい(って勝手に認定してる)普段はデロ甘なのにスケベになるとちょっと意地悪く言葉責めしまくる攻めがぐいぐいなエロもキレッキレで、とてもバランスのよいBLだな~と思いました。こういう丁寧に描かれた現代もの、もっと読みたいな~な気持ちも込めての評価です。
前作の『バイオリニストの刺繍』は微ツンな響さんの感情が分かりにくい(これも今となっては、孤独な世界で生きる彼の処世術だったのだと分かる)ので一読目はさらっと読了した記憶があるのですが、砂原先生の巧みな表現力もあって、読み返すほどにズブズブとハマっていき…続編にあたる本作の単行本化をものすごーく心待ちにしていました!
収録内容は、響さんが東京に出てきて二人以外の人間と交わることで、恋人である新良との距離を感じてしまう『オリオンは恋を語る』と、すっかり盤石な関係を築いた二人が、人生としても次のステージへ歩もうとする『シリウスは愛を奏でる』。
聞こえない耳に伝える「好き」と「愛してる」が天才過ぎて、新良に令和の包容力年下攻アワードを受賞させたい…。
タイトルとモチーフである一等星のストーリーへの絡め方がもう、センスの塊ですよね。
シリウスを恋人の左手薬指に贈る新良、贈られたシリウスを見たくて夜更かししていた響さん、二人とも最高にロマンチックで可愛い~!
話が進むにつれて響さんが饒舌に、そして素直に自分の感情を伝えるようになっていくのですが、作中でも語られるようにそれがきっと本来の性格なんだろうなと思います。
恩師を亡くして弱った姿も、よれよれの口話もさらけ出せる関係になった二人が愛おしい…彼らの新たな旅路を祝福したい気持ちで、読後はうるっときてしまいました。
砂原先生が本当にバイオリンお好きなのが読んでいても伝わってくるのが、この作品を読む楽しみの一つです。
新良がソリストを務めるコンサートを見てみたいというのは前作から幾度となく思いましたが、彼が弾き振りしてる姿が一番見てみたいかも…!若い演奏家たちを生き生きと導く姿に、響さんはまた惚れ直すんだろうなあ。
もう一つ本作で印象的だったのは、響さんと母親との関係。
育つ環境の中で屈託を抱えてきた響さんが己の中の劣等感に向き合い、母親に刺繍を生業としていることを明かそうと思えるほどになったのはやっぱり新良の影響が大きいんだろうな。
新良は響さんの『心』に音楽を響かせることで、母親の深い愛情にも気付かせたんですよね。
ピアニストの瑠音さんや響さんの家族、二人の関係が二人だけで完結しないことにそれだけ絆が進展したのだと感じられて嬉しかったです。
新良が響さんの家族に対面するお話(母と姉がコンサート行くほどのファンなのですごい大荒れしそう)を絶対に読みたいので、続編希望です…!
ドラマチックな展開がなくとも、この二人の物語はいくらでも読めるし読みたい…砂原先生、どうかお願いします!
前作の「バイオリニストの刺繍」同様に雑誌でも読んで気に入っていた作品です。ですが他の砂原糖子先生の作品よりはハマっていないのも確かなのです。それはひとえに吹野の性格故だと思います。
それでも吹野の無音の世界や館原の奏でる音楽を読者に伝える筆力は凄いと思い、砂原先生の底力をしみじみ感じさせる作品だと思っています。
今作は前作よりも吹野が成長していて、郵便局で泣いてる赤ん坊に対して取った行動とか、館原から来た電話を受け取ってからの彼の行動に純粋に感動する自分がいました。
これもひとえに館原が吹野に愛を伝え続けた結果なのですよね。
雑誌掲載時は館原とのデュオコンサートの相手であるピアニストの波木瑠音の嫌な印象が強すぎましたが、文庫で読み直しても嫌いなキャラである事は間違いなかったです。www
雑誌掲載時と文庫化するにあたりどれだけ直したのか、そのままなのかは分かりませんでした。ただ、館原が彼女を苦手としてるのは良く伝わって来ました。因みに当て馬では無くて、彼女は館原に対して音楽家としてバリバリ対抗意識を持っています。
それ故にデュオコンサートで館原が進化してると観客が評価した事で、かなり胸がスッキリしました。
今回、凄く良かったのは書き下ろしの「シリウスは愛を奏でる」でした。一旦は断った刺繍本を出すことに決めて、更に聴覚障害であると公表した吹野でしたが、館原も新たな挑戦をする事が決まっていました。この書き下ろしは恋人同士として凄くしっくりしてたんです。
なのでこの続きは絶対に書いて欲しいと思いました。刺繍本の発売と同時に作品の個展を開くと決まってましたが、発話に力を入れてる吹野はきっとサイン会もすると思うんですよね。視覚障害の男子高校生との交流とか書いて欲しいし、館原が挑戦する弾き振りでの苦労とか読んでみたいです。今作で落ち着いたCPだからこその続編をお待ちしております。
個人的には館原の師匠の菅井からの手紙に感動して、吹野が母親と姉から館原の楽屋に逃げて来たお話にクスッとしました。次は是非とも吹野家に館原が訪ねるお話もお願いいたします。