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表題作午後の光線

(攻め受けなし)村瀬みきお
グロテスクなものに性的興奮する中学生
(攻め受けなし)淀井宏太
家庭環境に苦悩する中学生

あらすじ

”痛み”を介し、熱を帯びた彼らの鮮烈な物語。

母親と、その恋人が取り巻く家庭環境に苦悩する淀井。
トラウマにより、グロテスクなものに性的興奮を覚えてしまう村瀬。
ある日、村瀬が苛烈ないじめに遭っているのを目撃した淀井は、激昂し止めに入る。
それをきっかけに交友をはじめたふたりは、お互いの持つ"痛み"を知り、関係を深めていく。
ふたりのほの暗い青春に、光は差すのか――。

作品情報

作品名
午後の光線
著者
南寝 
媒体
漫画(コミック)
出版社
KADOKAWA
レーベル
カドコミ【非BL】
発売日
電子発売日
ISBN
9784048113359
4.7

(88)

(74)

萌々

(11)

(0)

中立

(1)

趣味じゃない

(2)

レビュー数
17
得点
415
評価数
88
平均
4.7 / 5
神率
84.1%

レビュー投稿数17

悲劇が主軸ではない

 表紙の人物・淀井の真っ黒な瞳が終始、印象的でした。何も映していない洞穴のように見える時もあれば、幼い子供のままの混じり気のない瞳に見える時もあり。彼の目を通した世界はどんな風に見えていたのか、想いを馳せてしまいます。2人が共に過ごした時間は村瀬にとってこの上なく幸せなものだったのはもちろん、淀井にとっても、母親以外で初めて深い情を注ぎ注がれ満ち足りることを知れた、かけがえのないものだったでしょう。結末がどうであれ、好意を寄せる相手の痛みや歓びを刹那でも共有できた2人は、けっして負け犬や可哀想な子と言われるような人生ではなかったと思います。

 現実というのはどこまでも無慈悲です。好きな人の臓腑が飛び散る景色を見たいという気持ちと、生きて笑いかけてほしいという気持ちが併存したり。ずっと悩んでいた物事にけりをつけて、さあこれから切り替えるぞと意気込んだところで思わぬ方向から攻撃されたり。悪い結果を引き起こした人に悪意がなくて、恨もうにも恨めなかったり。生きるということは、そういった理不尽とどうにか折り合いをつけて、心を疲弊させながら立ち上がり続けることでもある。そんな時、自分に温かい目を向けてくれていた人との時間を思い出し、誰かの心に残る自分の存在にほっと一息つけたり。ままならないことも美しいひとときも両腕いっぱいに抱えて、等しく死に向かっていくのが人生なのだと思いました。

7

Sakura0904

> らむねじそさん
コメント下さり、ありがとうございます。
この作品を読んで感じたことすべてを言語化できたわけでもなく、読み落としている箇所もあるだろうなと思いながら書いたレビューですが、そんな風に言ってもらえて大変感激しました。
励みになります。

らむねじそ

コメントをなん度も読み直したのは初めてです。
これからも読みたくなると思います。
ありがとうございます。

余韻がすごい

これはすごかったです。
ちるちるレビューを見てなかったら
スルーしていたのでレビュアーさまありがとう。
本当になかなか出会えない神作品で
小説のような文学的作品でした。
少年村瀬の設定、轢死を目撃のトラウマって、、
確かに衝撃すぎる体験、、
嫌なのに性的興奮に繋がるって…
お話は静かで深く、心に響きました。
めちゃくちゃよかった。
挟まれる村瀬の日記、言葉
ストーリーの構成、全部すごいです。
作者さん新人ですよね?
傷を抱える2人が心が通ったところ
泣いてしまった。
希望の見える一瞬、
カバーの少年淀井の
村瀬に「本当は弾け飛ぶところが見たいだろ?
って
ぜんぜん構わないできるって
本気で思ってる所、もうもう…
BL分類だけどBLの枠を超えた名作だと思います。   
衝撃作とのことだし
この死を扱うテーマだから
2人の少年のどちらかがってはじめから
思っていて
最後の方は死ぬなってずっと思ってた。
あっけないしはかない。
淀井のお父さんと同じだ。
最後友達ふたりと乳歯を探し
合唱の時の淀井へのとむらい?も美しかったし
ラストの淀井も美しい。完璧では。
作者さんが気になりデビュー作品を
読みましたがそちらも
すごかったです。
ダイヤモンドの功罪の先生を思わせます。
南寝先生、すごい作家がデビューしあなあと
次回作が楽しみでしかたないです。

5

No Title

何って言ったらいいのかわからなくて、読んでから3ヶ月くらいレビューを書かずに放置してしまいました。端的に言うと純文学BL。なかなかお目にかからない作風です。

主人公の淀井は、同じクラスの村瀬のことを気にかけています。いつも口を半開きでボーっと虚空を見ていて、なにを考えているのか分からない村瀬。彼は淀井の迂闊な一言により、虐めのターゲットになってしまったのでした。

淀井は美化委員で一緒になったことと罪悪感から村瀬に近づき、仲良くなります。ところが虐めがよりエスカレートし、目の前で村瀬が傷つけられるのを見た淀井は怒りに我を忘れてしまい……。


冒頭はよくBLにありそうな話でもあるのですが、トラウマを介して関係を深めていく二人というのもあるっちゃある話なのですが、でもすごくて!!(ボキャ貧)

村瀬の内面の豊かさ、彼の目を通して見る世界と淀井の美しさが、キラキラと輝いていて良いのです。

彼は無意識下で死に魅入られていつつ、絶望に黒く塗りつぶされる訳でもなく世界の輝きを受け止め、表現力豊かな筆致で日記に書き留めたり、淀井に一生懸命伝えようとしたりするのです。

最初は淀井に助けられるばかりだった村瀬ですが、やがて淀井の淋しさや諦観を繊細な感性で受け止めて支えるようになります。

何となくハッピーエンドは無いだろうなという雰囲気は最初からずっとあるのですが、薄々そう思っていても終盤はかなりしんどい。淀井と村瀬が憧れた死というものは彼らに何をもたらすのか。それを描いた最終話は読み応えがありました。

……って、うーん。やっぱり私、頑張って何か言おうとして何も言ってないな。

ともあれ、黄昏〜闇の腐女子と自認のある方は読んでみてください!

4

すごいとしか…

や~すごい作品でした。
一言ではもちろん言えないし、全てのエピソードが秀逸でそれがつながっていく構成がすばらしい。
こんな複雑な人間のあれこれを読み応えも余韻も凄まじい1冊にまとめられる手腕が恐ろしいくらいです。
シュールな絵(村瀬なんてちびま〇子ちゃんのキャラみたい)にヘビーな内容だなと読んでいた前半ですが、後半とラストで打ちのめされました。

人(特に子ども)は環境や衝撃によって歪んでしまう。
「どうせ皆どこかしらオカシイよ」まさにそう思う。
おかしいとされる村瀬の日記は読書好きなだけあって感受性、情感、語彙力、表現力などが豊か。
人の内面って外からはわかりにくいものですもんね。
そんな村瀬の文才がクライマックスで活かされる場面が見事です。
淀井のかくれんぼのエピソードは切なく象徴的。

村瀬が駅のホームで哲郎を突き飛ばそうとした時、淀井の姿が浮かんで踏みとどまった。村瀬のトラウマが淀井によって上書きされつつあるということですよね。
そのトラウマのある電車の中での2人の会話がやさしく、村瀬のモノローグが少し軽くなり、2人の心の重みがましになっていればいいなと思いました。
この頃、村瀬の吃音はなくなっていた。

お互い相手の特別になりたい。
その気持ちや形はちぐはぐでヘン…それを自覚し共有する繊細さよ。
この後、告白大会をして村瀬が嬉し泣きしてこわくなって…
下に小さな景色の3コマ…最後のコマがこれまで何度か描かれてきた神社の鳥居のシルエットで、ここで、え!❔(嫌な予感しかない)と声が出ました。
次が「はい 飯田です」のページ。
場面転換が上手すぎる!とビビりました。

ここからがまたすごすぎて…飯田、柿沼と共に
淀井の乳歯を見つけた村瀬のスピーチが圧巻でした。
見開きで、踏切、海、フェンスと空を背景に…ここの言葉にこれまでの淀井との思い出が詰まっている。
「僕の行く景色には淀井くんが溶け込んでいて」←淀井は村瀬にとって神様ですもんね
「強く柔らかな午後の光線は いつも彼だけを差し照らしているようでした」←いつか見た日の村瀬だけの淀井で永遠なんだな(ここでのタイトル回収に震えました)

死は解放で憧れ。
村瀬にとって淀井は憧れで神様でもあった。

淀井は自ら選択したのでしょうか。
村瀬のため、村瀬から離れたくない自分のため、
「村瀬の目を借りて色んな場所を見てみたい」から?
自分が弾ける体を村瀬に見せたいのかもと淀井が言ったのもあって、村瀬は最期の淀井に会いたかったのか。

ラストシーンのタタンタタン…が頭に残ります。
淀井は死への旅に出た。
午後の光線を浴びながら。
外が海(命)なのが象徴的。
銀河鉄道の夜を想起させます。全体的にもほんのり。
 
表紙の淀井の顔
右側、光が当たっている
左側、影になり頬に怪我がある 
が、村瀬乃日記
「春光で淀井くんの半顔が 沫雪みたいに白く輝いていて」
「瞳の、深い深い穴の底の色を際立たせていました。」と被ります。

周りの人物造形もとってもいい。ステレオタイプやき記号ではなく多面的な人間として描かれる。
飯田と柿沼がいい奴で。
彼らの会話がすばらしい。
特に飯田の「こういう時だけ先生ヅラしやがって」が好きです。

淀井の母親は息子に愛情がないわけではない。
哲郎は悪100%でもない(逆に悪いだけの人間なんているのかとも思う)。
こういう人たち結構いますよね。
哲郎の「神も仏もねえな」が印象的。
何度も出てきた鳥居や道祖神に皮肉が込められているんでしょうか。

頭の中をぐるぐるするシーンが多すぎて、まとまりなくなってしまいました(いつものことですが)
当分余韻が抜けないだろうと思います。
すばらしい読書体験をありがとうごさいますという気持ちです。

3

ifの世界線を願って涙が止まらない

踏切の飛び込み自殺に遭遇したトラウマから、グロテスクなものに性的興奮を覚えるようになった村瀬。早くに父を亡くし母と新しい恋人のいる環境に悩む淀井。
イジメにあっていた村瀬を淀井が助けた事から2人の仲が深まるけれど、明かされていくお互いの悩みや苦しみがわかればわかるほど現実は残酷で醜くて。だからこそ2人の共鳴する痛みが純粋で美しく、かけがえのない真っ直ぐさに涙が止まらなかった。

愛する存在を突然失う悲しみはどこか非現実的なもので、少し会えないだけで違う時間軸に変わらずまだいてくれるような気がする。
村瀬の心の中から淀井が消える事はないだろう。合唱コンクールでの村瀬の読む挨拶文は、話す事が苦手な彼の内にある気持ちが見事に表れていてめちゃめちゃ泣いた。
どこかで何か1つでも違ったら、少しでも別の流れになっていたなら2人に違う未来があったのではないかと、もしもを考えては切なくて頭の中がぐるぐるした。

淀井の乳歯見つかって良かったね。あのまま2人でずっと電車に乗って、遠いどこかに行ってしまえたら良かったね。でも一緒に過ごした記憶は永遠だからね。

3

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