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あらすじ

ひどい別れ方をしたかつての恋人と、突然の再会をした有城。彼、荻嶋は、あの頃の穏やかさが嘘のように強い瞳で今度は逃がさないと言うけれど、有城には彼の手をとれない理由があって……?

作品情報

作品名
七年ロマンス
著者
渡海奈穂 
イラスト
青山十三 
媒体
小説
出版社
新書館
レーベル
ディアプラス文庫
発売日
電子発売日
ISBN
9784403526381

ちるちる評価ランキング

78

5

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萌々

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中立

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趣味じゃない

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レビュー数
1
得点
5
評価数
1
平均
5 / 5
神率
100%

レビュー投稿数1

三人で描く、幸せの◯

切なさに途中涙がほろりと流れた、沁み入るお話でした。。
レビュータイトルは書き下ろしのタイトル「幸せの◯」から拝借。
その意味が分かったとき、胸がじん...と幸福感で痺れました。

渡海奈穂先生の新刊は、タイトルどおり7年越しの愛の成就、
再会もの。

執着スパダリ攻め、健気不憫受けと健気な連れ子(高校生)、
再会、復縁、夜明けのストーリー...
そういったワードにセンサーが反応する方に、
ぜひぜひプッシュしたい物語です

二人が復縁してからの”あまあま”の部分をもっともっと
見たかった気もするけれど、救いのあるエンディングには大満足、
文句なし!の「神」評価です。


同じ会社の同期同士(攻めは社長の息子)、
格差はあれど幸せな交際を続けていた荻嶋(おぎじま)×有城(うじょう)。

しかし有城はある事情から姿を消し、荻嶋と一切の連絡を絶つことに。
…それから7年、女性と再婚(契約結婚のようなもの)→離婚し
漫画家となり切りの息子・琉斗と二人暮らしをしていた有城。

ある日、編集者との打ち合わせをしていたカフェで
偶然荻嶋と再会、付き合っていた頃には見たことのない険しい顔で詰め寄られ、
家を特定され、押しかけられて「もう離さない」と言われー

と続きます。


もうまず、受け・有城(うじょう)の境遇が悲惨で心抉られました。
彼の曲がった小指は幼い頃、兄姉たちに試された
「どこまで曲げたら骨が折れるか」というゲーム(!?)によるもの。
機嫌の悪い時には親に殴られ、働き始めてからの給料は全て親に吸い取られ...

と、肉体的・精神的虐待を受けていた描写がリアルで( ; ; )

33歳となった現在も、母親から金をせびるLINEが流れてくる場面。
その口調の豹変ぶりが本当に恐ろしく、怯える有城の気持ちがダイレクトに
伝わってきて震えました。

と、こんなふうに書くと
”家族から逃れられない、ただただ弱いキャラ”のようになってしまうのですが、
決してそんなことはなく!

自分の両親、家庭はおかしいと感じ、
必死に努力して家を出て、バイト掛け持ちで学費を稼ぎ、
自分でも驚くほどの「良い会社」に就職し懸命に働いてー

と、どん底の環境からなんとか這いあがろうと
努力に努力を重ねてきたことが分かるだけに、
より共感し応援する気持ちで物語に引き込まれていきました。

で!

そんな有城の事情、境遇のことは全く知らず(有城が必死に隠していたから)、
なぜだか理由も分からぬまま、大好きな恋人に姿を消された荻嶋(攻め)。

まさにここが萌えどころ!とグッときてしまったのが、
そんな彼が見せる執着です。
実は最初、再会自体も何か荻嶋が仕組んだものだったでは..?なんて
疑っていたのですが;そんなことはなく。
(そういう仄暗い演出のない再会、というところがまた
個人的な萌えどころでした◎)

再会後の「できるものなら紐で括って連れ帰る」的発言、
書き下ろしでの琉斗との会話の中の
「もしまた有城が姿を消そうとしたら監禁する」という、迷いのない発言。

そして琉斗を懐柔し(でも決して、嫌な気分になるやり方ではないのです)、
躊躇い戸惑う有城を置いて外堀から埋めていくやり方。

...執着攻め大好きな自分にとっては、たまらなくゾクゾクする...!

そして、そんな発言をする彼が
有城に触れる時の手つきや視線は、どこまでも優しく甘いー

スパダリだけど、囲い込んで離さない...という執着を香らせる
その振り幅、最高です。。

再会後も、なかなか「別れた本当の理由」を
言い出せなかった有城。

やっとの思いで初めて吐き出せた時、
「大変だったね」と言うことも、軽蔑の目を向けることももちろんなく、
ただただ受け止め、「当時力になれなかったことが悔しい」と語る姿に
胸がいっぱいになり、涙がこぼれました。

有城がね...7年前、荻嶋との初デートの時の思い出で
一番愕然とした、と語るのが、ファミレスでの何気ない注文の一言なんです。

そこに、立ちはだかる高い高い「格差」という壁を感じてしまう。

常に金がなく、注文するのは一番安いアメリカンコーヒー、
一緒に入った店では「興味がわく商品がなかった」ふりをして
何も買わずに出て...

そんな自分の本当の姿、境遇を知られたら
きっと軽蔑される、と恐れる有城だけれど、
本当はそんな自分を嫌だと思い見下し軽蔑しているのは、
誰であろう自分自身なんですよね...


そんな彼の境遇を踏まえると、個人的には
有城の母親にはもっともっと「ざまぁ」展開が
あっても良かったとは思うけれど、、

荻嶋、それに琉斗からもナイスアドバイスを受け、
やっとやっと長い呪縛から解放される姿にほっ...と息をつきました。

そして。
二人の関係を語るのに欠かせないのが、義理の息子・琉斗!

荻嶋との復縁を迷う有城に彼がかけた言葉に、
たまらなくグッときてしまいました。
もし自分が同じ立場だったら、果たして同じ言葉が言えるだろうか...

「自分はどこの円の中にも入っていない」、と自分自身のことを
淡々と語っていた彼が、くっついて並べられた3つのマグカップを見た時、
何を思ったか。

もはやサブキャラではなく、立派な主人公のひとりとなっていた
琉斗にとっても明るい救いの見えるラストに、幸せを噛みしめました。

三人での同居生活が始まり、遠慮して接触できない有城が
荻嶋と二日間の「外デート」を楽しむ終盤のお話が
あまあまで嬉しかったー...(*´◒`*)

心震える、現代×再会×復縁ラブストーリーでした✨

2

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