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木原先生の作品は2冊目です。
1冊目の「箱の中」の文庫本で心を鷲掴みにされたので、次はどれを読もう、と調べてました。
ヤマシタトモコ先生の漫画が好きで、挿絵と表紙がヤマシタ先生ということで、あらすじを読んだらなんか重そうだけど、読んでみたいぞ!とビビりつつ読み進めました。
いや、こんなに満たされるお話とは思わず!
攻めのモモはすごくクズでだらしないです。
読み始めからおいおい、と呆れながら読みました。
なんというか、考えが足りないんですよね。
ちゃんとしようって薬で捕まって3回目で思うあたりが本当にどうしようもない。
当たり前のように実家を手伝おうと思っていたところも、かつての友人に何も考えず会いに行くところも。
だけど、読み進めるうち、モモが魅力的に見えてくるから不思議です。
受けのロンちゃんは、空気が読めない堅物で警察官です。
だけど、モモを救ったのは紛れもなくロンちゃんです。
どうしようもないクズのモモを励まし、責任をとる、と彼は言います。
突き放してもいいのに、それをせず、モモの要求を受け入れるロンちゃん。
そのままラブホテルに入り、好き勝手に言われてセックスを求められます。2人がはじめてしたセックスは、甘さとは程遠いです。
だけどロンちゃんの事後の反応に、モモは驚き焦ります。
ここで、ロンちゃんがとにかく可愛い、と気付かされるんですね。
モモとロンちゃんの関係はセックスと金からセックス、そして恋愛へと変わっていきます。
いや、これが本当にですね、過程がとても良いんです。ふたりともかわいい。
だけど、それまで自分のやってきた罪、家族との別れによって、モモの自己肯定感は最低となっています。優秀な兄と比べられていたコンプレックスもあると思います。
どうにか警察官であるロンちゃんに有益な情報を教えて役に立ちたい!と考えます。
薬のバイヤーになったり、ヤクザと親しくして話を聞き出したり、自分を雑に扱います。
マジでヒヤヒヤしました。
ロンちゃんがやめろと言ってもモモがやめないのは、ロンちゃんがずっと自分といてくれるわけない、と思うから。そんな未来あるわけないって思っています。
ロンちゃんに捨てられる前提なのが、悲しくて、悲しくて。
ロンちゃんも言葉を尽くすタイプではないし、モモが初めてな相手だからどうにもうまく大切なことが伝わらない。
なにか大きなこわいことが起きない限り、気づけないんです。
こわいですね。
途中の薬に関する描写や、モモが自棄になってる場面は苦しくて辛かったです。
始まりこそ甘くない2人ですが、育んだものはお互いを思うが故の痛みを伴った愛です。
読後はほっこり。早く読めばよかったです。
長らく積んでいたのですが読んだらやっぱり良かった。
モモの過酷な状況に、小説ならばここらで救いがあるはず!と願うところで救いの手は入らずズルズルと堕とされていく木原作品。(他の作品に比べたらそこまで痛くない)
受けのモモが本当にどうしようもなくダメな人で…でもロンちゃんとの出会いで救われ彼と一緒にいたいからもう悪いことはしないと決めている。
そうして真面目に落ち着いた生活を送るモモから彼の良いところが沢山見えてきて、デリヘルで働いている前科アリ不細工ホモの彼に愛着が湧いてくる不思議。
ロンちゃんのために…と突っ走るその行動は明らかに間違っていて、あぁもう…っ!と思うんだけど、彼のひたむきさに何だかこちらまで放っておけない気持ちになる。
ロンちゃんも真面目堅物で不器用な刑事なんだけど、同僚から見た彼とモモから見た彼が違うのがまた良い。しかも本当にモモを愛していて大切にしているところが攻め視点から十分に感じられて甘い!
そして、描き下ろし「後輩の恋人」の終盤の一文に大笑いしてしまいました。
パ○ズリってなんですか?と詰め寄るロンちゃんに「どういうモンかなんとなく語感と雰囲気で察してくれればいいのに」って…!ロンちゃんの堅物鈍感さとモモと甚呉の気まずさが面白すぎました。
色々大変だったけど(2人が)、モモとロンの幸せにほっこりする読後感でした。読んだ良かった!
読んでいて、高校生の頃、授業でやって全然ピンとこなかった羅生門のことを思い出して、このお話と抱き合わせて腑に落ちた感じがした
出所した頃のモモの物の考え方の卑劣で醜いこと
それが仕事で信頼を得て、恋人ができて、失いたくない居場所があることで考え方や振る舞いが別人みたいに変わる
そういう物だよな…なんで昔の私は解らなかったんだろう
そして十分に愛されていたのに、なくなるハズがない両親では失いたくない存在にはなれないってこと
人間はやっぱり段階を追って他人との絆を結ばなきゃ今一つ覚悟が決まらないとかあるのかも知れないな
兄だって、自分が弱って借金を負って病に冒された状況になったらモモのことを思い出したりして
冷静でないとしか言いようがない
自分がいない状況で良くて相続放棄の妻子に前科3犯の人間との繋がりを作るなんてあり得ないのだから、弟と縁が切れていることには安心こそすれど会いたがるなんてまともな考えじゃない
でも、モモがお金を融通することで、感謝される経験、甥達と言う未来のある存在が自分の身内にいると思える状況を得られたことは良かった
損得考えるくらいまで何も持ったことがないからこそ、毎月20万をあげてしまうなんてことができちゃうんだよな
軽率さがよく働くこともある
モモは人生の前半はなんであぁなっちゃったのかな…
恋愛は始まりはなんでも良くて、絆されてこの人って決めた相手を大切にしあえれば恋人でいられる…けど、ロンちゃん、本当に?本当に良いのか?
読んだだけなのに天国のロンのお母様に申し訳ない気持ち
ロンちゃん人付き合いダメそうだけれど前科3犯の頭も顔も良くないおじさんじゃなくてもさぁ…モモがいつまでも引け目を感じるの無理もないよね
幸せならOKですとしか言いようがないけどさ
風俗店マネージャー百田×真面目すぎる警察ロンちゃん。
痛い、辛い、切ないが多い木原作品としては、甘すぎるほど甘く、ハードルは低めです。
終わってみれば愛が溢れた優しいお話でした。
百田の過去とロンちゃんとの始まりが相当にクズ。
そんな百田がロンちゃんのために更生し、ロンちゃんのために浅慮で暴走し、ヒヤヒヤさせられます。
本当に浅慮過ぎて頭を抱えたくなるのですが、彼の人柄や優しさが溢れていていつのまにかみんなが百田を好きになる。(本人はロンちゃんに夢中、そこがいい)
ロンちゃんも、真面目過ぎて人間味がなかったお巡りさんが、百田と出会って人間的になっていく。正反対の二人が素敵な相乗効果で見事な割れ鍋に綴じ蓋!
百田が作中何度もロンちゃんとの出会いに感謝しているけど、本当にこの二人が出会えてよかった。
百田の過去に涙し、ロンちゃんの愛に涙し、本編後のロンちゃんや甚呉さん目線の短編でほっこり。
ヤマシタトモコ先生のイラストがイメージ通り。小汚くてカタギじゃなさそうな百田、真面目で精神の清楚さが見た目に出ているロンちゃん、素晴らしかったです。
また何度も読み返したい神作品です。
読後も百田が完全なる善ではないということは忘れたくないなと思う。人間は変われる、を強く信じていますけれど、百田に人生狂わされた人絶対いるだろうに。そういう人に殺されたって同情したくないなと思ってしまう。曲がらない小指のくだりを胸に刻む。
創作物の登場人物としての百田はとても好きです。涙脆くて情が深くて頭は弱いロンちゃん至上主義。
持ち金全部でクスリを買ったり、老人を襲ったり、そういう男が風俗嬢達に「愛想よくて、優しくて、話好き」って思われて頼りにされていることは良いなとは思う。すごく強運の男だよな〜死んでておかしくない場面だらけ。ロンちゃんも社会的に死んでもおかしくないところがちょこちょこ… 百田に性病がなくてよかったな。
木村(ヤクザ)もそうだけど、浅はかな登場人物が多い。