お買い得商品、セール品、中古品も随時開催中
小説
丸ごと1冊表題作です。
ゲーム開始時の設定で、別のシナリオが書かれているといった感じです。
智裕(ちひろ・攻め)は桐野に声をかけられてカフェ・リンドバーグでバイトをすることになります。バイト初日、自分が昔から描いているモチーフにそっくりな司(受け)に、智裕は驚愕。想像が現実となったことに混乱し、智裕は司を避けてしまい、司は理由も分からず智裕に避けられることに困惑します。司を好きな三原はそんな二人の態度に悩み、一ノ瀬は悩んでいる三原をなんとかしたいと思い…という話です。
ゲームの視点選択のように、頻繁に視点が変更されつつ物語は進行します。
智裕と司が恋人同士になるまでがメインで、それに三原と一ノ瀬の恋模様が織り込まれています。比重は、2カップルそれぞれほぼ半分ずつ占めており、マスター桐野は少年Aと食事をとる場面が少しあるだけです。
キャラ設定や背景は、ゲームスタート時のままなので、智裕の司への複雑な感情、三原が司に拒絶される、マスター桐野と少年Aの愛人契約はそのまま使われています。
ゲームとは異なるオリジナルストーリーですが、日常的でちょっと物足りなかったゲームシナリオから更に地味になっています。
雨に濡れた司に、智裕がはっとする場面やのような、派手なシーンがありません。行動範囲も街中にとどまり、司をデッサンするために二人で出かけることもありません。一ノ瀬のバイクをもっと活用しても良かったかも。あと、ギャルソンに言い寄る客が登場したり、失恋して泣いてる客にサービスをするとか、カフェならではをもっと強調して欲しかったです。
一ノ瀬と三原の、互いに気になって、好きなんだと気づく心情はゲームより自然で良かったですが、智裕と司に関しては、ゲームのシナリオの方が好みでした。ゲームと共通していますが、司が三原じゃなく智裕に惹かれて動揺する心情の動きがもっと欲しかったです。全体的に分かりやすくて読みやすい文章なのですが、その分、さらりと軽く流されてしまうのが残念でした。
今回のレビューにあたって、登場人物の年齢を確認して、智裕と司の12歳差、智裕が一ノ瀬より年下なのにビックリでした。つい司にギクシャクしてしまう智裕は子供っぽいなぁと思ってましたが、20歳なら仕方ないかも…。そのくせ、恋人同士になると主導権を握るような余裕があるという。作品内で、もっとその子供っぽい部分を強調したら、智裕のアンバランスさが魅力的であったろうにと思いました。逆に、司は接客業が長いのだから、店内で露に表情に出すのが大人気なく感じました。
ただ、智裕の「僕」と、司の「ぼく」のボクボク一人称にはちょっと萌えました。