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以前からずっと気になっていた作品。遂に実読。
いや〜…思った以上に難解というかサブカルというか痛いというかなんと言うか。
絵柄からしてヒリつく。ガサつく。
disってるように見えたらごめんなさい。けなしてません。
ただ…
やはり難しい!
先生の意図は違うところにあるとしても、読んだ第一印象はアングラ。
主人公の正体がよくわからない、売春宿の主人?高校生?剣道部の部長?
登場人物は、母?姉?弟?まずそういうところから混乱がある。
で、特に前半はBL要素は皆無で、抽象的でポエム的な要素が強い。
後半、剣道部部長としての十三と後輩の深沢のストーリーになってからは、痛々しいながらもBLの体を成してくる。
深沢からの一方的なLと十三の気の無さの温度差。
その後、十三に振られた深沢を愛する友人の埴谷とのBLストーリーも、埴谷にLがあるのに甘さは全くナシ。
闇で病みでダーク。ヒリつく。甘酸っぱいの対極。
この作品の中で起こる出来事自体は、どれもそこまで痛々しいとか凄惨だとかいうわけではありませんでした。少なくとも、禍々しい表紙や不穏なタイトルから想像するほどではなかった。ただ、登場人物達の心情描写への熱量が半端ではない、これに尽きます。溢れて、零れ落ちて、怒涛のように流れ出すモノローグの嵐。単純に文字の量も多いので、精神力と共に集中力も求められます。とても万人に薦められる作品ではないけれど、こういう異端作品があってこそ、商業BL界の多様性に繋がると思うので、私はこの作品を出してくださったことに感謝したいし、新しくまた、こういったエネルギッシュな作品が登場することも願っています。
主観的で感覚的で、時に哲学的なモノローグの数々は、一見厨二病のようにも思えるのです。まるで、世界中で自分という存在だけが、あらゆるものから隔絶された本物の人間であるかのように語る三者。凡庸な人間に囲まれた己の欠落した部分、自分がいかにありふれた幸福を享受できない人間か、いかに泥の中に沈みきっているか。結局、長ったらしく大量の言葉を並べ立てて書かれていたのは、そういう感覚だったように思えます。それが厨二病のようだから痛い、ということではなく、私はそういう感覚というのは子供だろうが大人になろうが、誰でも心のどこかに持っているような気もしていて。誰だって自分以外の何者にもなれないのだから、当然なのだと思います。もはや自分すら何者なのか分からないという彼ら。彼らは一体何を得られれば、自分の存在を定義付けられるのか。十三がどこに向かっているのかも気になりますし、BLを超えたジャンルの作品として下巻の展開に期待大ですね。
続編が発売されて少ししてから、あおりと装丁に惹かれて探しまくって購入。
書店の何処にもなくて、最後は通販を頼った記憶が。
表紙の子誰だろう?可愛いなあ。
………………誰?え?中にいた?
未だもってこれが誰かわからないのですが(汗)深沢なの?え?
確かに読みにくいです。
画面もごちゃごちゃしててどっちかというと汚い。セリフも多すぎる。
しかし、そういう漫画嫌いじゃないんです。
でも何故か駄目でした。
描かれている内容は、難解そうに見せているだけで云われる程難解でもない気がします。それは全く悪いとは思いません。
ただどれも心に刺さらず、ただ痛かったり汚かったりで、美には至りませんでした。ここらが美に昇華されなければ、私は無理かなあ。
もうそうなってしまうと、個人の趣向なので合わなかったら仕方ないという感じです。
タナトスとエロスにあふれた話は好きなんですがねえ。
しかも高いのに、2冊まとめて買ってしまったんですな。
まあ、合わない人もいるよなという事で。ご参考までに。
実にとっつきずらい本ですね。
とても漫画とは思えない文章量に、慣れないと会話の流れも誰と誰が話しているのかさえも解り図らい。
しかも最初の主人公である十三が、売春宿の店長でありながら高校生で剣道やっているという、かなり無茶な設定で、
それを明かされてつまずいた私がいます。
でも小難しいのは最初のうちだけなので、初回はざっと流し読みするのがよい方法なのかも。
また、ちょっとあり得ない設定があっても、全体としてみれば些末なことかもしれません。
父の仮面を被って母と関係があった十三も、十三を盲目的に慕う深沢も、お互いに自分は"何者なのだろう"という思いに捕らわれている。
そして十三は自身を"闇"とし、十三にとって深沢は"光"。眩しすぎるのですね。
愛したくても、まっすぐには愛せない。
相手を傷つけて、自分も血を流す。
深沢も自分は"白"であるとし、相手によって塗り替えられ、十三に執着する自分を"目暗"であるとわかっている。
十三は深沢を、そしてなによりも自分を守る為に、結局は逃げるしかなかったのだろうと思う。
その後ろ姿に、なんともいえない悲しみを感じます。
そこで出てくるのが埴谷なのですが、"自分のことを好きでない深沢が好き"という、これまたちょっと病んでるコ。
自分自身を蔑むことで自分を守り続けていたけれど、このままでは深沢を愛せないと気付いてからの彼の行動に涙…。
"愛と恋とでベクトルが逆"なのであれば、
十三と深沢は似た部分を持ち、惹かれずにはいられなかった恋であり、
深沢と埴谷は、慈しみ暖かみを分けあえる愛であったのでしょうか。
其々の心情を思うにつけて痛みが走る、これは狂気に包まれた純愛なのだろうと思います。
これは評価が分かれると思いました。
絵柄もそうですし、一見わかりづらいように作ってあるからです。
好きな人にはとても味わい深い作品だと思います。
どうしてもわかりづらいときは、次作「甘えんじゃねえよ」など作者のほかの作品を読んで、この作者の文法に慣れるとわかりやすくなると思います。小難しく見えますが、実はそうでもありません。
深沢は「白」、十三は「闇」のイメージを担っています。白はすべての波長を均等に反射した時に認識されると作中にあります。反射する、つまりは鏡です。と同時に、十三の発する光の偏りをすべて打ち消して均等にする波長をもっていなければ、十三に白で返すことはできないので、真反対の波長をもっている、ということでもあります。
それは十三が深沢を認識した時に自分だと思った場面や、深沢にむごいことをさせる場面、金を渡す場面などからも見て取れます。
だからこそ、十三と深沢は結ばれなかったのだろうと思いました。
あまりにも眩しすぎる光は、盲目にさせる。自分の輪郭も見えなくさせてしまうような光の中で、確かに二人は一つになったのだと思います。形として別れることになったのだけれど、溶け合って一つになって、二人の人間に分かれたんじゃないかな。
ある意味、究極の成就のような。
言葉にできない感覚をできるだけそのまま真摯に伝えようとすると、こういう表現になるのか、と思いました。
この感覚を描こうとしている作家さんはほかにもいますが、ここまで明晰にきちんと輪郭を持たせてカタチにできているのはこの方だけではないでしょうか。欠けた分厚いガラスのようなとがった輪郭で、弱さで劈開した面の歪みもそのままに光を反射しているオブジェのようです。(大絶賛です)
言葉や演出に惑わされずに読むと、非常に愛に満ちた甘いラブストーリーがあります。濃厚で芳醇です。ぜひ味わっていただきたい作品です。
