イラスト入り
身代わりでもいい…あなたが好き。
こっちのほうが好き。
育ての子、ショアを失って、後悔に押しつぶされて。
似た少年に許しを請う姿に胸が痛かった(´;ω;`)ウッ…
いつも失敗した後に気が付く。
だから私は・・・
でも、だからこそ今度は。それが今回のお話し。
ある日、エリィはショアによく似た面影の少年に出会う
記憶障害を持った彼はすぐに記憶を失ってしまう。
だからショアの代わりにした。
本人にかけられない言葉をかけて、ショアにしか呼ばせなかった
呼び名で呼ばせた。
でもいつしか~と変化していく様子がすごく良い。
本当は誰よりも愛情深くて、本当は誰よりも寂しがり屋で
本当は誰よりも。
そんなエリィが愛しくてたまらないお話しでした。
記憶を失ってしまう少年、ルース。
毎日忘れないように、忘れないように。
二人の紡いでいく日々がすごく愛おしい作品でした。
繰り返し繰り返し。
でもその繰り返しがなんとも甘いのです。
誰しも失敗はする。それをどう取り戻すか。なのかもしれませんな
エリィ救済話でした。
前作で主人公カップルよりもせつない役どころ、可哀そうなエリィことエルリンク・クリシュナが、漸く手に入れた幸せの相手は記憶障害の男の子でした。
もうね、記憶障害ってだけでもせつない匂いするのに、それが1時間しか記憶を維持できない少年ってネタが……嗚呼……(涙)
『エリィを忘れたくない…』
そう言って泣いたルースに、もう胸が詰まる詰まる。
あんなに好きなのに、愛しいのに、それなのに眠りに落ちれば初対面。
それを、毎日、毎日、気が遠くなる月日を繰り返していかないといけない二人は、見ているだけでせつなく苦しいものがありました。
はじめはショアの身代わりとして都合よく利用してたエリィが、だんだんとルースの優しさに触れて心を開いていく描写が本当に丁寧で、心の動きを表現するのに本当に優れてる作家さんだなと唸ります。
終盤、養い子であったショアと和解する場面があるのですが、心から良かったねと思わずにはいられなかったです。
血が通っていない機械のような男だったエリィにとって、もっとも相手にしたくないだろう面倒くさい子に陥落する姿は一見の価値があります。
「蒼い海に秘めた恋」の続編。
前作でショアに見事にふられたエリィが主人公です。
ショアに捨てられ、初めてその存在の大きさと、失った悲しみに沈むエリィ。
ルースという清掃員にショアの面影を重ね、逢瀬を求めショアの身代わりにします。
ルースは重い記憶障害で長時間記憶が持続しない。
すぐに忘れてしまう事を利用し、ルースを「ショア」と呼び一時のまやかしに浸り、ショアを失った悲しさを埋めようとします。
もちろんルースはそんなことすぐに忘れてしまう、エリィに抱かれた事も、ショアの身代わりを務めている事もわすれてしまい、毎日が記憶をたどるところへ戻ってしまいます。
思い出せないけど、エリィに大事な絆を感じているルースも悲しい存在ですが、「蒼い…」では見せなかったエリィの弱さが鮮明に書かれていて、二人とも悲しみのどん底なのが切ないです。
思い出したい、けれど思い出した記憶はあまりに悲しくて、自分は身代わりとして必要なだけ…、だけど会いたくて、でも身代わりにされていた事なんて忘れたくて。
ルースの想いはループして終わりがありません。
それを断ち切けるのはエリィしかいないのですが、彼は彼で心の傷が深すぎてルースを大事な人と認識するまで時間が掛かってしまいます。
同人誌で発表されたものに大量の書下ろしが加わり、大ボリュームな1冊でした。
たくさんのエピソードが加わり、ドラマチックな展開と切なさもやるせなさも倍増しました。
六青さんの作品に共通する「痛いほど切ない」がたくさん盛り込まれた1冊です。
続編、そしてほぼおきまりの事ですが、なぜか続編が来ると本編よりも脇カプがさらにいいお話に。
エリィは前回敵役、そんでもって悪役(笑)
でもおそらく彼も可哀想な人……という終わり方でしたので今回はその彼の寂しさ満載のお話に。
ショアにしたことは許せませんが、ある意味ショアよりも可哀想な人です。
ショアはある時期まで自分がいいように利用されていることに気づかなかったし、気づくまではそれなりに自分で幸せを感じることもあった。
エリィはショアを利用したけれど、その酷い扱いの一方でショアを保護しそれなりに育ててきたのだから。
エリィの不幸は自分が不幸だとも気づいてなかったこと。
その育ちのせいで自分がどんなに淋しい人間か、優しさも愛情も知らない不幸な人間だったって事がわかっていなかった。
それがわかったのはショアをなくしたからで、知った途端に絶望のどん底。
今回ルースと知り合った経緯とか、自分の気持ちを埋めるために利用したこととかは、卑怯ではあるけれど、人間ならこういう事もあるかも知れない。
今度のエリィが偉かったのは、きちんとショアとの過去の間違いをひとつずつ正して、今度はルースの信頼を得ようとしたところ。
人間、やれば出来る。変わろうと思えば変われるの見本ですね。エリィ偉い!(笑)
ルースは本当にいい子です。
ショアもいい子だったけれど、ルースはそれ以上。
ルース側から見ればこれはシンデレラ物語。
今後大変なのはやはりルースよりもエリィでしょう。
でもエリィ自身も幸せになりたい!て思う限り、この二人は大丈夫でしょう。
六青さんお得意の切ない話ですが、今回は受けが必要以上に不幸に追い込まれることもなく(ショアの身代わりに苦悩するのはこの話の鍵なので仕方ありません)、別の男達に輪姦されることもなく、普通にハッピーエンドを迎えます。
いつもの六青さんが苦手な人も安心して読めると思いますよ。
幸せになったショア付き@エリィと和解して彼を気遣う大人のショア付きです♪
とてもお勧めv
満足度 : ★★★★★
六青さんのお話は、受けちゃんがえらく酷い目に遭うというのはデフォルトですが、今回はそんなに酷い目には遭わないんですが、設定がねぇ。
2年前に事故に遭い、父を亡くしただけではなく、頭部に大きなケガを負い、記憶障害を負ってしまい、1時間ほどしか記憶を保てなくなってしまったルース。
父の親友・ゴドウに助けられながら、清掃員として働き、今ではなんとか一人暮らしが出来るほどになりました。
記憶が保てないルースは、当然ながら毎回毎回「初めまして」ってエリィに挨拶をするんです。
ですが立場上、エリィはルースと過ごした時間や内容を覚えていて欲しくないから、ルースの一番大事なメモ帳を預かり、覚えさせようとはしなかったんです。
でも、エリィと会うたびに感じる不思議な感情に気が付き、ルースはエリィのことを覚えようとし始めます。
ルースに自分のことをメモしてもいいと言い、写真も渡し、ルースはもらった写真を部屋に貼り「おれの好きな人」って書くんですよ。もちろんメモにも。
でも、ルースはちゃんとわかってるんです。自分が『ショア』の身代わりで、エリィは『ショア』のことが好きなんだと。身代わりだとわかっていても、エリィのそばにいたい、一緒にいたいと願うルース。
二人のすれ違いや、元所長によるエリィの誘拐で、ケガをしてしまうんですね、エリィは、ルースの目の前で。
そしてエリィが入院中、やっと自分の想いを伝えるんです。
「君が何度忘れても、私が教えてあげよう。だから安心していい」
このエリィのセリフにしてやられました。
いやぁ~、こんな大きな愛情を持っていたのに、なんでショアにはその愛情をしめしてあげられなかったんだろう。まぁ、出来なかったから、いまルースに愛情を注げるわけですが。
ショアには愛の言葉を囁けなかったけれど、記憶障害を持つルースになら、何度でも言えるんですよね、記憶障害という大義名分があるから。
あとがきでも書いてらっしゃったけど、それくらいでちょうどいいと思います、私も、エリィには。毎日毎日、ルースに「好きだ、愛してる」って言ってあげて欲しい。そしたらルースは、その愛情以上にエリィに愛情を返してくれるはず。返してもらった愛情を、エリィもまたルースに返してね。
そしたら、いつまででも二人は愛し合っていられるはずです。