イラストあり
作家買いです。
凪良作品の『ショートケーキの苺にはさわらないで』のスピンオフ。『ショートケーキ~』の南里の良きドールオタク仲間だった阿部ちんが主人公のお話。『ショートケーキ~』は未読でも理解はできると思いますが、こちらの作品でも『ショートケーキ~』の話が絡んできているので、できれば読んでいた方がより良いかなと思います。
ネタバレ含んでいます。ご注意を。
主人公はレストランの二代目シェフの阿部くん。彼視点でストーリーは展開していきます。
『ショートケーキ~』で南里とともにシンを助けるために奔走したのは彼が大学生の時のお話。それから時は過ぎ、現在阿部ちんは38歳のおっさんになっています。
そもそも阿部ちんがドールオタクになったのは彼が子どもの時に見かけたドールの「美優」に出会ったことがきっかけ。美優ちゃんの美しさとやさしさに触れた彼は、いつか自分だけの美優ちゃんを手に入れることだけを求めて生きてきましたが、時代の流れで精巧に人間を模したドールがつくられることは禁止されその夢は潰えることに。
美優ちゃんのオーナーになれない以上、ほかに愛する人をつくることはできない、という事で38歳になった今も妻はおろか恋人もおらずDTという状態。
そんな阿部ちんですが、ある日レストランの常連さんから一人の裏ドール・高嶺を預かってほしいと頼まれ…
というお話。
『ショートケーキ~』ではむっちりな男子だった阿部ちんですが、健康上の理由から痩せてスマートに。けれど中身は大学生だった頃から全く変わっておらず、まっすぐに「ドール」を愛し、そして誠実で優しい男性のままでした。
一方の高嶺。
性的な奉仕を目的としてつくられている裏ドールという設定を裏切ることのない、過酷で残酷な過去持ちさん。今までのオーナーに大切にされたことがなく今では笑う事すら忘れてしまったという薄幸受け。
そんな高嶺ですが、阿部ちんの優しさとドールへの愛情を一心に受け、徐々に心を開いていく。
阿部ちんは、初めから高嶺に恋愛感情を持っていたわけではない。
単純に、ドールを愛するオタクとして、可哀想な立場にいる高嶺を救ってあげたかっただけ。
それが、高嶺のことを知るにつれて徐々に恋心が育っていく。阿部ちんは美優ちゃんに一生を捧げるくらいの気持ちでいたので、彼自身の中での美優ちゃんに対する裏切りという思いと、高嶺に対する感情の葛藤があるのも良かった。
美優ちゃんも出てきます。
顔はつぶされ、ただの「ロボット」としてだけれど。
その美優ちゃんも、これがまた健気で泣ける。
美優ちゃん然り、高嶺然り、ドールは人間を傷つけることができないようにプログラムされている。
そんなドールたちに対する人間の非道な仕打ちが、そんな仕打ちをされてもそれでもなお人間のために尽くそうとするドールの想いが、とにかく切なかった。
「ドールは機械だから感情を持たない」と高嶺も美優ちゃんも言うけれど、でも、自分を助けてくれた阿部ちんの助けになりたいと美優ちゃんは行動を起こし、高嶺も美優ちゃんと阿部ちんの仲を勘ぐって嫉妬する。
「ドール」ではあっても、感情を持つ「人」と同じ、と接する阿部ちんの優しさが胸に迫る。
『ショートケーキ~』での話がこちらでもきちんと生かされていて、話に重みがあるのはさすが凪良さんといったところか。
戦争の悲惨さ、南里の事故死の話、そして日本では生きづらいドールがアメリカで暮らすという選択をすること。そういったところもきちんと盛り込まれていて、ストーリーとしても面白かった。『ショートケーキ~』で南里とシンの手助けをしたオタク仲間たちですが、今作でもいい味出してます。いい仲間です。
高嶺の過酷な過去が初っ端から描かれていたり、途中で南里とシンお話が出てきたり、高嶺と美優ちゃんを守るために阿部ちんが奮闘したり。
とにかくしょっぱなから泣ける。
でも、最後のシーンが、とどめでした。
タイトルの『2119 9 29』の意味。
阿部ちんと高嶺の間にあった愛情と信頼。
最後の高嶺の決断。
もう号泣。ほんと号泣。
けれど、阿部ちんと高嶺が、最後の最後まで幸せだったのだと。
それが何より温かかった。
正直『ショートケーキ~』がツボ過ぎてこちらの作品に入り込めるか不安だったのですが、全然そんなことなかった。
草間さんの描かれる影があって綺麗な高嶺も、やさしそうな阿部ちんも。
イメージにぴったりで萌え度が確実に上がりました。
文句なく、神評価です。
「ショートケーキの苺にはさわらないで」のスピンオフ作品。
先に前作を読んでからの方が感動が増しますのでおススメ。
今回のドールである高嶺は、前作のシンちゃんと対照的なツンデレさんで、なぜ反抗的な性格になってしまったのかという背景を知るとせつなく、物語の最高のスパイスとなっています。
そんな斜に構えているドールちゃんが、優しい阿部ちんと出会って少しずつ心を開いていく過程が丁寧に描かれています。
心理描写が自然で、読者にスムーズに共感させるあたり、さすが凪良先生です。
高嶺が阿部ちんに出会うまでの人生は、シンちゃんのときと同様、辛いものでしたが、阿部ちんの童貞特有の「デュフデュフw」みたいな気持ち悪いやりとりがあったりして笑える場面がいくつもあり、物語に抑揚がついていて本当に飽きずに読めちゃいました。
そして、前作の南里とシンちゃんのエンドもわたし的には最高に良かったですが、こちらの阿部ちんと高嶺のエンドも圧巻でした。
タイトルの意味を知ったとき、涙が止まりませんでした。
読み終わってしばらく、本を閉じて、泣きました。
間違いなく神作品です。
前作も今作も、私の人生にとって大切な本になりました。
作品を書いてくださった凪良先生に心から感謝しています。
ステキな物語を世に出してくださったことに、ひたすら感謝です。
その想いしかありません。
あとこれは、読んだ方にぜひ聞いてみたいのですが、世界中のドール達が自由になれる日という【2119 9 29】に、高嶺はあの世に旅立ちましたが、その少し前から日本中のドールが誤作動を起こしていましたよね。
私は、2119 9 29の日に、高嶺だけじゃなく世界中のドールが一斉に停止したのではないかな?と解釈しました。
人間の支配から解放され、自由になれた日なのではと。
真意は分かりませんが、そうであったら素敵だなと思いました。
そうなると南里とシンも停止してしまうことになりますが、永遠の命は幸せとは限らないので。
多分泣くだろうなあ と思ってましたが 案の定、泣きました。
ショートケーキはぐるぐるしつつ 神。
こっちは、ぐるぐる少し少な目。多分 永遠の神作品。
神10があるなら神10にしたい。
凪良先生、草間先生、出版社の皆様、この本を届けてくださって、有難うございました。
シリアスが大丈夫な方は、ぜひ「ショートケーキ」をお読みになってから
この本を読んでいただきたいです。
読んで何が得られるのかは、わかりません。
でも何かが心に降りてくるんではないかと思います。
大切に思えるような何かが、読んだ人の中に降りてくるといいなあと
個人的な感想ではありますが、そう思います。
阿部ちんは本当にスゴイ男でした。
高嶺は本当に幸せでした。
美優ちゃんも最後は幸せでした。
ナンリもシンちゃんも幸せそうです。
自分もできる範囲で頑張って生きていきたいと思います。
最後に2つだけ、先生にお願いです。
1.美優ちゃんラフ 見たいです(切望)
2.リョウさんと芝さんに 会いたいです。
先生、ゆっくりでいいので、いつかまた 皆に会わせてください。
よろしくお願いいたします。
「ショートケーキの苺にはさわらないで」でいい味出してた(みんな大好き)阿部ちんが主役のスピンオフ。
本編で決して美形ではなくオタクでデブのコメディリリーフ的な役回りだった脇役氏がギャグではない本の主役になる……なんて今までのBL界を振り返ってもお初なんじゃないでしょうか?(調べてないですけど…)
これはキュンと来て、じわっとするやつであろうことは読む前から予想はついていたのですが、なんというか予想以上…。
「ショートケーキ〜」で永遠に生きるドールと限りある生の人間との愛の顛末として描かれたものもひとつの姿なのですが、そればかりが正しいのではなく、後書きなどで書かれているように賛否両論なのは致し方ないこと。
そしてこの「2119 9 29」ではもう一つの愛の姿が描かれました。
もちろんその2つのルートのみがあるのではなく、人間同士の関係と同じくみんな違ってそれぞれの生き方を模索するのですよね。
「ショートケーキ〜〜」を読んだ方には、こちらももれなく読んでもらいたい。そしてそれぞれの愛の形を心に焼き付けたい。そんな作品でした。オススメです。
余談ですが、凪良さんの非BL近作「神さまのビオトープ」にも少年とアンドロイドのエピソードがあるのですね。あちらの2人のことも読みながら脳内でチラチラ。通じる部分がしっかりありますよ。
大好きな凪良先生の作品の中でも1,2を争うくらい好きな『ショートケーキの苺にはさわらないで』の続編。それも1番読みたかった阿部ちんの話ときたら、早く読みたい反面、もったいなくて読めない…(笑)結局、読み始めたら一気読みして、何度も何度も泣きながら読み返しました。
続編が出ても、あれだけの名作だけに前作を越えることはないだろうなぁ~と思っていたし、阿部ちんが主役ならコメディタッチなんだろうなぁ~と考えていたのですが、そんな安易なこと思ってすみませんっ、すごい良かった〰‼見た目は痩せただけで阿部ちんながらも、むちゃくちゃかっこよくて、発する言葉もやることもドキドキさせられっぱなしでした。
ストーリーも高嶺のシステムを考えたために言ってしまった「友達」という言葉で縛られ、なかなか一歩を踏み出せないところがもどかしくもあり、切なくもあり、たまらないところでもあり(笑)それだけに命を張って高嶺を守ろうとしたために大ケガをしたあと、やっと想いが重なって初めて結ばれるシーンでは、確認しあうようにゆっくりとひとつひとつ手探りで進める阿部ちんにドキドキさせられました。阿部ちん、好き…。メチャメチャ好き…‼
前作の南里とシンとは違う選択をしたことで、全く違う終焉を迎えながらも、それはそれで二人にとってはこれ以上ないくらいとても幸せな一生だったと思うし、胸一杯で涙ながらに読みました。やっぱり阿部ちん、好きだ〰‼大好き〰‼
そしてもう一組、リョウくんと芝さん、すごい気になる…。あの南里とシンをリスペクトしまくりのリョウくんがどうして芝さんに落ちちゃったのか、落とされちゃったのか(笑)読みたい〰。そして大好きな草間先生に出会ったばかりのぎこちない二人から幸せいっぱいの二人まで描いて欲しい…。
うぅぅ…やっぱりドールっていいなぁ~欲しいなぁ…。