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目覚めるのも眠りにつくのも、君のそばで。
視点は攻めと受けの両視点です。
内容はかなりディープで、好き嫌いが分かれてしまいそうですが、わたしは良い作品だったなあと思いました。
受けの馨は、性別もあいまいに見える魔性系容姿の高校生。
感情の揺れはばが小さく落ち着いた性格ではあるが、顔立ちに反して毒舌。
攻めの崇は馨と同じマンションに暮らす、クラスメイト。
チャラチャラして見える外見同様に女関係にもルーズだが、つねに馨の側にいる男。
三年ほどのつきあいになるふたり。
普通ならば顔は知っていても知らん顔で通り過ぎていたであろう、タイプの違うふたりが一緒にいるようになったのは、馨の睡眠障害ナルコプレシーと中学の頃の出来事がきっかけ。
ナルコプレシーは、いつでもどこでも突然抗えない眠りに落ちる病気で、馨の場合は眠気だけでなく、感情の起伏で引き起こされる脱力発作のために、つねに笑うということや感情をかきみだすことにブレーキをかけています。
こんなふうに書くとまるで悲劇のヒロインのようですが、なんといっても馨、まったく負けていません口が(笑
まあ、悪くて悪くて笑っちゃいます。
反対に崇は不眠症。
子供の頃襲った事件で、眠れなくなってしまっています。
それでも自分のことより、『退屈だからかまってる』というスタンスを隠れ蓑にし、馨に重荷にならないよう側にいようとする崇は誠実な男なのだろうと思います。
馨の病の原因になったであろう過去のトラウマは、BL作品ではよく見かけるものではありますが、ヘビーですし、同様に崇の不眠症の原因もかなりのものです。
でも、この作品がドロドロの暗っっいものになっていないのは、やはり馨と崇の、強がりであっても病に屈服されていない様子や日常のやりとりの描かれ方かと思います。
わたしはふだん砂原作品は明るめの物しかほぼ読んでいないのですが、こういうシリアス系もひじょうに面白い作家さんなんだなあと再認識しました。
仰々しい病がわざとらしくとってつけたようでない、自然にキャラクターに存在したもののように感じられて、とても良かったです。
シリアスサイドの砂原作品。
テーマが重いので、萌えやBLらしい話が読みたい時にはオススメしません;
へらへらと軽くて腹が読めない攻、上木原。不眠症。
表情も言葉も少なく感情が読めない受、倉知。ナルコレプシー。
ちょっとサスペンス的な要素をベースに置きつつ話が展開していきますが、
たぶんメインテーマは二人が自分自身の気持ちにじりじりと向き合っていくところ。
真逆のようで似ている二人。
相手の気持ちが読めない。それ以上に、自分の気持ちが多分一番わからない。
重いテーマも悲壮感溢れる書き方ではなく、
辛いことも、恋心も、日常も、同等に、淡々と描いている印象でした。
淡々とした雰囲気ではあっても、謎の多い展開なので飽きずに読みやすいのでは。
個人的には、サスペンス要素についてはおおよそ読めていたものの、
メイン二人の関係は全く先が見えなかったので、萎えることなく集中して読めました。
読後感も良いです。
また、シリアスでも濡れ場はちゃんと砂原さんクオリティでした。愛があって、たっぷりと可愛い。
陽の感情で発作が起きやすいと言うカタプレキシーを患ってて、
果たしてセックスは可能なのか…?という疑問は感じたものの、
この病気は人によって症状・度合いが千差万別、
作中では精神的なものも絡んでいるという設定なので…
そこはある程度、本の中のお話と割り切って読みました。
ところで高井戸あけみさんが挿絵って珍しい気がするのですが、読んで納得。
キャラや作品の雰囲気が、高井戸さんのマンガの雰囲気とすごく通じるものがある。
ブレックファースト・クラブシリーズなんかを思い出しました。
高井戸作品が好きな人はこのお話、好きなんじゃないかな。
おとぎ話ではありません(^^)
おとぎ話風にレビューしてみました。
幼い頃に心に傷を負って不眠症になった王子様は、同じく幼い頃に心に傷を負い睡眠障害(ナルコレプシー)のお姫様に出会います
王子様は、お姫様に惹かれますが、自分の心を隠してお姫様に尽くします。
しかし、あるときお姫様がつらい事件に巻き込まれ…
そして、自分の気持ちをお姫様に気づかれた王子様は…
お姫様に押し倒されるのです。めでたしめでたし…
本篇は、おとぎ話ではなく現代の話です。
ナルコレプシーの倉知(受)と不眠症の上木原(攻)は共に高校生です。
お互いに幼い頃に心に傷を負ったけれど、眠くなる倉知と眠れない上木原の病は正反対の睡眠障害です。
子供の頃に受けた傷は本当につらいものですね
でも、2人はそれを受け止めながら前に進もうとしています。
そして話を読んでいると、前に進むためには2人でいることが必要な気がしてきます。
上木原が倉知に幼い頃の辛い出来事を打ち明けた時に、倉知が、
「喬、辛かったな」と言います。
私には、上木原がその言葉で少し救われた気がしました
上木原は、倉知を地の果てまで追いかけるそうです(^^)。
倉知も受け入れたし、辛い目にあった分以上に幸せになって欲しいと心から思います。
イラストは高井戸あけみ先生です。
この話には、ぴったりのイラストです。
小説に惹かれ、イラストに惹かれ、萌えが2になりました。
ナルコレプシーの倉知馨と、不眠症の上木原喬。
高校生なのに、悲惨な過去のトラウマのせいで淡々と生きている二人はあまりに大人びすぎて、結末はうまくいくのだとわかっていても、目が離せずに一気読みですっ!
倉知の母は”一生少女”のハーフの女性で、その魔性ぶりに一緒に暮らせないと、幼少のころから父の兄弟の伯父の元で生活しています。
しかし、その伯父も12歳の頃死んで、その息子(従兄・優一)と一緒に暮らしています。
同じマンションの最上階に住む上木原は、やはり小さい頃両親を亡くし、一人暮らし。
倉知は、その伯父との過去。
上木原は、その両親の死。
それがそれぞれの病気の原因になっているのですが、誰にも話さないのでお互い知らないのです。
倉知が中学の頃、その外見もあり同級生に暴行されたところを上木原に見られて、彼はそれが倉知の原因だと思っているのです。
それ以来上木原は倉知の側を離れず、高校も登下校も一緒。
女遊びも激しくて、チャランポランにしているのに、かいがいしくずっと側にいる。
いつでもどこでも寝てしまう倉知を負ぶって歩くところなんか愛ですよ。
彼が軽いノリの態度を示す度、読み手はわかっているので、憤慨するどころか上木原が哀れになってきてしまうのです。
「今週のビックリドッキリメカ~」なんてよく言うのが悲しすぎます。
倉知の病気が気に入らなくてイチャモンをつけたがる同級生の宮木。
上木原と倉知を暖かく助ける、一番高校生らしい住田。
倉知達の前にたびたび姿を現す謎のストーカー
(これにはオチがあって笑っちゃうのですが!)
そして何より「怖いですね、怖いですね、怖いですね」と三回くらい言っちゃう従兄の優一の存在。
物語の中盤からそれらがうまくかみあってきて面白くなるのです。
どうして二人がくっついちゃうか、その気持ちは多分上木原のほうが強いんですね。
何せ不能になっちゃうくらいですから・・
決して女の代わりというんじゃなくて、同情でもなくて。
きっと倉知はほだされた形なのかな?とも思いますが自然です。
二人とも、これからも一緒の未来を送るのだろうなと思わせる結末。
本当に必要なものを手に入れて、初めて病気を克服していくのでしょうね。
それぞれが逃れられない過去に囚われ、睡眠障害を背負いながら生きている倉知と上木原。
カウンセラーにすら言えない過去の傷。
お互いのことを大切に思いながらも、単純に心を開けない理由。
誰も彼もが頑なで、もう少し楽な生き方ができるんじゃないかと言いたくなるような展開の中、ナルコレプシーの発作の最中に倉知が強姦?された事件から絡んだ糸が解け始めます。
どこで睡眠に陥ってしまうかわからないナルコレプシーと、笑うという情動だけでもカタプレキシーの(全身が脱力してしまう)発作を起こす倉知は、自分の欲求も感情も抑えながら生きています。
なのに、魔性とも言われるほどの美貌の持ち主のため、周囲は放っておいてはくれません。
反対に、夜は目が冴えてしまって時間を持て余し、昼は眠れない眠気に身を持て余す上木原は、奔放な性生活の日々のようでいて実は・・・
これが現実のお話ならば、こんな子供たちを子供たちだけで何とかさせるなんて絶対に間違っていると思います。
しかし、やはり現実問題として、正直な話自分で何とかしていかなくてはいけない部分があるのも事実かなぁと思います。
私自身、一人でも生きていけるもんって思いがちですが、何かがあったとき本音が話せる存在がいるのといないのとでは、心に残る傷の大きさは違うだろうなと考えさせられました。
どっちが割れ鍋でも綴じ蓋でもかまわないから、自分にピッタリあった相棒って大事な気がします。
それから、ナルコレプシーといえば、「マイプライベートアイダホ」。
リバー・フェニックスとキアヌ・リーブスですよ。ビデオ漁って見直してみようと思います。