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表題作上海

レイモンド・C・レノックス,上海で貿易業を営む英国貴族の子息
エドワード,伯爵家に拾われ使用人として育てられた中国人孤児

その他の収録作品

  • 歌姫
  • China Rose(書き下ろし)
  • あとがき

あらすじ

幼い頃、天涯孤独の身を拾われたエドワードは、英国貴族の子息・レイモンドへの秘めた想いを胸に、主人に忠実な執事、そして兄弟のような幼なじみとして彼に仕えていた。
しかし、歴史の歯車が二人を激動の渦に否応なく巻き込んでゆく―。
東洋の魔都と呼ばれた大戦前夜の上海を舞台に描かれる珠玉の恋、書き下ろし短編を加えて待望の文庫化。

作品情報

作品名
上海
著者
かわい有美子 
イラスト
竹美家らら 
媒体
小説
出版社
幻冬舎コミックス
レーベル
幻冬舎ルチル文庫
発売日
ISBN
9784344818446
4.2

(80)

(47)

萌々

(13)

(16)

中立

(3)

趣味じゃない

(1)

レビュー数
24
得点
338
評価数
80
平均
4.2 / 5
神率
58.8%

レビュー投稿数24

極上のメロドラマ

舞台は阿片戦争後にイギリス領となった上海。
天涯孤独の身の上をイギリス貴族・レノックス家に拾われ、
使用人として働くエドワード(中国人)。
そんな彼が思いを寄せるのは、レノックス家の子息・レイモンド。

幼い頃は兄弟のように育った二人でしたが、
大人になればそれぞれの立場を弁えた付き合いになり。
昔の思い出を懐かしみ、二人の身分差、そして同性である事に胸を痛め、
ひっそりと傷つくエドワードが健気で泣けます。

とにかく完璧なノンケであるレイモンドがエドワードを
恋愛対象として全く見ておらず、気の強い美少女とイイ感じの
ラブロマンスまで繰り広げて。
このままエドワードは報われないままで終わるのでは……!?と。
中盤まではハラハラやきもきしながら読みました。

しかし窮地に陥ったレイモンドを真摯な愛情で支えたエドワードに、
レイモンドも彼への愛へ目覚めます。
目覚めたレイモンドはエドワードにラブラブ。
おお!やっと二人が幸せになれるのかと思ったら、
神様はまたもや意地悪な試練を二人に与えます。

上海に日本軍が侵攻。
イギリス人であるレイモンドは強制退去。
レイモンドは何とかしてエドワードと共に英国への帰国を試みますが。
それは果たせず……。
迫りくる戦火の中、上海の埠頭で、離れ離れになることに。

この埠頭での別れがドラマチックで、泣けて、泣けて。
戦争が始まります。
ここで別れたら、もう二度と会えないだろうと、
お互いがそう思っています。
それでも諦めきれない、もう一度会いたいと切望する二人。

レイモンドがありったけのお金をエドワードに渡すところでウルっとなり、
レノックス家の大事な指輪を託すところで涙がボロボロ。
しかし愛し合う二人を、船の汽笛が無情に切り裂くのです!

埠頭での別れがあまりにも悲しく、そして素晴らしかったので。
ラストの奇跡の再会は、ぶっちゃけ微妙でした。
エドワードの生死が分からないままで終わった方が、
余韻があって良かったのにと、思ったのですが。

エドワードが英国へ渡るまでを描いた収録作品「歌姫」を読んで、
先の考えがまるっと変わりました。
ハッピーエンド万歳!二人が再会できてよかった!

上質のメロドラマで、古いハリウッド映画の名作を見ているような
素敵な作品でした。

10

藤棚

>ハイ爺さん

わ~!ハイ爺さんだ!こんにちは~
本編だけでは安易なハッピーエンドだなと思ったのですが(汗)
『歌姫』がいいんですよね!!
これがあるからこそ、あの奇跡の再会に納得できて。
同意して頂いて嬉しいです♪

何もかも、たまらんです

三回泣きました。
最初の別れ。
二度目の別れ。
そして、巡り会えたとき。

かわい有美子さんの歴史に対するアプローチの仕方、かなり好きです。
ここまで丹念に調べ、それを極めてナチュラルな視線でもって背景を描くことができる作家さんなんて、めったにお目にかかれない。
読みながら、唸らされるような描写がいっぱいでした。
魔都上海。今はなき魅惑的な街です。
その街を舞台に、イギリス人の主人と中国人執事の切ないラブストーリーが繰り広げられます。
主従ものではあるけど、執事萌えを狙った作品じゃないのもいい。
ひたすら主人だけを想いつづけるう執事は、健気受けの鏡だと思いました。
はやく気づいてあげてって、心の底から祈りました。
涙がいっぱいこぼれたけど、お涙頂戴なコテコテ感はまったくないのも良かった。
別れの場面も描写そのものはあっさりしてます。
そのあっさりさに余計に泣かされる感じ。

ラストは悲劇オチでも良かったかも。
なんらかの形で指輪だけ届く、みたいな。
こんなこと考える私はとことん鬼畜なのかもw
や、もちろん二人が幸せであるこのハッピーエンドに、何の不満もないんですけど!

間違いなく名作です。

9

健気受け作品の個人的ナンバーワン

エドワードが本当に健気でした。健気受け作品で時たま見かける女性的なうじうじした感じではなくて、攻めの結婚が決まりそうなときでさえ、自分のやるべきことを見失わずにひたむきに攻めに尽くしていたり、戦渦を一人で生き延び、待つのではなく自分で海を渡って攻めに会いにいくのもとてもよかったです。こういう強さというのは男性らしく、blだからこそのお話でした。

戦時中という特殊な時代背景、身分や人種の違いなど、二人を阻むものが強大だったからこそ、胸をぎゅっと掴まれるような切ないメロドラマになっていて、映画を観た後のような満足感がありました。

そして、ストーリーもさることながら、かわい先生の文章の書き方や表現に非常に引き込まれました。ライトノベルでありながら、まるで純文学のような確かで秀逸な言葉撰びと瑞々しい透明感としなやかさのある表現で、今まで読んだbl小説とは個人的にそこが特に大きな違いだなと感じました。

戦争の影が近づいてその雰囲気が変わっていく度に作中で何回か出てくる、かわい先生による当時の上海という街についての描写がとても素敵で、西洋と東洋の文化が入り交じったそのどこか妖艶な当時の上海を訪れてみたくなりました。

かわい先生の文章で書かれたblがもっと読みたいと思ったので、レビューを参考にしながら自分の好みに合いそうな作品を片っ端から買いあさりました。届くのが楽しみです。

5

上海だけどノーブル

いくつかかわいさんの作品は読ませていただいてますが、その中でも一番好きかもしれない。
かわいさんの文は、状況自体は激しいものでも一冊通して読むと、時が穏やかに流れていくような情緒があるのが素敵です。



レイモンドもエドワードも想い人に対して、とても一途に大切にしているなというのが、ひしひし伝わってきてます。
初めから2人の線が繋がるわけではないけれど、状況が変わるうちに2人の関係も無理なく変わっていくのが上手いなぁ。

一貫して一途な2人と、主従関係のあり方がリアルに書かれている。
ノーブル・オブリゲーション/高貴なる義務
なるほどなぁ、という感じが致します。
主を助けるための従であるのはもちろんのこと、従を守るための主のあり方。
そのことがよく伝わってきます。


それにしても埠頭シーン。
ぼろ泣きでした。
一緒にいてよー!と叫びたくなりましたが、それをしてたら萌以下の評価となるはずです。笑
それ以降の展開で、みなさんが仰るとおり、ん?と思う処もありましたが、
書き下ろしによって、結果オーライ。
これでいいんです。満足満足。


単館映画にありそうな情緒溢れる雰囲気でした。
ららさんの絵が余計それを増していて、いいなー。

3

美しくて、純愛で、切なくて温かい気持ちになります。

執事、使用人の階級についても結構細かく書かれてます。
いわずもがなかわいさんは本当に文章が綺麗なので、この作品もはやBL小説というより、メロドラマ。
人間模様中心で、しかも恋愛という言葉では言い表せない、まさに「人生」そのもの。二人の間には大きな壁があり、それは性別しかり、身分だったり、戦争であったり・・・
スケールが大きい上に時間の流れも人一人の半生程の長さ。
1冊でよくおさめたよなぁ・・・という印象。かわいさんなら前編後編で2冊くらいに分けて書いてくれてもよかったんじゃないかとも思いますが、でも逆にスケール大きいし小難しい情勢を入れながらもテンポ良く読めたのでこれはこれで、すごいこと。実はあえてのなんだろうかとも思ったり。
初版にはなかった、「歌姫」という章は二人が再会するまでの数年間のエドワードの体験を書いたもので、ご本人も独特な雰囲気が気に入ってるとおっしゃっているだけあって、舞台は香港登場人物も中国人のみ、たしかに今までのブリティッシュさは皆無で、作品の中で良いアクセントになっているのでは。
その次の二人の再会後の。「China Rose」はこれまたとてもお洒落な印象。
キャラ萌えは特になく、生々しいエロや美味しいシーンも特にあるわけでもない。
テーマや舞台が大きいのに、それを自分の作品のなかでうまく盛り込んでて、重みもある。
終わり方もすごく綺麗で珍しく番外編がなくても消化できた作品でした。

3

この作品が収納されている本棚

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