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二つのお話が収録されています。
一作目は年下ワンコ攻め×臆病受け、二作目は同級生の再会ものというどちらも馴染み深い設定だけど、気の利いたアイテムやエピソードを絡めることによって、ただのワンコ物語や再会ものではなく個性が感じられるところが好きです。
【さよならチキン】
年下ワンコ(生徒)×恋に臆病な先生。
受けが現国教師なので文章で気持ちを伝えるところが、らしくていい。
押しまくるワンコに対して、気持ちには応えられないと諭しているつもりで手紙をしたためたはずなのに、気持ちが自然と漏れて結果的にラブレターみたいになっちゃってるところが好き。
【イヌとチキンと】
表題作の続き。ワンコとチキンの物語です。
お付き合い開始したはずなのにちっとも距離が縮まらないことに不安を感じる攻めが、小テストの解答欄に問い11「付き合ってるってことでいいんですか?」と書き込んでくるのですが、それに対する先生の答えと、攻めが書き込んだ花丸がかわいくてほのぼのします。
【夏ノ小路坂上ガル十年目】
「俺は叫びたくなるような恋をしていた。」「十年経った今も思い出さない日はないくらいに。」
という冒頭のフレーズがなんとも心に切なく響く、かつての恋人同士の再会ストーリー。
お互い熱い恋をしていたのに、大学進学による距離への不安から卒業と同時に消えてしまったかつての恋。
10年経って再会するのですが、何気無い顔をしつつ次々と思い返されるかつての思い出との狭間で苦しむ様子が切なくて、貰い泣きしそうになります。
左右どちらから登っても同じ高台に辿り着くという二股に分かれた坂のたもとで、左右別々に登って同時に高台にゴールできた二人は何があっても一緒にいられるという迷信をかつて二人は試したことがあって、その時は、卒業後の二人の行く末などが見えず重い足取りのまま登ったせいで、同時にゴールができず失敗に終わったという苦い記憶が残っています。
10年過ぎても、相手もまだ自分を思ってくれている事がわかってもなお一歩踏み込めずにぐるぐるしちゃう主人公なのですが、かつての坂のたもとで例の迷信をもう一度試してみようと誘います。
以前は、あれこれ考え過ぎて登った結果、失敗した。
だから、今度は何も考えずに全力疾走で登ろう、
失敗したって、もう一度やればいいんだ!と言われて、無我夢中で坂を目指して登る二人。
ここがいいなぁって思います。
あの頃も、そして別れてからの10年間も考えるだけ考えたけど、何も進まなかった。
それならもう何も考えずに全力で突き進め!というメッセージが伝わってきます。
食べ物BLを探し求めていたときに「ショクドー・ディナーショー」を購入して好きになった梅松町江さん。
書棚整理ついでに、読み直しレビューを残しておこうと思います。
こちらの作品もタイトルから「鶏肉の話!!」と勘違いして興奮していました。
たしかに出てきます、購買のチキンカツサンド。
でもそっちのチキンじゃなくて、臆病者の方のチキンでした。
【イヌとチキン/さよならチキン/番外編2つ】
大きなわんこ風高校生・斉藤と現国教師・青木の話です。
男とホテルから出てきてキスをしているところを生徒に見られてしまうという始まりです。
過去に付き合った男によるトラウマのせいで人と深く関わらなくなっていた青木に、斉藤は遠慮なくぐいぐい距離を詰めてきます。その姿が実家で飼っていたわんこに重なって、青木も無碍にできないくて…という感じなのですが、何はさておきしょんぼりしたペス(犬)がかわいすぎます。
自分の言葉で気持ちを自覚したり、深夜に書いたせいでオートでラブレターになってしまったお断りの手紙の辺りはきゅんきゅんして、付き合った後の斉藤の表情で切なさを味わえますが、「すごくおすすめ!」というポイントは…どこだろう。やっぱりペスでしょうか。
【夏ノ小路坂上ガル十年目/夏ノ小路春待ツ十一年目】
10年前、大学進学を機に別れた恋人との再会。
この作品は読んでほしい。これぞ梅松さん!という感じの心理描写と叙情的な雰囲気がたまりません。
遠距離に耐えきれず、運命にも見放された気持ちで離れた恋人同士が再会して、別々に過ごした時間にも2人ともがずっと心の中にお互いを抱き続けていたという切なさと希望が感じられる作品です。
表題作のさよならチキン他、夏ノ小路坂上ガル十年目が描かれてある。
さよならチキンでは先生と生徒の恋愛模様。
先生・青木は男とホテルから出てきたところを生徒・斉藤に目撃されるところから物語がはじまる。
この作品は、青木の過去のトラウマで付き合うことになってもすれ違いばかりでもどかしさを感じました。
でも、最終的には気持ちが通じ合うことが出来たのでよかったと思います。
夏ノ小路坂上ガル十年目
この作品もすれ違いが多い作品だったと思います。
高校のとき付き合っていた滝川と中村。
滝川が東京の大学を受けるという言葉から少しずつ歯車がくるっていった。
そのキッカケとなったのが2つにわかれる坂だった。
すれ違いばかりの話で途中読むのをやめようかと思ったが、読み続けてみると最後の最後で今までの気持ちを伝えHappyEndって感じでした。
どの作品もほどよくエロがあり、ストーリー的にはきちんと読める本だと思います。
表題作は、年上受好きで生徒×先生好きには王道でよかったかと。
自分が短歌が趣味なので、先生の俳句趣味が気になったのですが、あまり関係なかったですね。
脇役のオネエさんがいい味出してました。
二つ目の「夏ノ小路上ガル十年目」
タイトルセンスと青い感じがたまらなかったです。
こちらの方が好み。
十年前に失ったと思っていた関係が十年後に成就するのですが、それまでの両片思いが切なくてたまらないです。
どちらも程よくエロもあって、読みやすいコミックスでした。
表紙の雰囲気からシリアスで重く暗そうなお話かなと思っていたもので、良い意味で拍子抜けです。
だって帯の文が…
「信じて」って君は言ってくれたけど、多分、僕はその言葉のすべてを真に受けることができない――。」
ってさあ…暗そう。まあたしかに、明るくはないんですが、モノローグでぶふっと吹くシーンも多く、話の進め方のテンポが良くてセリフも自然で、先生のぐるぐるした思いも共感でき、なにより全体を通して気負ってないというか、カッコつけてない感じがとても好きです!
高校の現国の教師である青木は、自分が高校生の頃、恋愛で悲しい想いをし、それからは誰とも真剣に付き合うことができずにいたが、あることをきっかけに、一回りも年下の教え子である斉藤君に告白される。
この斉藤君、なに考えてんだかよくわかんないというか、何も考えてないのでは?と思ってしまうようなワンコ君ですが、ちゃんと色々彼なりに悩んだり深いとこまで考えてたり、先生から見ると当然子供なわけですが、同年代からすれば実はけっこう大人っぽいコなのかもな~と思いました。
もう1話は、高校時代付き合っていた二人が、11年後再会して…というお話ですが、これまた鼻にツーンとくるお話でね、こういうの大好き!
自然消滅みたいな別れ方をしていた二人が、よりを戻すのって、ある程度どっちかが強引に迫らなければ進まないと思うんですよね。玉砕覚悟で。
それをやれるかやれないか。
過去の失敗を恐れていた二人が、一歩踏み出して大きく前に進む。いいねえ。遅れてきた青春ですよ。
2話ともなんとかなったあとの二人のその後を、描き下ろしで読ませてもらえて幸せな気持ちでございます。