椎崎夕のおくる渾身の1冊、登場!!

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表題作ひとでなし

里見京一
辣腕をふるう製薬研究所所長
長峰克史
IT企業から出向のシステム管理

その他の収録作品

  • 出発前
  • あとがき

あらすじ

三日に一度、鳴り響く携帯電話の呼び出し音は、拷問が始まる合図だ──システムエンジニアの長峰克史は、三年ぶりに本社に戻ったが、ろくな仕事が回ってこず不満の毎日だった。さらに、ある男との出会いが長峰をより過酷で屈辱的な状況へと追いやる。新たな出向先の上司、里見京一郎。長峰は半ば脅されるように里見と関係を持つことになったのだ。恐ろしいほどの執着をみせる里見に、何とか抗おうとする長峰だが、抵抗はすべて退けられる。そのうえ、里見との情交はいつしか悦楽が苦痛を凌駕するように……。そんなはずはない、そんなことは許せない。奈落の底に引きずり込まれていく自分を感じる長峰だが!?
(出版社より)

作品情報

作品名
ひとでなし
著者
椎崎夕 
イラスト
佐々成美 
媒体
小説
出版社
大洋図書
レーベル
SHYノベルス
発売日
ISBN
9784813011965
3.4

(32)

(9)

萌々

(7)

(8)

中立

(5)

趣味じゃない

(3)

レビュー数
10
得点
102
評価数
32
平均
3.4 / 5
神率
28.1%

レビュー投稿数10

異次元の不条理攻め

BL界、これまで数多くの執着攻め、粘着攻め、鬼畜攻め、傲慢攻め、理不尽攻めを読んできました。
しかし!
本作の「里見」。
この人は……正に異次元。

と言っても、描写的には「執着」「傲慢」で括られるとは思うのです。
ただ、「いつ」「どこで」「なぜ」受けを見初めたのかが全く見えてこない。物語の最後までここはぼんやりしたままです。
とにかくいきなり。い・き・な・り!
受けの長峰は仕事もカラダも里見にがんじがらめにされる展開。
そして、里見は全く、1ミリも、長峰の話を聞かない。
そこに加えて、自分を異常に敵視する上司のハラスメントが加速して殺されそうになったり。
里見との関係を知った上で過剰にかまってくる女同僚がいたり。
もう不憫も通り越してダイハードな被害者としか言いようがない。
ただ、それが巻き込まれるだけの弱々受けだったらマジに胸糞だけど、この長峰は徹底的に里見に反抗するのです。
対等に見ずにペット扱いしてくる里見に、カラダはともかく精神は全く靡かない。
これってBLでしょ?と聞きたくなるくらい甘さゼロ!(里見には里見のペット愛があるけどね)
BL界にこんな「攻め」がいたのか!という遅まきながらの発見がある作品でした。

1

ひとでなし…なんかな?

最初に、この話は結構面白かったです。想像の範囲内なので驚きや目新しさは無いんですが、長峰をペットとして飼う里見。
しかし、いわゆるSM的なペットって感じじゃ無いんですよね。どっちかって言いうとうと本当の意味でのペットというか。心配もするし可愛がる?し。

ストーリーの中で中々里見の本心というか気持ちが見えるようで見えない。執着のようでもあるし、独占欲のようでもある。ライバル?の今村とも良い関係といっていいのかは微妙ですが、病的な感じじゃ無いのが良かったです。本当に病的なのは高田の方ですね!

里見はその高田に襲われて怪我をするんですが、その時に長峰とは色々話をします。その中に「ペットは一生面倒を見るものだ」「墓は私と一緒にしてやる」と言われるんですよね。何気なく言ってる風ですが、熱烈プロポーズ!!
気持ちの上で里見に傾いていたけれど、どうせ妻子いるんでしょ、他にも女はいるんだろう、ペット扱いだから飽きたら捨てられる、、、って思っていた長峰。
コレ聞いちゃったらもう、クラッときますよね。
羨ましいな〜(笑)

書き下ろしの「出発前」では、ドッグタグ、ちゃんとお揃いのタグを里見が持ってたりするのがわかったり、愛情注がれてるなーって思いました。長峰、愛されてるぞ!

表題の「ひとでなし」イメージが最後まで一致しなかったので、そこが違和感かもでした。最初から里見は長峰にラブだったじゃんね〜読み手からすると、って思いました。

1

ヒドイのに、読後感は割とあっさり。

登場人物の誰にもほとんど共感なんて出来ないのだけど、読み物としてはなかなか面白かった……そんなちょっと不思議な読後感の一冊でした。

タイトルどおり、「ひとでなし」というかろくでなしというか不誠実な輩がザクザク登場します。やっていることは、ストーカー行為だとか、監禁陵辱とか、脅迫とか、仕事を無断欠勤しての色事とか……そんなろくでもないことばかり。

だから、そういう描写はどうしても受け付けないという方はダメかもしれませんが、文章表現そのものがあっさりとして比較的硬質だからか、印象はさほど粘着質ではありませんでした。

起きている事柄は酷いのに、情念がドロドロして深く堕ちていくような世界観にはなっていないので、割と読みやすい作品になっているように思いました。

2

好き嫌いがハッキリわかれると思います

「ペットの躾は最初が肝心、だそうだ」

大昔の同人誌を全面改稿した作品だそうです。また、椎崎さんがおっしゃるには、「裏バージョン」かつ「ひとでなし」と「ろくでなし」の話だとか。

確かに、里見(攻)は謎に包まれた部分が多くて最後の方まで何を考えているのか分からないし、そんな里見に執着される長峰(受)も方も、野生の動物みたいで一筋縄ではいかないタイプです。主役の2人以外にも、とんでもない上司や曲者の女性などが出てきて読ませてくれるので、単なる恋愛話、というところには収まらない感じになっています。

それから、文章表現的に、いつもの椎崎さんとは少し違っています。なるべく感情の色を抜いたような淡々とした印象を受けました。長峰視点ではありながら第三者的視点から見ているような感じがあり、謎が多い推理小説を読んでいるような気になりました。

私は、この話が気に入っています。一般的にはとんでもないキャラたちかも知れませんが、その言動には架空の話だとは思えない現実感や真実性があるため、好き嫌いや賛否両論がある作品だと思いますが、薄汚れた大人の現実世界を覗いてみるのには適した作品かも知れないと思います。

なお、大洋図書さんの特設ページ『10 TO 11~椎崎 夕先生特別カウントダウン企画』でショートストーリー「バレンタインの置き土産」が読めますので、そちらも是非読んでみて下さい。(2014年12月30日現在)

5

因果は巡る糸車

因果とは、原因があって結果が在ること、だそうで。
過去に、他人に酷い事をした主人公が、訳のわからない事に巻き込まれ、にっちもさっちもいかなくなる、ある意味ホラーに近い話です。

主人公は、名前と設定が異なれど、他社から出ている『コイビト』の悪役様と思われます。

とにかく酷い男で、やり方も存在も「もういい加減にしやがれ!」と、自称温厚な私が怒鳴り付けたくなる人物設定でした。

作者様の御作に、時々見受けられる話の通じないキャラクターで、何とかならないものか、と思っていたら、こんな所で敵を討たれていました。

話の通じない人には、もっと上を行く、偏執的犯罪者を宛がうとは、作者様の度量の深さには脱帽です。

全ては自分が招いたこと。そんな意識で読み進めていくけれど、諸悪の根源が実は元上司である事がわかり、少々主人公が気の毒になりました。

悪い人だって、改心するんだよね。

しかし、ホラーは終わらない。

教訓。類友と因果応報は本当です。
桑原桑原

2

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