憎みたいだけ、憎めばいい――そのほうが面白い

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表題作楽園は何処にもない

大物マフィアの長男 ディオ・カステリーニ
カターニア交通課警察官 支倉航一

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

シチリアマフィアのボス・ディオの愛人として生きることを余儀なくされた航一。両親を殺し、自分を嬲り犯すその男は、まるでそれが快感であるかのように、夜ごと憎しみを煽っていく。望みどおり、彼への復讐を計画する航一だったが……。
(出版社より)

作品情報

作品名
楽園は何処にもない
著者
華藤えれな 
イラスト
実相寺紫子 
媒体
小説
出版社
ムービック
レーベル
LUNA NOVELS
発売日
ISBN
9784896017700
3.8

(20)

(7)

萌々

(7)

(3)

中立

(2)

趣味じゃない

(1)

レビュー数
7
得点
74
評価数
20
平均
3.8 / 5
神率
35%

レビュー投稿数7

破壊的な人格と恋愛

久々に、血沸き肉踊る(?)マフィアものに遭遇!!
容赦ないその姿と、内に抱える暗闇に滅茶ときめいてしまった。
華藤さん、やってくれました、ありがとー!!と叫びたい作品デスvv
尚、昨年出た『この聖なる束縛に』のリンク作品ですが、前作を読んでいなくても全く無問題です。

ナポリでピッツァテリアを営む日本人を両親に持つ支倉航一は、マフィアに虐げられる両親を見て育った為に、何とかしたいと警官をこころざし、現在は地方警察で交通を取り締まる仕事をしている。
そんな彼が偶然出会ったのが、シチリアの巨大マフィアのボスの息子・ディオ。
ディオは航一の小さな幸せを嘲笑い、興味を持つ。
航一が週末自宅に帰ると、両親はヤクの横流しをしたという罪でディオに殺される場面に遭遇。
絶望した航一をディオは、情人にすると彼にディオの所有の証であるピアスを付け、カターニアに連れて行く。

この題名『楽園は何処にもない』まんま、それは最初からディオによって語られます。
彼の生い立ち、環境、宿命、あらがえないものを憎み、排除し、それでも誰かに殺されたいと願っている。
そんな彼の欲望を満たす人物が、全くマフィアと関係なく個人的な恨みしかない航一であったから、殺される為に航一を側に置くのです。
対立する双子の弟・ビセンテにも命を狙われ、失敗するたびに報復を与えると言うその姿は、ビセンテへの愛も感じます。
ひたすら冷酷で悪魔のような深い暗闇を持つディオですが、神の名を持つ通りに、それは神々しく凄まじく光輝いてさえ見えるのです。
そんな彼にすっかりハマりました!
彼の道がどんなに血ぬられて真っ赤に染まっていても、真っ黒に汚れていても、自分には彼がとてもとてもきれいなものに見えてしかたありません。
マフィアものというと、容赦なさそうで、どこか甘くぬるい部分があったりするのですが、彼はそうではありません。
ビセンテを庇う部分もありますが、根が歪んでいるので、ヌるさは感じないのです。
かえって、そこがあるから彼の冷徹さが際立つというか、一体だれが殺してくれるんだい?って愉しみに待っている部分があるように見えてしかたないのです。

一方、航一は「お前に飽きたら殺す、それまでの間に隙があればいつでも殺せ」と言われ、チャンスをうかがってはいるのですが、彼の闇を知るごとに一体どうすることが彼にとっての一番の不幸なのか?を考えるようになる。
楽園なんかこの世には存在しないと言いきる彼に一番ダメージを与える方法を考え付くのです。
それが、ディオが一番いらないと思うモノだったとは・・・
ラストまでドンデンが待ち受け、ハラハラする展開に目が離せません。
航一が、ディオを捉えていく姿もまた見ものです!
久々に根っこの太い男らしい受けを見た感じで、新鮮でした。

今回のイラストも、いつも実相寺さんの受けちゃんは、少し女性的な雰囲気を漂わせる受けちゃんが多いと思うのですが、航一は多少線が細いものの、しっかりと男性だったのも好感度が高いです♪
沢山血が流れ、大勢の人が傷付き、死もありますが、このディオの魅力を盛り上げる飾りのように、彼を彩るアイテム・事象でしかないように思えます。
そのくらい、ディオの魅力にやられました!!
今のところの本年度ベストオブ攻めですww

11

最後まで面白かったです。

以前から気になっていた本を手に取ってみました。
なかなか面白かったです。

イタリアで生まれ育った支倉航一はその日まで交通課の警察官としてささやかながら幸せな日々を送っていた。
しかし、週に1度の帰省で訪れた故郷の街で無惨にも殺害された両親の遺体と対面することに。
マフィアの仕事を手伝っていたらしい両親にも非はあるのだろうが、あまりのことにショックを受ける。
マフィアの人間に見つかり航一自身も殺されそうになるが、そこでディオと再会する。
ディオは航一が警察官として注意したことのある人物で、マフィアの長男で現在はある組織のカポを務めるこの街の「神」のような男で。
ディオは航一にある選択権を与えるのだが…。

最初の方を読んでるとちょっと同作者さんの「サウダージ」を思わせるような感じだなーと思ってたのですが。
読み進めると違ってきました(当たり前ですが)
航一はいつか仇を討つためにディオの情人となる。
気持ちは前向きにその機会を狙っていて。
その一方で、その快楽の前に崩れてしまいそうにもなって。
それでもなんとか律しようと心までは屈さずにいるところはやはりステキです。
そんな航一が少しずつディオといる時間が増えるに従って新たな感情…愛ではなく情だと最初は言っていますが、それが芽生えていって。
最後には最初とは違う望みを持つことになって。
それをちゃんと伝えられてよかったと思いました。
一方のディオ。
常に後継者争いなどもあって周りの誰1人として信じられないような状況で生きてきた男。
冷徹そうでありながら、航一に対している時だけはその感情に温度を感じるというか。
最初は興味半分のようでありながら、自分とはあまりにも違う考えを持つ航一に組織の中にはない感情を持っているようにも見えて。
権力も芸術的なセンスも能力も、何もかも持っているようでありながら、肝心の何かが足りない男。
確かに航一とディオを比べるとディオの方が「かわいそうな男」として映ります。
でも、なぜかそんなディオが私はとても好きです。
ラストシーンでのディオなりの告白が印象的でした。
そして、その本来の意味を知らないままの署名への返事も好き。
2人にとっては「破滅」=「愛」でもあるんだろうな。

個人的にこの方の作品は最初の方は好みでも最後の方で自分の好みと外れるもののあったんですが、これは最後まで好みのままの流れでした。
甘くなりすぎなかったからかな?

8

レモンが食べたくなる

華籐さんといえば異国情緒。
異国の街並みや文化の魅力的な描写が攻の魅力と相通じる所が好きです。
今回の攻もとても魅力的でした。

攻の魅力の一つがレモンをかじる仕草に象徴されています。
この描写がとても印象的なのですが、それもそのはずで
攻の内面を語る伏線になっています。

あくの強い攻と、男らしく潔い受は最強の組み合わせでした。
受はむやみに吠えません。芯が強くじっと耐えるタイプですが
攻には翻弄されている所が萌えました。

スピンオフが出ている本なので、思わせぶりな登場人物がたくさんいますが
スピンオフとは関係ない攻の弟がとても好きです。彼のその後が気になります。

5

マフィアもの

『この聖なる束縛に』のスピンオフ。こちらの方が読みやすい。

アルフィオの義兄、ディオが交通違反で航一に捕まったのが出会い。これまたマフィア絡みで不幸が重なる受けで、なぜかディオに気に入られて情夫(アマンテ)にさせられ、堕ちていく。

ディオがファミリーにあって孤高な存在であること、外科医でもあること、初めこそは無理矢理だったけれども、航一を抱く時に嫌な思いをさせないところが伏線となっています。ふぉぉってなるポイントでもある笑。

最終的に航一の家族を手に掛けたのは、ディオの双子の弟だったことが明らかにされるのだけれど、攻め様はいつだって受け様の味方なのね。そこは絶対に裏切られません。

この頃作者様が描いている海外ものは、シリアスで本格的で、なおかつスリリングでした。

1

複雑です。

最後までこの2人どうなるの!?とハラハラさせられるというか、もう早く落ち着いてくれー!とずっと思っていた一冊になりました。

読後、疲れた・・・。
何せ、最後のほうまで攻めのディオの気持ちが見えないのですよ。
愛があるのかないのか。
いや、ないのだろうと思っていると最後の最後で、受けの航一の両親の遺体をきちんと埋葬してくれていたことが発覚、おまけにお墓に彼らしいお供えがあったり、ちゃんと手入れしてくれてるんじゃんと人間らしい面もようやく見えて、やっと最後になってこの話に入り込めた感じでした。
それくらい、途中経過は混迷状態。
ディオの航一に対する執着は分かるし、航一視点なため彼の内面の動きも分かります。
しかしディオに気持ちがないのなら幸せな最後はないものですし、それなりのこちらとしても覚悟しなければと思っていました。
何度、読むのを挫折しそうになったことか・・・。
マフィアモノが苦手な私にとって、物語に入り込めないのは本当にきつい。
しかし、最後まで読む気になったのはやはり、華藤さんのストーリー構成力・緻密で読み応えのある文章、そして魅力的なキャラクターの存在があったからです。

ディオ、彼は冷酷非道、掟を破ったものには身内だろうと双子の弟だろうと容赦なしです。
頭がよく非道なマフィアなのですが、彼には味覚がなかったり色んな事情が出てきます。
そのため、芸術をたしなんだりマフィアにはない空気感を持つことになります。
そこがいいのですよ。
ディオというキャラを引き立たせてくれています。

しかし、辛いものは辛かった。
ディオ視点が途中か最後かあれば良かったのに。

4

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