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表題作彼をさがして

勝倉翔太,29歳,TVCM製作会社のエリートリーマン
相馬貴幸,24歳,容姿も性格も地味な中小企業

その他の収録作品

  • 見知らぬ恋人
  • あとがき

あらすじ

……そうだ。幸せだったんだ、俺は。
エリートサラリーマンの勝倉に拝み倒され、恋人となった容姿も性格も地味な相馬。つきあい始めて一年、徹底的に甘やかされた相馬は、我が儘な女王様のようになっていた。そんな中、下僕扱いしていた勝倉が事故に遭い、記憶を失ってしまう。さらに優しくてヘタレだった勝倉は、相馬を見下し、傲慢で性格も最悪な男に豹変していた。だがそれが勝倉の本性だったと知り――!?

作品情報

作品名
彼をさがして
著者
風見香帆 
イラスト
高宮東 
媒体
小説
出版社
プランタン出版
レーベル
プラチナ文庫
発売日
ISBN
9784829625033
3.9

(78)

(30)

萌々

(25)

(15)

中立

(4)

趣味じゃない

(4)

レビュー数
15
得点
299
評価数
78
平均
3.9 / 5
神率
38.5%

レビュー投稿数15

好き!!…でももう少しじっくり詳細が知りたい…

攻めに心底惚れられ、”蝶よ花よ”と甘やかされているのをいいことに調子に乗っていた受けの「受けざまぁ」ストーリーです。

このお話、超絶私好みでした。
(以下ネタバレ含みます)




攻めに「お願いだから付き合って」と何度も時間をかけて頼み込まれ、受けが絆されようやく付き合うことになった2人。
受けのいわゆる「普通の人生(妻がいて子がいて…のような)」を奪ってしまった、という思いからまさに”下僕”のように日々受けに仕える攻め。
この2人、まったく対等な関係ではないんですね。(でも攻めはその生活が当たり前だと思っているし、満足しているっているのが良かった〜←私の性癖よ…;)

それがとある事故により攻めの勝倉が3年分の記憶を失い、受けを見て「生意気なお前は一体誰だ?」となるところから、話が一変します。

この中盤は陵辱もあり、なかなか辛く切ないターン…
でもこの勝倉の記憶喪失を機に、受けの相馬も自らの今までの言動を省みて、変わろうとしていくんですね。

相馬から見ると「変わってしまった」のは記憶喪失になった勝倉なんですが、
後半、記憶を取り戻してからの勝倉にとっては「知らないうちに相馬が別人のようになってしまった」という対比が印象的で面白かった!

終盤、想いを確かめ合った後に優しく優しく相馬を抱こうとする勝倉にうるうる。じーんとしました。

ページ数199ページと決して多くはないため、展開は早めです。

もうちょっとじっくり、詳細を知りたいなあ…くーー!となる部分が多々ありました。受けの相馬視点での「告白されてから付き合うことを決めるまで」の過程とか、「勝倉を受け入れるという行為には特に抵抗があった」のが徐々に受け入れられるようになっていくまでの体・気持ちの変化とか。

キャラも設定も流れもとってもとっても好みで多分この先読み返すと思うんですが、上記のポイントがああ惜しい〜!と思い、萌え2としました。

2

大好きな恋人はすぐそばに。

受け様が両手に攻め様的な表紙ですが、3Pではありません。
まるで2人いるように、タイプの違う攻め様を楽しめました。


受け様は、サラリーマンの相馬。
自分より髙スペックのエリートサラリーマン勝倉に懇願され、根負けして付き合うことに。
攻め様は、もちろんエリートサラリーマン朝倉。

勝倉にかしずくように尽くされ、相馬は女王様のようにワガママになっていたある日、勝倉が交通事故にあう。
ここ3年分の記憶をなくし、相馬のことも覚えていない。
これまでの下僕のような朝倉と違い、傲岸不遜で俺様サマ過ぎる朝倉の態度に驚き、ムカつくけど、ぐっと我慢の相馬。

自分のことを一心に愛してくれた以前の勝倉に戻ってきて欲しくて、無体な要求にも応えなんとか記憶を取り戻させる努力を続けるのだけど。

このままでは、2人ともストレスてダメになりそうで、相馬は距離をおこうと実家に帰ることに。
相馬を追いかけてきた勝倉の、攻めザマァぶりににやにやです( ☆∀☆)

勝倉は、思い出せなくても相馬の事が気になっているのに、相馬は昔の自分しか求めていない、と悲しんでいたようですけど。
でもねぇ、全然優しくなくて愛情も感じられず好き勝手な態度で接しておいて、何甘えてんだo(`^´*)
今の自分も好きになってもらえるよう行動しろよ、と私は言いたかったですけどね。

それはそうだ、と反省してる相馬はいい子だわ〜
記憶をなくしても、やっぱり勝倉は相馬が大好き。
相馬も、楽だから勝倉と一緒に過ごしていたのではなく、ちゃんと恋人として好きなんだと再確認して、結果オーライなのでした。


ここまでが受け様の相馬視点のお話。
そして3カ月後、勝倉の記憶が戻った後が攻め様の勝倉視点のお話。

今までと違い、優しくて対等の恋人として接してくる相馬に戸惑い、不安に感じてしまう勝倉のぐるぐるな内心がとてもよかった(*´∀`)
記憶をなくしていた時の自分に、是非嫉妬してほしいものです。


俺様とヘタレな攻め様を楽しめる1冊でした。




5

記憶喪失ものです。
「見知らぬ恋人」「彼をさがして」
「見知らぬ恋人」は記憶を失くした恋人とどう向き合っていくかを受け視点で、「彼をさがして」は、記憶を取り戻した後の話が攻め視点で書かれています。ページ数は半々くらいの割合。

お話について(勝倉×相馬)
相馬は、五歳歳上の恋人を勝倉と呼び捨て、乱暴な物言いをして、顎で使います。
ひどいなぁーと苦笑いしながらも、そう多くは無いパターンの受けさまに、物語りがどう展開していくかとワクワク。
自分を女王様のように扱い、甘やかしてくれていた勝倉が記憶を失い、勝倉の相馬に対する態度は一変。記憶を失った勝倉は偉そうな傲慢男に大変身…(*´꒳`*)
心情も丁寧に書かれており、すんなり物語りに入り込んでいけました。
記憶を失う前の勝倉が相馬を思う気持ちが、勝倉の持ち物や、勝倉の同僚の話からどんどん明かされていき、心臓がキュッて痛かった〜。

「彼をさがして」は、記憶を取り戻した勝倉の混乱ぶりが可愛くもあり、記憶を失くしていた時の傲慢な勝倉が少し恋しくもありました。
話の本質とはずれるのですが、記憶を無くしていた時の勝倉も、確かに勝倉として存在していて。「見知らぬ恋人」で、俺がどうなれば気持ちを向けてくれるんだと相馬に思いの丈をぶつけた場面では、私涙を堪えるのに必死になりました。
でも、記憶を取り戻した勝倉には、記憶を失っていた時の記憶はありません。
両方とも勝倉である事に変わりは無いのですが…今の勝倉も好きだけど、あの時存在していた勝倉はどこにいったの?とどうしても寂しくなってしまいました。
私が勝手に寂しくなっているだけで、お話的にはその辺も綺麗にまとめられ、昇華されていますのでご安心を^_^

風見先生の他の作品も読んでみたいなと思う素敵な作品でした。
ざっとですが風見先生の足跡をたどってみたのですが近況は不明で…。後発ファンのなんともツライところであります。トホホ。

2

面白い展開の記憶喪失もの

表紙に3人いるので三角関係ものかと思いがちだけど、違うんです!
これは記憶喪失ものなんです。
(私も買ったはいいけれど、表紙見るたびに3Pもの買っちゃったんだっけ?とずっと放置してた)

古典的とすら言えるような安易な記憶喪失ってゲンナリする事もあるんですが、これは読んだことがないタイプの記憶喪失もので面白かったです。

攻めに一年間毎日しつこ〜くアプローチされ続けた末に根負けして恋人同士になった二人。
攻めは同棲にまで持ち込み、受けを下にも置かない扱いをするうちに受けは増長しワガママ放題の女王様になってしまいます。
それを嬉々として尽くしまくる下僕状態の攻め。

ところがある日、攻めは事故で3年分の記憶を無くした挙句、受けを「こんなヤツ」呼ばわりする尊大で傲慢な俺様に……。
てっきり事故の影響で人格が変化してしまったのか?と思いきや、下僕気質なワンコだったのはあくまで受けに対してのみで、本当の性格は唯我独尊な俺様で会社ではそれが通常運転だった……という事が判明するんです。

受けに関する記憶がない3年前の性格に戻っているので、本来の性格である鼻持ちならない冷酷な態度で接してくる攻め。
おまけに性欲処理のために無理やり犯すような形で受けを抱くのだけど、受け視点なのでここの描写が痛くて切ないです。

拝み倒されるような形で渋々恋人同士になってあげていた相手から酷い扱いをされて、腹立ちを感じる一方で、受けは自分の気持ちに段々気づいていきます。
記憶喪失によって攻めの二面性を知り、どっちが本当の姿だったのか追い求めるうちに、調子に乗って我儘全開で攻めをいいようにこき使っていた過去の自分を反省し、攻めとの関係を見直していく受け。

特にいいところがないように思える受けに対して、何故攻めはそこまで惚れ込んでいたのか?とか、これからこの二人はどうなっちゃうんだろう?など、先を知りたい要素がいっぱいで一気に読んでしまいました。

決してコミカルな話ではないけれど、攻めがコッソリ隠していた受けに関するあれこれグッズ(自作の受け写真集やら、受けから貰ったプレゼントの包装紙などの細々したものを集めた宝物箱)に関する描写がおかしくて、吹きました。

そして後半、突如記憶が戻った攻め視点が面白い。
俺様で傲岸な自分の本性がバレているはずなのに、嫌うどころか優しく接してくれる受けにたじろぐ攻め。

記憶がなかった間に何があった?!
俺は何をやらかした?!
なぜ受けはあんなに変化してしまったんだ?!と、オロオロしまくった末に真実を知ってしまい……

ひたすら受けに尽くしていた自分も、記憶を無くしていた間の横暴な自分も、低姿勢か高圧的かが違うだけで強引でワンマンという点では何ら変わりがない……と攻めが気づくんだけど、このくだりがとても新鮮でした。

そして珍しい受けザマァと、攻めザマァという両者のザマァニュアンスが感じ取れるところも面白かった。
自分のやらかしてきた行動によって、報いを受けたり、ガツンと凹んだり、自分を呪いたくなったりする様子が描かれていて、それを味わったからこそ、歪な関係だった二人が対等でありたいと思うようになる描写が良かったです。


2

フランク

amazon kindleで購入

評価のわかれみち

優しかった攻めが記憶喪失になって傲慢攻めになっちゃうストーリーです。
たくさん読んできたBL小説の中で初めて受けざまぁ…などと一瞬でも思ってしまった作品でもありました。
攻めの勝倉に甘やかされ過ぎて、攻めを下僕扱いして傲慢不遜な受けの相馬。攻めが記憶喪失になって偉そうな態度になってしまった状態でも喧嘩腰のしゃべり口調で心配する様子もなく自分のことばかり。
でも時間が経つにつれて、愛情に胡坐をかいていた自分を反省していって、記憶が戻るために自分にできることをやっていきます。で、偉そうな攻めも優しかった攻めも同じ勝倉だーって気付いていくわけです。
記憶は戻りますが、記憶喪失状態だった時の記憶は残りません。
結構、簡単に記憶喪失状態から戻った気がしました。(そんなものかな?)
記憶が戻ってから、受けが攻めに対して下僕扱いしなくなったことに不安を感じるようになる攻め。ここで、受けへの印象に良さを感じられるかどうかで評価が変わってくるんじゃないかなぁ。って思いました。私は残念なことに、下僕扱いしてなくても、なんとなく受けの印象に嫌な感じは拭いきれず、眉間にしわが寄ったままの状態で読み切りました。

時間をあけてから、また読みかえしてみようと思います。

2

これは良い記憶喪失もの

私は記憶喪失ネタが大好きでして、片っ端から読んでいたりします。
何が楽しいかって、攻めの強烈な執着が感じられる事なのです。

気が付くと自身が何者かも分からず、記憶喪失で混乱する受け。
そこに見知らぬ男が現れ、自分の恋人だと告げる。
戸惑いつつも共に過ごすうち、男に惹かれてゆく受け。
で、ちょい強引に抱かれちゃったりする。
そんな中、突然記憶が戻る受け。
「あいつはただの友達(もしくは知り合い)だったはずなのに、何故恋人だと嘘をついたんだろう・・・」みたいな(≧∀≦)
そう、どうにも受けが欲しくて欲しくてたまらない攻めの、魔が差してしまった・・・という強い恋情なんかが萌えるんですよ。
まぁ大体このパターンが多いのですが。

が、今作は一味違うんですね。
記憶喪失になるのは受けでは無く攻め。
なのになのに、攻めの受けに対する強烈な執着が楽しめる作品なんですよ。
あと、攻めザマァ展開も。
何故こうも、傲慢な攻めが受けに見捨てられて痛い目を見るのは萌えるのか・・・。

ざっくりした内容ですが、恋人にこれ以上無いほど大事にされ、甘やかされている平凡なリーマン・相馬。
エリートでイケメンな恋人・勝倉が記憶喪失になった途端、優しかった彼が一変、傲慢で鼻持ちならない男に変貌してしまう。
本性を明らかにした勝倉に無理矢理抱かれ、更に家政婦のように便利に使われて、相馬は身も心もボロボロになり-・・・と言った感じになります。
相馬視点で進みます。

これ、元々ですね、勝倉が超執着攻めなんですよ。
好きになった相馬と何としても恋人になりたかったため、彼に対しては優しく献身的に尽くしていた。
本来は傲慢で嫌な男なんです。
で、記憶喪失になり、相馬に対する愛情も忘れてしまった為、本性を出して相馬を散々傷付けてしまう。

相馬自体も散々甘やかされて女王様体質になって居てと、わりといいタマなんですけど。
まぁ、相馬はちょっと助長しちゃってるだけで、本来は健気で愛情深いタイプなのです。
で、強姦し、いいように扱い、更に貶しと、これでもかと記憶喪失になった勝倉が相馬を傷付ける。
それでも何とか記憶を取り戻し、元の優しい勝倉に戻って欲しいとギリギリの所で踏ん張る相馬。
読者が勝倉にムカついてムカついてキレそうになる頃に、とうとう限界を迎えた相馬が勝倉から離れてしまう・・・。
ここでまず、攻めザマァでスカッとさせてくれるんですよね。
相馬から見放されたと意外な程傷付いてる勝倉に、気持ち良くて気持ち良くて仕方ないわ~と。

更に更に、この作品の素晴らしさはここから。
この二人ですが、最初から歪な関係なのです。
勝倉は本来の自分を隠し、徹底的に相馬に尽くす事で、彼が自分無しでは困るように、自分が必要とされるように行動してきた。
記憶が無くなって本来の自分を見せる事で、その歪な関係が一旦リセットされるんですよね。
そして、たとえ記憶が無くなっても、全く見知らぬ相手であっても、勝倉は相馬の存在自体に惹かれる-。
理屈では無く本能で。
彼が必要以上に相馬を傷付ける態度を取っていたのは、記憶の無い「今の自分」を否定されて深く傷付いていたから。

まぁそんなワケで、散々すれ違って傷付け合った二人が、やっと本当に大切な事に気付く-。
そんな深みのある作品なのです。
あと、この後に記憶が戻った勝倉視点でのお話もあるのですが。

ちるちるさんの記事で、記憶喪失BL特集がされてまして。
そこで今作が紹介されてたんですが、記事を読んだら作品を読み返したくなりまして。
そして読んだらどうしてもレビューを書きたくなっちゃったワケです。
だらだらと長いばかりのレビューですが、お付き合い下さった方、ありがとうございました(*´▽`*)

7

泣きたい時にオススメ

記憶喪失もの。

受け視点での前半、攻め視点での後半。
女王さま気質だった受けが攻めの記憶喪失を機に変わっていく様子が描かれています。
最初は受けの女王さま気質にイラっとしましたが、
徐々に変わっていく受けを見て、本来の受けの気質はとってもいい子で健気な子なんだーと読んでいてほわっとしました。
記憶を失って、受けのことかわからなくなって、何なんだよお前、みたいになりながらも、深層心理の中では受けのことを覚えていて、どう接していいかわからず葛藤する場面もよかったです。

途中で少しだけ乱暴な描写があります。
切なくハピエン、私は途中で涙が出てきました。
泣きたい時にはオススメな小説です。
お気に入りですよくカバンの中に入れて持ち歩いてたりもします。

7

記憶喪失ものなんだけど…

いわゆる記憶喪失ものとは少し焦点が違って面白かったです。
最初の話はまぁわりと定番の
付き合う前くらいからの記憶を喪失(攻め)→男の恋人なんてっ!?と受け入れられず→でもなんか好き
恋人記憶喪失→恋人と見てくれない冷たい仕打ちに傷付く(受け)→でも記憶はなくても彼は彼、好き
というパターンですが、そこに実は記憶を失った恋人は自分に対しては甘々だけどそれ以外はキツイ性格で、しかも付き合う前の彼は人を見下す傲慢人間。
さらに受けは攻めがどーしても言うので付き合った為、攻めに対しては女王様。
という設定が加わると、記憶喪失による女王地位転落、傲慢人間に振り回されてやっと彼への思いを自覚、下僕ながらも健気に尽くすという切なさと若干のコメディが出来上がります。ひどいことや辛いこともあったけど、結局は記憶が戻らないままハッピーエンド。

そして後半の話は記憶喪失から三ヶ月後、急に記憶が戻った攻めが、すっかり態度が変わり優しくなった受けにオロオロする話。
普通の記憶喪失ものは、だいたい最初の話のハッピーエンドで終わりだけど、記憶が戻ってからの攻め視点の不安に駆られる話は新しいかも。
最後の方のHのシーンで激しくしてごめんと謝る攻めに対して、記憶がない時の方がもっと激しかったという受けに対して、記憶喪失中の自分に嫉妬するエピソードが胸キュンでした♩

9

ただの記憶喪失ものじゃない


地味だけれど性格は女王様な主人公・相馬にひたすら尽くしていた攻め・勝倉が、記憶を失うことによって俺様な性格になってしまうお話。
相馬の前ではまるで下僕だった勝倉なので、二重人格のような豹変ぶりに戸惑う相馬の心情が細かく描かれています。

ただの記憶喪失ものではなく、記憶どころか性格までもがまるっきり変わってしまう攻めがとても斬新でした。
相馬は勝倉の手によって女王様に育てあげられたので、変わってしまった勝倉に戸惑いつつ、優しい勝倉を取り戻すために健気に尽くそうとしているところがもう…!

勝倉の愛情が感じられなくなってはじめて、自分の感情に気づいた時の描写や、勝倉がどれほど自分を愛してくれていたかを感じた描写に…どうしようもなく切なくなってしまいます。
また、記憶が戻ってからの勝倉視点のお話でも、相馬と同様にまるっきり性格が変わってしまった恋人に不安になる勝倉の切ない様子が描かれています。

冷たくなってしまった恋人に怯える相馬に、優しくなった恋人に不安になる勝倉…形は違えど、最後にはどんな恋人でも全てを受け入れようと覚悟を決めるところが素晴らしいと感じました。

勝倉の二面性が極端すぎると感じるかもしれませんが、あとがきにも書かれているよう『人はいくつもの顔を持っている』ということがテーマなため、素敵な作品なので苦手に思わず読んでほしいと思います。
表紙から分かるよう、挿し絵もとっても素敵ですよ~!

4

単なる記憶喪失ものではない良作♪

もうもう、すっっっっっごく好みのお話でした!

あらすじを見て、記憶喪失で地味受けかー、結構好きかもwと軽い気持ちで購入したのですが、大正解!!!

前半が相馬(受け)視点で、後半が記憶がもどった勝倉(攻め)視点という二部構成です。なので、きちんと攻め側の気持ちも丁寧に描かれていて、かゆい所まで手が届く作品。
後編で、勝倉が相馬を好きすぎて嫌われないようオロオロする様子がしっかり伝わってくるので、前半で相馬を切ない目にあわせたこともしっかり溜飲が下がる仕様になっています。相馬の機嫌をとりたくて、顔色をうかがいまくるのもご愛嬌。
攻め視点のお話が好きな方にもオススメです。

しかも、勝倉の性格が、記憶のあるなしで違うので、年上下僕ワンコ攻めと俺様傲慢攻めの2パターンを楽しめて、お得感があります。
私はどちらのタイプも大好きなので、非常においしくいただきました。

勝手な偏見で…絶対、勝倉はAB型だと思う。私もそうなので、ちょっとこの二面性的な感覚ってわかるんです。でも、裏表ないっていうか、二面性なんか不誠実だわっていうまっすぐな読者さんは極端な話だなって思われるかもです。

あと、ムリヤリ乱暴にコトに及ぶシーンがある(記憶のない傲慢勝倉の仕業です)ので、そういう描写が苦手な方はご注意を。


以下、さわりだけのあらすじとちょっとネタバレです↓

整った顔立ちながら地味な印象な相馬。
もともとノンケだったが、イケメンエリートの勝倉に拝み倒されんばかりに求愛されて、付き合って一年、同棲して半年。
恋人としての勝倉は、嬉々として下僕のように尽くす献身ぶりで、それを当たり前のものだと思い、勝倉を女王様然と粗略にあつかう相馬。
だがある日、事故で勝倉が記憶を三年分失ってしまう。
相馬のことを忘れた勝倉は、傲慢で我儘で偉そうな態度を相馬にとる。
別人のようだと驚く相馬だったが、実はそちらが素の勝倉で、相馬の知っていた相馬の愛をつなぎ止めるために勝倉が必死で作っていた姿だった。
そのことを知り、記憶を失った勝倉と接しながら、自分が今までどんなに幸せだったか、勝倉を愛していたか思い知る相馬。
遅ればせながら、今度は相馬の方が勝倉に尽くし始めるが、そんな相馬に勝倉はつらくあたり・・・・・・。

最初、相馬があんまり女王様で口も悪いし、好きになれないかもなと思っていましたが、杞憂でした。サバサバした、いい子でしたね。
二人の将来を全く真剣に考えていなかった相馬が、相手の記憶喪失を期にいろいろ考え、変わっていく。
記憶をなくした勝倉は、平凡な相馬を見下して心ない言動をいろいろ取るのですが、その合間にも以前の勝倉がいかに相馬を愛していたかわかるエピソードが随所にはさまれて、それがより切ない。
記憶がない勝倉も必死にもがいて、彼なりにもう一度相馬に恋して、相馬もそれを受け入れていたので、後編であっさり記憶とともに性格ももどった時は、相馬と同様私も寂しさを覚えました。
その相馬の寂しさを記憶を取り戻した勝倉も感じ取って、焦りまくる⇒顔色をうかがいまくる⇒相馬をイラつかせる⇒焦りまくる・・・という負のスパイラルにおちいるのですが、まあその辺もコメディっぽくて楽しかったです。

単に攻めの記憶がなくなって、取り戻すまで受けが切ない思いをするが元に戻ってハッピーエンド♪という王道展開だけではないひねりがあって、最後まで楽しめます。
茶鬼さんが、そのひねりを「成長」と表現されていて、本当にその通りだと思いました。
相馬の成長と変化。カップルとしての成長。そう、そこがこの作品が一味違う所なのです。
おそらく、これから二人は新しい関係性を築きながら、ずっと一緒にいるんだろうな~と、幸せな気持ちで読み終わりました。
そんな二人も見てみたい!とも思いますし、想像してみるのも楽しいです。

ああ、ひさびさに興奮した!!いろいろ考えさせられるし、良い作品でした。絶対読み返すな、これ。
オススメです♪

12

攻めが好み過ぎました・・・!!

すごく面白かったです。攻め→→→受けが大好きなんですが、ドストライクでした。本を読んでる最中はテンションが上がり過ぎて、2~3度体温が上がった気がします(笑)

受けは、初めは女王様というかちょっと我儘なんですけど、攻めが好きすぎて持ち上げすぎてしまった結果そうなってしまったので、後半に分かる出会いの辺りを読むと、素直で優しいあの子が序盤の女王様になるとは・・・と(^▽^;) 受けの相馬が余計に可愛く思えました。

--(以下ネタバレが結構含みます)--
話は、受けの相馬に嬉々として(←ここポイントです:笑)下僕のように尽くして来た、攻めの勝倉が事故にあい、3年間の記憶と一緒に相馬のことを全て忘れてしまう。見たことのない別人のような偉そうで人を見下した態度に困惑する相馬。

そこで相馬は、勝倉に泣きつかれて、縋られて妥協して付き合ってやってたと思っていたはずなのに、昔の勝倉に対してどう思っていたか気づかされて・・・という感じなのですが、その描写のされ方が、とても読みやすくスルスルと入っていきました。

ところどころで、勝倉がどれだけ相馬のことが好きだったのか、隠し撮りコレクション(これ思いっきり笑いました)や貰ったプレゼントの袋を丁寧に大切にしまってあるところなど、ジワーっと胸が熱くなりました。

記憶の無い勝倉から「お前なんかと・・・」と言われながら、無理やり抱かれたりと酷い扱いを受けるのですが、勝倉のうっすらと靄が掛かった中を歩いているような、記憶がないことへの不安が垣間見える時があり、終盤の台詞には涙が出そうになりました。

相馬が今までの自分を省みて、対等になろうと今までしなかった家事をしたり頑張る姿は、応援したくなります。そして記憶が戻ってからの話が、他の方のレビューにもありましたが、コメディだったの!?と思える位、写真のことがバレた・・・と死んだように青ざめたり、必死に元の関係(女王様と下僕)に戻ろうとする姿に笑いつつ、好きだから何でもしたいと思っている以上に勝倉は、後ろめたさみたいなものがあって。それを知った時、ちょっと寂しく思えました。

最後はこれから2人はずっと一緒なんだろうなーと安心して見ていられるカップルでした。でも勝倉は時々、記憶の無かった自分に嫉妬したりするのかな。とか、想像すると楽しいです。

話のポイントはここは無いのですが(笑)、個人的に1人の勝倉(攻め)の中に尽くしたい、何でもいう事を聞いてあげたい。すっごい好き。ベタベタで優しい~部分と、強気で自分の思い通りにしようと言葉責めをしたり偉そうな部分があって、一粒で二度美味しい!!みたいな大変楽しく読めました。( ´ v ` )=3

最後に、記憶が無い彼との話をもう少し見たかった気がしますー。でもすごく素敵でした。
私も日頃甘えまくってる家族と友人に感謝しようと思いました(^////^)

11

斬新ですね~。

記憶喪失ものなんですが、結構斬新だな、と思いました。『記憶喪失』自体は、BLではひとつの王道・テンプレ設定ではあるんですが、これは切り口が新鮮でした。
それに、確かに記憶喪失を扱っていますし、それが重要なファクターなのは間違いないんですが、『記憶が戻るかどうか』がキーポイントではないんです。

記憶を失った恋人が、まるで別人のように!というだけならさほど珍しい設定だとは思わないんですが(いくつかパッと浮かびますし)、キャラクター造形と2人の関係性の変化が、とても興味深かったです。

地味な相馬(受)が、下僕として仕える勝倉(攻)に『育てられて』女王様にっていうあたりが意外でしたね。そうか、『女王様』って育ってなるものなんだ、と。
勝倉の変わりようがちょっと極端すぎる気はしましたが(どんなきっかけがあったにしろ、自分でここまで変われるものだろうかと思ってしまったんです)、まあそれは際立たせるためにデフォルメしていると思えば十分許容できました。

あえて言うなら、記憶を亡くした勝倉の気持ちの変化(いつ・どうして相馬に惹かれたのか)について、あとで説明っぽく触れるだけではなく、時系列で客観的な描写も欲しかったです。

実は、このまま記憶が戻らないのかと思っていたのですが、後編でいきなり戻ってましたね。でも、結果的にはこれでよかったです。

しかし勝倉視点の続編は、これってシリアスに見せかけて実はコメディだったのか!?と思ってしまったくらいおかしかったです。記憶を取り戻した勝倉がおろおろする姿が面白過ぎますよ。
でもコミカルな中にも、記憶喪失中の自分についての勝倉の不安や、相馬の可能性を奪ってしまった負い目から『下僕』に徹していた事情などが語られ、なんとも言えない切なさがありました。

厳密には私の好みとは違うんですが、それでも面白かったんです。いい作品でした。

1

面白かったー

すっごい極端な話なんだけど、じつは物凄くシンプルかつ重要な人生の教訓が詰まったお話だと思いました。
シンプルな教訓、つまり、自分に優しくしてくれる身近な人をきちんと大事にしろ、おろそかにしてはいけないよ、という。
恋人に限らず、家族でも友人でも仕事仲間でも、人間って自分に甘い相手に対してごう慢になってしまう部分が少なからずあるように思う。もちろんこのお話の受けみたいなのは極端すぎてさすがにめったにナイだろうけどさ。
面白く読みましたが、よくよく考えたら私もこういう一面があるよなァ…なんて思ったりして。

ベタベタに優しかった恋人の前で女王様のように振る舞ってた受けなんだけど、ある日その恋人が記憶喪失になり、180度違う性格に変わってしまう。変わったというより地が出ただけなんだけどね。
葛藤を繰り返すなかで成長していく受けが可愛かったです。
後半は記憶を取り戻した攻め視点。攻めの視点でのお話も、滑稽なんだけど妙に切なくて愛おしい。
雨降って地固まるってこのことだなと思いました。

これ、受けと攻めが逆のパターンのお話も読んでみたいかも。つまり、攻めがごう慢で受けが尽くしてて、ある日受けが記憶喪失になってしまうってパターン。そっちも面白そう。

2

地味受なのに女王様

帯『……そうだ。幸せだったんだ、俺は』

表紙には3人が書かれていますが、これはイメージで内容は勝倉[攻]と相馬[受]との2人の話。

地味受スキーとしては地味受!というフレーズだけで即買い。
でもこの地味受相馬は何と地味受には珍しく、勝倉に尽くされて当然という態度で我が儘も平気で言う女王様受なのですよー。
彼等は同居してるのですが、家事も料理も勝倉まかせという有様。
ともかくひたすらに勝倉は相馬に尽くしまくります、まあこれだけ尽くされれば多少女王様受になっちゃうのかなー、だが地味受なのに、この態度はどうしたものか!と思っていた矢先に勝倉が事故で相馬と出会う前の3年前までの記憶を失ってしまいます。
そして記憶を失った勝倉は、相馬が知っている彼とは真逆で偉そうで他人を見下す言動を平気で取ります。
もちろん料理や家事もやらず、仕方なく相馬が慣れない家事をやるのですな。
勝倉の友人から、元々会社での勝倉はこういう性格だったと聞かされて、むしろこれが本来の勝倉に近いと初めて知らない面を知らされ違和感とショックを受ける相馬。

勝倉は自分の部屋に隠し撮りした大量の相馬の写真や貰ったプレゼントを包装紙まで丁寧に保管していたのを見付け、そこでどうやら自分たちが恋人同士だったらしいと気付きます。
そして勝倉は完全に思い出さないまでも断片的に浮かぶ記憶に苛つき始めます。
相馬を強引に抱いてみたりしますが、記憶は戻らないまま。
相馬はそんな勝倉の態度に傷付くも、今までどれだけ己が愛されていたのかを再確認して自分の態度を顧みては反省します。
前半部分で勝倉の記憶は戻り、後半は記憶が戻ってからの勝倉視点の話に続くのですが、今までの様にひたすら尽くしたい勝倉と、家事分担をしたがる相馬の行動とがかみ合わなかったりと記憶が戻ったからといってすっきり元サヤには収まりません。

前半部分が雑誌掲載という事なので仕方ないんですが、一冊として読んだ場合は記憶喪失の期間をもう少し長くしてもいいかなあという気はしました。

最初はえ?と思ったけどいい男攻に尽くされまくる地味受というのも良いものだーと再読して思いましたです。

4

ちょっと胸が痛い

表紙には3人が・・・ひょっとして三角関係!?
しかしあらすじには、そんな事はみじんも書かれていなくて、これは一体?と思いきや。
そう、真ん中の主人公を挟んだ二人は同じ人。
記憶喪失という事故により、主人公と出会う前の全く知らない人格が・・・という一人の人間の二つの性格を表わした表紙だったのですね。
その性格の違いは、主人公の性格も含めて、実に要所要所で胸が痛くなる展開でした。
苦しい程の展開に、記憶が戻ってからさえも、その全く異なる性格のせいで苦しみを与え、でも、それによって二人が本当の恋人となる話となっており、実に読み応えもあり、集中できるお話でした。

ノンケの相馬を口説き落として恋人となり同居を始めた勝倉は、何でも相馬の言うことを聞いて、健気に奉仕し、相馬の機嫌をそこねないように、まるで下僕の様に仕える恋人。
相馬は、その勝倉にあぐらをかいて我儘放題の甘やかされた女王様。
しかし、事故により相馬と出会う前の3年前に戻ってしまった勝倉は、勿論相馬の事は覚えていないし、相馬の知っている下僕ではなく、俺様で実に傲慢で、それが会社での勝倉の本当の姿だったと知る。
早く、元の勝倉に戻って欲しいと気持ちの焦る相馬だが、二人とも精神的に追い詰められて・・・

ノンケの相馬が女王様然とした態度で勝倉を扱っていたことから、記憶の戻らない傲慢な勝倉に対して、いいように扱って利用しているだけの便利な存在だったら、とっとと別れていたと思うのです。
しかし、早く記憶が戻って元の勝倉に戻って欲しいと願う所に、相馬が単に都合のいい相手としてだけ勝倉と一緒にいたのではないと解りました。
嫌な目にあっても、それまで料理も掃除もしたこともなかったのに、自分でやり始める。
彼の素直でない無器用な愛に、その相馬の気持ちが苦しかったです。
初めて知った勝倉の本来の顔。
記憶を失った勝倉との生活は、彼自身を受け入れる相馬にとっての試練だったと思います。

そして、勝倉の記憶が戻った時、傲慢ではなく相馬に尽くす勝倉になったわですが、今度は勝倉にとって相馬が、今までの女王様の相馬でないことが彼を不安に陥れ悩ませる。
一体、記憶を失っていた間に何があったのか?

相馬の女王様態度はツンデレの究極、確かに愛情にあぐらを掻いていた態度かもしれないが、勝倉の本来の姿を知ったことで、いかに自分が傲慢で彼に対して答えていなかったか、恋人として成長してしまったのですよね。
勝倉は、相馬と出会う前の性格も、出会った後の性格も、どれも本当の勝倉の姿。
甘やかして彼が満足を得ることに自分の喜びと幸せを感じていたのは、それも独りよがりだったと、
この記憶喪失という時間を通して、二人とも自分勝手だったということに気づかされた期間だったと思うのです。
だから、今度は相馬は勝倉のように、相手の為に。
勝倉は、今までと変わらなくてもいいが、それでも一人で満足するのでなく互いで分かち合うように。
と、歩み寄りができるようになったお話だったのだと思います。

こうした記憶喪失モノによくある展開ではなくて、そこに成長という姿がひと工夫されていて、大人な話になっていたな、と思います。
最初、いけすかない相馬がラストにはそのツンデレがかわいく見えてきましたよ。

7

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