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なんというか、切ない、でもなく、ツラい、でもなく、もちろん萌える、でもない。
ラブストーリーというにはちょっと若田の視点に納得いかず。
あれだけ犯人?と接触できているなら、高校生の二人には難しくても、元新聞記者ならもっと知恵を使えば?って思ってしまったので、そこから物語に入り込めなかったのが敗因かも知れません。
警察だって馬鹿じゃ無いんだし、駐在さんに言うなんてことじゃ無いんだから、いくら田舎とは言え県警にも話のできる人はいるだろうに。
そして、ボルトを持って行かせる時に買ったものを渡すとかさ…最後に鉄塔倒れるなんてことにならないようにできるのでは無いかなぁ。ま、この鉄塔が倒れないと根幹の実話部分が生きてこないのですが、そこに至るまでのロジックがなぁ。無理やり過ぎて。
が、出来ることがもっとあったはず、が彼の罪、病、ってことなのかもしれませんね。
そして、海を渡った二人が(多分、貧しくとも)幸せに生きているらしいことが救いです。でも、海を渡らずして幸せになれる道があったのでは?と思うとやりきれない。。。
ちょうど二月になる前日に手を取りました。
表紙からは想像がつかないようなハードでショッキングな内容でした。
前半での設定がめいいっぱい活かされた後半は怒涛の展開で夢中で読み進めました。
極限状態の中で芽生える恋心。こういう吊り橋効果的な恋愛ものは巷に溢れていますが、なかなか八方塞がりの重い内容で前半は息詰まりしそうでした。その中でかけがえのない存在である蒼司を助けるため、ひたむきな千夏の姿に心を打たれました。
若いが故に思慮に欠けるけれど、純粋な衝動と思いがけない余波、、。
歳を取ったせいか、2人の青い恋の結末より、切迫した中での一種の愛情表現という「行為」が引き起こした顛末の影響力の大きさに打ちのめされました。そう、忘れた頃にその存在は余りにも大きく立ちはだかります、、。2人の罪の重さに身震い。最悪の結末は逃れたのかもしれませんが。。
もっと若い時に読めば、もっと2人の気持ちに共感も持てて読後感も変わったかも。若田も今の歳に2人に出会っていたら、確実に2人を止めていただろうな。若田が良識ある大人であれば、2人の信頼は得られていなかったであろうけれど。
実際あった事件を題材に(ハード&ロマンチックに)脚色されたそうです。未解決事件のようで真相に色々な憶測がされていて気になります。その事件を全く知らなかったので、余計に驚きました。
色々な人の感想を読んでいると、組織が何故自力でしなかった等の意見もあるようですが、特殊な犯罪組織グループの破壊工作活動の意図は一般人には理解出来ません。小説でも犯行グループの意図は明かされず、未解決事件として終わっています。最終的に引き起こされた顛末を起こす事が最初からの目的で有れば、身バレしない様に自ら手をくださない事もあり得るように思いました。2人の行動も事件に巻き込まれた当事者として緊迫状態の中でした行動だと思うと、不自然では無いですし。。
圧倒的な読後感のある作品でした。タイトルの暗示する通り、しばらく引きずりそうです。「私の二月は三日足りない」と無意識に口ずさみそうです。処女作という事で恋愛心情描写にブレもあるかもしれませんが、四国という土地柄を生かした設定や文学的でありながらも、事実が淡々と語られる文体はとても良かったです。
すごい作品です。始まりからジェットコースターのように激しく揺さぶられる物語。冒頭は卒業間近の高三男子2人のシーンからはじまり、親友同士の片方が片方にいきなり告白して振られます。
その夜からが超展開。振られた受けの蒼司がとんでもない事件に巻き込まれ、命も危険な状態に。言葉は柔らかいけどかなり無神経な振り方をした攻めの千夏は失いそうになって初めて自分にとって蒼司がどんなに大切な存在だったかを思い知るのです。
この事件がドラマチックすぎて現実離れしている、と突っ込むのは野暮な話でこの話は「自分の今まで持っていた物全てを捨てて愛する人を救えますか?」というのがテーマだと思うので、迷いなく愛する蒼司のために自分の全てを捧げる千夏はカッコいいです。幼稚なお坊ちゃんだったのに愛を知った途端に大人びて男らしくなりました。千夏は愛というものがどんなものか全くわからなかったけどそれは自分のすぐそばにあったのでした…って童話の青い鳥みたいで深い。
四国を舞台にした物語でお遍路さんの風習が重要なエピソードとしてうまく生きていてとても魅力的です。若い2人の怒涛の恋愛を間近で見届けた語り手の若田は巻き込まれてしまって気の毒としか言いようがないけど。
どこかお芝居のような現代のお伽話のような戯曲のような…とにかくよく出来たお話です。読む価値あり。
「彼岸の赤」だったかを読んで、おセンチな感じが苦手だなあと思った印象のままの作家さん。何年か経ったので、まとめ買いしていた積ん読を消化しようと手に取りました。
後書きを読んで気づきましたが、こちらがデビュー作なのですね。やはり、と思うようなところがありました。
基本的には、青春の高校生同士の甘酸っぱい恋が書きたいのだと思うのですが、それを表現するために二人を犯罪に巻き込ませ、何度も同じ説明が繰り返されるので読んでいてまたか、と思うばかりで疲れました。
また、その犯罪の設定があり得ないもので、たとえば中国の犯罪者が、日本の工業用ボルトを盗むために仲の良い高校生の片方を拉致し、もう一方に盗ませるというもので、それくらいなら自分で盗む方が100倍速いよね、と思うともうダメでした。
やはり感傷的なタッチは変わっておらず、苦手意識がさらに強くなってしまいました。残念。
これから先、二月が来る度に、閏年が来るたびに、その地の名前を聞いたときに、鉄塔を見るたびに、異国の地でひっそり暮らす二人を思い出すのかと思うと、本当に不治の病みたいだ。いつまでも心の奥底に残るようなお話でした。
至って普通であったはずの二人の日常がある日崩れて、緊張の中で少しずつ千夏の気持ちがはっきりしてくる。蒼司の為にボルトを運ぶ千夏や蒼司の恋する気持ち、恐ろしい現実もどこか美しく見える。文章や挿絵を通じて、恐怖や焦り、どうしようもない恋の熱の交じる二人の世界が恐ろしいほどリアルに感じ取れました。
普通の高校生だった二人が、あんな目にあった二人が、やっと気持ちが通じ合った二人が、あれからどうやって生きているのか……とか、そんなことをこれからもずっとふとしたときに思い出すのだろうと思います。読み終えた後にもう一度冒頭を読んで、やられた!と思った。すごすぎる。