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ひとつの事件から紡がれる愛の物語――。
面白くて一気読みしました。元刑事で探偵の31歳金髪攻め×元男娼の探偵助手24歳黒髪緑目ツンデレ受けです。舞台は70年代アメリカ東海岸のどこかの都市のスラム街。日本人が登場人物全員外国人の長いシリーズものを書けるってすごい事だと思います。
2人は愛し合ってますが、探偵ゆえに身の回りでは悲惨な事件ばかり起こり、ラブシーンよりはそちらをメインに書かれています。でも話が面白いのでつい読まされてしまいます。愛のシーンもありますが、元は20年以上前に書かれた作品なので最近のBLほどそこは詳しく書かれていません。でも夕飯の支度も忘れてやり始める、とか攻めが若い受けを好きでたまらない様子は伝わってきます。
今作は中編3作収録されていて、1作目の事件は攻めのクラーク視点、2作目は1作目の同時期に姿を消していた受けのトニーが500マイル離れた場所で何をしてどういう心境だったかがわかる種明かし的内容になっていて凝った作りだと思います。好きだったのは年上の攻めが行方知れずだった受けからの電話がかかってきた時焦って部屋の物を色々落として手に青痣まで作ってしまう場面。少しドジっ子属性のある攻めって愛おしい。3作目も事件+2人のラブライフが伝わってくる内容の良作です。
結構長いシリーズ物でこちらは何編かまとめた新装版で、他にも2冊出ているようなので、すぐ購入したんですが、肝心の2人の出会い編は商業で出てなくて同人誌しかないようです。取り寄せましたが、薄い本らしいのに手数料やらで高くつきました。電子ならお手軽に同人誌も読めるみたいです。
作者さんが初めて小説JUNEに掲載された記念すべき作品だそうです。
デスペラードシリーズは4話からが単行本化されており、1.2話は同人誌にて、ということで、この3話にあたる話しは当時のJUNEを見ていない人にとっては単行本未収録作品のお目見えになるのですね。
そして『HOME AGAIN』は過去の単行本『時が過ぎゆきても』の中に収録されている作品で、この本の表題とリンクした時間軸のお話が再録。
そして、書き下ろしで『GOODNIGHT IRINE』という構成の一冊になっているようです。
この作品もBLというよりは、男の恋人がいる探偵とその恋人の助手が登場して事件の解決をするという、どちらかというとそのミステリー部分が大きな要素を占めています。
しかし、その事件はやはり人間の愛憎であったりしがらみであったりと、とても人間臭いというか人間味あふれたものから派生しているもので、
そんな事件に関わった人々の心情や様子を見せながら、主人公達がいかに不可欠で離れがたい存在であるかもところどころに入ると言った、
そのバランスがそれぞれを邪魔しない程度にうまく絡んだり、二人の描写が癒しであったり、と均衡がとれているのでくどくないのです。
また、今回は季節が冬な事もあり、殺人事件も絡むのでどことなく暗いトーンではあるのですが、その中で主人公達の関係は、ほんのりと灯る暖炉の火の温もりのようでもありました。
表題は、クラークが警察を辞めるきっかけとなった、殴った37分署の所長の息子が何者かに殺され、そしてその所長から探偵であるクラークがある依頼を受けると言う話しでした。
所長の依頼はある一点だけだったのに、そこから見えてしまって更に発展してしまう事件
歌の歌詞の100マイルと、それと同時にクラークの恋人のアンソニーが500マイル離れた場所から電話してくるという、そんなリンクもあって、中々に洒脱な掛けた題名とテーマになっているようでした。
そして、その500マイル先にいたアンソニーのお話が『HOME AGAIN』
生まれた街に戻って、彼の過去がわかると共に、アンソニーにはクラークの温もりが大事なのだと再認識をする話にもなっていました。
書下ろしは、麻薬売買に絡んだ殺人事件の話し。
ここでも、歌が何かのヒントとして使われています。
BL的なラブ展開が薄いので、そういったものを求めるには物足りないかもしれないのですが、物語の中で見せる、クラークのアンソニーのベタ惚れぶりと、アンソニーの聡明さとちょっとツンデレなかわいらしさ、
そして何より、互いが過去に色々抱えてそして、かえがえのない存在として暮らしている姿がちょっとした甘さを添えて、心の物語としても読ませるのではないかと思ったりもしたのですが。
既に絶版になっているものもあるDESPERADOシリーズの新装版の作品でした。
元刑事のクラークと元男娼のアンソニー、二人の出会いから半年くらいの話で
BL的にはどうなんだろう?なんて思うくらい探偵もの尽くしな骨太ストーリー
これだけ読むと、別に設定が男同士でなくても成立しちゃうんじゃない?
って感じる事も多々あるのですが、同時収録されているHOME AGAINを読むと
アンソニーがクラークとの関係を真摯に考え初めて、過去に区切りを付けて
前に進んで行くようなストーリーで胸に来るものがありました。
探偵ものが好きな人だったらかなり楽しめる作品で、二転三転する事件の展開も
かなり意表を付いていて楽しめるお話でしたね。
人間の愛情のあり方や、ジレンマ、人とのつながりと、奥深い内容です。
70年代アメリカを舞台にした探偵×助手のストーリーである、DESPERADOシリーズの新装版として発売されたものですが、お蔵入りになっていた作品らしく、時系列は既刊の作品の中では一番最初にあたります。
短編集なのでここから読んでも分からなくはないと思います。
相変わらず事件に重点を置いたお話なですが、この巻はいつにも増して糖度は低めな印象を受けました。
いつもは事件を追う展開が面白くて、BL的要素は置いておいても十分楽しめる作品なのですが…今回表題になっている「500MILES」、この事件の真相が痛々しくてちょっと「面白かった~」では片付かない後味の悪さを感じました…。
足を切ったアンソニーを病院に連れて行ったクラークが、傷跡が残らないよう整形外科の糸で縫って欲しいと医者に要求し、アンソニーが反論するシーンがあります。
アンソニーは女扱いされたり、庇護される事を嫌っていて(クラークにはそんなつもりはないのですが)それが積み重なってこの先どろどろな展開になっていくのですが…この本は初期の2人のお話なのでまだまだ安穏としています。
「HOME AGAIN」
アンソニーが生まれ故郷に里帰りするお話です。こちらは既刊の本で読んだ事があるのですが、「500MILES」の対となるお話だとは知らず…。どうせなら最初からこのセットで読みたかった~。
最後のお話は書き下ろしですが、やはりこの作品は長編のほうが読み応えがありますね。今回は短編集だという事で星3つで。
新装版になってイラストの方が変わりましたが…クラークが格好良く見えすぎるのが(それが悪いかというと可笑しな話ですが)ちょっと気になりました。頭がボサボサで半年くらい同じネクタイをしてる「どうみてもハンサムではない」おっさん…と何度も何度も書かれてきただけに、このクラークはちょっと頭の中のイメージを壊してしまいそうで、綺麗なイラストですがこの作品に合わない~と感じてしまって残念でした。
逆に「誰もが見とれる美貌」であるとされるアンソニーが、そのへんにいる学生のように見える…のもちょっと残念。
新装版は他に2冊出ていますが、こちらは既に文庫でも発売されているものなので機会があれば…という感じです。