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「鎖」や「足かせ」といったものがテーマのシリーズ3冊目。
前回の事件で怪我を負い入院したアンソニーを毎日見舞うクラークですが、前回から引きずっているわかだまりが解消しないまま、病室でもよそよそしく触れ合うこともしない2人。
一冊目ではあんなにいちゃいちゃとしていたのに、そんな気配が微塵もなく見ていてももの悲しいです。
前作と違う箇所はクラークも考え方を変えたことでしょうか。クラークを信じきれず、別れを選ぼうとするアンソニーに対し、クラークも恋人を怪我させてしまったことから、またこんな事があるくらいなら手放してしまった方がいいのでは、と思い始めます。そしてすれ違いが続いたまま2人は別れを選びます。
どうしてそうなるの~と読んでいる方は悶々となる展開が続きます。
愛しているのに「愛している」と言えないのは何故なのか。お互いがお互い、自分が相手にとっての「足かせ」だと思っている。
分かれる理由が愛しているからなんておかしすぎる…。
この恋愛ものは私の全く読んだことのない雰囲気でとても衝撃的でした。
それでも事件は否応なしにやってくる…。
クラークは今回も恋人とのいざこざを抱えたまま事件解決に奔走します。
そんな2人に最後に救いを与えたのは、クラークがアンソニーの入院中に取った何気ない行動でした。クラークのいい加減な性格も、何も思わないで取った行動が核心を突いているところも、アンソニーが罵りながらも彼に引かれる理由なんでしょう。
一人で街をフラフラするクラークに、ゲイ仲間たちが言う「本当にアンソニーがいなければ何もできないのね」という台詞が好きです。
こういうダメ大人、本当に可愛いですね。
表題作の他、アンソニーが故郷に帰省する短編が入っています。
2人の前途はまだ困難な予感が…。アンソニーはずっとずっと自分がゲイで、クラークがゲイでないことを気にしていますが、ゲイとノーマルのカップルの永久的な幸せを確約できる事って何かあるんでしょうか…。
今回は事件そのものの解決に納得できない点が諸々あったので星4つで。
次回に期待します。
「ぐーたらでずぼらでそこつでがさつで鈍感で馬鹿」
とは、このDESPERADOシリーズの主人公を表現する
言葉なのですが、今回ばかりはこれ程ぴったりな形容は
ないと思いましたね。特に「鈍感で馬鹿」に激しく同意。
そして、7歳年下の恋人の気丈さと健気さに
胸を打たれてしまったのです。
アメリカの東海岸のどこかにある「出口のない街」と
言われるスラム街が舞台。
しがない探偵業のデスと大学生の恋人のアンソニーにとって、
今作では苦しい月日が流れます。
自身が原因で銃弾に倒れた入院中の恋人に、触れることも
抱きしめることもできないまま無為に時間を過ごすデス。
彼の胸中には、最愛の妻子を失ったかつての暗闇が広がっています。
そして、触れて抱きしめて欲しいと口にできないアンソニーは、
元はノーマルである恋人が自分を愛してくれたのは
気の迷いだったのだとデスから離れようとします。
そんな進退極まる状態のデスに持ち込まれた依頼は、
父殺しで自殺を図った少年にまつわる事件の真相究明。
捩じれた家族の絆と方便であった嘘が真実とすり替わって
しまったが為の悲劇が起こります。
一言でも確かめれば何かが違っていたかもしれないのに、
少年と家族も、デスとアンソニーも事実と思いこんだ
虚実に捕らわれて出口を見失っていたのです。
真実を知る者は既に口をなくし、探偵であるデスが
関係者を前に推理を並べる姿は、敢えて素気ない風で
かえって真実の残酷さを浮き上がらせます。
別れを決意し出ていくつもりだったアンソニーが、
ゴミ溜めの様な部屋の掃除とデスの隠していた気遣いを知り、
罵りながら求める場面が何といってもクライマックス。
普段はとことん冴えないおっさんでも、こと恋人に関する事は
見苦しい自覚があるデスの、肝の据わりようは惚れ惚れする位に漢前です。
正に雨降って地固まる。物悲しい事件を通り過ぎ、
ようやく温かい風が吹いた物語でした。