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表題作DESPERADOシリーズ オール・イズ・ロンリネス

クラーク・デラウエア(私立探偵)
アンソニー・フォーセット(大学院生)

あらすじ

恋人のアンソニーが別居してから二年が経った五月初旬──
週末ごとに帰ってくるのだけを楽しみに、
クラークは一匹狼型私立探偵家業を続けていた。
しかし、トニーも法律大学院生ゆえ週末でも帰れないときもある。
そんな週末、クラークは妻が亡くなってから七年にして初めて墓参に行く。
墓地で出会ったのは、行方不明の猫カエサルを探し続ける浮浪者、ジョエルだった。
主任牧師の頼みもあって、クラークは猫探しを引き受けるが──?

作品情報

作品名
DESPERADOシリーズ オール・イズ・ロンリネス
著者
柏枝真郷 
イラスト
如月七生 
媒体
小説
出版社
光風社出版
シリーズ
DESPERADOシリーズ オール・イズ・ロンリネス
発売日
ISBN
9784415087108
3.7

(4)

(0)

萌々

(3)

(1)

中立

(0)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
2
得点
15
評価数
4
平均
3.7 / 5
神率
0%

レビュー投稿数2

もしも人生をやり直す事が出来たら

DESPERADOシリーズの5冊目。

舞台は1970年代後半のアメリカを想定したスラム街。
前回のラストでクラークとアンソニーは離れますが、あれから2年経って、アンソニーは大学を卒業し、今は大学院生になっている設定です。

今回のお話も面白かった!相変わらずヒマな私立探偵のクラークは、いなくなった猫探しやら、無くなったノート探しやら、世間的には大したことのない事件に首をつっこむ羽目になり、しかしそこから大きな事件の真相が芋づる式に現れます。

毎度毎度殺人事件が起こるシリーズですが、その原因はいつもすれ違いや勘違いや偶然など、やりきれない事が多いです。
もしもやり直せたら、とクラークも言っていますが、その事から、未だに亡くなった奥さんの事を悔いているんだなぁと伺えます。

猫の事件と盗まれたノートの事件が交差しますが、ちょっと別々に考えるにはまとまりが悪くもう一スパイス欲しいかなぁと欲を感じてしまいました。

それにしても、出会って何年も立ったのに更にアンソニーにメロメロになっていくクラークのダメっぷりが可愛くて仕方ない。
毎週週末にアンソニーが泊りに来るのに、火曜に「奇跡が起こって金曜日にならないかな」とか思ったり、帰ったらベッドに寝ていたアンソニーの顔を起きるまで眺めていたり、夕食中に友人の刑事と話をしながらアンソニーにうっとりしてたり…アンソニーと離れて前より拍車が掛かっている気がします。
2人の行く末はまだ見えませんが、早くアンソニーが帰ってあげてと願ってしまいます。

1

ならず者にも花が咲く

アメリカ東海岸のどこか、出口のないと言われるスラム街が舞台で、
元刑事で今はしながい探偵稼業のクラークと、
彼の恋人で大学院生のアンソニーを中心に、
舞い込んでくる依頼や事件に向き合う
ちょっとシリアスな物語です。

デス(ならず者)の愛称で呼ばれるクラークは、
のらりくらりと日々を過ごす気ままな男。
ある日、依頼人が浮浪者、内容は「迷い猫探し」と、
およそ金にもならない仕事を引き受けてしまいます。
緑の眼をした銀毛の猫を探すだけが、
いつの間に事件に巻き込まれ、
1人の人間の人生を追うはめになってゆきます。

埃っぽく乾いた街に生きる彼らは、
それぞれが持つ寂しさを認め合い
寄り添うようにして生きています。
そして、数多行き交う人々や流れゆく日々の中では、
事件も過去の出来事もあっという間に過ぎ去ってしまい、
どれ程真実を探っても語る当人は存在しない
虚しさとやるせなさで事件の幕が引かれるのです。

そんな寂寞としたシリアスな物語にも、
数少ないラブな場面が輝いていますよ。
どうにかしてくれと何度思っただろう、このおっさん!
課題や試験に追われ、週末にしか会えない
多忙な恋人を始終恋しがるクラークのヘタレっぷりが、
どうにも情けないやら可愛いやら。
金曜日の夜は舞い上がり、日曜日の夕方は落ち込んで
月曜日を呪うという大変分かりやすいお方です。

恋人のアンソニーにはとことん甘い自覚があり、
寝顔を見ても、料理姿を見てもきれいだ、とのたまう
彼の頭にはお花どころか花畑が広がってますね。
しっかり者のアンソニーは、甘やかされるのを好まず、
勉学の為に一大決心をして別居を申し出た程ですが、
1人寝が寂しくて酒を飲む辺りに年相応の可愛さがみえます。

これは、「DESPERADOシリーズ」と言われる
シリーズ第2部の1作目(通算5作目)となります。
異国の寂れた街と無頼者の探偵と仲間達の織りなす
泥臭さと人間味を感じるシリーズです。

1

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